*単行本の価格は購入時のものです
でんでんユミコ/森真理 | エクセル・サーガ(1〜2)/六道神士 |
大日本天狗党絵詞(全四巻)/黒田硫黄 | 龍哭譚紀行-DRAGONIA-/やまむらはじめ |
SF大将/とり・みき | 猫とサボテン/まなべゆう |
ルンナ姫放浪記/横山えいじ | カリクラ(1〜2)/華倫変 |
プラスチック解体高校(1)/日本橋ヨヲコ | ジャングルはいつもハレのちグゥ(1)/金田一蓮十郎 |
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麻雀まんが誌(近代麻雀オリジナル)で2年半続いた連載です。内容は4コマとショートストーリー。
主人公・ユミコは背中に巻き貝のようなカラを背負った、不思議な女子高校生。
内気ながらひどく麻雀の強いユミコ。父は放浪の旅、母はデザイナーとして世界を飛び回って家にいないので一人暮らしだけど、愛犬チーワンがいっしょ。
親友やライバル、麻雀好きな先生などに囲まれて、とりとめなくも楽しい毎日をおくるユミコ。まとめてしまえばそんな内容です。
かなり変わった設定のこの漫画が、場違いともいえる麻雀まんが誌で長期連載となったのはなぜか?
カラとか麻雀とか、4コマの宿命であるギャグとか。そういったものをすべてとっぱらったときに見えてくるのは、「親が留守がちの内気な少女のはなし」でした。
ところどころに控え目に描かれる一人暮らしのユミコの日常。その姿が呼び覚ますのは、遠い昔まだ子供だったころの、留守番のときの記憶。あの時感じた何ともいえない心細さであるように思います。
だからこのまんがはちっとも「女子高生まんが」ではありません。むろん「麻雀まんが」でもありません。「こどものまんが」なのです。
とまあそんな風に考えずにのんびり読み流しても、ほのぼの楽しいまんがです。
麻雀のルール知らなくっても大丈夫だと思います。麻雀まんがにありがちな闘牌シーンなんか、このまんがにはほとんど出てこないし。
・竹書房バンブーコミックス ISBN4-8124-5093-4 C9979 | 本体854円 |
世界征服をたくらむ組織と、それを阻止する正義の味方−−という構図で描かれたギャグまんがはたくさんあります。今や古典作の「県立地球防衛軍」(安永航一郎)や、最近では「仮面レンジャー田中」(くぼたまこと)なんていうのも。
このまんがもその1つ。セオリーどおり個性の強い(間抜けも多い)登場人物が敵味方ともに並んでるけど、組織に属する主人公2人の性格がとてもよいです。
貧乏で頑健。思い込みが激しくおっちょこちょいなエクセル。エクセルと同居(つまり貧乏)する、すぐ吐血したり心臓停止したりの病弱美少女ハイアット。この2人が動けば笑えるまんがになるのだから、これは設定の勝利でしょう。
ギャグまんがの例にもれず、こうやって解説してもちっともおもしろさが伝わりません。
すっとこどっこいなギャグが好きな人なら、美少女まんが風の表紙にひるまず試してみてください。
・少年画報社ヤングキングコミックス | (1)ISBN4-7859-1565-X C9979 520円 |
(2)ISBN4-7859-1811-X C9979 520円(以下続刊) |
アフタヌーン連載作品です。筆で描いたように黒っぽい、とても特徴のある絵。人間の形をした、空を飛び魂抜けのできる天狗たち。これに似たまんがは知る限りでは存在しません。
連載でもずっと読んでたけど、単行本で読み直して思ったこと−−これは単行本で読むべき物語だということ。連載中に読んでいたときは話が見えなくなって混乱したのですが、単行本で通読して腑に落ちました。と同時に物語としての完成度の高さに気づき驚いたのでした。
このまんが、売れてません。まんがとしての価値と比べて、これだけ不当に扱われているまんがも珍しいと思います。
