ときどき日記(20010101〜20010115)

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2001/01/15(月)

 今朝はそこら中霜柱でした。踏んでも潰れないくらい固いのが。寒い寒い言ってるといっそう寒くなるのです。でも寒い。

ヤングマガジン2001年7号

 河井、受難の日々の「エリートヤンキー三郎」(阿部秀司)。今までの所業を考えれば当然の報いと言えば報い。せめてもう少しうまく立ち回れば。いや本人はそのつもりなんだろうけど。
 「しあわせ団地遭難天国」(蓮古田二郎)は団地が出てきません。もしかすると初めてか。はじめが終始服着てるのも。

ビジネスジャンプ2001年4号

 再開後の「イエスタデイをうたって」(冬目景)がかなりいい。そうこの感じなのよおれの好きなのは。お休み前はちょっとエピソードが空回りしてたとこがあったけどいらぬ心配だったか。

ヘイセイ・キッド/大前田りん(富士見書房・FUJIMICOMICS)

 仕事帰りの駅構内、出張古本屋に置いてあった本。いやこんな本があるの全然知らなかった。1990年刊とのこと。
 頭が良くて醒めていてつまんなそうな少女の前に樹木の精が現れる「今日も怪談」。ちんぴらやくざの少年が、なぜか彼にだけ少女に見える猫にいれこむ「ヘイセイ・キッド」。学校に閉じ込められた少年の行き場のなさをよりダイレクトに描いた「少年M」「ぼくはユーレイ」。以上4作を収録した短編集です。
 眠そうな目をしてどこか刹那的でときどきスケベな登場人物たちは、やっぱりこの2、3年後に連載されたガケップチ・カッフェーの彼らに似ています。個人的にはこのひとのファンというほど気合い入れて読んでたわけではないのだけど、こうやって見つけて買ってみるくらいには気になるひとだし、読んでみてああやっぱり貴重な才能だなあと思うし。いつどういう形でもいいからまたどこかで描いてくれたらと思います。それまではのんびりと。
 ちなみにこの本を知らなかったのは、Japanese Comic Book Searchでヒットしなかったのが理由のひとつなんだけど、ネットで情報を探してるうちにCOMICS DATA HOUSEというサイトで裏が取れました。そうか上原よよぎ物語全2巻なんてのもあるのか。というかこのサイト情報源としてけっこう貴重だ。


2001/01/14(日)

 たいへん寒いのでおでんなど作ってみる。煮込みすぎて練り物がやわらかくなりすぎたけど、味はまあまあ。やっぱり大根はいいなあ、こんどは大根メインの煮物にしよう。

南の島のルー/昼寝堂(夙川夏樹)

 表紙がとてもいい。このまんが、ひいてはこのひとのまんがが凝縮された感じ。
 ルーというのは南の島(いちおう日本みたい)の浜辺にある日、すっぱだかで寝ていた女の子です。見た感じは人間だけどしゃべる言葉は何語だか全然わからん。ほっとくわけにもいかないので、島の人はあみだで保護者を決めて住まわせることに。
 保護者となったシドウのもと、ルーの島での暮らしが始まります。腹を減らしてひまわりの花にかじりついたり、農作業を手伝ったり、ビールを飲まされて寝てしまったり、話しかければ答えるけれど、何言ってるのかはやっぱりわからない。口さがない人から妖怪じゃないかとか宇宙人だとか言われながら、でも穏やかでなにもない日々が過ぎていきます。一度だけ日照りで水不足の中、地面から水を吹きださせてシドウを驚かせた以外は。
 そういうおはなし。ルーの正体がわかったり言葉を覚えたり礼を言って月に帰ったりというようなことはなく。このなにごともおこらないこのひとのこういうまんががとても好きです。初期の「思考回廊」とならぶ代表作じゃないかな。

虫/Hee−Haw(藤ノ木いらか+百井葉月+衣羅ハルキ)

 虫の研究者であるおにいちゃんが(恋愛抜きで)大好きな少女の「おにいちゃんと遊ぼう」(藤ノ木いらか)も、ゆえあって父方の実家に越してきた少女が、居心地が悪いなりにゆっくりと学校になじんでいく「草がくれ」もいいけど、この本のベストは「夢を見ている」(衣羅ハルキ)かな。
 主人公は「鳥」収録の「よだかのほし」に出てきた少女の父親。九年前に自分から妻と子がいまだに忘れられない彼の隣には、ふらふらといい加減な女性とそのこども二人が住んでいる。大人びて聡明な二人になつかれながら、いつか帰ろうと思ったり、二人の母親が家出したときにとりあえず二人を自分の家に住まわせて、もう二人の母親が戻ってこないほうがと思ったり。それら浮き草のような夢想がふたつして打ち砕かれたあとに訪れたのは、穏やかな諦念だった。どうしようもない自分に愛想をつかしたのではなく、どうしようもないままで受け入れた。それが長い人生に一瞬だけ訪れたものにすぎないとしても、その一瞬のもつ不思議な美しさを、このまんがは確かに捉えています。
 あとは四部作の最後「魚」を待つのみ。このシリーズはほんとに一冊一冊が読んでて楽しいです。

土湧/エレホン(交野佳奈)

帰り道/エレホン(交野佳奈)

 ひさしぶりの新刊2冊。「土湧」は1〜5ページの短編が4つ。特異な世界の切り取り方は健在でした。死んで灰になり庭にまかれた主人に涙を流す植物の話「人の死を見届ける人じゃないなにか」がなかではベストかな。
 「帰り道」は仲のよい女の子ふたりの物語。正確にはふつうの仲良しだと思ってる子と、どうしようもないくらい好きな子の物語。その思いは伝えられることがないまま3年間、高校で進路は分かれ、手をつないでの最後の帰り道。最後まで笑顔のままで。鮮烈なほどに悲しいおはなし。

桜鬼/ポンチ定食(佳世)

 人にとりつく妖怪と、妖怪を祓う四つ目の僧侶のまんが。むかしばなしふう妖怪譚。タイトルは妖怪が桜に封じられるところから。目つきの険しい登場人物たちがおはなしによくあっています。

