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無意味な風がピスカ山に吹いている。
そこには長髪の黒髪の男が立っていた。
『え・・・ここに確認します。
登録No.88と184と432と431の4名です。
・・・ハイ。
4つ確認できましたので
彼らはクリアされたということです』
その男は警備服のようなものを着ている。
胸には世界政府関係者の証明であるバッチがつけられている。
それには【L/U】という文字が彫られていた。
だがバッジは高級感がなく
どこにでもありそうな安物みたいでもある。
『4名とも生存確認です。
今から連れて行きます』
その人物はジープのような乗り物に4人を乗せる。
その車にも【L/U】のマークがついていた。
だが、車というが
その車はタイヤがついてはいない。
そして、その男が運転席に乗ると
そのジープは浮き上がった。
山の中では木が多くて運転できないように思えたが
幹ではなく枝の方まで上昇し一気に下に突っ込んだ。
まるで木々は生きているかのように
その車のような物体に道をあけるように枝が動いた。
原理はわからないが、その物体が木を動かしているのであろう。
言うまでもないが
ジープのような乗り物に乗せられた4人とは
ラウド達である。
ピスカトレジャーイベントはまだ続いているが
参加不能と確認された者は
リタイアという形で主催者の警備隊に保護されるようになっている。
しかし、ラウドたちは
あのアクセスポイントこと、スキルポーションを持っていたため
リタイアという形にはならなかった。
アクセスポイントを持ち帰ったことになるため
国王からの特別賞をもらえる権利を得たのである。
長髪の黒髪の男は運転席から外れると
4人が乗っている後ろに移動した。
ちなみにこの乗り物は無人用にもなるらしい。
そういうわけでその男は運転席を外れることが出来た。
そしてラウドの前に行くと首元に手を伸ばして何かを探る。
意外なことにラウドの首下からシルバーのネックレスが出てきた。
それは年数が経っているようにも見えるが
見た目は新品のように輝いている。
アクセントはクリスタルになっており、筒のような形をしている。
そこを手に取ったその男は何かを探す。
そのクリスタルのアクセントには文字が刻まれていた。
『R・J・・・か』
それを見たその男はニヤリと笑うと
またそれを首元に戻した。
『あとは向こうを動かすだけだな』
そうつぶやくと
ジープのような乗り物は麓についていた。
ピスカには病院も一つしかない。
しかし、それは一つしかないため
とても大きい総合病院並の規模でもあった。
そこの202号室に男が寝ている。
そこに左腕を包帯で固定した男がその部屋に入る。
そこは完全な個室になっていた。
そこにはラウドが寝ている。
そして左腕を固定した男とはディルのことだった。
『お?ディルも来たのか?』
ラウドは全身に包帯が巻かれるような状態で
頭にも包帯が巻かれている。
『ずいぶんひどい怪我みたいだな』
ディルは自分の左腕と比べて少し笑う。
それとは関係なしに
ラウドは浮かない顔をする。
『それがよ・・・。
俺はこんなにやられた記憶がないんだよな・・・』
とそのあと
「一撃でやられた」と続けようとしたが
ラウドの変なところの意地で
それを言うのを拒んだ。
一撃でやられたなんてかっこ悪いから
というのが理由らしい。
『いずれにしても
しばらくはここで安静だな』
ラウドの状態を見て半年は入院だな
とディルは判断した。
それよりも気になることはあった。
『ところで、あの女は大丈夫か?』
だが、質問が先にきたので
ディルは仕方なく答を先にすることにした。
あの女とはレナのことである。
『レナもここに入院している。
まだ、もう少し入院しないといけないようだけどな。
あと、レビンは・・・』
と言いかけてラウドが割り込む。
『レビンは退院したろ?
この前、あの大会の特別賞を持ってきてくれたしな』
と、右腕を窓の方にある机の方に動かした。
『会ったのか?
・・・そうか』
ディルは一つの疑問はなくなった。
しかしレビンには別に会いたいとも思っていなかったので、
それは結構どうでもいいことだった。
だがラウドの動かした方の机に向かう。
そこには安物ぽいバッチが3つ置いてあった。
『L・・・U?
