テイラーシステムを別方向に応用した。(e-1/e)の二通りの式を導出した。二結果を比較。
フルヴィッツのゼータ関数ζ(s,a)の値をテイラーシステムで調べた。
< テイラーシステムの別方向の応用 >
< 別関数で >
< 二つの結果から >
< 問題 >
< Taさんからの回答 >
< フルヴィッツのゼータ関数 >
これまで、当サイトで発見したテイラーシステムという手法を用いて、種々のゼータ関数の値を求めるという現代数論
の中心的課題というべき問題を扱ってきた。ゼータの任意の値を求めるというのは、現代数学でも超難題であり、
いまもってはっきりしたことはわかっていない。それがテイラーシステムを使うとあっという間に求まる。
それを縦横に用いて一般的なディリクレのL関数L(χ,s)の値を種々求め、また様々な表示を与えることができた。
ここでは寄り道をして、ゼータ関数からはすこしはなれたところで、テイラーシステムが別方面で応用できないか
と模索したい。試行錯誤的な面があるが、とにかくやってみよう。
ゼータ関数のテイラーシステムでは、
f(x)=(cosx)/1^s + (cos2x)/2^s + (cos3x)/3^s +・・・
とか
f(x)=(sinx)/1^s + (sin2x)/2^s + (sin3x)/3^s + ・・・
の母関数を考えるが、ここでは、
f(x)=(cosx)/1! + (cos2x)/2! + (cos3x)/3! + (cos4x)/4!+ ・・・
という一風変わった関数を考える。
別にフーリエ的なものならどんな関数でもよいといえばよいのだが、f(x)にある値を代入したときに、よく知っている
値にならないと面白い結果は得られない。上ではf(0)=e という自然対数の底(ネピア数)になるということに着目され
たい。eの式を求めるという問題である。結果的には(e-1/e)の式が求まった。
[式を導出]
f(x)=(cosx)/1! + (cos2x)/2! + (cos3x)/3! +・・・ ------@
という母関数を考える。
この関数の収束半径は∞である。すなわち、定義域は-∞< x <∞である。
@でx=0を代入すると
f(0)=1/1! + 1/2! + 1/3! + 1/4!・・・
=e - 1 -------A
となる。
次に、@の右辺をx=πの周りでテイラー展開すると、簡単な計算により次となる。
f(x)=-Ne(0) + Ne(-2)・(x-π)^2 /2!
- Ne(-4)・(x-π)^4 /4!+ Ne(-6)・(x-π)^6 /6!
- Ne(-8)・(x-π)^8 /8!+ Ne(-10)・(x-π)^10 /10! -------B
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここで、Ne(s)とは次のものである。
Ne(s)=1/(1^s・1!) - 1/(2^s・2!) + 1/(3^s・3!) - 1/(4^s・4!) + ・・・
ゼータ関数にちょっと似たものだが、本質的なものを含んでいるかどうかなどは全くわからない。私がこのように勝手に
定義したものである。(この関数が現代数学で研究されているとはとても思えない。)
例えば、Bで出たNe(-4)は次のようになる。
Ne(-4)=1^4/1! - 2^4/2! + 3^4/3! - 4^4/4!・・・
Bにxに0を代入して、次を得る。
f(0)=-Ne(0) + Ne(-2)・π^2 /2!- Ne(-4)・π^4 /4!+ Ne(-6)・π^6 /6!- ・・・・・ -----C
AとCは等しいから、
e - 1=-Ne(0) + Ne(-2)・π^2 /2!- Ne(-4)・π^4 /4!+ Ne(-6)・π^6 /6!- ・・・・・・ -----D
さて、ここで
Ne(0)=1/1! - 1/2! + 1/3! - 1/4!・・・
は、公式集を見れば、(1 - 1/e) であることがわかった。
すなわち、Ne(0)=1 - 1/e
であるから、Dは、結局
e - 1=1/e - 1 + Ne(-2)・π^2 /2!- Ne(-4)・π^4 /4!+ Ne(-6)・π^6 /6!- ・・・・・・
となる。整理して1/eを左辺へ移行する。
e - 1/e= Ne(-2)・π^2 /2!- Ne(-4)・π^4 /4!+ Ne(-6)・π^6 /6!- ・・・・・・
となる。
Ne(-2)、Ne(-4)、Ne(-6)がきちっとした興味ある値で求まっているのかもしれないが、公式集で見当たらないので
このままにしておくしかない。
以上。
まとめておく。
上と同様のことを、今度は
g(x)=(cosx)/1! - (cos2x)/2! + (cos3x)/3! - (cos4x)/4!+・・・
という母関数で試してみよう。これで上と全く同じこと行う。ちょっと不思議な結果になる。
[式を導出]
g(x)=(cosx)/1! - (cos2x)/2! + (cos3x)/3! - (cos4x)/4!+・・・ ------@
という母関数を考える。
この関数の収束半径は∞である。すなわち、定義域は-∞< x <∞である。
@でx=0を代入すると
g(0)=1/1! - 1/2! + 1/3! - 1/4!+・・・
=1 - 1/e -------A
となる。
次に、@の右辺をx=πの周りでテイラー展開すると、簡単な計算により次となる。
g(x)=-Ne2(0) + Ne2(-2)・(x-π)^2 /2!
