テイラーシステムL(s)式を微分することから、L(2)、L(4)、L(6)を無限個の奇数ゼータζ(n)で表す有理数係数の式を
導出した。一般的な公式を見出した。
前頁の継続で、L(2)を無限個の奇数ゼータζ(n)で表す有理数係数の式を見出したので紹介したい。
「タットル彗星 その3」で次の公式を見出していた。
まず結論の式から示しておく。「その3」 と同様に上式を微分することで次式を導出した。
L(2)=(1-1/2^3)(2!/1!)ζ(3)/2^2 + (1-1/2^5)(4!/3!)ζ(5)/2^4
+ (1-1/2^7)(6!/5!)ζ(7)/2^6 + (1-1/2^9)(8!/7!)ζ(9)/2^8
+ (1-1/2^11)(10!/9!)ζ(11)/2^10 + (1-1/2^13)(12!/11!)ζ(13)/2^12 + ・・・
「奇数ゼータの無限和」でしかも係数がすべて有理数という式が得られた。
L(s)とは、次で定義されるゼータ関数である。
L(s)=1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・ ------A
詳しくいえば、ディリクレのL関数L(χ,s)
L(χ,s)=χ(1)/1^s + χ(2)/2^s + χ(3)/3^s + χ(4)/4^s + χ(5)/5^s + χ(6)/6^s + ・・・・
で、「a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対しそれぞれχ(a)=0, 1, 0, -1」というディリクレ指標χ(a)をもつゼータである。
L(s)は虚2次体Q(√-1)に対応する。難しいと思われる場合は、とにかくAがL(s)であると思えばいよい。
上記L(2)式の導出過程を記す。
[導出過程]
L(s)=(1-1/2^(s-2))・ζ(s-1)・(π/2)^1 /1! - (1-1/2^(s-4))・ζ(s-3)・(π/2)^3 /3!
+ (1-1/2^(s-6))・ζ(s-5)・(π/2)^5 /5!- (1-1/2^(s-8))・ζ(s-7)・(π/2)^7 /7!
+ (1-1/2^(s-10))・ζ(s-9)・(π/2)^9 /9!- (1-1/2^(s-12))・ζ(s-11)・(π/2)^11 /11! -----@-1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これから出発する。式を見やすくするため、記号を用いて単純化する目的で
An=(π/2)^n /n!
としよう。すると、@は次のように書ける。
L(s)
=A1(1-1/2^(s-2))・ζ(s-1) - A3(1-1/2^(s-4))・ζ(s-3)
+ A5(1-1/2^(s-6))・ζ(s-5)- A7(1-1/2^(s-8))・ζ(s-7)
+ A9(1-1/2^(s-10))・ζ(s-9)- A11(1-1/2^(s-12))・ζ(s-11) -----@-2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、(1-1/2^(s-k))の微分(1-1/2^(s-k))´は、
(1-1/2^(s-k))´=log2・2^(k-s)
であるから、@-2の両辺を微分すると、
L´(s)
=A1・(log2・2^(2-s))・ζ(s-1) + A1・(1-2^(2-s))・ζ ´(s-1)
- A3・(log2・2^(4-s))・ζ(s-3) - A3・(1-2^(4-s))・ζ ´(s-3)
+ A5・(log2・2^(6-s))・ζ(s-5) + A5・(1-2^(6-s))・ζ ´(s-5)
- A7・(log2・2^(8-s))・ζ(s-7) - A7・(1-2^(8-s))・ζ ´(s-7) ------A
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Aでs=-1とすると、ζ(-2)=ζ(-4)=ζ(-6)=・・=0であるから、上式は次となる。
L´(-1)
=A1・(1-2^3)・ζ ´(-2) - A3・(1-2^5)・ζ ´(-4) + A5・(1-2^7)・ζ ´(-6) - A7・(1-2^9)・ζ ´(-8) + ・・・ ----B
さて、ここでL(s)の関数等式
L(1-s)=π^(-s)・2^s・Γ(s)・sin(πs/2)・L(s)
を利用したい。この式の両辺を微分すると、
-L ´(1-s)=(-logπ・π^(-s))・2^s・Γ(s)・sin(πs/2)・L(s)
+ π^(-s)・(2^s・log2)・Γ(s)・sin(πs/2)・L(s)
+ π^(-s)・2^s・Γ´(s)・sin(πs/2)・L(s)
+ π^(-s)・2^s・Γ(s)・(π/2)cos(πs/2)・L(s)
+ π^(-s)・2^s・Γ(s)・sin(πs/2)・L ´(s) ------C
C式より、
s=2とすると、 -L ´(-1)=-(2/π)・1!・L(2) ------D
となる。(Cのsin項が全部0となったことに注目!)
