「その6」では、2π代入、π代入、kπ/2代入を見た。
ここでは「その6」と同じやり方でkπ/3代入、kπ/4代入を調べることにする。ここから本当に驚くような等式が導出され
ていく。
導出される式は「その4」、「その5」で見たものと同じだが、「その6」で行った工夫(定理3へのフーリエ級数の適用を
左辺・右辺をそれまでと逆にして行う)で「その5」以前より計算が簡単にスマートになった。ここでもその同様の計算を行
うわけである。
例えば、次のような式は息を呑むような驚くべき式だといえるだろう。
1/(1^2+1) - 1/(3^2+1) - 1/(5^2+1) + 1/(7^2+1) + 1/(9^2+1) - 1/(11^2+1) - 1/(13^2+1) + 15/(15^2+1) + ・・・
=(π√2/4){e^(7π/4)+e^(π/4)-e^(5π/4)-e^(3π/4)}/(e^(2π)-1) 1/(1^2+1) + 3/(3^2+1) - 5/(5^2+1) - 7/(7^2+1) + 9/(9^2+1) + 11/(11^2+1) - 13/(13^2+1) - 15/(15^2+1) + ・・・ =(π√2/4){e^(7π/4)+e^(5π/4)-e^(3π/4)-e^(π/4)}/(e^(2π)-1)
この式がいったいどのようにして求められるのか。
これらが、美しい構造の中から自然に湧き上がってくる様をご覧ください。
次にπ/3と5π/3代入を調べる。まずπ/3代入から。
[計算(π/3代入)]
フーリエ級数の公式
(π-x)/2 =sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・ ----@
( 0 < x < 2π)
に定理3を適用する。
e^x∫e^(-x)G(x)dx=(∫+∫^2+∫^3+・・・)G(x) ----A
この定理3のA左辺に@右辺を、そしてA右辺に@左辺を適用していく。
まずA左辺に@右辺を適用する。
e^x∫e^(-x) (sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・) dx
=e^x∫e^(-x) sinx/1dx + e^x∫e^(-x) sin2x/2 dx + e^x∫e^(-x) sin3x/3dx + e^x∫e^(-x) sin4x/4dx + ・・ ----B
さて、 e^x∫e^(-x) sin(nx/n) dx を計算しよう。部分積分を行った結果のxにπ/3を代入すると簡単に
e^(π/3)∫(0〜π/3) e^(-x) sin(nx/n) dx=e^(π/3)/(n^2+1) - sin(nπ/3)/(n(n^2+1)) - cos(nπ/3)/(n^2+1)
が出る。これよりBは、
e^(π/3)∫(0〜π/3) (sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・) dx
=e^(π/3){1/(1^2+1) + 1/(2^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(4^2+1) +・・・}
-(√3/2){1/(1(1^2+1)) + 1/(2(2^2+1)) - 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1))
+ 1/(7(7^2+1)) + 1/(8(8^2+1)) - 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + ・・・}
- (1/2)[{1/(1^2+1) - 1/(2^2+1) + 1/(3^2+1) - 1/(4^2+1) + ・・・}
-3{1/(3^2+1) - 1/(6^2+1) + 1/(9^2+1) - 1/(12^2+1) + ・・・}] ----C
となる。
次にA右辺に@左辺を適用しよう。2π代入の結果を利用して、
(∫+∫^2+∫^3+・・・)(π-x)/2
=∫(π-x)/2 dx + ∫∫(π-x)/2 dxdx + ∫∫∫(π-x)/2 dxdxdx + ・・・
=(πe^x-e^x-π+1+x)/2
となる。この式のxにπ/3を代入して(左辺は重回積分をした最後の結果のxにπ/3を代入)、
(∫+∫^2+∫^3+・・・)(π-x)/2 dx={πe^(π/3)-e^(π/3) - 2π/3 + 1}/2 ----D
となる。
定理3より、C=Dであるから、
e^(π/3){1/(1^2+1) + 1/(2^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(4^2+1) +・・・}
- (√3/2){1/(1(1^2+1)) + 1/(2(2^2+1)) - 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1))
+ 1/(7(7^2+1)) + 1/(8(8^2+1)) - 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + ・・・}
