*単行本の価格は購入時のものです
ヨコハマ買い出し紀行(1〜5)/芦奈野ひとし | 楽園通信社綺談&ビブリオテーク・リヴ/佐藤明機 |
陽炎日記/木尾士目 | 人生はいろいろだ/東城和実 |
えの素(1〜2)/榎本俊二 | めぐりくるはる/OKAMA |
怪奇版画男/唐沢なをき | さぼんどーる/日高トモキチ |
仙術超攻殻ORION/士郎正宗 | ダリヤ・ダリヤ/松本充代 |
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破局後の近未来世界が舞台の、ゆったりしたまんが。このページで触れたまんがの中では有名なほうでしょう。
連載で読んでいるので、単行本はあまりしっかり読んでなかったんだけど、5巻を買ってからしばらくして、寝付けなかった夜に寝床で読んでみました。ひとつひとつのエピソードや描かれた風景が、心にじんわり染みていくのがわかりました。
やっぱりほんとにいいです、このまんが。いいよね、と、だれかれかまわず読ませて、そう聞いてみたい。そんな気分にさせてくれます。
アフタヌーンの四季賞出身作家のまんがはいろんな意味で華やかで、最近ついこのまんがを見過ごしがちだったけど、あらためて見直しました。そのうちもう一度、1巻からのんびり読み直してみようと思います。
・講談社アフタヌーンKC | (1)ISBN4-06-321050-2 C9979 本体427円 |
(2)ISBN4-06-321055-3 C9979 本体427円 | |
(3)ISBN4-06-321061-8 C9979 本体427円 | |
(4)ISBN4-06-321066-9 C9979 本体427円 | |
(5)ISBN4-06-321081-2 C9979 500円(以下続刊) |
なかなか難解なまんがです。作者はたぶんばりばりのSF者で、いろんな設定を作っていて、まんがになってるのは氷山の一角じゃないかと思います。ストーリーをしっかり理解した自信はあまりありません。
ただ、この人のまんが、
ハードSFでむつかしいとか、キャラがとがり耳でかわいい系だとか、ギャグがけっこう多いとか、そういう特徴をあげただけではちっとも伝わらない「よさ」があります。
なんというのか、読んでて感じる楽しさ。まんが自体に魔法がかかっていて、読んだ人を楽しくさせる‥‥なんて、んなわけはないのですが。
先に「楽園通信社綺談」のほうを買って読んで、なんだか無性にもう一冊も読みたくなって、読んだら読んだでくり返し読みたくなる。不思議です。
コミックドラゴンに久々の読切が載ったけど、新作がもっと読みたいです。こういうまんがをのっけてくれる雑誌は多くはないのかもしれないけど、ぜひ読みたいです。読みたい読みたい。麻薬みたい。
・楽園通信社綺談-PARADISE BRANCH | |
ホビージャパン・ホビージャパンコミックス | ISBN4-89425-056-X C0979 本体951円 |
・ビブリオテーク リヴ(Bibliotheque Live) | |
ホビージャパン・ホビージャパンコミックス | ISBN4-89425-155-8 C0979 本体952円 |
アフタヌーン四季賞出身の木尾士目の初単行本です。
収録されてる話はどれも、青くてまじめでこっぱずかしい話です。読んでるほうがそうなのだから、デビュー作まで含めて日の目見てしまった作者の心境たるや。作者自らあとがきまんがでそんなこと描いてます。
登場人物がじつによくしゃべることから直球勝負の作風に見えるけど、よく見るとちゃんとコーナー畧って投げてます。決してなんも考えてないわけではない。主人公にさんざしゃべらせたあげく、「ことばでちゃんと話し合おう」という考え方をひっくりかえしてしまうなんてこともやってます(陽炎日記2)。
アフタヌーン四季賞からデビューした人は、案外デビュー作が単行本未収になってます。黒田硫黄しかり、山上正月しかり、確か小川幸辰も。