- Ne2(-4)・(x-π)^4 /4!+ Ne2(-6)・(x-π)^6 /6!
- Ne2(-8)・(x-π)^8 /8!+ Ne2(-10)・(x-π)^10 /10! -------B
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここで、Ne2s)とは次のものである。
Ne2(s)=1/(1^s・1!) + 1/(2^s・2!) + 1/(3^s・3!) + 1/(4^s・4!) + ・・・
例えば、Bで出たNe2(-4)は次のようになる。
Ne2(-4)=1^4/1! + 2^4/2! + 3^4/3! + 4^4/4!・・・
Bにxに0を代入して、次を得る。
g(0)=-Ne2(0) + Ne2(-2)・π^2 /2!- Ne2(-4)・π^4 /4!+ Ne2(-6)・π^6 /6!- ・・・・・ -----C
AとCは等しいから、
1 - 1/e=-Ne2(0) + Ne2(-2)・π^2 /2!- Ne2(-4)・π^4 /4!+ Ne2(-6)・π^6 /6!- ・・・・・ -----D
さて、ここで
Ne2(0)=1/1! + 1/2! + 1/3! + 1/4!・・・
は、もちろん(e-1) である。
すなわち、Ne2(0)=e - 1
であるから、Dは、結局
1 - 1/e=-(e - 1) + Ne2(-2)・π^2 /2!- Ne2(-4)・π^4 /4!+ Ne2(-6)・π^6 /6!- ・・・・・
となる。整理して
e - 1/e=Ne2(-2)・π^2 /2!- Ne2(-4)・π^4 /4!+ Ne2(-6)・π^6 /6!- Ne2(-8)・π^8 /8!- ・・・・
となる。
なんと、一つ上での式と形が全く同じになってしまった!とても不思議である。
Ne2(-2)、Ne2(-4)、Ne2(-6)がきちっとした興味ある値で求まっているのかもしれないが、公式集で見当たらないので
このままにしておく。
以上。
まとめておく。
二つの結果を並べてみる。
右辺の「形が」同じであることは、収束速度が違っていることを意味する。
二式より右辺同士をイコールとして、次が成り立つ。
Ne2(-2)・π^2 /2!- Ne2(-4)・π^4 /4!+ Ne2(-6)・π^6 /6!- Ne2(-8)・π^8 /8!+ ・・・
= Ne(-2)・π^2 /2!- Ne(-4)・π^4 /4!+ Ne(-6)・π^6 /6!- Ne(-8)・π^8 /8!+ ・・・
これより、
{Ne2(-2)-Ne(-2)}・π^2 /2!- {Ne2(-4)-Ne(-4)}・π^4 /4!
+ {Ne2(-6)-Ne(-6)}・π^6 /6!- {Ne2(-8)-Ne(-8)}・π^8 /8!+ ・・・=0
Ne2(s)、Ne(s)定義式から、
2{2^2/2!+4^2/4!+6^2/6!}・π^2 /2!- 2{2^4/2!+4^4/4!+6^4/6!}・π^4 /4!
+ 2{2^6/2!+4^6/4!+6^6/6!}・π^6 /6!- 2{2^8/2!+4^8/4!+6^8/6!}・π^8 /8!+ ・・・=0
両辺2で割り、次を得る。
{2^2/2!+4^2/4!+6^2/6!+・・}π^2 /2!- {2^4/2!+4^4/4!+6^4/6!+・・}π^4 /4!
+ {2^6/2!+4^6/4!+6^6/6!+・・}π^6 /6!- {2^8/2!+4^8/4!+6^8/6!+・・}π^8 /8!+ ・・・=0
この式に別段意味はあるようには思えないが、このような式が得られたという話である。
まとめておく。
「岩波 数学公式U」(森口繁一他著、岩波書店)を見ると、
1+ 1/1! + 1/2! + 1/3! + 1/4! + ・・・=e
1^3/1! + 2^3/2! + 3^3/3! + 4^3/4! + ・・・=5e
とある。
これは、Ne2(0)=e-1、Ne2(-3)=5eということである。公式集にはNe2(-2)がない。飛ばされている。
これはどういうことなのか?ひょっとして、奇数ゼータのように一つ飛ばしで難しいことになっているのであろうか。それとも、
たんに飛ばしただけ?
