本日快青是日々平和也
予告編前編 オープニング前編後編予告後編Op後編あとがき

後編
 オレの名前は服部平次。
 大阪にある改方学園に通っとる高校生や。
 一応西の名探偵って呼ばれとる、ちょっとは名のしれた探偵やな。
 和葉とのデートの最中に怪盗キッドからの予告状が届いたっちゅう博物館にやって来た。
 でオレはただいま暗号と格闘中や!!
 工藤は一目見たら解ける言うけどホンマの所はどうなんや?
 ともかく、暗号や、暗号!!!

「もう一回考えてみよう、平次」
 和葉は予告状を見ながら言う。
「…そうやな…」
 オレは素直に和葉の言葉にうなずき予告状に目を落とす。
 その予告状はきれいなカードやった。
 そして内容は…。
『世紀の魔術師より愚者への挑戦状。美しき智慧ある乙女が時を示すころ、天の怒りを買う塔より希望の紫を頂きに上がる。怪盗キッド』
 や。
「世紀の魔術師っちゅうのは怪盗キッドのことやろ」
「そうやね」
「愚者への挑戦状っちゅうのはオレらのことやろな」
「アホへの挑戦状ってわざわざ書かんでもえぇんと違う?」
「アホ…。なんでそうなるねん」
「愚者ってアホって言う意味やんか」
 と和葉はあきれ返りながらオレを見る。
「ともかく美しき智慧ある乙女が時を示すころっちゅうのが分からん」
「そして、天の怒りを買う塔言うのは、通天閣やって警察はそう思っとる」
「通天閣なぁ。やっぱり納得いかへんで」
 展示場で聞いた警察の言葉にオレは納得がいかんかった。
 なんで…通天閣が天の怒りを買う塔何や?
 納得がいかへん。
 オレが悩んでる最中に和葉はふとオレに声をかける。
「……平次…今思うたんやけど…これタロットカードと違う?」
「タロットカード?」
 何やそれ?
 不思議そうにしとるオレに和葉はため息をつきながら答える。
「占いに使うカードやって。中学の時におちくちが持ってきてみんなのこと占うていたやん」
「そういやそうや和葉、タロットカードは何枚あるんや?」
「全部で74枚やで」
 オレの言葉に和葉は素直に答える。
 なんでそんなにあんねん。
「はぁ?」
「そうや。タロットカード言うのは大アルカナ22枚と小アルカナ52枚で構成されてるん」
「大アルカナ22枚?」
 聞きなれん言葉にオレは首をかしげる。
「絵がついてるカードを大アルカナ言うんや。タロットカードの大アルカナのカードナンバー1が魔術師でカードナンバー0が愚者やねん」
「0?何で0やねん」
「知らんよ、そこまで詳しくあらへんよ」
「じゃあ、和葉、この智慧ある乙女言うのは分かるか?」
 オレは智慧ある乙女と言う言葉を和葉に聞いてみる。
「今ココで言われてもわからへんよ。本屋で調べて見れば分かるんと違う?占いはまだブームやし」
「そやな」
 と言うわけでオレと和葉は本屋に向かった。
 何で本屋なんかは気にせんといて。
「あったで平次タロットカードの本」
 占いのコーナーにたくさん並べてあるタロットカードに関して書いてある本を和葉は広げる。
「どれや、智慧ある乙女言うてもわからへんなぁ」
「多分、これやと思うよ。女教皇、智慧の本持っとるって。カードナンバーは2やて」
 と二本の柱の中心にいる女性を描いたカードの絵を見せる。
 2…か。
「と言うことはキッドは夜中の2時に来る言うことか?」
「そやないの?」
 22枚言うのはいたいけど…。
 多分、予告時間は2時であっとると思う。
「…和葉、塔言うのはあるんか?」
「これやろ」
 和葉はページをめくり塔のカードの所を示す。
「これが塔……か」
「そうや…ここに意味が書いてあるで、バベルの塔が崩れるのをモデルしたって」
 バベルの塔……確か…旧約聖書で天の怒りを買って崩れた塔……世界で一番高い塔やったな。
「……和葉…天の怒りを買う塔言うたら大阪一高い塔やろな…」
「平次?」
 間違いアラへん。
 オレの勘はあたっとる。
「和葉、大阪の一番高いランドマークはどこや?」
 突然オレの言葉に和葉は驚く。。
「そんなこと言われても……。確かコスモタワー……」
「WTCか…あそこやったら今大阪で一番高いところや…。和葉、分かったで」
 完璧や。
 完璧にキッドの予告状解いたで。
「ホンマ?」
「ホンマやなるほどな。あそこやったら大阪宝石博物館には何の障害物もあらんで入ってこれる」
「じゃあ、キッドはコスモタワーの屋上から行く言うの?」
「そうや、しかもあそこのてっぺんはヘリポートになっとる。和葉、オレは捕まえに行くで」
「アタシも行く」
 はぁ?
