第16話 『因縁』





それぞれの一日が過ぎて
朝陽が昇ってきた。
その光で目がさめた一人がいた。

『やべっ。
寝てたよ・・・』

ラウドは仮眠のつもりが完全に熟睡してしまったようである。
そして、周りを見渡すとレビンの姿がないことに気付く。

『あいつ、一人で先に行ったのか?』

とそわそわしていると
向こうから人がやってきた。
逆行で誰かはわからない。
その影姿に、ラウドは妙な気配を感じた。



ディルとレナのほうは
レナが熟睡していたようだが
ディルは昨日のことが頭から離れず
ほとんど寝ていない。
横にはなっているが
何か考えつめていた様子であった。

日が昇ったのを見て
ゆっくりと起き上がると
レナを見失わない程度に
歩いて食べ物を探しを始める。
起き上がっても何かまだ考えてるようである。

レナの起床は日が完全に昇りきってからであった。

『早いねぇ。おはヨ〜』

あまりのマイペースに
男だったらはったおしてやりたい気分になったが
これからの話もあるので
ここは我慢することにした。



ラウドの前に現れたのは
意外でもなくレビンだった。

『んだよ〜。
レビンかよ。脅かすなよ!』

レビンはきょとんとした様子で、
寝ぼけてるんだなといった感じで
ラウドに構わずそこに座る。

『お!朝飯かよ。
・・・って俺の分はないのか?』

「もちろんない」
といった表情を即座にレビンがした。

『だよなぁ』

当たり前だと思ってはいたが
やっぱり直に聞くとがっかりするものである。
ラウドにはその行動を
レビンがある意味楽しんでいるようにも見えた。

『お前に渡しておくものがあるわ』

・・・と思ったのだが
レビンが"渡す"といったので
もしかして、メシを分けてもらえるんじゃないかと
勝手に想像して期待したラウドであったが
レビンはジーンズのポケットから何かを取り出した。

『ん?これって・・・』

食べ物じゃなかった事で
少しショックであったようだが
それを見せてもらって、
少しレビンのことをいい奴だと思ったようだ。

『何で俺に?』

レビンはとりあえず持ってきた朝飯を食い終わると

『お前のスキルには期待できるからや』

とだけ言うと山に登る準備をする。

『って!俺はメシがまだなんだからよ・・・』

さすがにラウドといえども、腹が減っては
すぐには動きたくないようでもある。

『なら、歩きながら探せばいいやろ』

そう付け足すと後ろを振り返らずに歩き出した。

『ひ・・・ひどい奴だな』

先ほど思った「いい奴というのは撤回だ」
と心の中で思うラウドであった。

確かに歩きながらでも食べるのは可能である。
食物の木がピスカには
意外に多く生殖していた。
朝食というのも
もちろんそこでできている食物である。
だがらつまみ食いのような形で
移動しながらでも可能だといったわけだが
ラウドにとってみれば
飯の時間ぐらいはゆっくりしたいというのが本音だった。