- (1/2)[{1/(1^2+1) - 1/(2^2+1) + 1/(3^2+1) - 1/(4^2+1) + ・・・}
-3{1/(3^2+1) - 1/(6^2+1) + 1/(9^2+1) - 1/(12^2+1) + ・・・}]={πe^(π/3)-e^(π/3) - 2π/3 + 1}/2 ----E
ここで、
1/(1(1^2+1)) + 1/(2(2^2+1)) - 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1))
+ 1/(7(7^2+1)) + 1/(8(8^2+1)) - 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + ・・・=A
1/(3^2+1) - 1/(6^2+1) + 1/(9^2+1) - 1/(12^2+1) + ・・・=B
とおき、これとさらに2π代入の結果、
1/(1^2+1) + 1/(2^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(4^2+1) +・・・=-1/2 + (π/2){(e^(2π)+1)/(e^(2π)-1)}
とπ代入の結果
1/(1^2+1) - 1/(2^2+1) + 1/(3^2+1) - 1/(4^2+1) + ・・・=1/2 - π・e^π/(e^(2π)-1)
をEに代入して整理すると、次式を得る。
-√3A + 3B=-2π/3 + 3/2 - π(e^π+2e^(π/3)))/(e^(2π) -1) ----F
[計算(5π/3代入)]
同様にして、5π/3代入では次式が得られる。
√3A + 3B=2π/3 + 3/2 - π(e^π+2e^(5π/3)))/(e^(2π) -1) ----G
[連立方程式]
F、GはA,Bに関する連立方程式となっているので、これを解いて
A=2π/(3√3) - (π/√3){e^(5π/3)-e^(π/3)}/(e^(2π) -1)
B=1/2 - (π/3){e^π+e^(π/3)+e^(5π/3)}/(e^(2π) -1)
すなわち、
1/(1(1^2+1)) + 1/(2(2^2+1)) - 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1))
+ 1/(7(7^2+1)) + 1/(8(8^2+1)) - 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + ・・・
=2π/(3√3) - (π/√3){e^(5π/3)-e^(π/3)}/(e^(2π) -1) ----H
1/(3^2+1) - 1/(6^2+1) + 1/(9^2+1) - 1/(12^2+1) + ・・・
=1/2 - (π/3){e^π+e^(π/3)+e^(5π/3)}/(e^(2π) -1) ----I
が求まった。
「その4」の<究極の姿を求めて>でも行ったとおり、Hはさらに本質的な形に変形できるのである。
まず次のように簡単に変形できる。
1/(1(1^2+1)) + 1/(2(2^2+1)) - 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) + 1/(7(7^2+1)) + 1/(8(8^2+1))
- 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + 1/(13(13^2+1)) + 1/(14(14^2+1)) - ・・・
={1 + 1/2 - 1/4 - 1/5 + 1/7 + 1/8 -1/10 - 1/11 + 1/13 + 1/14 - ・・・・}
- {1/(1^2+1) + 2/(2^2+1) - 4/(4^2+1) - 5/(5^2+1) + 7/(7^2+1) + 8/(8^2+1) - ・・・} ----J
前の方の{}の級数はじつはディリクレのL関数L(χ,s)の一種で、虚2次体Q(√-3)のゼータ関数
LA(s)=1 - 1/2^s + 1/4^s - 1/5^s + 1/7^s - 1/8^s + ・・・
の特殊値LA(1)の2倍の値になるのである!その理由を次に示す。
1 + 1/2 - 1/4 - 1/5 + 1/7 + 1/8 - 1/10 - 1/11 + 1/13 + 1/14 - ・・・・
={1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + 1/10 - 1/11 + 1/13 - 1/14 + ・・・}
+ {2/2 - 2/4 + 2/8 - 2/10 + 2/14 - 2/16 + ・・・}
=LA(1) + {1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + ・・・}
=LA(1) + LA(1)
=2LA(1)
と、このように変形ができるのである!
