第18話 『旅立ち』〜レナの章





携帯電話。
この世界には魔城があるからこそ進歩している技術が存在する。

携帯電話の電波は
表向きには世界政府が用意している
公共電波を使っていることとなっているが
噂では魔城に大きな電波塔が建っているという話があり、
その電波によって世界の通信手段が確立されているという。

この世界の人たちは
公共という点でその電波の情報は
一度政府に傍聴されているという事実がある。
つまりは携帯電話で
よからぬ噂が立っていることが判明すれば
その持ち主が割り出され、
聖剣などが始末するというような脅し文句がある。

通信できる情報の名機があるのにかかわらず
情報が広まらないのは
世界政府によって情報を動かされているという事情があるようだ。


もちろんそんなことをレナは知ることもない。
入院生活が退屈なのか誰かに電話をしている。
この世界では電子機器が病院に使われていることが少ないので
携帯電話を自由に使うことが出来る。

『もし〜。レナです』


『元気ないですか?まぁ、確かに元気というわけには行きませんよ』


『・・・。うん。私だけ』


『・・・今は新たなメンバーが増えました』


『とりあえず、私の探す物が見つかりましたので
もうしばらくは帰れなさそうです』


『うん。こういうときだからこそ元気でやっていきます』


『キースたちはキースたちの思いがあったんだと今は思ってます』


誰かと会話しているレナの部屋をノックする音がした。
そして電話を一度遠ざける。

『ん?ちょっとまって』

そうして再び電話に戻った。

『あ、いえ。
誰かが来たみたいなんで
すみませんけど、またこちらから連絡します』

そう言うと電話を切った。


『どうぞ』

そうするとそこには見たことのある人影がいた。
ただ左腕は包帯で固定されているが。

『あ!ディル!
生きてたんだぁ・・・。
よかったぁ』

おそらくは生きていると信じていたが
実際に目の前に現れると
急に感情がこみ上げてきて涙が出た。

でもよく見るとディルは複雑な表情をしている。
すぐに右手で涙を拭いた。

『ご、ごめん。
なんか急に一人じゃないと分かったらうれしくなって・・・』

その様子をディルは不安そうに見ている。

『ラウドも大丈夫のようだ』

ラウドも生きてることで安心したが
ディルが突然に落ち込んだことで
自分が心配そうな顔をしているのが分かった。

だが

『レナはS・D症を直したいんだろ?』

急にディルは話を切り出してきた。
しかも自分にとっては重要なことである。
でもディルにはあまり触れたくない事のはずだとレナは思っていた。

『今回のお詫びだよ。
結局はレナにも死の間際まで付き合わせることになってしまった。
・・・。
俺はこれからノイズに行こうと思ってる。
レナもくるか?』

ディルがどうしてノイズに行くつもりになったのかは
分からなかったが
ここは素直に喜んだ方がいいと思った。
そして言われるままにうなづいた。

『でも急にどうしたの?
別にあの状況ならしょうがないよ。
生きてただけラッキーと思わないと』

当然うなづきはしたが
疑問の方が口に出てきた。
ここで悪い方に考えるのはよくないと思い
明るく振舞った。
それにはディルは表情を変えてないようだった。

『まぁ、お詫びというのは
俺が勝手に決めた事だから気にしないでもいいよ。
ただ、俺がログスとして生まれてきたことの使命だと思っただけさ。
あの家に帰るのは癪だけど
今の俺だけじゃS・D症は治せないしな』

あまり答になっていない気がしていたが
ディルがきっと一生懸命考えて出した答なんだと思い
そのことがうれしく感じた。

『私も次はノイズに行こうと思ってたしね。
ディルが来てくれるなら
これほどありがたいことはないよ〜
と、早く私も怪我を治さないとなァ』

それにディルがこれ以上自分のことで
悩んでほしくないという願いもあった。
ディルは多分、自分とクレセアを重ねて見ている。
クレセアと何があったかはわからないけど
少しでもディルの重荷を取っておきたいという気持ちがあった。
そう思うと気合が入る。
その思いのまま右拳を真上にかざした。

ディルは少しにこやかになると

『今はゆっくり休んでいろ。
俺はラウドのところにもいってくる』

そう言うとディルは部屋を出た。


-ディルは私の為にノイズに行ってくれるんだろうか?
それとも・・・クレセアの為?-

レナはそう考えると頭が痛くなって
その日はなかなか寝つけれなかった。