次にζ(s)の関数等式
ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s)
を利用する。両辺を微分すると、
-ζ ´(1-s)=-(π/2)・sin(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s)
+ cos(πs/2)・Γ´(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s)
- cos(πs/2)・Γ(s)・log2・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s)
- cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・logπ・π^(-s)・ζ(s)
+ cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ ´(s) -------E
Eより、
s=3とすると、 -ζ ´(-2)=(π/2)・Γ(3)・2^(-2)・π^(-3)・ζ(3)=Γ(3)ζ(3)/(2^3・π^2)
s=5とすると、 -ζ ´(-4)=-(π/2)・Γ(5)・2^(-4)・π^(-5)・ζ(5)=-Γ(5)ζ(5)/(2^5・π^4)
s=7とすると、 -ζ ´(-6)=(π/2)・Γ(7)・2^(-6)・π^(-7)・ζ(7)=Γ(7)ζ(7)/(2^7・π^6)
s=9とすると、 -ζ ´(-8)=-(π/2)・Γ(9)・2^(-8)・π^(-9)・ζ(9)=-Γ(9)ζ(9)/(2^9・π^8)
・・・・・
となる。(Cのcos項が全部0となったことに注目!) これらとDを、Bに代入して次式を得る。
(π/2)・1!・L(2)
=A1・(1-2^3)・(-Γ(3)ζ(3)/(2^3・π^2)) - A3・(1-2^5)・Γ(5)ζ(5)/(2^5・π^4)
+ A5・(1-2^7)・(-Γ(7)ζ(7)/(2^7・π^6)) - A7・(1-2^9)・(Γ(9)ζ(9)/(2^9・π^8)) + ・・・ ----F
Γ(n+1)=n!、An=(π/2)^n /n!であるから、整理して次を得る。
L(2)=(1-1/2^3)(2!/1!)ζ(3)/2^2 + (1-1/2^5)(4!/3!)ζ(5)/2^4
+ (1-1/2^7)(6!/5!)ζ(7)/2^6 + (1-1/2^9)(8!/7!)ζ(9)/2^8
+ (1-1/2^11)(10!/9!)ζ(11)/2^10 + (1-1/2^13)(12!/11!)ζ(13)/2^12 + ・・・ ---G
こうしてL(2)式が導出できた。
[導出終わり]
テイラーシステム式を微分することにより上式が導出できた。この式は、正しい式なのだがすこし検証しておこう。
まず左辺L(2)=0.9159655941・・・ ------H
さて、 math worldによると、
ζ(3)=1.2020569032・・
ζ(5)=1.0369277551・・
ζ(7)=1.0083492774・・
ζ(9)=1.0020083928・・
であるから、Gの右辺の初項からの和を電卓で計算すると、
G右辺の2項まで=0.77703083・・・
G右辺の4項まで=0.90207664・・・
G右辺の6項まで=0.91477201・・・
となって、Hに急速に近づいていくことがわかる。収束が速い。まとめておく。
次にL(4)、L(6)を求めていくことにする。
同様にして、L(4)、L(6)を求めました。L(2)とともに書きます。
1!L(2)=(1-1/2^3)(2!/1!)ζ(3)/2^2 + (1-1/2^5)(4!/3!)ζ(5)/2^4
+ (1-1/2^7)(6!/5!)ζ(7)/2^6 + (1-1/2^9)(8!/7!)ζ(9)/2^8
+ (1-1/2^11)(10!/9!)ζ(11)/2^10 + (1-1/2^13)(12!/11!)ζ(13)/2^12 + ・・・
3!L(4)=(1-1/2^5)(4!/1!)ζ(5)/2^4 + (1-1/2^7)(6!/3!)ζ(7)/2^6
+ (1-1/2^9)(8!/5!)ζ(9)/2^8 + (1-1/2^11)(10!/7!)ζ(11)/2^10
+ (1-1/2^13)(12!/9!)ζ(13)/2^12 + (1-1/2^15)(14!/11!)ζ(15)/2^14 + ・・・