 何いうとんねん。
 遊びに行くとちゃうんやで!!。
 おれの怒りに気づいたのか和葉は言う。
「分かっとるよ。アタシかてキッド見たいんやもん」
「あのなぁ」
 なんでキッドなんか見たいねんや!!!
 納得いかへんでぇ。
「平次がアカン言うてもアタシは一人でも行くで」
 そ、それはまずい。
 夜中やし、何あるんか分からん…。
 仕方なしにオレは和葉におれた。
「……しゃあないなあ、何が合っても知らんで?」
「なんや、平次守ってくれへんの?」
「はぁ、まもうたるから。ったく、ホンマアカンで」
 投げやりに言うた言葉に和葉はめっちゃ喜んだ。
「キッドに逢える」
 と言うて…。
 何や…納得いかへんで。
 和葉の態度が…。

『予告状だしたんだってな』
 電話にでたのは同じ声でおんなじ顔のやつ。
 半ばその声には嫌みが入っているようだった。
「新聞にのってたろ?で、解けたのかよ?」
『あたりめぇだろ。オレを誰だと思ってんだよ』
 簡単だったと言わんばかりのその声にオレはちょっとばかりむっとした。
「へいへい。あ、西の名探偵に逢ったぜ」
『その嫌そうな言い方じゃなつかれたか?』
「大当たり」
『ハハハハ、キッド、あんまりあいつのこと甘く見ないほうが良いぜ。あれでも名探偵なんだからよ』
「わーってるよ。じゃあな新一」
『ったく…邪魔すんじゃねーよ』
 何が邪魔すんじゃねーよだよ。
 まだ早い時間じゃねーかよ。
「さて、お手並み拝見と参りましょうか」
 日が越したので、一回目の花火を鳴らす。
「キッド、あまり調子に乗らないほうが良いと思うけど」
 オレの言葉に隣にいる青子が静かに呟く。
「ご忠告、ありがとうございます。あいつも言ってったっけ」
「あいつ?」
 オレと新一の会話を聞いてない青子が疑問に思って言う。
「東」
「仲良さそうだよね」
 誰が?
 青子の言葉に不思議に思う。
「東と西」
「って言うか、西が東にしつこくしてるような気がする」
 オレの言葉に青子は笑う。
「それ言ったら東が怒ると思うよ」
「青子もそう思う?」
「うん。ねぇ、快斗、青子来ちゃって大丈夫なの?」
 小さく青子は聞く。
 不安そうに……。
「…大丈夫だよ。本物じゃないかぎりあいつらはやって来ない。それにオレがここから出ていくことも知られていない。中森警部とかは…ほら見てみな、通天閣に張ってるから」
 青子に望遠鏡を渡す。
 中森警部はしっかりと通天閣の展望台にいる。
 その周りにはたくさんの警官…。
 あの変な暗号解きのスペシャリストに力なんて借りたからこんなことになったのにな。
 素直に自分で解いてりゃ、ここだってことすぐに分かったんじゃねぇの?
