** garden:music by globe / under the sky
月が水面を照らしているような。
泉の水の底に落ちるような感覚で…。
この想いを封印する。
「レリィ、まだ眠らなかったのか?」
「…ヒューゴ、どうかなさったのですか?」
レオニートの女王レリィに声を掛けた騎士ヒューゴは反対にレリィから質問を投げかけられた。
「どうかしたんじゃない。お前がまだ眠らないと、侍女が俺に泣きついてきたんだ」
「申し訳ありませんわ。ヒューゴ」
ため息付きながら言うヒューゴにレリィはにこりと微笑んで答える。
レリィとヒューゴは旧知の仲だ。
彼女は元からレオニートの女王あるべくして育てられたわけではない。
王家は一度、軍によって崩壊しており、そのときにレリィは王の側近と共に逃げ出していたのだ。
まだ彼女が幼い頃の話である。
その頃からレリィと共に育ったのがヒューゴだった。
少女を護るためならば騎士となり、図らずも女王となったレリィを護るために女王の騎士となった。
女王として入城する前よりレリィのそばにいたヒューゴにレリィの居場所を聞くのは当然だった。
「ヒューゴ、まだここにいてはいけませんか?」
「俺がいるのなら構わない。皆そう言うだろうな」
レリィの言葉にヒューゴはため息を再びついてそう答える。
「ヒューゴ、ため息つきすぎですわ」
「誰のせいだ、誰の」
「私のせいとおっしゃるの?」
「当たり前だろう。レリィ、少しは女王としての自覚を持ってくれ。いつ狙われるかも判らないんだぞ!!!」
「そうですわね」
「じゃあ」
「もし狙われたとしても、私は死にません。いえ、死ぬわけにはいかない。それをあなたは判ってるでしょう?」
「だったら、先に狙われないようにしてくれ。こっちはいつお前が狙われるか気が気じゃないんだ」
そう言いながらヒューゴはレリィを室内へと誘導する。
「ヒューゴは心配性ですね」
「あのなぁ」
「判ってますわ。…あなただけの言葉じゃないということを」
レリィは促すヒューゴの腕を軽く払いのけてそう言う。
「私がこの国を治める女王であるから。誰もが心配している。判ってますわ」
「レリィ?」
ヒューゴはレリィの物言いと彼女の表情に違和感を感じた。
「お休みなさい、ヒューゴ」
そうレリィはヒューゴにそう言う。
視線を合わせないで。
「レリィ、眠れないのなら、話ぐらいはつきあってやっても良い。だけど、今日みたいにバルコニーに立っているのはやめてくれ」
「ヒューゴ、大丈夫ですわ。あなたが心配するような事は何もありません」
そう言うレリィはまだヒューゴに視線を合わせない。
そこでようやくヒューゴは気づいた。
「レリィ、怒っているのか?」
「どうして、怒らなくちゃならないのですか?理由を言ってください」
顔を真っ赤にしてレリィは叫ぶように言う。
その表情は怒っているというのが見事に合っていた。
「それは怒っていると言わないのか?」
「言いません」
「言ってるように見えるのだが…」
「では、私が怒っている理由はあなたはなんだか判ってらっしゃるのでしょう?」
「そ、それは」
「ほらご覧なさい。あなたは私がどうして怒っているのだか全く判ってないのだわ」
レリィは、そうまくし立てる。
ヒューゴが黙り込むまで。
ヒューゴは自分の想いに気づいてはいない。
だから、この想いは知られてはいけない。
怒っているのは、ヒューゴに対してではなく自分に対して。
だから、この想いは沈めるのが先決だ。
怒りにごまかせれば、どうとでもなる。
眠れないのなら話ぐらいつきあってやると言ったヒューゴがいるのだから、気を紛らわすのは十分だろう。
怒りに想いを封じ込めると決めた自分の想いに対しては本末転倒だが。
泉の水の底に落ちるような感覚で…。
この想いを封印する。
******
彼女は窓を開け放ち、外のバルコニーへと出て眼下に見える町並みを眺めていた。「レリィ、まだ眠らなかったのか?」
「…ヒューゴ、どうかなさったのですか?」