とりあえず問題として出しておきたい。難問と思われる。
いうまでもないがπやeや√2やそんなもので簡潔に表現したいという意味である。もちろん、不可能という答えもあり
得るだろう。
Taさんから問題が解けたとのお便りをもらいましたので紹介します。
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さて、2008/2/8日に出されていた級数の問題ですが、2eになりました。
1^2/1! + 2^2/2! + 3^2/3! + 4^2/4! + ・・・ =1 + 2/1! + 3/2! + 4/3! + 5/4! +・・・ =1 + (1+1)/1! + (1+2)/2! + (1+3)/3! + (1+4)/4! +・・・ =2( 1/0! + 1/1! + 1/2! + 1/3! + 1/4! +・・・) =2e F(x) = x^n/1! + (x+1)^n/2! + (x+2)^n/3! + (x+3)^n/4! + ・・・ とおいて微分方程式を解けばこの手の和は皆求められることが分かります。ゼータ関数は僕も興味を持っている分野なのでこ れからも楽しく読ませてもらいますね。 ******************************************************************************
「なるほど」そういうことですね。
あまり先入観を持たずに計算していけばよいというわけですね。
またこの方法により、Ne2(-1)=e ということもわかりました。ありがとうございました。
フルヴィッツのゼータ関数というゼータ関数があります。
ディリクレのL関数L(χ,s)やリーマン・ゼータζ(s)ほど有名ではありませんが、ときどき出てきます。
フルヴィッツ・ゼータζ(s,a)は、次のものです。
ζ(s,a)=1/a^s + 1/(1+a)^s + 1/(2+a)^s + 1/(3+a)^s + ・・
ここで、aは正の実数、右辺の級数はRe(s)>1で絶対収束するので、この範囲でζ(s,a)は定義される。
aが1のときζ(s,a)はζ(s)に一致します。
ここでは、a=1/2、s=2のζ(2,1/2)の値を、テイラーシステムで出してみましょう。
テイラーシステムがフルヴィッツのゼータ関数にも有効に働くのか?を見てみたいのです。
[導出] Cos-フルヴィッツ型[ s=2, 0代入,πテイラー]
f(x)=(cos(x/2))/(1/2)^2 + (cos(3x/2))/(3/2)^2 + (cos(5x/2))/(5/2)^2 + (cos(7x/2))/(7/2)^2 +・・・ ------@
という母関数を考える。
@でx=0を代入すると
f(0)=1/(1/2)^2 + 1/(3/2)^2 + 1/(5/2)^2 + 1/(7/2)^2 +・・・ ------A
となりζ(2,1/2)が出た。
次に、@の右辺をx=πの周りでテイラー展開すると、簡単な計算により次となる。
f(x)=-2L(1)・(x-π)^1 /1! + (L(-1)/2)・(x-π)^3 /3!
- L(-3)/2^3・(x-π)^5 /5!+ (L(-5)/2^5)・(x-π)^7 /7!
- L(-7)/2^7・(x-π)^9 /9!+ (L(-9)/2^9)・(x-π)^11 /11! -------B
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、ここでL(-1)、L(-3)、L(-5)、・・は全て0であるから、結局Bは次となる。
f(x)=-2L(1)・(x-π)^1 /1!
xに0を代入して、次を得る。
f(0)=2πL(1) ------C
AとCは等しいから、
ζ(2,1/2)=2πL(1)
ここでL(1)=π/4であるから、
ζ(2,1/2)=π^2/2 ------D
となる。
これが正しいことは、次のようにしてわかる。
ζ(2,1/2)
=1/(1/2)^2 + 1/(3/2)^2 + 1/(5/2)^2 + 1/(7/2)^2 +・・・
=2^2{1/1^2 + 1/3^2 + 1/5^2 + 1/7^2 +・・・ }
=2^2{(1/1^2 + 1/2^2 + 1/3^2 + 1/4^2 +・・・) -(1/2^2+1/4^2+1/6^2+・・・)}
=2^2{ζ(2) -1/2^2・(1+1/2^2+1/3^2+・・・)}
=2^2{ζ(2) -1/2^2・ζ(2)}
=2^2・(1-1/2^2)・ζ(2)
=2^2・(3/4)・π^2/6
=π^2/2
となってDに一致する。ただし、このように直接的にも出てくるのであるが、テイラーシステムで求めるとL(s)と関連づけて
式がでるので構造がよりよくわかるという利点がある。
ζ(2,1/2)はL(1)で表された。
以上の結果から、ζ(4,1/2)はL(1)とL(3)で、ζ(6,1/2)はL(1)とL(3)とL(5)で表示されるということがすぐにわかる。
また、ζ(3,1/2)、ζ(5,1/2)、ζ(7,1/2)、・・などは、現代数学で不明であり、これらは「L(n)の無限和」で表されること
もわかる。なお、フルヴィッツのゼータ関数はs=1のとき極となり、ζ(1,1/2)=∞である。
ζ(s,a)の極(特異点)は、s=1のときのみである。
以上。
このように、ζ(s,1/2)に対してはテイラーシステムが有効に機能することがわかった。
またa=1/4の場合ζ(s,1/4)もすこし調べたが、美しい結果にならなかった、というより、私の力不足でよくわからない点
が出たので、保留とし今後の課題としておいておく。
参考文献 「ベルヌーイ数とゼータ関数」(荒川・伊吹山・金子著、牧野書店)
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