新しい太陽/PLU's98(PLU、松下灯+蒼い悠わ+成田拓)

 基本的には個人誌です。あとの3人はゲストでイラストまんがなど。
 まるで闇の中の火花のようなこの人のまんがは、2〜3ページの中にイメージを詰め込んでそれきりで終わる。これがもし長編につながったならたいそうおもしろいものができるような予感はあるけれど、いまのままとて瞬間のきらめきは十分魅力的だしそれでもおれは満足です。表紙に書いてある「戸惑わないでこれが僕らの原理なのだから寿命の尽きるまでこの灯りに照らされて地の果てに太陽が沈んでもこの太陽の下で働き続ける さあいつか 此が僕らをあやつっていることに気が付く日が来るとして新しい太陽を空に打ち上げて。」という言葉とか裏表紙の「オヤスミナサイのサイクルでまた今日も回りだす。」とか。

カラガラ/METAL ZIGZAG(九紫奇寧+無氏名+柵立楽)

 まんがは「ゆめをみるはこ」(無氏名)と「焼きいも。」(九紫奇寧)の2本。目の見えない少年と盲導犬にたくした寓話である前者も、父さん仕事で母さん風邪ひきの少女の誕生日のおはなしな後者も、このサークルとしては異例のハッピーエンドのあたたかいおはなしでよいです。たまにはこういうのも、ということなのかな。

REST/AIRカプセル(ein)+新屋(NIE)

 イラストとまんがの本、どっちかというとイラストが多め。気楽に読める1冊ではあります。も少しまんがが多い方がうれしいかな。

満月のはらっぱ/朔(LAPP)

すばらしいぼくら/朔(LAPP)

 「満月のはらっぱ」は失敗ばかりの魔女見習い・見習いの少女と、やっぱり失敗ばかりの手品師見習いの少年が出会う、ほのぼのとしたファンタジー。タイトルの由来になっている、夜のはらっぱで満月を背に少女の空飛ぶシーンがたいへんよいです。
 「すばらしいぼくら」はこどもならではの無邪気な残酷さがモチーフの「地下帝国のススメ」と、ちょっとだけホラーの「UFO来襲」の2編。こちらは約2年前の刊行で、そのせいか絵がずいぶん違う。個人的には最近の絵のほうが好きです。

くちびるセンチメンタル7/セオナツヨ

 少年少女とその親や大人どもと、一筋縄ではいかない恋愛模様の7冊め。わたしはあなたしか見えないなんて簡単に割り切れるわけないじゃないというそういうおはなしです。ずいぶん長い間続いているけれど、まだまだ先はありそう。それにしてもどんどん絵が変わるなあこのひと。

秘骨/淘汰

 願事をかなえてもらった蛇に体を乗っ取られたり、よくわからん生物に一時的に下半身を持ってかれたり、喫煙少女に片想いの冴えない少年の妄想が広がったり、そんな短編3つの短編集。どこか両生類的なぬるりとした気持ち悪さ生々しさが、この人の絵の特徴であります。まんがによく出てくるつるっとしてかわいい女の子とは対極にあるような。

DAYDREAM TRACKS POP side/青ラジヲ(Yana yang)

 再録集です。以前は猫ラヂヲ社/夜凪名義で描いていた人。
 だらだら学生サークル部室の雰囲気がよく出た「四方山話」が楽しい。あちこちで挿入される1ページまんがもおかしくていいな。いきなり心臓のとまった(でも生きてる)少年が、少女に連れられて病院に向かう途中で突然パーカッション奏者と出っくわし、演奏が終わってみたら心臓が動きだしてたという「Heart Beat」は、その手の強烈なパーカッション聞いたことがあるひとには納得のまんがでしょう。なるほどヤヒロ・トモヒロとかボンフルとか聞くひとなのだな。

季刊モホ面スターターキット、第3・4・6・7号/
モホロビチッチ不連続面(空条HYO太郎ヲ)

別冊モホ面 空条HYO太郎ヲ的実験小劇場其ノ壱/
モホロビチッチ不連続面(空条HYO太郎ヲ)

 行き当りばったりいい加減メタまんが「ダメなやつら」、サークル仲間/彼氏を亡くしたふたりの男とひとりの女の、説明をぎりぎりまで省いた物語「約束の地」、加えてゲーム業界あれこれ話の3つで構成された連続シリーズ本。5巻が抜けてるのは先に5巻を買ってたから。
 このひとのまんが買い出したのは実は絵が好きだからだったりするけれど、読み手が怒りだすぎりぎりまで(あるいは踏み越えて)不真面目に展開される「ダメなやつら」も、読み手がついてこれないぎりぎりまで(これはたぶん踏み越えてない)説明なしに進む「約束の地」も、違った意味で(ある意味挑戦的なところは共通してるけど)おもしろいです。その間にはさまれたゲーム業界話がやばい内輪ねたを含んでこれまたおもしろい。このシリーズとうぶん続きそうなのでしばらく楽しめそうです。
 「実験小劇場」は内容的には前記と無関係で、無愛想な男と変な女の殺し屋アクションまんが。これはこれでおもしろいけど、この設定描き方だと長編で読みたいような。200ページくらいの、というのはさすがに無理か。


2001/01/13(土)

 やっと去年のこみちあで買った同人誌を読み始める。次回開催日までに間に合うか。いや間に合わせるのだ。

火星人先史/川又千秋(徳間デュアル文庫)