レオニートの女王レリィに声を掛けた騎士ヒューゴは反対にレリィから質問を投げかけられた。
「どうかしたんじゃない。お前がまだ眠らないと、侍女が俺に泣きついてきたんだ」
「申し訳ありませんわ。ヒューゴ」
ため息付きながら言うヒューゴにレリィはにこりと微笑んで答える。
レリィとヒューゴは旧知の仲だ。
彼女は元からレオニートの女王あるべくして育てられたわけではない。
王家は一度、軍によって崩壊しており、そのときにレリィは王の側近と共に逃げ出していたのだ。
まだ彼女が幼い頃の話である。
その頃からレリィと共に育ったのがヒューゴだった。
少女を護るためならば騎士となり、図らずも女王となったレリィを護るために女王の騎士となった。
女王として入城する前よりレリィのそばにいたヒューゴにレリィの居場所を聞くのは当然だった。
「ヒューゴ、まだここにいてはいけませんか?」
「俺がいるのなら構わない。皆そう言うだろうな」
レリィの言葉にヒューゴはため息を再びついてそう答える。
「ヒューゴ、ため息つきすぎですわ」
「誰のせいだ、誰の」
「私のせいとおっしゃるの?」
「当たり前だろう。レリィ、少しは女王としての自覚を持ってくれ。いつ狙われるかも判らないんだぞ!!!」
「そうですわね」
「じゃあ」
「もし狙われたとしても、私は死にません。いえ、死ぬわけにはいかない。それをあなたは判ってるでしょう?」
「だったら、先に狙われないようにしてくれ。こっちはいつお前が狙われるか気が気じゃないんだ」
そう言いながらヒューゴはレリィを室内へと誘導する。
「ヒューゴは心配性ですね」
「あのなぁ」
「判ってますわ。…あなただけの言葉じゃないということを」
レリィは促すヒューゴの腕を軽く払いのけてそう言う。
「私がこの国を治める女王であるから。誰もが心配している。判ってますわ」
「レリィ?」
ヒューゴはレリィの物言いと彼女の表情に違和感を感じた。
「お休みなさい、ヒューゴ」
そうレリィはヒューゴにそう言う。
視線を合わせないで。
「レリィ、眠れないのなら、話ぐらいはつきあってやっても良い。だけど、今日みたいにバルコニーに立っているのはやめてくれ」
「ヒューゴ、大丈夫ですわ。あなたが心配するような事は何もありません」
そう言うレリィはまだヒューゴに視線を合わせない。
そこでようやくヒューゴは気づいた。
「レリィ、怒っているのか?」
「どうして、怒らなくちゃならないのですか?理由を言ってください」
顔を真っ赤にしてレリィは叫ぶように言う。
その表情は怒っているというのが見事に合っていた。
「それは怒っていると言わないのか?」
「言いません」
「言ってるように見えるのだが…」
「では、私が怒っている理由はあなたはなんだか判ってらっしゃるのでしょう?」
「そ、それは」
「ほらご覧なさい。あなたは私がどうして怒っているのだか全く判ってないのだわ」
レリィは、そうまくし立てる。
ヒューゴが黙り込むまで。
ヒューゴは自分の想いに気づいてはいない。
だから、この想いは知られてはいけない。
怒っているのは、ヒューゴに対してではなく自分に対して。
だから、この想いは沈めるのが先決だ。
怒りにごまかせれば、どうとでもなる。
眠れないのなら話ぐらいつきあってやると言ったヒューゴがいるのだから、気を紛らわすのは十分だろう。
怒りに想いを封じ込めると決めた自分の想いに対しては本末転倒だが。
**後書き:というわけで、under the skyのサイドストーリー。
レリィ女王と騎士ヒューゴのお話。
国の名前も出来ました。
良かった良かった。
レオニート王国には光と闇の七ツ石があります。慈愛の王冠。
ダイアモンドできらきら〜。
でも実は、その王国は………。と秘密の方向で。
レリィ女王と騎士ヒューゴのお話。
国の名前も出来ました。
良かった良かった。
レオニート王国には光と闇の七ツ石があります。慈愛の王冠。
ダイアモンドできらきら〜。
でも実は、その王国は………。と秘密の方向で。