日本電波工業

日本電波工業
日本電波工業は水晶振動子や水晶発振器で有名な会社です。その筋では「ニッパ」といわれているようです。水晶振動子ではキンセキ、エプソン、東京電波大真空などもあります。NECグループの東洋通信機もありましたが、東洋通信機の水晶振動子関係部門はエプソンに売却され、無線機器関係部門はケンウッドに売却されたようです。

平成28年6月に東京工業大学情報通信研究機構が無線通信機に用いる水晶発振器を置き換える小型低価格で高性能な圧電共振器を用いた集積回路を開発したとの話を聞いて、一瞬水晶発振器がなくなるかと思いましたが、よく見ると、フラクショナルPLL集積回路を開発して、いいかげんな圧電共振器の周波数を補正するとのことで水晶とは関係なかったようです。水晶発振器がなくなると誤解している人がいたようですが、今やTCXO(温度補償型水晶発振器)は、寸法が1.6mm×1.2mm×0.55mm、安定度は±0.5ppm(−30℃〜+85℃)で、広温度範囲用では−40℃〜+105℃まで対応できるようで、京セラ、エプソン、大真空なども同様に市販しているようです。TCXOが出始めた頃はROMも大きく20mm×20mm×10mmくらいの大きさでしたが、当時の1/4000くらいまで小型化しています。

水晶発振器の小型化は、3225→2520→2016→1612→1210まで小型化が進展し、平成29年には32MHz以上のTCXOや時計用の32.768kHzでも1210(厚さ0.25〜0.35mm)が一般的になってきたようです。日本電波工業(渋谷区)の他、大真空(加古川市)、リバーエレテック(韮崎市)、村田製作所東京電波(大田区→盛岡市))、京セラクリスタルデバイス(キンセキ(狛江市))などは、プラズマを用いたナノスケール製造技術や電子ビーム封止などの技術で1008(1.0×0.8mm)の多様な品種展開にも積極的なようです。

水晶発振器は、一時温度補償回路を基板上で組み込みサーミスタと水晶振動子を組み合わせた部品が増加し、平成26年ころはTCXOの需要が低迷していましたが、携帯電話でLTE方式が普及し、GPSの受信機も高精度化が求められ、平成27年ころからTCXOの需要が回復したため、水晶メーカ各社はTCXOの増産設備投資を行っているようです。

平成28年度に蘇州(中国)及びマレーシア工場のTCXOの生産設備などで68億円の投資を行ったのに続き、平成29年には車載用SAWフィルタなどの生産設備などに70億円の投資を行うようです。

日本電波工業は、医療やバイオ向けの超音波センサーやガスセンサーなどにも注力していましたが、平成29年にはセンサーのみではなくアンモニアに特化した測定装置を開発したようです。

日本電波工業は、平成29年にJAXAに協力しQTGA計測法の微量ガスセンサーを開発したようです。従来から用いられているガスクロマトグラフィはサンプルをガス化する必要があり、ガス化のばらつきが計測誤差につながっていました。一方QTGA計測法のガスセンサーは水晶振動子に2つの電極を構成し片方を覆うことによって、サンプルそのままの状態で露出した電極にガスが付着し質量が変化することによる周波数変化を計測するとのことで、最終製品の状態でアウトガス発生状況を計測できる方法とのことです。平成30年10月から販売を開始し、センサー200万円、4CHコントローラ400万円、真空チャンバ600万円のようです。