「ホントだ。なんか……お父さんに悪いなぁ……。怪盗キッドの肩なんか持っちゃってるから」
 青子の言葉にちょっとだけどきっとする。
 やっぱ、青子にとっちゃオレは負担なのかなぁ……。
「……ごめん」
「何謝ってるのよ。謝る必要なんてないでしょ。それより快斗、捕まらないでよね」
 ふと謝るオレを青子はニッコリ笑って癒してくれる。
「オレを誰だと思ってるんだよ」
「バ快斗…」
「あのなぁ、アホ子は早く現場に行きなさい」
「むーーーーーーーー。快斗…じゃあ、博物館でね」
「あぁ、じゃあな、青子」
 そう言ってオレは青子と別れた。
 予告時間になった。
「レディス&ジェントルマン!!さぁ、ショーの始まりだぜ!!!」

 和葉と出かける前にオレは工藤のところに電話した。
『何電話してきてんだよ』
 と工藤はオレの電話に不満げにでる。
「工藤心配やあらへんのか?」
『別に心配じゃねぇぜ』
 よう言うわ。
 ワンコール出でよったくせに。
「それやったらワンコールででるなや。気にしとんのやろ」
『気にしてねーよ!!』
 からかうと工藤は即座に反論しよる。
 …こりゃ、カナリ気にしとるな。
「みなまで言うなや…工藤が気にしてる言うのはよぉ分かったで。でも安心せぇ、暗号はばっちり解けたんやからな」
『気をつけろよ、服部』
 オレの言葉に工藤は静かに言う。
 心配しとるんやな。
「ん?心配してくれんのか?」
『バーロォ。甘く見て逃げられんじゃねぇぞ!!』
「言われんでもわかっとる!!」
『絶対に捕まえろよ』
 と工藤はそう言って切った。
 なんやろ…。
 今の言い方何や分からんけど微妙なもんがあったで。
 どこが微妙やって言われたら分からんのやけど…。
「平次、お待たせ」
 外で待っとるオレに和葉は小声で声を掛ける。
「和葉、キッドを捕まえに行くで!!!」
「平次、絶対捕まえよぉな!!」
「おぉ!!」
 そしてオレはバイクにまたがり大阪市内に向かった。

「な、何事だ」
 通天閣に張っている中森警部は突然起こった爆発音に驚く。
「け、警部花火です。花火です」
「花火だとぉ?花火だったら日が変わったときになったじゃないか!!」
「分かりません、キッドがもしかすると現れる前触れでしょうか?」
「えぇいともかくキッドの出現に総員、備えろ!!!」
 と中森警部は叫んだ。
 その時だった。
「残っている平塚刑事からの連絡です。何でも西の名探偵が話があるとか?」
「昼まいた少年のことか?」
「多分」
 刑事の言葉に中森警部は携帯電話を受け取った。

「中森ハン、今どこにおるんや」
「通天閣に決まっとるじゃないか!!」
 アカン…やっぱりや……。
「通天閣はおとりや、キッドはWTCの屋上から来るんや」
「なんだってぇ!!!そんなことがある訳ないだろう」
 電話口から聞こえる中森警部の声にオレは携帯を切りたくなった。
「そんなわけあるんや。天の怒りを買う言うんは高い塔の事をさすんや。つまり、大阪一高い塔は通天閣やない、WTC、大阪ワールドトレードセンターのことや!!」
「平次…キッドや」
 和葉の声に空に目をやるとハングライダーからハングライダーを操るキッドの姿が見える。
「ともかく急いでこっちに来たってや」
 そう言ってオレは携帯を切った。
「平次、どないすんの?」
「ともかく、ここで隠れるんや。キッドは取った宝石を月にかざすらしいんや。窓からは入れんようになっとる。警官は至る所に配置させた。屋上からあそこに入るにも出るにも一本しかあらへん様にした。しかも何が合ってもそこから動かんよう言うてある。せやからキッドは何が合ってももう一度ここに戻ってくる。その時や、キッドは月にその宝石をかざす。その一瞬を見計らってオレが引きつける。せやから和葉はその隙にキッドを捕まえる」
「は…反対の方がえぇんと違う?」
「一度キッドと話して見たかったんや」
 そう言うオレに和葉はあきれ返って言った。
「アタシの目には逃げられるところが見えるんやけど」
 アホ、そないなわけあるか!!

 美術館は空から見ても周りは通常の警備より少し多いぐらいの警官しかいない。
 どうやらほとんどが通天閣の方に行っているようだ。
 屋上に下り立つと恐ろしいほど気配がない。
 新一は……甘く見るなって言ってた。
 でもよぉ、甘く見るなって言ったほうが間違いなんじゃねーの?
 だがそれは間違いと言うことにどんどん気付かされていく。
 ガラス窓から入っていこうと思っていたが、窓は強化ガラスのために割ることが難しい。
 つまり屋上から通路を伝って中に入るしかない。
 通路は所々に警官が配置されていた。
 どこにも紛れられないようその警官がいないところを通るとまっすぐパープルホープの置かれている場所に到着した。
 しかし、パープルホープのある場所は警官が全くいなかった。
 おかしい……。
 今までこんなことあったか?