 読み始めてすぐ、旧知の人に会ったような懐かしさを覚える。このひとのSFを最後に読んだのはたぶん5年以上前だけど、それまでにけっこういくつも読んでたからなあ。解説で「実は(中略)生え抜きのSF作家でもあります」とわざわざ書いてるのを読んで、そうかこう断らないとわかんないようになったのかなあとしみじみ思ったです。確かに新刊で手に入るの、もしかするとこれだけだもんな。
 この本自体はもともと1980年代前半に刊行されたもので、火星環境を改造して居住可能とした未来、遺伝子操作により知能を与えられ奴隷として連れてこられたカンガルーたちが、先住者と接触し覚醒し、自らを火星人と名乗って武器を取り反乱する物語です。単行本数冊分にも膨らませられるお話なのでけっこう展開がとびとびだけど、引き込まれるだけのおもしろさは十二分にありました。それにしても物語が進むにつれ、偏狭で愚かな存在として描かれる人類に感情移入し、カンガルーたちを敵視して読んでいるのに気づいたときは憮然としたです。黒人奴隷の反乱を敵視する白人みたいだこれじゃ。
 なお、同作者の「火星甲殻団」シリーズとは設定上の共通点はありません。念のため。

NiNi 空往く魚/非常階段(トガユウジ)

 ファンタジー風味のほぼサイレントまんが。笛吹きながら歩いてた少年が捕われた魚をみつけ、すったもんだのあげく放して空にかえしてやるまで。魚は空を飛ぶのです。
 黒の強調された絵がなかなかいい感じです。見開きで空一面に魚を飛ばしたラストもいいなあ。

とおくのこえ/Cight(水上左人+ミズタナシコ)

 4ページの掌編がふたつ。学校舞台のややとりとめのないおはなしと、町で会った少女の天使にてぶくろをあげる話と。どちらも絵に雰囲気があります。茶色い紙とよくあっている。

STILL ALIVE/四角い会社のヒゲ仲間(藤田浩祐)

 ヘッドフォンステレオを聞く少年が電車に乗り運ばれて降りるまで。あらすじは特になく、かすかにブルーな心象風景をそのまま描いたようなまんが。カケアミが多用されている絵がいいです。

永久凍土/四角い会社のヒゲ仲間(ウチヤマユージ)

 予備校で憧れていた女の子に大学入学後再開したらカルトの信者になってたといういたいお話。これもカケアミの絵が好き。ありがちといわれようと本人にとっては重たい体験なんだよなこういうのは。

プギュ/日本大学芸術学部熱血漫画根性会
(保科慎太郎+水野なびき+西村かずこ+笹川宏+辻宮勇蔵+小笠原史+匿名希望+南畝あゆみ+望月康行)

Yeah!/日本大学芸術学部熱血漫画根性会
(砂串ちゃお+保科慎太郎+西村ユキコ+上加ひろ+笹川宏+中門広世+内村亜希子+マラ赤子と大堕落団+安坂友夏織)

 この2冊は笹川宏の絵が気に入って買った本。「プギュ」収録の「宙学生日記」はぼんやり夢見心地で歩いてた少女がマンホールにおっこちてぐるぐる回って着地して、見るとあたりは夜で空には満月。どうしていいかわからずとりあえずくしゃみする女の子がかわいい。いっぽう「Yeah!」収録の「罪とバス」はページを上下に分けてリバーシブルまんがという趣向で、そのうちの片方、女の子が風呂入ってたら潜航してた男にバスジャック(バス=風呂です)されて「…要求は?」「じゃあもう少し熱くして」「いや」で終わりというとぼけたまんが。こういうばかばかしいのはとても好きです。この人のまんがは見かけたら買うことにしよう。
 ほかには自分のいる穴にさらに次々自分が落ちてくるアクションゲームのパロディ「ゲーム・オーバー」(西村かずこ)と、すべてものに指で穴を開け核に触れることができるようになった男の破滅までのおはなし「穴」(保科慎太郎)がいい。後者は自分で自分に穴を開けて恍惚という描写に背筋がちょっと寒くなった。

玉ぞちりける/閑古亭主文庫(佐野絵里子)

加持祈祷うけたまわり□(ます)/閑古亭主文庫(佐野絵里子)

桜(はな)のいろは/閑古亭主文庫(佐野絵里子)

 もう6年以上前だけど、モーニングに巻野絵里子作の「玉ぞちりける」という読切が載ったことがあって。日本画的というか屏風絵みたいというか、独特の絵で描かれた説話風のおなはしで、かなり印象に残ったまんがだった。その後商業誌で見かけることはなくあれ一作しか読めないのかなあと思っていたら、なんとまあコミティアで。見つけた時は小躍りしました。
 「桜のいろは」は確か去年のちば賞佳作入選作だったかな。これも「玉ぞちりける」ど同系のまんがで、人外のものとして童子が登場し物語を導くのも同じ。いい人を演じることに長けるあまり、己の醜い部分が鬼となり夜な夜な徘徊するようになった女官の話です。久々にこのひとのまんが読んだけど、この雰囲気はやっぱりとてもいいなあ。
 「加持祈祷…」(タイトルの□はほんとはなかに斜線が入ってます。へちま水あります、とかのあれ)は前記2作とは違い、舞台は現代、主人公は神社の息子で高校生で憑き物落としをよくするという設定。絵のほうもこっちは筆を使わずペンのみです。拝み屋のおはなしとしてはわりとオーソドックスな構成かな。趣のある風景描写は前記2作同じように魅力的です。

QUUB/こうずかゆうき

 少女がぞうさんを助けるという、おはなしも絵も絵本のようなまんが。いやむしろ絵物語というほうがあたってるかも。
 セリフはあるけど読めません。「昔のドイツの方の文字」が使われてる上に、何語でもないようだし。たぶん読めないことを前提に描かれたまんがなので読めなくてもかまわんのだけど。ほのぼのとしたおはなしです。

ESP/ZEROTSUU(FUJIKO)

 バイオ技術により作り出され、その特殊能力ゆえに外に出ることを許されない双子のおはなし。絵はフィールヤング/キューティーコミック系のおしゃれな絵です。テーマがテーマなのでもう少しページ数がほしかったかな。

Mary Banks/Lady Maid(県史緒)

僕とネリーとある日の午後/Lady Maid(県史緒)