ラウドたちが出発してから1時間後
ディルが取ってきた食物で朝食を取る。

『ディルさぁ。あんまり寝てないでしょ?』

どうしてわかったのか?
というよりも
恐らく顔に出ているのだろう
とディルは思い
うなづいた。

『私さ、昨日一応考えたんだけど
やっぱクレセアに会いたいんだ。
もし言いにくいんだたら別にいいけどさ・・・』

下目使いで
ディルのご機嫌を取る様子をみせた。
しかし
ディルはそのことをわかっていたように話し始める。

『クレセアはもうここにはいない。
いる可能性とすれば生命石ということだ』

少しだけ驚いた感じのレナであった。
昨日と言っていることが変わらないという点もそうだが。

しかし引っかかったのは
「ここに」という言葉である。

『ここにって事は・・・?』


ディルは一息すると
レナのほうを向き覚悟を決めたように話す。

『クレセアはもうすでに死んでこの世にはいない。
だが、俺はクレセアに会う必要がるんだ。
だから、生命石を探している』

それを聞いたレナは
意外にけろっとしていた。

『そうなんだ。
・・・でも死んだのはわかる気はする』

それよりディルのほうがびっくりしていた。

『わかる・・・?』

レナは表情を変えなかった。

『私の母は不治の病にかかっていたらしいんだ・・・
しかも遺伝性の病』

ディルはそれで納得した。
しかしディルは思った。

『レナ・・・ということは?』

これも表情変えずに・・・
というよりむしろ笑顔だった。

『私も"S・D症"だと思うよ。
クレセアも原因はそうでしょう?』

ディルは少し黙ったままだったが、
ゆっくりとうなづいた。
それよりもレナの明るさが妙に気にかかった。


ちなみにS・D症とは
ショック・ダウン症と呼ばれるもので
生まれたときから潜在的に発病状態にある病である。

軽い発病なら腕がしびれる程度であるが
完全にかかると
体が麻痺したように動かなくなってしまう。

ショック・ダウンとは
ショックを受けたような状態になるというところから
つけられた病名らしい。

一般的にはS・D症と呼ばれる。
これはダウン症という病と区別する為とも言われていて
ダウン症のように
多くの人がなる可能性はないものの
感染しているとわかるのが
成長期頃から中年期と遅い為
早期発見が難しく、
さらにここの世界の一般の医学では
治すことができない病とされている。


『わたしはね、S・D症を治すことができるかもしれない
唯一の"医者"を探しているの』

それを聞いたディルは
また過去を思い出していた。

『医者・・・か』

そっと呟いた程度だったので
レナには聞こえなかったようで
話を続ける。

『ま〜そんな感じだから
クレセアが死んでいるって聞かされても
おかしいと思わないしね
とりあえず世界を回ったら
S・D症を治せる医者がいるかもしれないじゃない?
・・・
そうそう。
ディルはそういう医者に心当たりない?』

ディルは下を向いたまま動かなくなった。
レナは、またまずいことを言ったのかと思い
心配そうに見ていた。

ディルは両指を組んで
頭につけて考え込んでいる。

『レナとは・・・こういう形で会いたくなかったな
・・・。
俺の過去と繋がり過ぎている』

これにはレナは驚きの顔をした。
ディルはゆっくり顔を上げると
さらに続ける。

『S・D症を治せるのは"医者"じゃなく
"医術師"と呼ばれる者だけだ』

ディルは組んだ指を下ろして
覚悟を決めた表情をしている。
それを見たレナは
ただならぬ雰囲気を感じていた。
それを打ち砕きたくて笑ってみせる。

『心当たりあるんだ〜』

レナが笑っているのは
雰囲気を和らげようとしてるのはわかるが
そういう気分になれないディル。

『ああ。ログ"ス"(家)といわれる医術師の一族がいる』

レナはディルが落ち着いて話していることに
とりあえずは安心した。

『という事はその一族がいる場所って知ってるの?』

場所と聞かれて、また少し黙ってしまったディル。
しかし、言葉に迷っているわけではないようだ。

『ノイズ国というところにある町で
ログレスという場所に住んでいるはずだ。
でも、行けたとしても手術してくれるとは限らない。
そこは患者が選ぶんじゃなくて
医術師が患者を選ぶんだ』

あまりにも詳しいディルの言葉に
レナはある想像を立てはじめていた。

『もしかして・・・
ディルってログ"ス"の関係者なの?』

ディルは軽くうなづいた。

『あの家の教えは・・・
生きれるものは殺させない。
・・・。
当たり前のことだけどな』

そう言いながらディルは顔をそむけていた。
レナも嫌なことを聞いたと思って
あえて何も言わなかった。

『だが、俺はログレスに行くつもりはない。
俺は今はログ"ス"の者じゃない。
ただのディルなんだ』

そう言うとそむけたまま下を向いた。

そんなディルを見て
レナは立ち上がり上を向いた。
そして腕を上に伸ばして
いわゆる伸びのようなことをした。

『うん。ありがとう。
話しづらいこと聞いちゃったみたいだし・・・。
というかディルって医術師だったの?』

話をまとめたつもりが
またしても質問というレナの言動に
ディルは少し可笑しさを感じたが
ここまできたら話してあげようと思ったようだ。

『今は・・・ハンターだけどな』

と、ディルも立ち上がり

『とりあえず先に行こう。
ラウド達もだいぶ先に行ってしまっただろうし』

そして荷物をまとめて二人も歩き出した。
レナは少し申し訳ない顔をしていたが
ディルが気にしないようなそぶりを見せると
そのことも忘れたかのように
再びお花博士として薀蓄話となった。



ラウドはペースを上げていた。
というのも
レビンが急ぐようにある場所へ向かっていたからである。

『ポーションを見てみぃ?』

今朝レビンから貰った物とは
アクセスポイントことスキルポーションであった。
レビンに言われたままそれを見てみると
青白い光を強く発していた。

『何だこれ?』

驚くラウドに説明は面倒だといわんばかりに
レビンは先を急ぐ。
するとだんだん光を発する強さが強くなってきた。

『もしかして・・・
近くに七秘宝があるから"強く"なってるのか?』

レビンはラウドの質問に答えないわけじゃないが
ラウドのほうを見ると
首を横に振っただけでまた先を行く。

この時点で実は
ラウドは未知の領域にいたのである。
だからラウドの道案内はもう無駄である。
それがわかったレビンは
先にスキルポーションの光に導かれるように進む。
スキルポーションことアクセスポイントは
点滅するように光を発していた。