 オレがくるって言うときに警官がいないって言うことが……。
 ……罠……。
 そう考えたほうが正しいかも知れない。
 だが……。
 その罠をどこに張ったって言うんだ。
 頭の中に浮かんだ事をすぐに消し去る。
 けれど……不安はぬぐい去ることが出来ない。
 何でだよぉ。
 取りあえず、オレはパープルホープをガラスケースから取りだす。
 警報装置はタイマーでならないようにしたから…ならない。
 …取りあえず、ゲット。
 窓を一度確認。
 出られる様子なし。
 しかも、強化ガラス。
 取りあえず、部屋から出る。
 オレが逃げられる道は先程と同じではなかった。
 全く変わっていたが…最後にたどり着いたのは…屋上への道だった。
 まさか…な。
 計算しつくされた警官の配置具合にオレは嫌な予感をぬぐえないでいる。
 東の名探偵と同じぐらいの能力を持つ西の名探偵が屋上にいる。
 間違いない。
 ある意味、東より単純だが、東より意地悪いと言うか……。
 鈍感というか……。
 オレは意を決して屋上に出たのだ。
 が……予想に反して西の名探偵の姿はない。
 何でだ……?
 怯える必要なかったんじゃん。
 ほっとしたオレは取りあえず、今取ったばかりの宝石を月にかざした。

「違ったか……」
 キッドは月にかざした宝石を見ながら呟く。
「キッド……お前は一体……何でこないなことしてんのや……」
 オレの言葉にびくっとしてキッドはオレの方を向く。
「これはこれは西の名探偵服部平次殿ではありませんか。こう改まって向き合うのは初めてですね」
 一瞬だけ動揺したが、さすが泥棒や。
 すぐにポーカーフェイスになりおった。
「待ってたでぇ、怪盗キッド。よぉまぁ、警察を通天閣の方角に追いやったなぁ」
「騙される警察の方が悪いんですよ」
 と怪盗キッドは全世界の女性が魅了される言う微笑みを満面に浮かべ言う。
「ハン、よくいうで。天の怒りを買う塔を通天閣と混同させるように予告状を送った日、予告当日、そして予告時間にその近くで花火鳴らすんやからのぉ」
「なるほどねそれで君は引っ掛からなかったって訳だ」
 怪盗キッドが軽く笑った後、静かに和葉がキッドに近寄る。
「平次!!捕まえたで」
 そう言って和葉はキッドを横倒しにする。
「でかしたで和葉!!!怪盗キッド、正体今あばいたるからなぁ和葉よう押さえとけや」
「分かっとるって」
 その言葉にオレはキッドに近付いた。
「ちょ、ちょっと二人とも何するつもりなんですか?」
 カナリキッドは動揺しとる。
「もちろん、キッドの目についとる片眼鏡を取り外すんや!!!」
「や…やめて戴けませんか?」
「そんなんイヤやわ。明日ガッコいったら言いふらすねん。キッド見た言うてな」
 キッドの言葉に和葉も嬉しそうに言いだす。
「や、…やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
 そう叫んでも無駄や!!!
 オレは怪盗キッドについているモノクルを外す。
 ん?
 この顔……どっかで見たことあるで。
 工藤……やないな。
 とすると……。
「……快斗……くん?」
 和葉は言う。
 そうや……快ちゃんや。
「快…ちゃん?」
 まさかな…。
 そんなアホなことあるか。
 よう似とる他人や。
 世の中には似とる人間が3人おる言うしな。
「………」
 せやけど…怪盗キッドはオレと和葉の声に何も言わん。
 その時やった。
「快斗!!!お父さん達来たよ」
 と言って青子ねーちゃんがはいってきたんは。
 その言葉に全員青子ねーちゃんの方を向く。
 嘘やろ…ホンマなんか?