 メイドさんまんが。サークルもどうやらメイドさん専門。だがしかしおれはメイドさんは完全に専門外なので、買った理由はメイドさんだったからではありませぬ。
 「Mary Banks」は老子爵に仕えるメイドさんと執事のおはなし。いたずらっ子がそのまま年取ったような主人と、勝ち気で少し口が悪くてでも決して薄情ではないメイドさんと、温厚で笑顔を絶やさぬ執事と。やや喜劇調の前半と、バルコニーでうたたねするシーンを挟んで老子爵が亡くなってからの後半。最後のいたずらとほんとの遺言と涙と。全体に落ち着いた雰囲気をたたえた良作です。きれいな表紙に目が留まって買った本だったけど、これはとてもよかった。
 「僕とネリーと〜」はメイドさんと彼女をしたう少年のおはなし。小鳥をひろうエピソードをはさんで、自分より同年代の女の子と遊ぶようになった少年を見ながら「ま、そんなもんですよね」と主人公が笑うラストがいい。落ち着いた雰囲気がいいのも同様でした。

砂城工房/砂城工房(砂辺武志)

 ポップな絵柄の、どちらかというとたわいもないおはなし。かわいい女の子+変な生き物という組み合わせも含めて、古賀亮一に近いところがあるかも。あんなふうに暴走というか逸走してるわけではないですが。

花工房5/花工房(なかむらかずひと+MURASAKI+あめかすり+社長)

花工房6/花工房(K.T.+あめかすり+えす+△+アメ伝+橘杳乎+大矢天祥+サトウダイスケ+社長+三角さんどらやキ)

 どちらもあめかすり目当てで買った本。5収録の「千歳飴姫」は祭で少女の7ページ。6のほうの「暗闇のバタフライ」はまつげも陰毛もひげも髪の毛も縫い合わす女の6ページ。前者は作風の抒情面が、後者は不思議な面が前面に出てます。この人の絵自体、眺めてるだけでけっこう幸せでもあるし。
 それ以外ではUFOと同調した母親に、土壇場の瞬きのために置いていかれてしまった女性のおはなし「瞬間(またたくあいだ)」(K.T.)がおもしろかった。切なくてでもどこかに得体の知れぬ不安を忍ばせて。なおサトウダイスケはときどきジャンプ系で書いてるさとうだいすけとは別人のようです。

カラフル萬福星2001年15号

 巻頭カラーの「おそらの迷子」(田中浩人)がおもしろかった。亜光速宇宙船のパイロットである「幼い」祖父とその孫と、孫の先生と。自分より人生経験の多い孫を前に思い悩む祖父=少年という設定が、彼を年少者をあやすように扱う先生とともに、とてもユニークでいい。
 「佐伯神楽の恋のドキドキ大作戦!!」(現津みかみ)はマッド科学者な女子高生主人公のバカまんが。あれは原作付きだから当たり前かもしれんけど、エースネクストのとは全然違う。こういうのけっこう好きです。「無人駅」(粟竹高弘)に出てくる田舎の無人駅、やっぱり例によって現実空間じゃないんだろうか。ほのぼの4ページ「いただきもの」(中村哲也)はほのぼのしててよいです。
 「当て身番長」(篠房六郎)は決戦の場に赴こうとする番長に一人でいかせまいとする周囲でおはなしがスタート。他人を巻き込むまいと次々と当て身で倒す番長、なんか何人か死んでるんだけどいいのだろうか。一種の任侠物パロディなんだけど、重箱の隅をつっつくようなギャグのこしらえかたがおかしいったら。そろそろこの人も単行本出ていいころじゃないかしら。


2001/01/12(金)

 あれだけ気をつけていたのに、ここ2日間、日付が20世紀に逆戻りしてました。しそうな間違いは必ずするのだなおれは。

少年ガンガン2001年2月号

 「清村くんと杉小路くんと」(土塚理弘)がめちゃめちゃおもしろい。遠く無声映画のころからの伝統芸能である無表情のおかしさと、ためてためてためるだけてためてぼんっ、という呼吸が素晴らしい。ギャグまんがだけに好みは人それぞれだろうけど個人的にはおかしくてしょうがないです。
 長期連載「ハーメルンのバイオリン弾き」(渡辺道明)がきれいな大団円。雑誌を買い出したのが連載終盤だったこともあってまともに読んでいたとはいいがたいけど、ひょっとしてこれ名作なのかもしれん。機会があったら読んでみたい。37冊もあるけど。
 連載2回目「ARTIFACT;RED」(木村太彦)は1回目に続いてちゃんとはなしが進んでます。冒険活劇ストーリーまんがただし木村太彦風てな感じのまんがでこれはおもしろくなりそう。「魔法陣グルグル」(衛藤ヒロユキ)はじじい4人が乱舞そしてキタキタオヤジ変態(異常趣味なほうの意味ではない)。絶好調ですな。
 「PON!とキマイラ」(浅野りん)はなんと相田がどこぞの悪漢にさらわれる展開に。これでは八満が王子さになってしまうじゃないかいいのかそれで。いやいちおうお話は緊迫してます。巻頭カラーで「ドラゴンクエスト エデンの戦士たち」(藤原カムイ)が新連載。「ヴァルキリープロファイル」(土方悠)が最終回。

別冊ヤングサンデー2001年7号

 最初にお詫び。山田1号の感想のところで「山の家」(西原理恵子)がどうの「豪速球レクイエム」(山口かつみ)後編がどうのと寝とぼけたこと書いてましたが、きれいに雑誌を取り違えてました。ひどい間違いでどうにも申し訳ありません。こっちにどちらもちゃんと載ってます。
 去年8月発売の5号に載ってた「X−クロス−」(旭凛太郎)が連載化。絵と滑り出しの内容と両方勢いがあってよいです。あとはこの調子で続けば文句なし。6号に載ってた「Heart Walker」(山田たけひこ)も再登場。今回内容が妙に説教調なんだけどこのサブタイトルで説教されてもどうしたものやら。手の込んだ冗談なのかそれともまじめなのか。
 正攻法のいいはなし「孫」(吉本浩二)とこれまた再登場サッカーギャグ「バカマダ2」(森本一樹)はどちらもけっこう楽しく読めた。ボクシングバカなおやじが主人公の「情熱の男」(長田光平)はこちらはラストのどんでん返しがおみごと。しかし村上真裕といい大川トモユキといいボクシングバカのまんがはなんでこう濃ゆくなるかな。
 そして秋重学の読切「あいいろ」。いやこれだけの名手がこれだけたくさん読切描いてくれるのはもううれしくてしょうがないです。そのうち半分はいいし、のこり半分はくらっとくるほどいいし。今回の個人的キラーコマは293ページ下段右。もうどこの出版社でもいいからとっとと短編集出しましょう。早いもん勝ちだよ。