・・・これは』
ディルにはこのバッチが意味することがわかった。
そのバッチには
あの【L/U】という文字が刻まれたいたのである。
『レビンがいうには世界政府に関係するバッチらしいぜ』
ラウドは興味なさそうに適当に言うと
『でも、それが意味することって・・・』
ディルはそのバッチを手に取ると
ラウドのほうを向く。
『世界政府とすれば
アクセスポイントを見つけることのできる
優秀な人材ってことなんだろう。
つまりは世界政府の防衛軍隊【ピース】のスカウトってことだろう』
そういうとバッチを机の上に戻した。
何度もでてきているこの世界政府であるが
ここの世界での世界とは南地区を表す。
北地区と呼ばれるこのピスカでは
この世界政府のピースとは
南地区の都合による軍隊程度の認識でしかなかった。
実際、北地区の半分以上は
世界政府による植民地状態だったのである。
つまりはラウドにしろ、ディルにしろ、気分は良くないことである。
『政府の下で働けってことかよ。
とんだ特別賞だな』
だが、実際ピースで働くということは
ある意味で名誉でもあった。
ピースになるには
こういうスカウト的なこと以外ではまずありえないからである。
収入も政府がらみなので結構いいらしい。
お金だけを考えれば
北地区でもなりたいと思う人は沢山いる。
だが、ラウドのように強くだけなりたいと思ってる者や
ディルのように誰も死なせたくないと思う平和主義者には縁のない話である。
『ところで、ラウド。一つ聞きたいのだが
お前が最後に戦った相手ってガンプなのか?』
ディルは雰囲気そのままに話を変えた。
ラウドは首を縦に振るだけで何も言わなかった。
それを見たディルもそのことについては触れないことにした。
『このあとはどうするんだ?
ここはとりあえず後回しになるが他の七秘宝を見つけにいくんだろ?』
ディルはとりあえず次の七秘宝探しに頭を切り替えた。
ラウドもすでに頭を切り替えたようである。
『そういえば、レビンから聞いたんだけどよ
ここの近く国にも七秘宝があるらしんだ。
確か・・・ノイズって言ったかな?』
それを聞いたディルは少々驚いたが
ラウドには悟られていないようで
それを確認して窓の方に向かう。
『ノイズにいくのか?』
ディルの口調は重い。
後姿になったディルの雰囲気をラウドも感じとったのだが、
『聖剣になるには七秘宝を見つけないといけないしな。
今回みたいなことになっても仕方ないぜ。
でもよ・・・今回はある意味仕方ないと思うんだ』
ラウドならそういうと思っていたので
話の続きを聞くことにした。
『俺の知り合いの情報屋のサガっていうオヤジがいるんだけどよ
そのオヤジが言うには
ここピスカの七秘宝はスキルを持ってないとダメらしんだよ。
多分ガンプみたいな聖剣つぶしが
ここにはよく来るからなんだと思うんだけどな・・・』
そう言うとラウドは黙ってしまった。
ディルは何かを思うようにラウドのほうに再び近づいてきた。
『ノイズなら俺も案内できるかもしれない。
ノイズは・・・俺の故郷だからな』
今度はラウドが驚いた。
『本当か?ならいこうぜ。
ノイズによ!』
ラウドの張り切り振りとは対象に
ディルは落ち着いていた。
『だけど、まずは体を治してからだな』
『あぁ。そうだよな・・・』
言葉は落ち込んでいたが
顔はうれしそうである。
ラウドにとってはピスカを出る事が楽しみだったのである。
『そういえばさっきのレビンのことだけどよ、
あいつさぁ、一人がいいとかいってたくせに
ノイズで合流しようみたいな事言ったんだ。
なんか変だよな?』
ディルはレビンと聞いた時点で顔が険しくなっていた。
そして出口の方に歩いていく。
『ラウドはあいつと行動するのか?』
また後姿になったディルを見る形になったラウドだが、
『まぁ、仲間は多い方がいいしな』
ラウドにはレビンも仲間という認識があるらしい。
彼にとっては共に行動した者は仲間みたいなところがあるのだろう。
そうディルは確信した。
『そうか・・・。
俺はノイズには別の用事がある。
それまでは一緒に行けるだろうな』
そう言うとディルはまた近いうちに来るとだけ言って部屋を出た。
あいつは思いつめるタイプなんだなぁ。
と楽天家のラウドにはちょっと考えのつかないディルの行動に
また少し興味がでてきていた。
-別の用事ってなんだろうな。
・・・。
