「英国人はヒースの原を踏みにじれるかもしれないが、
しかしかれらは、風までを踏みつけにすることはできない」
−フィオナ・マクラウド「イオナより」
「偽書」とは、出自、由来が偽られている書物を指す。
「オシァン」は、由来が誇張されているという意味では偽書となるのかもしれないが、中身の全てがアイルランドの伝承からのパクりだったり、マクファソンの時代の創作だったりするという意味ではない。つまり、古来の伝承を知るうえで、全く無価値なものではない。「偽書」と断じられた理由は、それがイングランドにとって、政治的に存在してもらってはならない書物でもあったからだ。素晴らしい作品にも関わらず、ろくに論じられもせず存在を抹消されようとしている物語があったら、文学ファンとしては阻止したいところだろう?
これが、このページを作った意図である。
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【注釈 というか残念なお知らせ】2017/5/30追記
かつてはスコットランドはケルト文化圏の一部に入れられていたのですが、最新研究により「島のケルトと呼ばれていたものはケルトではなかった」ことがほぼ確定となりました。
大陸からの人の流入はなく民族は別、文化についても一部しか伝播しておらず、言語についても現在「ケルト語」と呼ばれているものを本来のケルトである「大陸のケルト」が喋ったかどうか不明の状態です。そのため「島のケルト」に属する神話文献も全て、「ケルト」とは呼べなくなってしまいました。呼ぶとしたら島(アイルランドとかブリテン島とか)の土着の古伝承です。
アイルランドでかつて"ケルト"と呼ばれていたものが本来のケルト人とはほぼ無関係であったように、その対抗馬であったスコットランドの"ケルト"もケルトという看板は背負えなくなりました。
最新研究に従ってサイト内は随時修正します。
[>ブログ記事 ■ ■
・オシァン概要
一部資料には、「オシァンはマクファソンという人が作った偽物だ」とか、「アイルランドの伝承から作られたものだ」と書かれている。
とりあえずそこらへんの事情なんかも軽く流してあるので、はじめての方は、こちらから。
・ケルトの中のスコットランド
ケルト民族、というアイデンティティは、実は最近になって創造された民族意識だ。ケルト民族は様々な土地に住んだが、残念ながら遺伝子調査から来ていたとしても極少数で後世に残らない程度であったことが明らかになった。(かつては、妖精物語はアイルランドに住んだアイリッシュ・ケルトのもの、アーサー王の伝説はウェールズに住んだケルトと、フランスのブルターニュ地方に住んだケルトのもの。そしてオシァンは、ブリテン島の北の果てに住んだスコティッシュ・ケルトのものと言われていた。)
・古歌一覧
元にした文庫本で和訳されている歌のリストと内容説明。オシァンの視点から語られているものと、オシァンの父フィンガルの若かりし時代に語られたもの、それ以外にオシァンが生きていた時代に一般的に歌われていた挿入歌が存在するようです。
成立年代などについては、激しい論争によりまともに論じている資料が見つからず。
・登場人物
物語に登場する人々。意外にスカンジナヴィア勢が多い。また、アイルランド勢も多く、クフーリンなども普通に登場する。
このことが、アイルランドのケルト文化復興人たちの反発をまねいた可能性も在。(でもアイルランドにはケルト人来てなかったんですが(´・ω・`))
・オシァンを巡る様々な評価
これほど評価の分かれる作品は、珍しいかもしれない。色んな系統の本から、オシァンに対する言及だけを集めてみた。
元テキスト;オシァン ケルト民族の古歌/中村徳三郎 訳/岩波文庫
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