ヤングアニマル2001年2号

 やっと夜が明けた「ベルセルク」(三浦建太郎)、そうですかやっとスタートラインですか。まだまだ長期戦だなこりゃ。今回はあいの絵日記まんがの「愛人[AI-REN]」(田中ユタカ)、連載初中盤に次いでこれで2回目だけど、1回目からのあいの成長が如実にわかる内容。ひょっとしてここまで見越してのあの1回目だったのか。だとしたら脱帽です。

まんがライフオリジナル2001年2月号

 「エブリデイズ」(長崎さゆり)が相変わらずいい。そろそろ単行本出してほしいな。もう19回目だし。
 英語版と日本語版を同じページに並べての新連載「かしましハウスでイングリッシュ!!」(秋月りす、翻訳:岩政伸治&岩政裕美子)、楽しい企画だと思うけどなんだか英語の写植が一個所張り間違えてるような。けっこう長期連載だった「あしたもゲンキ!」(丹沢恵)が最終回。「喜怒哀楽一家」(大橋ツヨシ)も最終回。どちらもけっこう楽しみに読んでました。
 あと巻末にふくやまけいこがフルカラーまんが「ひみつの花園」を描いてます。このひとのまんが読むの、髪切虫以来になるのか。色使いがたいへん上品できれいというのは特記するまでもありません。

増刊ヤングジャンプ漫革2001年2月15日号

 「パンツ大いにイカる」(藤波俊彦)がおかしい。人面パンツ。芸風が確立されててよいなあ。
 前号(別冊YJ)で婚約指輪でホームランな気持ちのいいまんが描いてたもりたあゆみ「オセロゲーム」で連続登場。虚々実々の恋愛ものながら結局どちらも本気なんだよなこのふたり。スマートだけどスマートなだけでなはいこれもいいまんがです。「風の一平」(藤崎周一郎)は初期に比べて見せ方が上手くなってきたような。

コミックバーズ2001年2月号

 「DEVIL SMILE」(新名あき)が新連載、「ぐるぐるジャングる」(東城和実)「コドク・エクスペリメント」(星野之宣)が最終回。「ぐるぐる〜」は最後までわけがわかんないまんがのままだった。「コドク〜」は物語の趣旨とするところを描きおえてのきれいな完結でしょう。大団円ではなくその後に含みを持たせたあたりが気に入りました。
 今月は「占いビビンガとコロクプル」(西岡秀樹)は載ってるけど「おさるのムード」は載ってません。それから10月号掲載の「空耳」がよかった深町ひちる「勝負の行方。」で再登場。今度は幼なじみに思いを寄せる少女が主人公で、でもそいつにはもう彼女がいて。作画は荒れぎみだし構成もも少し丁寧なほうがとは思うけど、伝えんとするところは伝わるしこのラストは好きです。報われなかったけど昇華された思い。

零式2001年25号

 「としうえの魔女たち」(むつきつとむ)が急展開。魔女たちの「たち」のほうがようやくかつ急に動きだした感があって、主要登場人物がひとつ屋根の下の次回以降いろいろありそう。今回巻頭カラーの「LOVE GAME」(大島永遠)、この人の整った絵はけっこう好みなのであとはお話でワンパンチあればなおよし。今回はおはなしが次に続いてるので期待してみます。
 読切は「やさしい天使の堕とし方」(浜田よしかづ)「大逆転▼」(まだ子)「神様は大忙し」(こうのゆきよ)「ANGEL WITCH?」(小石川圭)「モーニングセット2001」(まぐろ帝國)「瞳を閉じて待ってて」(ちんじゃおろぉす)「岐阜金華山ロープウェイ落下事故?」(まいとしろう)の7本。小石川圭のまんが読むのって、オープン増刊の南国ビーチ警備隊以来だからえらく久しぶり。だいぶ絵が変わったような。まいとしろうのこれは無人島的状況のシリーズで続くんだろうか。ももえは青大将。

コミックビーム2001年2月号

 今月から始まった竹本泉の読切シリーズ新連載って、早い話がアップルミステリーでやってたあれと同じようになりそう。宙出版から出ている単行本群はかなり好きなのでたいへん楽しみ。今回の「おんなじかんじW」は見分けのつかないふたご少女のおはなし。すこしだけラブなあたりも含めて「せ〜ふくもの」収録作と同系のまんがです。
 「敷居の住人」(志村貴子)はよく考えるとけっこう展開のスピーディなまんがで、今回もふられたり踊ろうかとおもったけどやめてみたり知り合い同士がくっついてみたりといろいろ。いろいろあったけど結局沈滞していく千曉なのでした。「砂ぼうず」(うすね正俊)は話がどんどん大きくなってオアシスとその周辺全体のことに。ここからクライマックスへとつなげていくのかな。
 読切が「蟲酸」(福耳ノボル、改名したそうです)「A・GE・HA」(宝生幸)と2本。集団から(なかば意図的に)はみ出している高校生の少女の、死んだクラスメートをめぐってのやり場のない鬱屈をとらえた「A・GE・HA」がおもしろかった。このひとはこれがたぶんデビュー作、これからどんなのを描くか期待して待ちます。


2001/01/11(木)

 1月15日からbiglobeのほう(http://www5b.biglobe.ne.jp/%7Eskm/)に正式移転することにしました。正式移転つってもしばらく両方更新するのは今のままなので何もかわらんのですが。niftyのほうは1月末をめどに更新を停止する予定でいるので、気の向いた時にbiglobeのほうを見るように切り替えていただければと思っています。
 読んでくださってる方々&リンクしてくださってる方々にはよけいなご面倒をおかけしますが、移転後もお付き合いいただけると幸いです。