『なんか生き物みたいだな』

ラウドはその光に生命を感じていた。
またしばらく行くとレビンが立ち止まった。

『どうした?』

レビンは何も言わず
スキルポーションを持った手をある方向に向けた。
すると点滅ではなく青白い光がまばゆく光った。

『うおっ!』

ラウドはまぶしさに目がくらんだ。
レビンは色眼鏡のおかげで大丈夫のようである。
光に目が慣れたときそこに見えたのは
木の幹に光る石を持った大きな大木だった。



『どうしてここに?』

珍しくディルが質問をした。
レナは少し考えるような顔をしたが

『仲間は、ここに眠っている銀を探しに来てたみたい。
私は・・・』

というと黙ってしまった。
ディルは少し考えたあと
レナが何を言おうとしているのかを感じ取った。

『クレセアのてかがりか?』

小さくだったがうなづいた。
だがディルにはそのうなづきが妙に写った。

『・・・?』

レナは何もなかったかのように薀蓄話をし始めた。

『しっかし、ここは天然植物園だねぇ』

あたりを見渡し、様々な高山植物を見ていた。


ディルは今回このイベントに参加したわけは"生命石"である。
ディルがもといたハンター仲間から聞いた情報で
このピスカに七秘宝があるらしいという噂を聞いていたためである。

レナに至っては
クレセアを探しつつも仲間と行動していたという感じに見えた。
しかしなぜ義盗賊をしているのかはわからなかった。

キャッツの話になると
、レナは話題をそらした。
そういうことで
ディルはこれ以上はレナについて詮索をしなかった。



木の幹に光る石を持った大きな大木は
光を強くしたり弱くしたりしている。
それと同じようにスキルポーションも反応している。

-この光が強くなる方に七秘宝はある-

レビンはが心の中でそう確信した。

レビンもアクセスポイントことスキルポーションを手に持ち
大木とは別の方向に向けはじめた。
ある方向を向けたときに光の違いを感じたのか
レビンが動き出した。

ラウドは一向に動かずに
光る石がある大木を見ていた。

『これが七秘宝・・・
じゃないよな』

違うとはわかっていても
なんだかそんな気がしてくる。
変な期待をラウドは感じていた。
ふと、周りを確認すると
レビンがすでに歩き出している。
それと同時に別の人影も見つける。


『誰や・・・?』

少し先を行くレビンの前には
前髪をたらした白髪頭の男が立っていた。
その男は笑みを浮かべるとレビンに触れ
ラウドの方を向いた。
それと同時にラウドもその男に気がつく。


『ガンプ!!』


何故ここに?という感じや・怒りや・ある意味の喜びを
ラウドは感じていた。
ラウドがその白髪頭の男をガンプと呼んだことで
レビンも反応した。
・・・が
体は以前グレーブがやられたように動けなくなっていて
目だけをガンプの方に向けていた。
そんなレビンを無視するように
ガンプはラウドに近づく。

『何しにきやがった。
前回の戦いの続きをしに来たのか?』

ラウドはニヤリとした。
だがその笑みはうれしさというよりは怒りにも似ている。
それと同時に手を出して"構え"をしている。

それに答えるわけでもなくゆっくりと不気味に
ガンプがラウドの前に歩いてくる。

『戦う?・・・
あぁ。
そういえば、そんなことも言った気がしたね』

ガンプも笑みを作ると
ラウドに触れようと右腕を伸ばす。
だが当然のように
ラウドはそれを逃れようと横に逃げた。

『俺も止める気か?
そうはいかねぇよ』

しかし
その行動を見てガンプは笑い出す。

『フフフ。
君と戦うのはこんな孤独の地じゃないさ。
きちんと用意してあるから安心しなよ』

そう言うと今度は光る石がある大木に触れた。

『この木にある石は・・・"セイメイセキ"と言ってね
スキルの力が溢れているところにあるのさ』

ガンプがいきなり薀蓄話をしたのにも驚いたが
そこの光る石が"セイメイセキ"であることに
ラウドはより驚いた。


動けないレビンにとっては
ラウドとガンプは後で会話をしている。
一生懸命後に振り返ろうとするが
足も腕も全く動かない。
ただ表情は動くようであり、
目や口を動かすことは出来ていた。
顔は怒りに満ちていた。







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