もとよりばか売れするまんがではないのだけど。本屋で見かけて絵柄にひかれて買う人、個性的なまんがが好きだから注文してみようという人、そういう人がひとりでも多くこのまんがを読んでくれることを祈ってます。こんなまんがが売れないなんて悔しくって。
・講談社アフタヌーンKC | (一)ISBN4-06-314111-X C9979 530円 |
(二)ISBN4-06-314129-2 C9979 530円 | |
(三)ISBN4-06-314150-0 C9979 530円 | |
(四)ISBN4-06-314152-7 C9979 530円 |
少ないせりふと愛想のない登場人物が特徴的なやまむらはじめ。その初単行本です。
この本にかぎらず、やまむらはじめの描く話はシビアです。登場人物はたいてい過去をしょってるし、キャラクターを安易に幸せにはしないし、それどころかときには生かしておいてさえくれない。
なかでもこの「龍哭譚紀行」は、お気楽ファンタジーに慣れたわたしの胃袋にはこたえました。特に最終話。初単行本ということで確かに絵柄など未熟な感じもあるんだけれど、この物語から受けたショックは小さくありません。
やまむらはじめがこの物語でテーマとした「絆をもつ者同士の争い」と「なにを求めて・なぜ、おれ/ぼく/わたしは生きてくのか」ということは、その後の単行本でも形をかえつつも描かれています。
コミックジャパン廃刊後、やまむらはじめはヤングキングアワーズに執筆の場を移していますが、それまでと違い現代社会を舞台としただけ、物語はいっそう硬質になっているようにも思います。
この本を無条件に勧めてまわるのはちょっと怖いです。それは決して作品の出来のためじゃなくて、作品の内容のためなのです。
だから、重ためのストーリーでもOK、という人には逆に強く推してみたいです。たぶん大きな本屋でないと手に入らない本なんだけど。
・ホビージャパン・ホビージャパンコミックス | ISBN4-89425-018-7 C0079 本体951円 |
SFファンでもあるとり・みきが、海外SF作品を本歌どりにして描いたまんがです。
もとの作品は39作。海外SFには昏いのですが、「ブラッド・ミュージック」「リングワールド」「タイム・パトロール」「鋼鉄都市」など、名前くらいは知ってる作品がたくさん。ほとんどは有名作でしょう。
もとの作品を知ってたのは6つだけだったんですが、もとを知らなくても純粋にとり・みきのまんがとして楽しめます。もちろん知ってれば知ってたで、「この作品がなんでこうなるかね」という楽しみが。つい「のこり33作も読んでみようか」などと思ったりします。
作者による元作品の簡単な解説もついているこの本。凝った装丁も楽しいのですが、1600円はやはりちょっと高い。 早川は単行本として位置づけてるのでしょうが。ハードカバーなんかにしなくていいから、もう少しお手ごろ価格で出してほしかった。おもしろいんだから。
・早川書房 ISBN4-15-208101-5 C0079 | 本体1600円 |
ゴールデンウィーク明けに取った1週間の休み。1週間家から出ず、彼といちゃいちゃ+ごろごろを目論んで。がしかし、4日目に彼は突然自分の家に帰ってしまう。「猫にエサやらなきゃ」と言い残し。そして休み明け‥‥
という表題作を含め、14短編+おまけまんがを収録したまなべゆうの初短編集。
収録作の初出はすべて「YOUNG HIP」。雑誌掲載時に読んでなくてずっと歯がみしていたけど、ようやっと読むことができました。
いいんです、これが。Hな話が多いけど、どれも淡々としてて、でも十分読みでがあって。「実ごろ 花ごろ さくら頃」(集英社)より数段おもしろい。 こういうの読むと、読切短編の上手い人でもなかなか描く機会のない今のまんが雑誌のシステムが恨めしくなります。もっと読切を!