モーニング2001年6号

 「カバチタレ!」(東風孝広+田島隆)のキャストを見てめまいが。栄田千春がそのまんまの名前で女というのはなんともはや。まあ、別物と割り切ってしまえばいいんだろうけど。もみじまんじゅう買って開けてみたら中にクレープが入ってたような。でもあくまでもみじまんじゅう。
 「リーマンギャンブラー マウス」(高橋のぼる)は引き続き東大地下での鼠レース、でもって久々のまぐろ子本領発揮。でも役に立ってない。「鼠っ気」という単語は日本で初めて使われたのかもしれない、鼠なんで馬と違って外観ではわからんのだな。どうでもいいけど「人っ気」(人気ではありません)という俗語は世の中でどのくらい使われてるんだろう。


2001/01/10(水)

エースネクスト2001年2月号

 「黒蘭」(近藤るるる)はいきなり舞台が3年後に。まあ立派になっちゃって。連載2回目の「地球美紗樹」(岩原裕二)は引き続き導入部。次くらいから話が動くかな。
 峰倉由比が読切前編「CROSS×CROSS」で久々登場。神隠し系ホラー仕立てのお話で、絵の魅力は相変わらずだし、うんうん原作抜きでもいけるじゃないですか。後編が楽しみ、それと次の連載はぜひオリジナルで。そのほかこれも久々のシリーズ読切「メイル9」(山崎峰水)とこれは純粋な読切「アバドンの守護天使」(足幡鉄鋼所)が載ってます。

ヤングコミック2001年2月号

 連載2回目「蛙の王子様」(池部ハナ子)がやっぱりいい。やさしいエロまんがというこのまんがの立脚点は、体よりも心が大事ということで、それだけが真実ではないにしても真実のひとつには違いないのだ。あとはいつもの「ナルミさん愛してる」(山川直人)

近代麻雀オリジナル2001年2月号

 巻頭カラーの読切「天使の賭け」(若林健次)は最後のどんでんに意表を突かれる。しかしそこで突っ張られてたらどうするんだろうというのは杞憂なのかな。そのための先乗り仕込みなわけだし。
 いちおう学習麻雀まんがな「まんツボ」(おおつぼマキ+福地誠)、内容は怪しげなタイトルが暗示するとおり身もふたもなくスケベまんがです。これはこれでこのひとの持ち味。「プラム」単行本にならんかなあ。

上と外(3) 神々と死者の迷宮(上)/恩田陸(幻冬社文庫)

 2巻目読後の予想「練/千華子組が引き連れてしまったものが、賢/千鶴子組を拘束してるものを殺戮する」は外れも外れ、大外れでした。どちらかというとこの3巻目、次なる展開への準備がメインかな。こういう静かに緊張していく感じはこれはこれで好きです。
 こうなるとしかし、親子の再開はどのようになされるんだろう。最後までおあずけか、それとも。

マガジンFRESH2001年1月29日号

 とりあえずまず「サイボーグ大作戦」(小田扉)を読む。おおなんかまじめだぞちゃんとオチまである。これなら普通の子供でも読めるのではないだろか。
 つぎに「高校皇」(長田裕幸)を読む。くそまじめで融通がきかないしかもやたら強い生徒会長のおはなしで、終始一貫したその主人公っぷりがたいへんおもしろかった。これは快作、あんがいこのひと少年まんが向いてるのかもしれない。それはそうとじぶんとこの出版社から1冊出してる人を新人扱いはどうかと思うけどでもこの雑誌新人しか載せないんならそれはそれでいいや。読めるほうが大事。


2001/01/09(火)

 真夜中。この世の物ならぬ轟音に目を覚ましたら、まんが山のひとつが崩れてました。ああびっくりした。

遺響の門−サイレント・ゲート−/中井紀夫(徳間デュアル文庫)

 人類が宇宙に進出し、理解不能のエイリアンと遭遇し、長い戦闘が続いている未来。そんな時代にとある惑星で、世間との折り合いがつけられずはみだしかけた少年が主人公です。どうでもいいけどこの表紙の女の子(ヴィオレッタ)はこんな胸でかくちゃいかんよ。いや別に胸が大きいのがきらいなわけではないけど、この登場人物は小柄で元気で前向きなんだからボーイッシュなほうが。というのはさておき。
 同じ星に暮らす宇宙人たちの造形や動作や、アクションシーンでの描写などに作者らしさは垣間見えるものの、少年と少女とよき友人たちがつくりだすおはなしは、わりとオーソドックスな成長物語です。堅実でわるくない出来なんだけど、昔のこのひとの小説が好きだった身としてはやっぱりまたああいうのを読んでみたいなあと思ってみたり。いつまでもそういうこと言われると小説家としては鬱陶しいのかもしれないですが。
 まあ今は作風の転換点でこういう作風で完成されていくのかもしれない。いずれにせよこの人の本はずっと追っかけるつもりではあります。だいたいこうやって新刊読めるのがまずうれしいし。

ヤングチャンピオン2001年3号

 今号は特記事項なしかなあ。いつもどおりのものをいつもどおり読む。

コミックドラゴン2001年2月号

 最終回待ちの「タカハシ君優柔不断」(新井理恵)は今回お休み。モンコレも休みだったけどクロノファントムウィザードは元気に載ってます。
 新連載「櫻の一番!」(影崎由那)は大正小町事件帖とのこと。個人的に大正ロマンものはまるで関心が持てないなんて言ってると導師その他にぶち殺されそうな気がするけど事実なんだからしょうがない。もうひとつの新連載「珠玉あとらす」(みよね椎)、出だしを見ておお宇宙ものだと思ったらさにあらず、なんと地底ものだったのでした。こいつは意表を突かれた。今回のようなおはなしを描くと、なんとなく雰囲気が長谷川裕一に似てるかな。活劇のまじえ方とか話のテンポとか。
 「CAT’s WORLD」(OKAMA)が最終回。道中どうなるかと思ったけどまずはきれいな終わり方でした。3巻出たらまとめて読まねば。


