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『セイメイセキってよ・・・』
ラウドが言い切る前にガンプが説明した。
『僕はこのイベント中、ここの管理を任されてるんだよ』
木に手をつけながらその木の上を見上げる。
『何が・・・管理だよ。
お前、聖剣つぶし(イレイズナイト)って言われてるんだろ?』
その通りだよというような顔をガンプはするが、
それもお構いなしという感じで話を続ける。
『この生名跡(セイメイセキ)は
ここにあるスキルポーションの生みの親のようなもの。
だから時々その事実を知ったどこかのハンターが
これを狙いにくるんだよ』
そういうとニヤリと笑い
『もしかしてセイメイセキって、
七秘宝の方と勘違いしていたのかい?』
ラウドの疑問をそのまま返した答に
ラウドは何も言えなかった。
『聖剣つぶしっていうのはここ以外でも言われるけど、
ここでは、生名跡を狙いにくる聖剣を目指す者を
獲物にしてるからじゃないかな?』
そういうとラウドのほうに歩き出す。
ラウドはいつでも戦えるように構えはそのままである。
そのとき珍しくレビンが会話に入る。
とはいっても後ろ向きで体は動けないままだ。
『七秘宝は頂上にあるんやろ』
必死で体の向きを変えようとしているが、
どうにもならないようで、
とりあえずはガンプの言動を調べようとしていた。
『・・・まぁそうだろうね。
だけど今の君には用が無いところだと思うけどね』
ガンプはレビンの方は向かずに
ラウドに向かってそう言った。
『こっちはおおアリだぜ』
ラウドは力を右腕にため始めていた。
ガンプが自分の間合いに来たとき
いつでも仕掛けられるようにである。
そのことを分かっていたのかのように
ラウドの間合いのちょっと手前でガンプは止まる。
『"行ければ"わかるよ』
"行ければ"というところが特に強調されていた。
それには
『"行けば"わかるやろ』
と、レビンがすぐに返した。
もちろん"行けば"のところを強調して。
それを聞いていたのかは知らないが
ガンプは山頂の方を向いた。
位置的にはレビンが一番谷側で、
ラウドとガンプの斜め左上に、生名跡のある大木がある。
その大木とはちょっと別の方を向いたことになる。
『君は聖剣になりたいといっていたよね?』
『ああ・・・って何の話だよ』
意外にも聖剣についての話だったので
ラウドは少し気が抜けた。
『少し君に話すことがあってね』
そういうと山頂に向かって何かの合図らしき行動をする。
左腕を上げると手信号のような奇妙な動きをした。
『じゃ、後は任せたよ』
山頂に向かってそう言うと
同じく山頂に向かって歩き出した。
-前から怪しい奴だとは思ってたけど、ついに狂ったのか?-
ラウドは今まで以上に
ガンプに不気味さをかんじることになった。
と、山頂からまた人影が見えた。
『相変わらず大げさな合図ね。ガンちゃんは♪』
なにやら妙な口調の女性が下りてきた。
完全に染めていると思われる黄色のボサボサの髪の毛に
言動にふさわしい幼顔。
ガンプのマントとおそろいの様な格好をしている。
ガンプはその女性と会うと
『下にいるメガネ君を相手してくれないか?
後はもう一人ぐらい仲間がいるはずだから、そいつも頼むよ』
とだけ言うと
『今年は暇だしね♪OK〜任せといて♪』
とまたその妙な口調で
右腕を警官のようにびしっと決めていた。
その行動に慣れているのか
ガンプはまったくのノーリアクションで
今度はラウドの方を向き
『ついてきなよ』
というと山頂に登っていった。
ガンプの言うことに興味があったが
レビンのことを思いここに残ろうと思った。
『ガンちゃんの言うことは
聞いておいた方がいいわよ♪
ラヴはね〜、
下にいる子がガンちゃんの邪魔をしないように
見張るだけなのよ♪』
そういうとレビンの方に向かっていく。
そして見たところレビンはどうやら動けるようになったらしい。
そのラヴという女性にさっそく銃を向けている。
それを見たラウドは大丈夫だなと確信してガンプの後を追った。
レビンはラヴという女性に銃を突きつけたまま
山頂の方を向いていた。
『お前もガンプの仲間か?』
それを聞くとラヴという女性から笑みがこぼれた。
『キャ〜。仲間ですって?
