では、次に2π/3代入の場合を調べます。
ここでは、まず@の統一的法則性の結果に、2π/3を代入した場合を調べます。
(この結果は「金星 その1」の<cosx/sinx=2(sin2x + sin4x +・・にπ/3を代入>と本質的に同値です。)
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@
では、@を重回積分-重回微分した結果を書き下していきます。
[重回積分、重回微分した一連の式]
・
・
4回微分
{2sinx・sin(x/2)+4(2+cosx)cos(x/2)}/(sin(x/2))^5=2^4sinx + 4^4sin2x + 6^4sin3x + 8^4sin4x + ・・・・
3回微分
(2+cosx)/(sin(x/2))^4=2^3cosx + 4^3cos2x + 6^3cos3x + 8^3cos4x + ・・・・
2回微分
cos(x/2)/(sin(x/2))^3=-(2^2sinx + 4^2sin2x + 6^2sin3x + 8^2sin4x + ・・・・)
1回微分
-1/(sin(x/2))^2=2(2cosx + 4cos2x + 6cos3x + 8cos4x + ・・・・)
0回積分
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・・)
1回積分
log(2sin(x/2))=-(cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 + ・・・)
2回積分
∫log(2sin(x/2))=-(sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 + ・・・)
3回積分
∫∫log(2sin(x/2))=(cosx/1^3 + cos2x/2^3 + cos3x/3^3 + ・・・) - ζ(3)
4回積分
∫∫∫log(2sin(x/2))=(sinx/1^4 + sin2x/2^4 + sin3x/3^4 + ・・・) - ζ(3)・x/1!
5回積分
∫∫∫∫log(2sin(x/2))=-(cosx/1^5 + cos2x/2^5 + cos3x/3^5 + ・・・) + ζ(5) - ζ(3)・x^2/2!
6回積分
∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
=-(sinx/1^6 + sin2x/2^6 + sin3x/3^6 + ・・・) + ζ(5)・x/1! - ζ(3)・x^3/3!
7回積分
∫∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
=(cosx/1^7 + cos2x/2^7 + cos3x/3^7 + ・・・) - ζ(7) + ζ(5) ・x^2/2! - ζ(3)・x^4/4!
8回積分
∫∫∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
=(sinx/1^8 + sin2x/2^8 + sin3x/3^8 + ・・・) - ζ(7)・x/1! + ζ(5)・x^3/3! - ζ(3)・x^5/5!
・
・
と、このように上下に延々と続いていきます。すべての∫は0〜xの定積分、またdx・・dxは略しました。
なお”log(sin(x/2)) + log2” は、log2(sin(x/2)) とまとめました。
上の式の x に2π/3を代入すると、次のようになります。途中計算は省略。
[2π/3代入の式]
・
・
4回微分
LA(-4)=2/3
3回微分
ζ(-3)=1/120
2回微分
LA(-2)=-2/9
1回微分
ζ(-1)=-1/12
0回積分
√3・{1 - 1 + 1 - 1 + 1 - 1 + 1 - 1 + ・・・}=1/√3
すなわち、LA(0)=1/3
1回積分
1 + 1/2 - 2/3 + 1/4 + 1/5 - 2/6 + 1/7 + 1/8 - 2/9 + ・・・=log3
2回積分
-√3/2・LA(2)=∫(0〜2π/3) log(2sin(x/2))
3回積分
- 1/2・(3-1/3^2)ζ(3)=∫(0〜2π/3)∫log(2sin(x/2))
4回積分
√3/2・LA(4) - ζ(3)・(2π/3)=∫(0〜2π/3)∫∫log(2sin(x/2))
5回積分
1/2・(3-1/3^4)ζ(5) - ζ(3)・(2π/3)^2/2!=∫(0〜2π/3)∫∫∫log(2sin(x/2))
6回積分
-√3/2・LA(6) + ζ(5)・(2π/3) - ζ(3)・(2π/3)^3/3!=∫(0〜2π/3)∫∫∫∫log(2sin(x/2))
7回積分
-1/2・(3-1/3^6)ζ(7) + ζ(5)・(2π/3)^2/2!- ζ(3)・(2π/3)^4/4!