「青子!!」
 キッド…快ちゃんは入ってきた青子ねーちゃんに向かって叫ぶ。
「青子ちゃん?」
「え?…嘘……」
 和葉は入ってきた青子ねーちゃんに驚き…青子ねーちゃんはその場の今怪盗キッドが置かれている状況に驚く。
「ホンマに快斗君なん?」
「嘘やろ…」
 和葉はまだ信じられん言うふうに怪盗キッドを見る。
 オレかて信じられんわ。
 快ちゃんが怪盗キッドやったなんてな。
「は、ハハハハハ。……甘く……見るな…か…。確かにその通りだよな 」
「笑って誤魔化しとる場合か、ホンマのこと言わんかい」
「……こ、これには深い訳が……」
 オレの言葉に青子ねーちゃんは訳を話そうとする。
「…青子ちゃんはしっとんの?」
「…うん……」
 和葉の言葉に青子はうなずいた。
 ホンマ…なんか。
「快斗…、お父さん達来ちゃう」
「青子、中森警部、ここに来たのか?」
「うん、今さっき下ににいるのが見えたよ」
 青子ねーちゃんの言葉の後にたくさんの足音が聞こえてくる。
 まずい!!!!
 何がまずいんかわからへん。
 せやけど、オレは咄嗟に思った。
 キッドも思うたらしく、キッドの扮装を解く。
「怪盗キッド、神妙にしろ!!!!って、ん?青子、何でいるんだ。それに快斗君に平次君と和葉ちゃん……」
「あ、あのなぁ、キッドおいかけてきたんやけど取り逃がしたんや」
 間一髪入ってきた中森警部にオレは何故か、誤魔化した。
「そうやねん。そしたら快斗君達もおってきたん」
「そう、青子ね。怪盗キッドのこと捕まえようと思ったの。そしたら、捕まえる寸前で逃げられちゃったの」
 そして、青子ねーちゃんや和葉まで……。
「すいません、オレがでしゃばったばっかりに……怪盗キッドに逃げられてしまって…。でも、宝石は取り返しました」
 と快ちゃんは少しだけオレを見た後俺達の言い訳に合わせる。
 そして、宝石を中森警部に渡す。
「アホ、何言うてんねん、作戦考えたのはオレやど」
 そうか……分かったで。
 かばってるんや。
 オレは。
 怪盗キッドを。
「でも、実行したのはオレだろ」
「そう言うわけなん、…ホンマすんません」
 オレはそう言って中森警部に謝る。
「い、いや…良いんだよ」
「せやけど、く、工藤もこの作戦に賛成やったんやで。なぁ和葉」
 もうえぇわ、工藤も巻き込んだる。
 多分、工藤も知っとるで、怪盗キッドが快ちゃんやって言うこと。
 せやから
「逃がすんじゃねーぞ」
 そう言ったとき微妙な何かが含まれとったんや。
「そうや。工藤君にこの作戦メールしたんやけど…工藤君がちょっとだけアドバイスくれたんや。ね、青子ちゃん」
「うんお父さんごめんなさい。青子がね、平次君と快斗と和葉ちゃんにキッドを捕まえて欲しいって頼んじゃったの。だから…キッドが逃げたの青子のせいなんだよ」
 オレの言葉を受け和葉も工藤のせいにし、青子ねーちゃんが最後をしめ、全員で謝った!!!
 何とか誤魔化せた後、オレらは快ちゃんと青子ねーちゃんをも伴い、自宅へと強制送還されたのだ。
 もちろんバイクは後から取りに来な、アカンけどな。
 家に帰った後、部屋に入るまでは異様に4人ともテンションが高かったが…、部屋に入って一息入れたらそれも終わった。
 その後オレと和葉は快ちゃんに全てを聞いた。
 何も言えんオレに対して、和葉はずっとないとった。
 理不尽やな…。
 オレが思うたんはそれやった。
 何で、こないつらい目に合わなならんのやろな…と。
 その後オレは和葉と青子ねーちゃんを和葉の部屋に帰し、オレは快ちゃんと二人きりになった。
「誤魔化せたかな……中森警部に」
「……わからん」
 快ちゃんの言葉にオレはなんとも言えず呟く。
 誤魔化せたといえば誤魔化せたやろうし、誤魔化せんかった言えば誤魔化せんかったと言うしかなかった。
「ワリィな、泊めてもらっちゃってさ」
「気にせんでもえぇよ」
 どこか気にしとる快ちゃんにオレは軽く答える。
「あのさ……」
「何や?」
「騙してる…つもりはなかったんだぜ。ただ…言えなかっただけでさ」
 と快ちゃんはつらそうに目線を伏せる。
 工藤もそうやけど、快ちゃんもそうやな。