2001/01/08(月)

 最近植え込みによく咲いてる花は、あれはどうやらカンツバキというのですね。最初はツバキかと思ったけどどうも記憶にあるのと違うし、正月帰省時に親に聞いたらサザンカだというけどサザンカは白いし、思い余って図鑑を調べたら載ってました。サザンカの園芸品種と書いてるのと、サザンカ×ツバキと書いてるのとふたとおりあったけど、さてどっちが正しいのやら。

すねかじりエロス/IKARING(近代映画社・エルティーンピンキーコミックス)

 1998年6月ごろのアッパーズに「水中ラブ」という読切を描いてた作者の単行本。いい読切だったし変わったPNだし名前覚えてたので、新刊リストで見つけて買ってみたらこれがまあなんというか。かなりのキワモノだった。
 基本的にはやりたいけどやれないビンボーカップルのエロギャグまんが。でもって毎回毎回「できませんでした」シーンがジェットコースター並みのスピードでふっとんでいく。トイレ電車隙間、ホテル病院試着室、吊り籠ランパブボート、キャンプ場木陰、スカートの中タンス、新幹線。1話から6話でこれだけ。ちなみにこれで140ページ強。ラスト7話でどうなるかは伏せとくとして、この最終話、ラスト数ページの表現がまたすごい。観音様やマリア様までご出演です。
 出版社がまんが版元としてはマイナーなんであまり本屋においてないだろうけど、これ、バカまんが愛好者は必読でしょう。ついでにエロまんがのけったいなのが好きな人も必読。いやいっそこどもとまじめな人以外はみんな必読。とんだ拾い物でした。

風前の灯/いとう耐(双葉社・アクションコミックス)

 アクションにときどき連載されていた知る人ぞ知るショートギャグ。いやこれが単行本になるとは思わなかった。
 ギャグのおもしろさを説明するのは例によってすごくむつかしいのだけど。というか説明するとちっともおもしろくなくなるのだけど。これはどちらかというとけっこうトラディッショナルなギャグまんがでしょう。表現としてはドリフとか吉本とかそういうのに近いかもしれない。絵は不必要にけっこうリアル。ねたはけっこうグロイのやきわどいのもあります。
 でもってすごくおもしろいかというとそんなにはおもしろくない。少しおもしろい。この微妙にずらしたおもしろさ加減が好きな人にはたまらん、そういうまんがです。
 いやそれにしても本になって本当によかった。あとはまたどこかで連載してくれたら万々歳。

憑融/青木和(徳間デュアル文庫)

 「イミューン」に続く作者の第2作。こんども300ページ超とけっこう分厚め。
 中盤の盛り上がりなどは捨てがたいものがあったけど、ラストがちょっとカタルシス足りないかなあ。いやたぶん作者はこのラストこそが書きたかったのだろうというのはわかるしこのラスト自体はありかなと思うので、であればそこまでの伏線の張りかたや登場人物たちの心情描写にひと工夫ほしかったところ。クライマックスにまっすぐ向かう中盤と万事解決ではないラストがうまく整合しなかった感があります。
 もうひとつ、やや病弱な高校生を主人公に、なにものかに憑依されたらしいその弟を物語の軸に書かれたこの小説、主人公たちの通う学校のひとりの教師が狂言回しの役をしょってるのだけど、この狂言回しがちっとも狂言を回してない。いっそいないほうが物語としてはすっきりするくらい。兄弟を完全に主軸に据えたほうがよかったんじゃないかなあ。
 語り口自体はたぶん1作目より上手くなってます。1作目もそうだったけど、きれいに決着するわけではない物語を、読者にどう納得させるか。そのへんが鍵かもしれないと思う次第です。

小娘オーバードライブ/むっちりむうにい+笹本祐一(角川書店・あすかコミックスDX)

 1996年にファンタジーDXに不定期掲載されたまんがの単行本化。4年以上たってから本になるのは、でも意外とよくあることでもあります。ひょっとすると再開含みの単行本化かな。
 内容はスニーカー文庫同名作のまんが化(とのこと)で、天然系女子高生が時給500円でパワードスーツで正義の味方という「ありふれた通俗的などうしようもない設定の話」(原作者あとがきより)。ついでに言えば主人公の相方がお嬢様で雇い主がマッドでその相方がぼやき屋というのもよくある設定。
 となると問われるのはプラスアルファなのだけど、この本の場合は絵を気に入るかどうかにかかってるかな。独特の丸ぽちゃ絵−−絵柄の表現で丸ぽちゃというのは変だけど、そうとしか表現しようがないのです。色気があると言えば言えるけどそれだけでなし、かわいいというのとも違うし−−が気に入ればよし、そうでなければそうでなし。個人的にも絵が気に入ってるから買った本で、そういう意味でまずは期待通りのまんがでした。
 原作小説のほうがおもしろいかどうかは、同じ理屈で小説の語り口次第なんでしょう。そっちはおれは読んでないのですが。

ビッグコミックスペリオール増刊2001年2月6日号

 「SEX BOOK 2001」というのがコンセプトの増刊だそうで。内容のほうもそういうまんがでほぼ統一されてます。例によってラインナップを。

 本誌掲載陣を中心にしっかり手堅いまんがが多いなか、出来としては「ハッピーエンダー」が抜けてるかな。女好き男(既婚)の確信犯的手練手管を身元調査の探偵を狂言まわしに描いてあって、こいつの自分のやってることに毛ほども疑問を抱いてないありさまがすばらしいです。眺めてる分にはおもしろいけど身近に置きたくないなこういうやつは巻き込まれそうだし。
 もうひとつ挙げれば「よりよい男」を追い求めるうそ寒い主人公がナイスな「Dry Wet」。最後に目標を「本物の愛」に変更するところでうそ寒さ倍増。このひと、ヤンジャン増刊(もしかすると本誌にも)に描いてた人だったと思います。


2001/01/07(日)