=∫(0〜2π/3)∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
8回積分
√3/2・LA(8) - ζ(7)・(2π/3) + ζ(5)・(2π/3) ^3/3!- ζ(3)・(2π/3)^5/5!
=∫(0〜2π/3)∫∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
・
・
と、ζ(2n+1)とLA(2n)が出る式が並びます。
上で右辺の重回積分は一番最後の∫だけが0〜2π/3の定積分で、その他の∫はすべて0〜xの定積分。
ここで、もちろんζ(s)はリーマン・ゼータ関数で次のものです。
ζ(s)=1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/4^s + ・・・
またLA(s)は、
LA(s)=1 - 1/2^s + 1/4^s - 1/5^s + 1/7^s - 1/8^s + 1/10^s - 1/11^s + ・・・
で定義されるゼータ関数です。
ここで大事なことは、ζ(s)もLA(s)もどちらもディリクレのL関数L(χ,s)の一種のゼータ関数である、ということです。
簡単にいえば、ζ(s)は、全てのaに対しχ(a)=1としたときのディリクレのL関数L(χ,s)です。
またLA(s)は、a≡0, 1, 2 mod 3に対し、それぞれχ(a)=0, 1, -1としたときのL(χ,s)に一致します。
ここでは、2π/3を代入したらζ(2n+1)とLA(s)というゼータが次々と出てくる、ということがわかりました。
「金星」でもくり返し述べましたが、ζ(2n+1)もLA(s)もどちらも現代数学(とくに数論や数論幾何)で最も重要なもの
の一つディリクレのL関数だということです。
LA(2n)もζ(2n+1)も値が明示的に値が求まらない特殊値であり、現代数学でも不明されているものです。
統一的法則性で出てくるゼータ関数の特殊値は、不思議にも、現代数学でさっぱりわからないとされるもの
ばかりなのです。
さて、一方の中心母等式の2π/3の結果がわかりました。
次に、もう一方の式の2π/3代入を調べます。つねに二式の結果をペアで並べて比較していきます。
では次に、もう一つの中心母等式(次式)における2π/3代入を調べます。
sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・) -----@
@を重回積分-重回微分した結果をまず書き下していきます。
[重回積分、重回微分した一連の式]
・
・
4回微分
{8sin(x/2)+4(sin(x/2))^3}/(cos(x/2))^5=2^4sinx - 4^4sin2x + 6^4sin3x - 8^4sin4x + ・・・・
3回微分
(cosx-2)/(cos(x/2))^4=2^3cosx - 4^3cos2x + 6^3cos3x - 8^3cos4x + ・・・・
2回微分
-sin(x/2)/(cos(x/2))^3=2^2sinx - 4^2sin2x + 6^2sin3x - 8^2sin4x + ・・・・
1回微分
1/(cos(x/2))^2=2(2cosx - 4cos2x + 6cos3x - 8cos4x + ・・・・)
0回積分
sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・)
1回積分
log(2cos(x/2))=cosx/1 - cos2x/2 + cos3x/3 - cos4x/4 +・・・
2回積分
∫log(2cos(x/2))=sinx/1^2 - sin2x/2^2 + sin3x/3^2 - sin4x/4^2 +・・・
3回積分
∫∫log(2cos(x/2))=(-cosx/1^3 + cos2x/2^3 - cos3x/3^3 + cos4x/4^3 -・・・) + (1-1/2^2)・ζ(3)
4回積分
∫∫∫log(2cos(x/2))=(-sinx/1^4 + sin2x/2^4 - sin3x/3^4 + sin4x/4^4 - ・・・) + (1-1/2^2)ζ(3)・x/1!
5回積分
∫∫∫∫log(2cos(x/2))=(cosx/1^5 - cos2x/2^5 + cos3x/3^5 - cos4x/4^5 + ・・・)
+ (1-1/2^2)ζ(3)・x^2/2!- (1-1/2^4)ζ(5)
6回積分
∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))
=(sinx/1^6 - sin2x/2^6 + sin3x/3^6 - sin4x/4^6 +・・・)
+ (1-1/2^2)ζ(3)・x^3/3!- (1-1/2^4)ζ(5) ・x/1!