そういう意味では、今まで描いたまんがをまるまる、しかも短編集の形で出してもらえるってかなりラッキーなことじゃないかな。作者にとっても読者にとっても。たとえそれが超越的に青くさいデビュー作であっても。
・講談社アフタヌーンKC | ISBN4-06-314170-5 C9979 530円 |
三人姉妹の長女・ななこは、遊んでるより家事をしてるほうが落ち着くぼーっとした女性。
そのななこが妹に引きずられて行ったコンパで気に入って付き合いだしたのが、4浪で暗くて部屋も汚くてなにもできない男・ユキオ。
なぜ気に入ったのか。何が楽しいのか、なんでうまくいってるのか。しょっちゅうすれ違う二人にやきもきする妹たちを尻目に、つきあい方のわからないユキオと、そもそもつきあい方なんて考えたことのないななこは、それでもなんだか楽しそうにつきあっているのでした……
東城和実お得意の、情けない男と何も考えてない女のおはなしです。
頭のねじが2本くらいはずれたように天真爛漫なななこ。自分が好かれていることが理解できず、とんちんかんな応対を繰り返すユキオ。2人のキャラクターと会話がこのまんがのみそ。
やかましい次女とクールな三女、終盤でユキオにからんでくる予備校の同級生・倉橋さんと、脇役もしっかり描かれていて。ありがちな配役ではあるんだけど、こういう物語をきっちりつくりあげるところに、東城和実のまんがのうまさがあると思います。
読んでて笑ってしまうのだけど、いつのまにか優しい気持ちにさせてくれる。完成度の高い、いいまんがです。
・集英社ヤングユーコミックス・コーラスシリーズ | ISBN4-08-864342-9 C9979 500円 |
その昔榎本俊二は、「エロ・グロはやらない」と宣言していたそうな。実際、ゴールデンラッキーの初期などはなかなかほのぼのしたもので、同じ時期にほのぼの犬まんが「ジャッキグー」をものしたりしてます。
「風前の灯ジョー」のころはエロ・グロでもまだテクニカルな領域にとどまっていた榎本俊二だけど、麻雀雑誌掲載の「ロリロックロン」で、読んでて気分悪くなるエロ・スプラッタをやったかと思えば、アクション2の「スカトロジーX」ではこれ以上ないほどナンセンスなスカトロものを描いたりしてます。
そういう試行錯誤の果てに、今の「えの素」があるのでしょう。
「ゴールデンラッキー」末期の榎本俊二は、一時期確かにスランプに陥っていたように思います。
そのスランプから、「ええい行けるところまで行ってやれ」的な開き直りで脱した(ように見える)彼は、もはや行くとこまで行くしかないのでしょう。
歴史上、ここまで来てしまったギャグまんが家は長持ちしてません。彼がその例外となることを祈らずにはおれませんが、それはともかく今が旬なのも確か。旬の榎本をお見逃しなく。
・講談社ワイドKCモーニング | (1)ISBN4-06-337343-6 C9979 560円(533円) |
(2)ISBN4-06-337360-6 C9979 560円(533円) |
世のまんが好き−というか、わたしの周りのまんが好きが手放しでほめる、OKAMAの初単行本です。
これはHまんがです。掲載誌も快楽天だし、Hシーンも出てくるし、申し訳程度ではなくしっかり描かれてる。Hまんが全体のなかでこれがどういうポジションにあるのか、どういう評価を受けるのか。Hまんがを読み込んでないので、そのあたりはわかりません。
わからないけど、でもわたしにも確かにわかること。それは、「120Wのぬくもり」「保健所の彼女」「ヒヨコ」で描かれる、ひととひとやひとに似たもの(アンドロイドなど)のつながり・ぬくもり。「火の用人」のユーモア、「そんな出会いの話」の男女の愛情。Hまんがで名作童話をやってのけた「カナリア」。全編に共通したリズムとセンス。
どのジャンルにも、宝石はころがっています。ふだんHまんがを読まない方も、ぜひ。
・ワニマガジン社・ワニマガジンコミックス | ISBN4-89829-343-3 C9979 530円 |
「業の深い人だ」(水玉蛍之丞)
「単行本になったときは、版画で印刷してほしい」(喜国雅彦)
「彫ることがギャグだったとは」(荒俣宏)