好みをあげれば、筆頭が少年の物語「キミといつまでも」、次が悪ガキ少女の「花はどこだ」。でも、どの短編も楽しめます。
読みおえて、530円でこれだけ楽しめたことにうれしくなりました。お買得です。
・ワニマガジン社・ワニマガジンコミックス | ISBN4-89829-338-7 C9979 530円 |
まんが雑誌に載ってるSFは数あれど、SF雑誌に載ってるまんがはいと少なし。
ということで、SFマガジンの名物まんがが本になりました。書籍扱いでちとお値段が張ります。
足掛け9年にもわたった長期連載で全部で185話もあるので、通して読んでるとけっこう疲れます。
そこで考えた方法。枕許に置いておいて、寝る前に2ページ読んで寝る。これなら疲れない。しかも長持ち。一石二鳥(ほんとか?)。
SFファンならとりあえず買わなくちゃ、的な本かもしれません、これ。あとで懐かしくなって読みたいときに、読めるように。
・早川書房 | ISBN4-15-208135-X C0079 本体1600円 |
ヤンマガや赤BUTAで描いた短編、ヤンマガ短期連載の「テレフォンドール」「カリクラ」を2冊に収録した単行本。
2冊通して読むと、いまでもうまい絵とは言えないにせよ、初期にくらべればずいぶんうまくなってることに気づきます。絵が下手だからという理由で新人を捨てないヤンマガ方式。この単行本はそれが間違ってないことの証でもあります。
起承転結がない、というのは以前書いたし、ほかでも書かれてるけど。正確に言えば「起承転はあるけど結がない」とすべきかもしれません。その起承転にしても決して作り上げたものでなく、そこにあるものをそのまま描いている−努めてそうしようとしてるのが見出せます。
それが最高にうまくいったのが2巻収録の「大林寺先生」で、連載時に読んだときはきつねかたぬきに化かされたようでした。げらげら笑いたくなるところまで一緒。
緊迫感とけだるさを同時に描くことに成功している「張り込み」、信じがたいものを信じようとする少女に心動く「ピンクの液体」、大阪弁での一人芝居が冴える「殺しのナンバー669」、読者の放り出しかたが楽しい「テレフォンレディ」「ポルノ」。
好短編の多いなか、華倫変愛好者から罵られるのを覚悟の上で「桶の女」をベストにあげます。
初めて読んだとき不覚にも感動してしまったこの短編、素直に評価すれば間違いなく秀作短編です。たとえそれが一見華倫変らしくなかったとしても。
・講談社ヤンマガKC | (1)ISBN4-06-336721-5 C9979 530円(505円) |
(2)ISBN4-06-336737-1 C9979 530円(505円) |
ヤンマガ連載作品です。作者の初単行本です。たぶん。
舞台は高校。ヤンキー物でもなくスポーツ物でもない高校物は比較的少ないのでは。
よくわからんタイトルだし、作者の名前も変だけど、これはまっとうで真摯なまんがです。
個性的な登場人物と起伏の多いストーリー。実際にいそう/ありそうということではないんだけど、このまんがは今の時代のある雰囲気を取り込むことに成功しているように思えます。
先が見えない、夢がない、なりたいものが見つからない。前をむくことが昔よりもむつかしい。そのあたりをすべてわかった上で、それでも前を向こうよという作者の思いが込められてるようで、ある種のすがすがしさがあります。
実際の今の高校がどんなか、そこの空気がどんなか。高校生活をずっと前に終えた身には知るすべもないんだけど。
なお、連載はすでに終了してます。どうも人気がなく打ち切られたようで、少し強引にラストにもっていかざるを得なかった感じです。残念。
・講談社ヤンマガKC | (1)ISBN4-06-336720-7 C9979 530円(以下続刊) |
とある平和なジャングルで、母とふたり暮らすハレ。ある日両親のいない(はずの)グゥという娘が家にやってきて一緒に暮らすことになったものの、これが人でも物でも風呂の水でも飲み込んでしまう−−しかも飲まれたほうは腹の中で生きている−−とんでもない生き物だった。ハレがこのグゥに振り回される‥というさまを描いたまんがです。子供向け。
グゥのおなかん中はどうなってるのか。ジャングルなのになんでTVがあるのか。TVゲームも学校もあって、便所が水洗なのは。そもそもいったいジャングルって‥‥という説明はいっさいありません、このまんが。剣と魔法の世界や、未来という逃げ道をつくることもしてません。なかなかいさぎよいです。
設定に凝ったまんがも楽しいけれど、設定なんていいかげんでもおもしろけりゃおもしろいまんがなんだから。
そういう意味でむかしむかしのまんがの血を引いてるともいえるけど、むかしのと違うのは笑いの寒さ。魔法陣グルグルもそうだけど、こういうのを子供のころから読んできたなかから、どういうギャグの描き手が生まれるか。楽しみといえば楽しみです。
・エニックス・ガンガンコミックス | ISBN4-87025-245-7 C9979 410円(以下続刊) |