5!L(6)=(1-1/2^7)(6!/1!)ζ(7)/2^6 + (1-1/2^9)(8!/3!)ζ(9)/2^8
+ (1-1/2^11)(10!/5!)ζ(11)/2^10 + (1-1/2^13)(12!/7!)ζ(13)/2^12
+ (1-1/2^15)(14!/9!)ζ(15)/2^14 + (1-1/2^17)(16!/11!)ζ(17)/2^16 + ・・・
美しい秩序が現れています。
奇数ゼータζ(2n+1)と同じく、L(s)の偶数L(2n)も現代数学で不明とされているものです。
これまでL(2n)を偶数ゼータζ(2n)の無限和で表す式については多く出してきましたが、今回、L(2n)が奇数ゼータζ(2n+1)
の無限和(有理数係数)で表示できたのです。下にいくほど収束速度は遅くなりますが確実に収束します。
一般的に公式で書くと次のようになります。
(n-1)!L(n)
=(1-1/2^(n+1))(n!/1!)ζ(n+1)/2^n + (1-1/2^(n+3))((n+2)!/3!)ζ(n+3)/2^(n+2)
+ (1-1/2^(n+5))((n+4)!/5!)ζ(n+5)/2^(n+4) + (1-1/2^(n+7))((n+6)!/7!)ζ(n+7)/2^(n+6)
+ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さらにL(1)、L(3)、L(5)・・に関して、「タットル彗星 その3」で次の式を見出していました。コピーします。
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0!・2^1・L(1)
=(1-1/2^2)・ζ(2)/2^0
+ (1-1/2^4)・ζ(4)/2^2
+ (1-1/2^6)・ζ(6)/2^4
+ (1-1/2^8)・ζ(8)/2^6
+ (1-1/2^10)・ζ(10)/2^8
+ (1-1/2^12)・ζ(12)/2^10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ------@-2
わざわざ0!をつけたのは、後の式を意識してのことである。
L(1)は、n=2以上のζ(2n)の無限和で表せた。
次にA。
関数等式より、L(-2)=-2!(2/π)^3・L(3) である。これをAに代入して整理すると、次となる。
2!・2^3・L(3)
=(1-1/2^4)・ζ(4)・3!/(2^0・1!)
+ (1-1/2^6)・ζ(6)・5!/(2^2・3!)
+ (1-1/2^8)・ζ(8)・7!/(2^4・5!)
+ (1-1/2^10)・ζ(6)・9!/(2^6・7!)
+ (1-1/2^12)・ζ(12)・11!/(2^8・9!)
+ (1-1/2^14)・ζ(14)・13!/(2^10・11!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ------A-2
L(3)は、n=4以上のζ(2n)の無限和で表せた。
次にB。
関数等式より、L(-4)=4!(2/π)^5・L(5) である。これをBに代入して整理すると、次となる。
4!・2^5・L(5)
=(1-1/2^6)・ζ(6)・5!/(2^0・1!)
+ (1-1/2^8)・ζ(8)・7!/(2^2・3!)
+ (1-1/2^10)・ζ(10)・9!/(2^4・5!)
+ (1-1/2^12)・ζ(12)・11!/(2^6・7!)
+ (1-1/2^14)・ζ(14)・13!/(2^8・9!)
+ (1-1/2^16)・ζ(16)・15!/(2^10・11!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ------B-2
L(5)は、n=6以上のζ(2n)の無限和で表せた。
**************************************************
これらも、上の一般的な公式で統一して表されます。形を整えて、まとめておきます。
当たり前のことですが、L(1)は
L(1)=1 - 1/3 + 1/5 - 1/7 + 1/9 - 1/11 + ・・・・=π/4
のL(1)のことです。
ついでに、比較の意味で、ζ(s)の「その3」での結果も載せておきます。
L(s)とζ(s)は、じつに面白い対応をなしていることがわかります。
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