というか早く退院したいぜ・・・-
そう思えば思うほど体が疼いていた。
そういう思いが強かったためか
このあと2ヶ月という早さで
ラウドは退院することになる。
<フリーセレクトノベル>
*それぞれの話を読むことが出来ます。
*別に読まなくても話は分かるとは思います。
・ディルの章
・レナの章
・レビンの章
2ヵ月後
暦はもうすぐで12月
ラウドは病院を半ば強引に退院したあと
港の方に歩いていた。
退院する1週間前近くにティノがやってきた。
ラウドはあのことをまだ気にしていた。
『生きて帰ってこれたんだね』
相変わらずきつい一言である。
ティノはしばらく会わないうちに髪が肩についていた。
傍から見るとずいぶん大人ぽくなっているのだが
ラウドにはそういうことには興味がなかった。
『まぁ、今回は相手も悪かったしな』
この頃になると体以外の包帯は外れていたので
ラウドもある程度は動けるようになっていた。
そして、右拳を軽く突き出した。
『ん?もう治った気がするな』
そう言うと起き上がろうとするが
体は全く起き上がらない。
『見た目、重症だよ。
無理すんじゃないよ』
少しからかうようにティノは言うと
どこかで買ってきた花を生けに花瓶に水を入れにいく。
『なぁ・・・前言っていた続きを聞きたいんだけどさ』
ティノの後姿を見ながらラウドは以前の疑問を再び聞いてみる。
ティノはそのことを気にしないように花瓶に水を入れている。
『ギルバードのこと?』
ラウドは返事をしなかったが、ティノはそのまま続ける。
『ラウが、このまま七秘宝を探すことになったら
いずれ・・・』
ビンに花を生けてラウドのほうに向かってくる。
その時ドアの向こう側が騒がしくなる。
そしてノックする音が聞こえるとともにドアが開いた。
『あれ?
・・・どちらさん?』
その声の主はティノを見て驚いた。
それはこっちのセリフだよという表情のティノ。
それをラウドが滑稽に見ている。
一方で、やってきたのはその声の主ともう一人いた。
『もしかして・・・邪魔か?』
もう一人の男はそう言うと出て行こうとするが
『別にここにいていいぞ。
せっかく来てくれたんだしよ』
この来訪者はディルとレナであった。
ディルとレナにとってはティノは聞いてもいない人だったので
単純にラウドの彼女と勘違いしたのである。
『ラウドも見かけによらず・・・』
レナはなぜかうれしそうにつぶやく。
『この2人は誰だい?』
ティノも当然にラウドに聞いてくる。
この後、ラウドはティノのこととディルとレナのことを交互に話す。
『お姉さんかぁ。なんだぁ』
事実がわかると
今度はつまらなくなったようにレナがつぶやいた。
ディルは今はあまり長居するのは気まずいと思ったのか
出直すとラウドに言うと
レナを連れてすぐに部屋を出た。
『あいつは姉といっていたけどな・・・』
ディルは変なところで想像力が働くようである。
『やっぱり彼女なのかなぁ?』
レナも半信半疑ながらもうれしそうに答える。
『でも意外だな・・・』
ディルは少々複雑な気持ちになった。
『こう言っちゃ失礼だけど
田舎って恋愛の発展も早いって聞くからネェ・・・。
あんがい子供もいるかもよ』
そう言いながらレナはうれしそうに想像を膨らませていた。
『あいつら絶対勘違いしてるぞ』
ラウドも半分にやけながら出口の方を向いていた。
『あの2人がピストレで出会った仲間?』
ティノはそのことを気にすることもなく冷静に話を続ける。
『そうだぜ・・・って話がだいぶずれちまったな。
・・・そうだ。
七秘宝を探し続けたら何でギルバートに殺されるんだ?』
ラウドも話を戻した。
ティノは花瓶をラウドの枕元にある台に置くと
一息置いた。
『私・・・
未来が見えるんだよ』
一瞬時が止まった。
『は?未来が見える?』
ラウドは驚きというよりは愕然としていた。
『まぁ・・・信じてくれないとは思ったけどね。
だから今は言いたくなかったんだ。
ラウがスキルを持てばある程度は分かるかもしれないけどさ・・・』
相変わらず意味がわからないティノの言葉に
ラウドはある推測をした。
『フ〜ン。
そうか、そうまで言って俺をここに引き止めたいんだな?』
ラウドの推測とは
ティノがラウドを島から出させない「方便」だということであった。
それにはティノはきょとんとしていたがラウドは続ける。
『ギルバードのこともサガから聞いたんだろ?