ガンちゃんは仲間というより愛人よ』
どこかにいそうな「ぶりっ子」の様な動きをするラヴだが
レビンはその行動には全く興味が無いらしく
『どういう状況かわかってないみたいやな。
邪魔や』
そういうと銃口が光った。
「バァン」
その銃弾はラヴの額を貫通し、倒れた。
ところが
『一応当たったら死んじゃうんだからね〜♪』
全く別のところにラヴが額を抑えながらいた。
それどこではない。
大木の周りに4,5人もいる。
『・・・うざいわ』
レビンはラヴがスキルの力を使ったことをすぐに感じ取った。
-残像・・・いや分身を作り出したのか?-
先ほど銃弾を受けたラブの姿は消えていた。
そしてそれを見たレビンは
躊躇することなく全てのラヴに向かって銃弾を撃つ。
しかし、全てに命中したものの
また別のところにラヴが現れる。
『遅いわよ〜♪
ただのガンマン君じゃ
ラヴにかすり傷もつけれないわよ♪』
すると今度は二人のラヴがレビンの目の前に現れる。
一人が正面から銃を掴むと、
もう一人が後ろから両腕をつかむ。
正面のラヴが掴んだ銃をはじき出す。
そして後ろのラヴがレビンの腕を後ろに持っていった。
正面にいたラヴがレビンの横に立つと
さらに奥からもう一人のラヴが近づいてくる。
『スキルを使いこなせないんじゃ、
この先に行くのは危険すぎるわね♪』
その瞬間にレビンのがらあきになった上半身に拳を入れた。
たった一撃だが今のレビンには激痛が入るほどの衝撃波だった。
その後も数発食らったような気がしたが、
そのときはすでに記憶が飛んでいた。
ディルとレナは遅れを取り戻すために
少し早歩きになっていた。
『銃声だな』
ディルはとっさにレビンのことを思い浮かべた。
『レビンはそんなに悪い人じゃないと思うよ』
ディルが人の死について敏感だということに
レナは気づいていた。
それでなくてもディルの人生の一部に
自分の姉が絡んでいる。
ディルには冷静に行動してほしいと思っていた。
もしかするとレビンのことも
許せない一人なんじゃないかと思っていた。
『悪いか良いかはおいておいても、
人を簡単に殺せる道具を持っていることには変わりは無いよ』
そういうとディルはさらに歩幅を広げた。
レナは別にレビンをかばって言っているわけではない。
結果的にグローバーを倒すことに協力してもらっているし、
七秘宝とかアクセスポイントであるスキルポーションに興味があるわけでもない。
仲間を失った今
レナも仲間を欲しがっていたのかもしれない。
とりあえずアジトに帰るまでの。
無言になるのは怖かったので、
ラウドのことや、この山について話しをした。
どれぐらいの時間が経ったのかわからないが
植物にはあまり変化が見られない。
レナはそれが変だと思っていた。
『今どれぐらいの高さなんだろうね』
山の中にはまだ沢山の木が生えているため
周りの風景も木だらけである。
だからこそ不思議になった。
『もう何日かは登りっぱなしだからな、
4000Mぐらいは登った気はするけどな』
ディルも自分でそう言いながら変だと気づいていた。
『この景色は、はじめとあまり変わっていないな』
山頂を見ても雲がいまだにかかっている。
4000Mなら霧がかかっていてもおかしくは無い高さだろう。
と、その山頂の方から何か降りてくる音がする。
『何かくるぞ』
と、とっさにレナをかばうように前を固めた。
『団体だったら逃げないとね』
レナはこういう状況に慣れているのか
案外冷静だった。
『いや・・・一人みたいだ』
だがどちらにしても見つかるのはまずいと思い
少し大きな木の横に潜むことにした。
『誰かを背負ってるみたいだね』
降りてくる人物は何かを背負ってるようであった。
しかし二人にはその背負われてる人物に見覚えがあった。
『おっかしいなぁ〜♪
確かにここら辺にいたと思ったんだけどなぁ♪』
その人物はレビンを背負ったラヴであった。
ラヴはレビンを下におろすと、
レビンから奪った銃をレビンの額につけた。
『早くしないと、撃っちゃおうかな〜♪』
明らかな誘いであることはディルにはレナにもわかっていた。
だが、ディルには我慢できなかった。
『銃を下ろせ』
そういうとディルはラヴの前にあわられた。
『ん?
・・・あ!君だ!♪
駄目だよ〜逃げたりしちゃ♪』
ラブは銃をレビンの腹の上に落とすと
ディルを指差す。
『君もこのメガネ君達の仲間なんでしょ♪』
なぜレビンと知り合いなのかを
知っていたのかということより
"達"ということで
この女性がラウドに会ったことを察知したディルは
『ラウドはどうした』
と言うとラヴを睨んだ。
『そんな怖い顔しないで♪
へ〜、ラウド君って言うんだ♪
ガンちゃんが連れて行った男の子は♪』
ラヴは相変わらす「ぶりっ子」スタイルだった。
ディルとラヴのやり取りを隠れてレナは聞いていた。
-あんなおかしな女にレビンがやられるなんて・・・
スキル使いだね。きっと-
そう思うとディル一人ではまずいと思い
レナは立ち上がる。
『そこのぶりっ子!よく聞きなさい!
レビンを連れてきてくれた事には感謝するけど、
今すぐここから去りなさい!