 二人して自分で全部しょい込もうとしよる。
「工藤は…」
「新一?」
「工藤は知っとるのか」
 ふと思いだしたことを快ちゃんに聞いてみる。
「オレが…怪盗キッドって言うこと?」
「他に…あらへんやろ」
 と言うと快ちゃんは自嘲気味に笑った後に答えた。
「知ってるよ……。って言うかばれて……さんざん問い詰められたっけ……。蘭ちゃんのことで」
「何で蘭ねーちゃんの事で色々問い詰められるんや?」
「……色々やったからね」
 工藤はやきもち妬きやからのぉ。
 問い詰められてる様子が目に浮かぶわ。
「自分…アホちゃうか?」
「かもな」
「で、許してくれたんか?」
「まぁな」
「さよか」
 そこでオレは言葉を止める。
 そうか、工藤は許したんか…。
 あんな理由聞いたら許すも許さへんもあらへんけどな。
「あのさ」
「なんやねん」
「怒ってねぇか?」
 案の定快ちゃんは聞いてくる。
「怒ってへんよ。もう気にせんわ。あんな理由聞かされたら怒るに怒られへんやろ」
「悪かったな…だまっててさ」
「謝る必要あらへんやろ。苦しかったんやろ…青子ねーちゃん許してくれたんやろ。それやったら許すしかあらへん。知っとるやつが許さへんで、誰が許すんや」
「……」
 オレには…よう分からん。
 敵討ちのつらさも自分を捨てないと大切な人を守れないつらさも。
 せやけど……許すぐらいはそいつを認めるぐらいは出来るやろ。
「快ちゃん、オレは許すことしかできへん。手伝うことしかできへん。せやからなもう、謝るなや。知りたいんやろ、敵取りたいんやろ。オレらに出来ることは怪盗キッドを捕まらんようにすることや。だから謝る必要あらへん」
「服部……」
 と快ちゃんはオレに向かって言う。
「ちゃう、服部やない、平ちゃんや。な、快ちゃん」
「平ちゃんって変な…奴だな……」
「アホ、良いやつって言わんかい」

「で、結局…平次は怪盗キッドに勝たれへんかったん?」
 快斗君と青子ちゃんを見送った後アタシは平次に向かって言う。
「どういう意味や?」
「だって、怪盗キッドに盗まれたやんか」
 と言うアタシに平次はしれっとした顔で言う。
「あれは、しゃあないやろ。わざと盗み出させてその後捕まえるって言うたやんか」
 だけどその言い訳くさい言い方にアタシは平次にズバリと聞いてみる。
「分かった、平次。考えつかんかったんやろ。宝石をどうやって守るか」
「……」
 図星…だったらしい。
 全く、強がり言う必要ないやんか…。
 そうや、強がり言ってるついでにちょっと平次のことからかってみよ。
「平次、工藤君は盗まれたことないんやろ」
 そう、話題にする人物は工藤君の事。
「あるやろ」
「ホンマ?工藤くんやったら無いと思うけど…」
 あまり反応無い平次にアタシは工藤君と言うところを微妙に強調して言ってみる。
「和葉、何でそこで工藤工藤言うねん」
 引っ掛かった。
 クス。
「アタシより、平次の方が工藤工藤言うてるとき多いんと違う?たまにはえぇやんか。工藤君の事言うたって」
「アカーン!!和葉には工藤言うてほしないんや」
 平次はそう叫ぶ。
 その声に周りの人はアタシ達の方を見る。
 はずかしーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
「平次、もうちょっと小さい声で言えん?」
「何でや!!」
「周りの人が見てんのんよ」
 とアタシが言うと平次はいきなり顔を赤くする。
 アホ……。
 顔赤くするなら大声で言わんでよ。
「和葉、行くで」
「ハイハイ」
 そう言って平次は家の方角とは全く別の方向へと向かう。
「平次、どこ行くの?」
「和葉……コスモタワーでもいかへんか?」
 とアタシの腕を取りながら言う。
「えぇけど……。WTCに行く電車はこっちや無いで」
「アホ、バイク取りにいかなアカンやろ。先に博物館や」
 あ、そうでした。
 と言うわけで、アタシと平次はバイクを取りに行った後にデートに出かけたのでした。




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