でもな、そんな嘘言っても無駄だぜ。
俺は聖剣になるって決めたんだから
誰がなんと言おうと七秘宝見つけて聖剣になるぜ』
意気込みを話して気合が入っているラウドとは対照的に
その話を聞いても冷静に徹しているティノ。
『まぁ・・・いいわ。
どうせドクさん殴りに帰って来るんでしょ?』
ため息を一つすると部屋を出ようとする。
『そんな一生いなくなるわけじゃないんだからよ
まぁ2・3年ぐらいだろうし・・・
でも、一生帰ってこないてこともあるかもしれないな。
こればっかりは運命だろうし・・・』
ラウドにとってはティノを説得しているのだが
ティノはラウドの言葉の運命という言葉が気になった。
『・・・。
運命かもね。
いずれ魔城に行くことになるだろうし。
聖剣になるには魔城に行くことが絶対条件。
だけど、魔城に行くだけならいくらでも方法はあるんだよ』
魔城という言葉は初めて聞いたわけではなかったが
ラウドにはいまだに良く分からない名前である。
伝説的には聖剣が住んでいた土地とされている。
だが、ティノの言い方だと
聖剣じゃなくても魔城には行ける事になる。
だがラウドは
また話をはぐらかしたという程度にしか思っていなかった。
『もう、分かったって。
でも俺がギルバートに殺されることがないって分かっただけでもいいや』
ラウドはティノの話を完全に嘘と決め付けてしまった。
ティノもそれを感じたのでそれ以上は何も言わなかった。
『出発するときは"マナ"に寄ってくれる?』
そう言うとティノは出て行った。
マナとはピスカの港にある
一つの飲食店の名前である。
ピスカのような国にしては珍しいほどのインテリ系のお店らしい。
ラウドはティノが出て行った出口を見ていると
再び人が入ってきた。
『なんか彼女怒ってたような気がしたけど・・・』
レナが少しにやついて入ってきた。
その後ろにディルがついてきた。
『あのな〜。
勝手に勘違いするのは勝手だけどな』
ラウドは別に弁明をしているわけではなかったが
なんだかそういう気分になってきた。
それがレナには面白かったようだ。
『むきになってるところを見ると、やっぱり〜』
ラウドをからかうレナとは対照的に
ディルは落ち着いて話を切り出す。
『ラウド、ところでノイズ行きの事なんだが
あと一週間ほどで今年のノイズ行きの出航が終わるらしい』
『こ、今年って?
12月以降になるとなんか都合悪いのか?』
ディルは少し笑うと
『ああ。
ノイズは冬の孤島とも言われる「最北の地」だ。
大体1月前後に流氷がやってきて
港が全く使えなくなるんだ』
それを聞いたラウドは飛び起きた。
『それじゃ、俺はこんなとこで
のんびり寝てる場合じゃないじゃないかよ』
そして無理に体を動かそうとするが
まだ完全に完治していないらしく体に激痛が走る。
『その状態なら今年は無理そうだな。
一応最終日まで俺らはここにいるから
間に合うようなら一緒にノイズに行こう』
そう言うと一枚の紙をラウドに渡した。
『2000ホルンもしたんだから頑張って治してよね
一応貸しってことにしてあるから。
チケット代』
レナはそう言うと先に出て行った。
ディルから渡された物は
ノイズ行きのチケットだった。
そしてそのお金はレナが立て替えているようである。
ちなみにホルンとはピスカのお金の単位である。
『俺は無理をして一緒に来てもらいたいとは思わない。
レナはどちらかというとラウドと同じ意見だったけどな』
そう言うとディルも出て行った。
『あと一週間かよ・・・』
ラウド自身はあと1週間あれば
体は治ると思ってる。
だが、実際は医者が言うには全治4ヶ月なのだ。
それがかなり心配となっていた。
意外にも、ラウドは病院は苦手らしい。
だが、
意地でラウドは一週間で退院して
港町に向かっている。
今日が今年最後のノイズ行きである。
だが旅立つ前に
ティノとの約束を守らないと思っていた。
港町には30軒以上の店が並んでいるが
この「マナ」だけは他の店の雰囲気と違っている。
新しいということもあるが