さもないと・・・』
レビンを連れてきたというのは
レナがとっさに考えた方便であったが
そのレナの横には何故か
向こうにいるはずのラヴがいた。
『さもないとな〜に♪』
レナの肩に手をかけてにこっと笑うラヴ。
ディルはこの状況から
ラヴがスキル使いであることはわかった。
しかもラヴは初めから
レナの居場所もわかっていたようである。
『お前、はじめから隠れていたことを知っていたな』
『うん♪
だけどガンちゃんは、仲間はあと一人って言ってたから
どっちかわからないから、カマかけたの♪』
ディルは先ほどから聞いている「ガンちゃん」という人物が
誰なのかは想像できていた。
だからこそ、この女性も自分には
かなうレベルではないということを察知していた。
とにかく自分よりレナを守らなければという思いになる。
『何が目的なんだ。お前は』
『暇つぶし♪かなァ♪』
そういうとディルの周りにラヴが3,4人現れた。
同時にレナの周りにも現れていた。
-誰も死なせない-
-生きてみせる-
二人の思いはむなしく、ラヴが二人に攻撃を仕掛け
その場に二人は倒れた。
生名跡があったところからだいぶ上に登った。
もうすでにレビン達の姿は見えない。
すると今までとは違い
人工的に造られたような広場のような場所が見えてきた。
-こんな山奥に人がいたのか?-
ラウドはその広場が
かつてこの山が鉱山のときに作られたものでないことをわかっていた。
あまりにも出来たてだったからである。
『結構いい場所でしょ?』
ガンプがラウドに尋ねると、
ラウドはここをガンプが作ったのだと思った。
でも、何のためにだ?
疑問がまたでてくる。
『ラウド君がこの山で修行みたいなことをしていたことは
聞いたことがあるよ。
この山の入り口周辺には
スキル使いを通さない電波が通っていたけど
君はまだそのときはスキルを使えてなかったみたいだね』
いつになく多弁な気がするのは
ガンプが喜んでいるのか?
とラウドはまた疑問を感じた。
『俺と戦うために作ったのか?この場所をよ』
ガンプはまた笑う。
『フフフ。
まぁ一応約束はしたようなものだからね。
この場所はとある暇人が作った場所だよ』
そういうと数を数え始める。
『1・・・2・・・3・・・』
『?』
ただ立っているガンプに疑問を持ちながらも、
両腕で構えをする。
動きについては常識外。
だから感覚に頼るしかない。
ラウドはそう思うと目を閉じた。
『僕は栄誉を得るために聖剣になったわけじゃない
君はどういうつもりかは知らないけどね。
ただ、ここで聖剣になる気がまだあるのなら
僕の洗礼を受けることになるよ』
ラウドは目をとじたまま当たり前のようにうなづいた。
『君には強くなってもらいたい。
僕のためにも・・・』
ガンプが何を言いたいのかはわからなかったが
ガンプが向かってくる様子がないので少し焦っていた。
『これからの君は
僕によって生かされているようなものだよ』
生かされる?
『なんだよそれ?』
ラウドはガンプが謎の問いかけをしながら
自分を挑発しているのではと考えていた。
『いいからかかってこいよ。
ぶっ飛ばしてやる』
ガンプはまた笑った。
『フフフ。ぶっ飛ばす?
まだ、そんなことを言うのかい?』
とガンプ言った瞬間。
ラウドは右側に何かを感じた。
目を閉じているので何かはわからないが
ガンプであるのは間違いない。
-間に合わない!-
とっさにラウドは体を低くしようとするが
ガンプは時のスキルによって
それよりも早くにラウドの右頬に拳をぶつけた。
この拳は普通に拳を出しただけである。
しかし足にスキルを使って時を速くしたために
その移動スピードによってラウドがぶっ飛んだのだ。
たった一撃だが、それが今のラウドとガンプの差であった。
『今のが半分ぐらいのスピード。
16倍速ってところだね。
・・・でもこんな程度を見切れないとなると
まだこの先には行けない
フフフ』
そう言うと飛ばされたラウドの前まで歩いてきた。
ラウドは一撃であるにもかかわらず重症である。
飛ばされたときにいくつかの木に衝突していたのである。
全身が打ち付けられたように痛い。
『もう一度言うよ。
君は僕に生かされている・・・
君が・・・』
この後何かガンプか言っていた気がしたが
ラウドはすでに記憶がなくなっていた。
ガンプは気を失ったラウドをかつぐと
生名跡のあった場所まで下山する。
そこには先ほどの妙な口調の女性ラヴがいた。
『見たところ一撃みたいだね♪』
『これからだよ・・・これから・・・
フフフ』
ガンプはそういうとラウドをそこにおいて
二人はまた山に消えていった・・・。
こうしてラウド達の初めてのピスカトレジャーイベントは終わった。
―ピスカの山編―
死亡者 バロック・サレム
ゴシック・エル
ジル・キース
(以上、義賊キャッツ)
ボム・シャキール
ロデス・ガロン
(以上、盗賊グローバー)
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