このページ数で単行本にしてくれた小学館に感謝します。
内容は版画です。版画だけど漫画。箱入りの本だけど、箱も表紙も裏表紙も背表紙も、帯まで版画。当然のように目次もページノンブルもあとぼりも初出一覧も版画。奥付も版画。唐沢なをきなら当然とはいえ、ここまで徹底してると快感です。すばらしい。
ビッグコミックスピリッツ21に連載された「怪奇版画男」のほかに、別冊少女コミックに掘り下ろした「怪奇版画少女」も収録されています。
116ページの本をほとんど全部版画で作った、ばかばかしい心意気に万歳。
・BIG SPIRITS COMICS版画スペシャル | ISBN4-09-179301-0 C0079 本体1050円 |
竹書房麻雀まんが誌を中心に活躍している日高トモキチは、いささか器用貧乏なところがあります。なまじ絵がうまいせいで、シリアスものを描いたり、学生ものを描いたり。レポートまんが描かされたり。んでもやっぱり、真骨頂はギャグまんが。
その日高トモキチが珍しく竹書房以外の雑誌に描いたものをまとめた本です。掲載誌はヤンマガエグザクタとまんがジャパンダ。
日高トモキチのギャグまんがは、だいたいぼけとつっこみ、それにみもふたもなさでできています。まぁどれもギャグの基本ですが、なかでもみもふたもなさで笑わせてくれます。やたらにみもふたもないんじゃなくて、さじ加減が絶妙なんです。
いっぽうでテンポのよさも特徴的です。って笑えるギャグマンガはどれもそうなのだけど(「テンポの悪さ」というテンポのよさを持つものも含めて)。
こうやって説明してもちっともおかしさが伝わらないのがギャグまんがのつらいところ。
竹書房の出してる「まんがパロ野球ニュース」という4コマ中心のまんが雑誌があるけど、日高トモキチはこれに「私設野球博物館」というまんがを描いています。これを読んでおもしろければ、「さぼんどーる」もいけます。竹書房から1巻だけ出てる「パラダイス・ロスト」もたぶん。早く2巻出してくれえ。
・講談社ヤンマガKCエグザクタ | ISBN4-06-335014-2 C9979 本体466円 |
士郎正宗というとふつうは「攻殻機動隊」、あるいは「アップルシード」なんだろうけど。個人的にはこれが一番好きです。
少しだけ親切な説明がついているうえ、いちおう現実の未来社会が舞台の「攻殻」と違い、このまんがは舞台はどっかの星、時代は不明、設定された科学理論はわやくちゃで、2時間ほどかけて読み終わった後はすっかり頭がうにになってます。
何度読んでもわけわからんけど、作者のやりたい放題加減が痛快です。宮崎アニメで見てて一番楽しいのは「ラピュタ」だと思うけど、それと同じ。楽しそうに描いてる(ように見える)。
鬼の描き込みはいつもどおりです。ストーリーはと言ったところで、解説しようがありません。一生読めるな、これ。
それはいいけど、「ドミニオンC2」と「アップルシード」はいつ出るんだろう…
・青心社 | ISBN4-87892-007-6 C0079 本体922円 |
松本充代の特徴は、あっさりと描かれた線と、にもかかわらず生々しく伝わる内容にあります。最近はその生々しさが恐怖感につながるようなまんがが多いのだけど、8年前のこの短編集は中学生から20代まで、おとなになりかけの少年少女の−多くは性にまつわるできごとを−描いています。
少女や女を主人公にした話は、リアルなんだろうと思うけど、男のわたしには実際のところはわかりません。
おどろくのは、(解説−村上知彦も書いているけれど)少年や男を主人公にした話が、ごくあたりまえのようにリアリティを持っていること。そういえばこんなこと思ってたな、とこっちが思い出させられる始末。あるいはもう記憶にも残っていなかったり(変声期の心理なんて覚えてません)。女性である松本充代にどうしてこういう話が描けるのか不思議です。
10代のどろどろした情念をなお残しつつ、それに組み敷かれてはいない。そんな感じを漂わせたまんが。そのあたりのバランスのよさが好きです。
・青林堂 ISBN4-7926-0201-7 C0079 | 本体854円 |