7回積分
∫∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))
=(-cosx/1^7 + cos2x/2^7 - cos3x/3^7 + cos4x/4^7 - ・・・)
+ (1-1/2^2)ζ(3)・x^4/4!- (1-1/2^4)ζ(5) ・x^2/2!+ (1-1/2^6)ζ(7)
8回積分
∫∫∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))
=(-sinx/1^8 + sin2x/2^8 - sin3x/3^8 + sin4x/4^8 - ・・・)
+ (1-1/2^2)ζ(3)・x^5/5!- (1-1/2^4)ζ(5) ・x^3/3!+ (1-1/2^6)ζ(7) ・x/1!
・
・
と、このように上下に延々と続いていきます。すべての∫は0〜xの定積分、またdx・・dxは略しました。
上の式の x に2π/3を代入すると、次のようになります。途中計算は省略。
[2π/3代入の式]
・
・
4回微分
LA(-4)=2/3
3回微分
ζ(-3)=1/120
2回微分
LA(-2)=-2/9
1回微分
ζ(-1)=-1/12
0回積分
2・√3/2・(1+1/2^(-1))・LA(0)=√3
よって、LA(0)=1/3
1回積分
0=0
2回積分
√3/2・(1+1/2)LA(2)=∫(0〜2π/3)log(2cos(x/2))
3回積分
(3-1/3^2)(1-1/2^2)ζ(3)/2=∫(0〜2π/3)∫log(2cos(x/2))
4回積分
-√3/2・(1+1/2^3)LA(4) + (1-1/2^2)ζ(3)(2π/3)/1!=∫(0〜2π/3)∫∫log(2cos(x/2))
5回積分
-(3-1/3^4) (1-1/2^4)ζ(5)/2 + (1-1/2^2)ζ(3)(2π/3)^2/2!
=∫(0〜2π/3)∫∫∫log(2cos(x/2))
6回積分
√3/2・(1+1/2^5)LA(6) - (1-1/2^4)ζ(5)(2π/3)/1!+ (1-1/2^2)ζ(3)(2π/3)^3/3!
=∫(0〜2π/3)∫∫∫∫log(2cos(x/2))
7回積分
(3-1/3^6) (1-1/2^6)ζ(7)/2 - (1-1/2^4)ζ(5)(2π/3)^2/2!+ (1-1/2^2)ζ(3)(2π/3)^4/4!
=∫(0〜2π/3)∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))
8回積分
-√3/2・(1+1/2^7)LA(8) + (1-1/2^6)ζ(7)(2π/3)/1!- (1-1/2^4)ζ(5)(2π/3)^3/3!
+ (1-1/2^2)ζ(3)(2π/3)^5/5!=∫(0〜2π/3)∫∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))
・
・
と、このようにζ(2n+1)とLA(2n)が出現してきます。
上で、右辺の重回積分は一番左の(最後の)∫だけが0〜2π/3の定積分で、その他の∫はすべて0〜xの定積分
です。
LA(s)は、「金星 その1」でも出てきた
LA(s)=1 - 1/2^s + 1/4^s - 1/5^s + 1/7^s - 1/8^s + 1/10^s - 1/11^s + ・・・
というゼータ関数です。
ζ(s)もLA(s)も、どちらもディリクレのL関数であることは、「金星 その1」で説明した通りです。
本題に戻る前に、ちょっとだけ寄り道をします。
[寄り道]
上では、途中の計算は一切省略しましたが、それでも追試する読者のために、少し述べておきます。
上でLA(s)が出ていますが、その過程では、まず次のような式が出てくるのです。
例えば、2回積分のところでは、
1 + 1/2^2- 1/4^2- 1/5^2 + 1/7^2 + 1/8^2 - 1/10^2 - 1/11^2 + 1/13^2 + 1/14^2 - 1/16^2 - 1/17^2 + ・・・
というL(χ,s)ではないような式が出てきます。
ところが、よく見ると、これは次のように変形できるのです!