ピスカの国にしてみれば「今どきの店」になる。
ドアを開けると
ティノとラウドが知らない男の2人だけがいた。
『あ・・・ラウ。
もう退院していいの?』
ティノが結構驚いていて
それがラウドには逆に驚いてしまうことになった。
『まぁ・・・
俺が治ったと思うから、いいと思うぜ』
これまた強引な言い分である。
『君がドクの御子息かい?』
ティノの隣にいた長髪の黒髪の男が尋ねる。
『そうだけど、お前は誰だ?』
まだ完全に完治していないラウドには
ドクの話をされても怒る気力はなかった。
『実は君に会うのは2度目なんだよね。
僕はピストレの実行委員で
君達をピスカ山から連れてきたんだよ。
名前はマクレンっていうよ。よろしくな』
おそらくレナのような女性がいれば
一目ぼれするようなさわやかな雰囲気をもった好青年である。
しかし、この男。
以前ティノと謎の会話をしていた男だったのだ。
そしてラウド達をピスカ山から連れてくる時にも
ラウドのネックレスを探した不審な行動をした男である。
もちろんそんなことをラウドが知るわけもない。
『あぁ、そりゃどうも。
マクレンがいなけりゃ
俺らは今ごろマルグマの餌になってただろうな』
そう言うと右手で頭をかく。
それをティノはやや申し訳なさそうに見ている。
『というかラウ、その格好寒くないの?』
そういわれて見ると
ラウドはピストレに出たときの格好のままだった。
上着は袖なしの胴着で下も夏用の薄着であった。
それを見かねたティノは
店の奥からパーカーを持ってきた。
『いつも悪いな』
いつもということからも分かるように
服装に関してはラウドは無頓着で
ティノが持って来ていたのである。
『あと、これも持っていって』
とティノから『シルバーの指輪』を渡された。
真ん中にはルビー色の石の様な物が埋め込まれていた。
『これを付けるのか?』
その指輪が何を意味しているのか
ラウドには良く分からなかった。
『いや、持ってるだけでいいのよ。
ただ、無くさないでね』
とだけ言うと時間がないことをラウドに告げる。
『あ、もう出航の時間じゃないかよ。
それじゃ、ありがたく借りていくぜ。
じゃな』
というと体を庇いながらではあるが
走って港に向かう。
それを見届けて、ティノはマクレンのほうを向く。
『あんな言い方では不審がられるだろ?』
というマクレンの問いには
『ラウはかえって変に小細工をしないほうが
不審がらずに持っていますよ』
と笑って返した。
それを見てマクレンは
複雑な顔をしてタバコに火をつけた。
汽笛が長く2回鳴る。
これは出航の合図である。
ディルはラウドは来ないと思って
すでに部屋に入ろうとしている。
『ディル!』
デッキにいたレナから声がした。
ディルはその声に反応するように
デッキに向かおうとした。
ボッボーーッ!
船が動き出した。
しかしディルはデッキに向かう。
『おやじ!
ノイズ行きのチケットあるんだけど
船はもう出た?』
港にやっとラウドの姿が見えた。
『今から戻っては来れないぞ』
と受付の男は言うが
ラウドはチケットをその男に渡すと
船の方に向かって走り出す。
『ディル!頼む!』
ディルとレナにもラウドが走ってきているのは見えていた。
『頼むってどうするつもりなの?ラウドは?』
レナはディルのほうを向いて困った顔をしている。
だがディルは、わかったというような表情をした。
ディルは右手から魔剣を取り出すと
ラウドに向かって魔剣を伸ばした。
他に船に乗っている者から驚きの声が出る。
ラウドが魔剣を掴むと
今度はディルは魔剣を縮めた。
そうしてラウドは
無事?船に乗り込むことが出来たのである。
周りからは知らないうちにギャラリーが集まっていて
拍手が鳴り響いた。
ラウドはそれに応えていたが
ディルとレナは恥ずかしそうに下を見ていた。
出航は少々順調とはいかなかったものの
ラウドは無事ピスカから旅立ったのであった。
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