 おお雪だ雪だ。きれいきれい。と単純に喜べるのが都会者の気楽さなんでしょう。もっとも喜んでるうちに交通機関があっちこっち麻痺してたりするのですが。

 先月の日記で触れたサイトの引越ですが、日記ページだけでなく全部いっせいに越してしまうことにしました。そのほうが面倒なさそうだし。
 新しいURLはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/%7Eskm/になります。今日から引越先のほうも更新するようにしました。まだ仮移転ではありますが。

コミックフラッパー2001年2月号

 「Avalon」(大槻保彦+押井守)前編、「ライバル2」(守安啓行)「金魚姫 for YOU」(花果弥佳)と読切が3つ。動物恩返しものと押しかけ女房ものを足して2で割ったような「金魚姫〜」はあか抜けない感じの絵なのだけど、それがかえって味になってるかな。ここからどう変わるか、見てみたくもあります。
 「雲のグラデュアーレ」(志水アキ+木原浩勝)は今回ひとやすみな内容。前回串P×オオアリクイのバトルにけりが付いた「串やきP」(SABE)、でも今回はひとやすみではなくなにやら不穏な雲行き。それにしてもこのまんが、奇妙なまんがだなあ。あまり似たようなのをみた記憶がない。

女たちのジハード/篠田節子(集英社文庫)

 第117回直木賞受賞作、とのこと。正月に帰省したとき妹夫妻が貸してくれたので読んだ本。
 内容は同じ会社につとめる女性たちの仕事結婚恋愛からみの人間模様の話で、直木賞だからあたりまえなのかもしれないけど、ショートセンテンスを積み重ねた文章はとても読みやすかったし、内容もなかなか興味深かった。いつも浮き世離れした本ばっかり読んでる身としては、バランス的にたまにはこういうのを読むのもいいのかな。もっと言ってしまえばたまにはこういうの読まないといけないのかも。
 働く女性は大変なのだなあ、というのが単純ながら率直な感想。バブル崩壊時の就職戦線で、まず女性、しばらくして男性が大変になったのと同じ理屈で、いずれ働く男性も大変になるんだろうな。覚悟はしておいたほうがよさそうです。

あまなつ/新井英樹(エンターブレイン・ビームコミックス)

 1990年から1994年にかけて発表されたまんがを収録した作品集。うち一本はパーティ増刊などで連載されてた「牽牛庵だより」なので厳密には短編集ではないことになります。
 メインはやっぱり「ひな」になるのかな。見た瞬間あれこのまんが読んだことあるぞどこだったけと思ったら、1994年にモーニングで発表されたまんがでした。色白丸ぽちゃ無邪気な魔性の女に男どもがふりまわされる途中の緊張感や、けんか祭のようなクライマックスの興奮は、この作者ならではの熱にあふれていてとても印象深いです。
 もうひとつ「こどもができたよ」は初出にモーニングルーキーリーグ1990年2号と書いてあるから「宮本から君へ」の前なんだろうか。いつも笑ったような顔でこどもっぽくて、男にどうにもだらしのないかわいい主人公は、これはこれで魔性の女ではあるけれど、「ひな」のヒロインと違ってこちらは自分の魔性に自分で振り回されてます。それにしてもこのラストはあったかくていいなあ。
 3作を通してただよう夏の匂いが、読んでるとけっこうくせになる。予期してた以上におもしろい本でした。買って正解。

BECK(1)/ハロルド作石(講談社・月刊少年マガジンコミックス)

 しばた兄弟猛推薦の一作。1巻はまだ話の導入部で、最後の最後にようやく話が動き始めたところ。引き続き2巻を読んでみることにします。


2001/01/06(土)

 のんびりしていたら新年のスタートがえらく遅れてしまいました。まだ松の内だから明けましておめでとうございますでいいのかな。今年もよろしくお願いします。

ヤングマガジンアッパーズ2001年2号

 これだけ年末に出てるの忘れてたのでした。書いてるのは新年だけど読んだのは帰省の新幹線。間に合った(のか?)。
 たぶん原作とはだいぶ雰囲気が違うのだろう「黒竜の城」(梶原崇+田中芳樹)。始まったときは原作付きかあ、とか思ったけど、華やかさと怪しさと奇妙さと三つもって兼ね備えた絵はたいへん魅力的で、より広い層にという点では原作付きもいいのかなとも思う。もちろんオリジナルは読みたいけど。
 読切前編「鋏客」(玉置一平+夏秋望)は迫力ある絵で描かれた香港系殺し屋もの。このかわいいねーちゃんがもしかするととか思ったりもするけどそれは後編でのお楽しみ。読切はもうひとつ、シリーズ2作目になる「ほぐち屋 張」(村田ひろゆき)が載っています。

ヤングマガジン2001年5+6号

 今回は貧乏夫婦が脇役にまわった「しあわせ団地ダルマ侍」(蓮古田二郎)、主役は賽銭泥棒にしてだるま売りにして駄目人間。その駄目人間をかばうはじめの優しさが今回の隠し味。自分にも優しいが他人にもやさしいのだ。
 目次に載ってない読切「2人暮らし」(市川ヒロシ)は終始無表情無言の男と、悪意はないが思慮も足りないおばか女の二人暮らし。ハムスターに顔面踏まれた最後のコマまで一言も発しない男がおかしさをかもす、実にヤンマガらしい読切。こういう代原付き休載はうれしいな。
 おっと忘れるところだったもうひとつ「ガタピシ車でいこう!!」(山本マサユキ)が頭文字Dの後ろに載ってます。ヤンマガGT掲載作の第2弾、今回は登場人物の思いこんだらな暴走ぶりが楽しい。3号あとにまた載るそうで、いっそのことシリーズなり連載なりにしてしてくれるとうれしいかも。

モーニング2001年5号

 「ぶっせん」(三宅乱丈)の雲信の頭頂部は脂肪だったそうな。そうか脂肪かすごいな。人体の神秘。
 シリーズ読切「浅倉家騒動記」(桝田道也)はやっぱり浅倉家の騒動記そのものが読みたいなあ。前にも同じこと書いたっけ。


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