1 + 1/2^2- 1/4^2- 1/5^2 + 1/7^2 + 1/8^2- 1/10^2 - 1/11^2+ 1/13^2 + 1/14^2- 1/16^2 - 1/17^2 + ・・・
=1 - 1/2^2 + 1/4^2 - 1/5^2 + 1/7^2 - 1/8^2 + 1/10^2 - 1/11^2 + 1/13^2 - 1/14^2 + 1/16^2 -1/17^2・・・
+ (2/2^2 - 2/4^2 + 2/8^2 - 2/10^2 + 2/14^2 - 2/16^2 + ・・・)
=LA(2) + 2/2^2(1 - 1/2^2 + 1/4^2 - 1/5^2 + 1/7^2 - 1/8^2 + ・・・)
=LA(2) + 1/2LA(2)
=(1 + 1/2)LA(2)
こういう変形を上では使っているのです。他の偶数回積分も全く同様。
奇数回積分のζ(2n+1)だけ出現する式も、この種の変形が必要とされるのですが、そちらは省略します。
[寄り道終わり]
話を戻します。興味の中心は、ここの結果と一つ上での結果の比較です。
一つ上の結果と比べてみましょう。
例えば、ここでは
√3/2・(1+1/2)LA(2)=∫(0〜2π/3)log(2cos(x/2))
ですが、一つ上では、
-√3/2・LA(2)=∫(0〜2π/3) log(2sin(x/2))
となっています。
また、さらに、こちらでは、
-√3/2・(1+1/2^3)LA(4) + (1-1/2^2)ζ(3)(2π/3)/1!=∫(0〜2π/3)∫∫log(2cos(x/2))
ですが、一つ上では、
√3/2・LA(4) - ζ(3)・(2π/3)=∫(0〜2π/3)∫∫log(2sin(x/2))
となっている。
もう一つ見ましょう。
こちらでは、
(3-1/3^2)(1-1/2^2)ζ(3)/2=∫(0〜2π/3)∫log(2cos(x/2))
ですが一つ上では、
- 1/2・(3-1/3^2)ζ(3)=∫(0〜2π/3)∫log(2sin(x/2))
となっています。
これらを眺めると、やはり両者は面白い対比をなしていることがわかるでしょう。
そしてよく見ると、”1/2”という数値が本質的な役割を演じているように思えます。
この”1/2”は、リーマン予想「本質的零点はすべて実数部分1/2上に存在するであろう」というその1/2と関係あるの
でしょうか?
「その1」での結果と合わせると、やはり、次の二つの中心母等式の場合をペアで比較するのは、ゼータ空間?の
構造を考える上で非常に意義のあることのように思えます。
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)
sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・)
「その3」では、π/3代入の場合を調べます。
上で見た2π/3代入の二つの場合を、きっちりと表の形で比較しておきます(上ではいくつか拾っただけの比較でした)。
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@
sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・) -----A
このページでの<cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x +・・ )の重回積分-重回微分に2π/3を代入>の結果と
<sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x +・・ )の重回積分-重回微分に2π/3を代入>の結果を、比較すると以下の
ようになります。
微分の方は無視し、積分側だけを書いています。
Aは@に対応する結果、BはAに対応する結果です。
2π/3代入の場合の比較
上を見てください。
Bでの(1-1/2^n) または(1+1/2^n)の係数をとり除けば、両者は同じ形!になってしまうことに気付くでしょう。
左辺全体に”-1”を掛けるだけの違いになる。ここでも「その1」のπ/2の結果と同様の現象が生じている。裏側に
深い構造が潜んでいるのを感じます。
さらに、次のような式が出てきたのにはびっくりしました。
1 + 1/2 - 2/3 + 1/4 + 1/5 - 2/6 + 1/7 + 1/8 - 2/9 + ・・・=log3 ---@
おそらく既に知られている式だとは思いますが、面白い式と思います。
注意:佐藤郁郎氏によれば、やはりこの式は知られているそうです。また「金星 その1」でも出ていました。
(1 + 1/2 - 2/3) + (1/4 + 1/5 - 2/6) + (1/7 + 1/8 - 2/9) + ・・・として手計算してみてください。
log3=1.098612289・・・に近づいていくようですので、@は正しい式でしょう。
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