LA(1)=π/(3√3)とディリクレの類数公式よりわかるから、
1 + 1/2 - 1/4 - 1/5 + 1/7 + 1/8 - 1/10 - 1/11 + 1/13 + 1/14 - ・・・・=2π/(3√3) -------K
となる。
よってH、J、Kより、
1/(1^2+1) + 2/(2^2+1) - 4/(4^2+1) - 5/(5^2+1)
+ 7/(7^2+1) + 8/(8^2+1) - 10/(10^2+1) - 11/(11^2+1) + ・・・
=(π/√3){e^(5π/3)-e^(π/3)}/(e^(2π)-1)
という式が求まった。
[π/3代入<->5π/3代入]対称性より導いたわけだが、右辺分子にπ/3、5π/3が見えている。面白い。
2π/3と4π/3代入も、上の<π/3代入、5π/3>とまったく同様にできる。結論だけ書いておく。
1/(1^2+1) - 2/(2^2+1) + 4/(4^2+1) - 5/(5^2+1) + 7/(7^2+1) - 8/(8^2+1) + ・・・
= (π/√3){e^(4π/3)-e^(2π/3)}/(e^(2π)-1)
1/(3^2+1) + 1/(6^2+1) + 1/(9^2+1) + 1/(12^2+1) + 1/(15^2+1) + 1/(18^2+1) + ・・・
= -1/2 + π/6 + (π/3)(1+e^(2π/3)+e^(4π/3))/(e^(2π)-1)
これも素晴らしい式といえる。
kπ/4代入もやり方は全く同じなので大幅に省略するが、ここでもうまく連立方程式がたつのである。
今度はπ/4,3π/4,5π/4,7π/4代入の4つに関しての連立方程式となり、
α1=1/(1(1^2+1)) + 1/(3(3^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) - 1/(7(7^2+1))
+ 1/(9(9^2+1)) + 1/(11(11^2+1)) - 1/(13(13^2+1)) - 1/(15(15^2+1)) + ・・・
α2=1/(2(2^2+1)) - 1/(6(6^2+1)) + 1/(10(10^2+1)) - 1/(14(14^2+1)) + ・・・
β1=1/(1^2+1) - 1/(3^2+1) - 1/(5^2+1) + 1/(7^2+1) + 1/(9^2+1) - 1/(11^2+1) - 1/(13^2+1) + 1/(15^2+1) + ・・・
β2=1/(4^2+1) - 1/(8^2+1) + 1/(12^2+1) - 1/(16^2+1) + ・・・
という級数α1,α2,β1,β2について次の連立方程式が成り立つ。
π/4代入
-α1/√2 - α2 - β1/√2 + β2=-3π/8 + 1/2 - πe^(π/4)/{e^(2π)-1}
3π/4代入
-α1/√2 + α2 + β1/√2 + β2=-π/8 + 1/2 - πe^(3π/4)/{e^(2π)-1}
5π/4代入
α1/√2 - α2 + β1/√2 + β2=π/8 + 1/2 - πe^(5π/4)/{e^(2π)-1}
7π/4代入
α1/√2 + α2 - β1/√2 + β2=3π/8 + 1/2 - πe^(7π/4)/{e^(2π)-1}
未知数4つに対して4つの式があるからこれは解け、次の結果となる。
α1=π√2/4 - (π√2/4){e^(7π/4)+e^(5π/4)-e^(3π/4)-e^(π/4)}/(e^(2π)-1)
α2=π/8 - (π/4){e^(7π/4)+e^(3π/4)-e^(5π/4)-e^(π/4)}/(e^(2π)-1)
β1=(π√2/4){e^(7π/4)+e^(π/4)-e^(5π/4)-e^(3π/4)}/(e^(2π)-1)
β2=1/2 - (π/4){e^(7π/4)+e^(5π/4)+e^(3π/4)+e^(π/4)}/(e^(2π)-1)
すなわち、
α1=1/(1(1^2+1)) + 1/(3(3^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) - 1/(7(7^2+1))
+ 1/(9(9^2+1)) + 1/(11(11^2+1)) - 1/(13(13^2+1)) - 1/(15(15^2+1)) + ・・・
=π√2/4 - (π√2/4){e^(7π/4)+e^(5π/4)-e^(3π/4)-e^(π/4)}/(e^(2π)-1) ----@
α2=1/(2(2^2+1)) - 1/(6(6^2+1)) + 1/(10(10^2+1)) - 1/(14(14^2+1)) + ・・・
=π/8 - (π/4){e^(7π/4)+e^(3π/4)-e^(5π/4)-e^(π/4)}/(e^(2π)-1) ----A
β1=1/(1^2+1) - 1/(3^2+1) - 1/(5^2+1) + 1/(7^2+1) + 1/(9^2+1) - 1/(11^2+1) - 1/(13^2+1) + 1/(15^2+1) + ・・・
=(π√2/4){e^(7π/4)+e^(π/4)-e^(5π/4)-e^(3π/4)}/(e^(2π)-1)
β2=1/(4^2+1) - 1/(8^2+1) + 1/(12^2+1) - 1/(16^2+1) + ・・・
=1/2 - (π/4){e^(7π/4)+e^(5π/4)+e^(3π/4)+e^(π/4)}/(e^(2π)-1)
「その5」でも示したが、α2とα1はさらに次のようにより本質的な形に変形できる。
α2=1/(2(2^2+1)) - 1/(6(6^2+1)) + 1/(10(10^2+1)) - 1/(14(14^2+1)) + ・・・
=-{2/(2^2+1) - 6/(6^2+1) + 10/(10^2+1) - 14/(14^2+1) + ・・} + (1/2)・(1 - 1/3 + 1/4 + 1/5 + 1/7 - ・・・)
ここで、1 - 1/3 + 1/4 + 1/5 + 1/7 - ・・・=π/4 より、
α2=-{2/(2^2+1) - 6/(6^2+1) + 10/(10^2+1) - 14/(14^2+1) + ・・} + π/8 ------B
となる。
また、
α1=1/(1(1^2+1)) + 1/(3(3^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) - 1/(7(7^2+1))
+ 1/(9(9^2+1)) + 1/(11(11^2+1)) - 1/(13(13^2+1)) - 1/(15(15^2+1)) + ・・・
={-1/(1^2+1) - 3/(3^2+1) + 5/(5^2+1) + 7/(7^2+1) - 9/(9^2+1) - 11/(11^2+1) + ・・・}
+ (1 + 1/3 - 1/5 - 1/7 + 1/9 + 1/11 - 1/13 - 1/15 - ・・・)
となる。ここでディリクレの類数公式より青字の値がわかり、それはπ√2/4となる。
よって、
α1=-{1/(1^2+1) + 3/(3^2+1) - 5/(5^2+1) - 7/(7^2+1) + 9/(9^2+1) + 11/(11^2+1) - ・・・} + π√2/4 ----C
したがって、Cと@、BとAから容易に次の式を得る。
1/(1^2+1) + 3/(3^2+1) - 5/(5^2+1) - 7/(7^2+1) + 9/(9^2+1) + 11/(11^2+1) - 13/(13^2+1) - 15/(15^2+1) + ・・・
=(π√2/4){e^(7π/4)+e^(5π/4)-e^(3π/4)-e^(π/4)}/(e^(2π)-1)
2/(2^2+1) - 6/(6^2+1) + 10/(10^2+1) - 14/(14^2+1) + ・・・
=(π/4){e^(7π/4)+e^(3π/4)-e^(5π/4)-e^(π/4)}/(e^(2π)-1)
上側が冒頭に掲げた式の一つである。
kπ/4代入の間には際立った美しい対称性が存在し、その対称性によってこれら貴重な級数が
導出できたといえる。(kπ/3代入、kπ/2代入も同様)
念のため、Excelを用いて左辺と右辺の数値的な一致の検証も行ったがOKであった。
これらの興味深い式が
(π-x)/2 =sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・ ( 0 < x < 2π)
という単純な式と定理3から次々に導き出されることを改めて思い出そう。
これらは地下鉱脈に潜む巨大な対称性の存在を示しているといえるだろう。
フーリエ級数の公式
(π-x)/2 =sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・ ( 0 < x < 2π)
に定理3を適用したこれまでの結果をすべてまとめておく。
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