オシァン-Oisein
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オシァン 古歌一覧


「オシァン」は一つの物語ではなく、オシァン(英語風の発音の場合。ゲール語ではオシェン)という、高名なフィン王の一族最後の一人が、死んだ息子の婚約者マルヴィーナに語って聞かせた、「過去の人々の数々の思い出の歌」を集めたもの、という形になっています。

最初の歌は、このようにして始まります。

目にとまらない そよ風は なぜふいに音がしなくなったのか
白波のたつ山川の音も 樹蔭の岩の竪琴も なぜふいに音がしなくなったのか
立琴の名手マルヴィーナよ そばへきて、歌心をよびもどしてくれ
白い手の娘よ、歌心をよびかえしてくれ


「歌人にして戦士」たるオシァンは既に高齢で失明しており、一族もみな、数々の戦で死に絶えていますので、物語の中に登場する人々は、みな過去の人です。死者は石積みの下に葬られますが、オシァンとマルヴィーナ以外の人々は、みなその下にいるのです。

「オシァン」とは、雲間から光の差す草原に、無数の灰色の石積みを眺めながら、墓に眠る人々の思い出を一つ一つ語ってゆく思い出語り集なのです。


ここでワンポイント!

「過去の人々の様々な思い出」ということは、その人ごとに別々の歌が語られるということです。
その歌ごとに別々の原典から取ってきたのだろう、オシァンがオムニバス形式の歌集なのだろう――と、いうことが容易に想像がつくでしょう。オシァンの単一原典が存在しない、というのは、そういうことです。
マクファソンは、集めた歌を時系列になるよう並べ、全体が一つの物語になるよう、多少の辻褄あわせも加えて仕立て直していると思われます。



ローディンの戦い

第一の歌
オシァンが父フィンガルの若き日の思い出を歌い始める。
フィンガル王とその一族は、船の難破りため、ロホラン(スカンジナヴィア)へ辿りつく。ロホランには、かつてフィンガルを騙したことのある詐謀の王スタルノがいて、一行を宴に招こうとするのだが、かつて騙されたことを思い出し、フィンガルは申し出をはねつける。
見張りに立つフィンガルは、スタルノに父を殺された娘、とらわれのオーイ・ヴァーンと出会う。彼女はスタルノの息子スワランを慕っている。見張りの最中、スワランと出くわしたフィンガルは、スワランを殺さず盾だけを奪い取って持ち帰るが、盾を目にした娘は、思い人が殺されたと思い、悲しみに息絶えてしまう。

第二の歌
見張りから戻ってきた王を、部下で腹心のドゥ・ヴァハク・ローネが迎える。フィンガルの軍勢とスタルノの軍勢とが戦いになり、指揮をとっていたドゥ・ヴァハク・ローネは、戦功を立てつつも倒れる。フィンガルは、歌人ウリンを呼び、死したドゥ・ヴァハク・ローネのために、その祖先であるクールゴーラムの歌を歌わせる。

第三の歌
スタルノ王はスワランを呼び、かつて自分が父アニル王のもとで戦い、裏切り者の姉フィーナとコルマンを闇討ちしたことを語る。同じようにフィンガルを闇討ちしてこいと命じるが、スワランは、死んだ妹アアイ・ネヘカがその道を行かせない、と断る。怒りのあまり息子を殺そうとして思いとどまったスタルノは、自らフィンガルを暗殺に行くが、逆に捕まってしまう。フィンガルは捕らえたスタルノを解放しながら、立ち去れと告げるのだった。

クー・ヴァラ−劇の歌−

フィンガルの若き日の物語。何人かがそれぞれの役に分かれて歌う歌の形式になっている。
ローマ軍がスコットランドの国境に進入し、王は撃退のため出陣している。フィンガルを慕うクー・ヴァラは、王と会う野原で一人、帰りを待っている。フィンガルが勝利し、先触れとして部下のヒジァランがクー・ヴァラのもとに行かされるが、かつて求婚を退けられた恨みを持つヒジァランは、王が死んだと嘘をつく。やがてフィンガルが生還したとき、それを幽霊だと思い込んだクー・ヴァラは、恐ろしさのあまり、息絶える。

カリク・フーラ

フィンガルは、クー・ヴァラの故郷であるイニス・トルク島の都カリク・フーラへ向かおうとして、出立前に歌人たちを呼び、シルリックとビンヴェールの悲恋の物語を歌わせた。ビンヴェールは恋人が戦場で死んだと思い悲しみのあまり息絶えるのだが、シルリックはただ一人生きて戻り、ビンヴェールの石積みの前で悲しみに暮れる。(恋人クー・ヴァラを失ったフィンガルの心情と重ね合わせたのだろう)

歌が終り、帆を張り、イニス・トルクへ来て見ると、フローハル王の襲撃を受けている。フローハルは、かつてクー・ヴァラへの求婚を退けられたことを恨みに思い、父王の葬儀のあと、イニス・トルクへ戻ってきたのだ。フィンガルはフローハルを守るオーディン神を一喝して押し返し、一騎打ちでフローハルを破る。とどめを刺そうとしたとき、フローハルを慕い男装してついてきていたウハが飛び出し、それを見たフィンガルは剣を収める。
和平の宴で、ウハはウリンから、クリー・モールとコナルの歌を聴く。クリー・モールは恋人コナルを助けようと男装して戦場についてゆくが、誤って敵ではなく恋人コナルを射抜いてしまう。コナルが息絶えた後、悲しみのあまりクリー・モールも倒れる。
宴の後、フローハルは帆を揚げ、ウハとともに国へ帰って行く。
<ゲール語原稿が歌の途中で終わっているため、途中にマクファソンによる補足が入る>

カルホウン

フィンガルがローマ軍を撃退してセルマにある宮殿に戻ってきた後。王の母、ムールンの兄であるクレサ・モーラが呼ばれ、王の前で遠き日の思い出を語る。クレサ・モーラは若い頃、バラ・クルーハの娘ムーナと結婚していたが、ムーナに求婚に来た異国の若者との争いで、ムーナとはぐれてしまう。若者は倒れたが、その部下たちが追いかけてきて、クレサ・モーラはムーナを置いたまま国に戻らざるを得なくなる。それ以来ムーナとは会っていない、という話だった。
そこへバラ・クルーハから軍勢が攻め寄せる。率いるのは若き王カルホウンだった。戦いを避けたいフィンガルは歌人ウリンに和平の歌を歌わせにゆくが、カルホウンは拒否する。かつてクーアル王に焼かれたバラ・クルーハの町の仇を取りたいと言うのだ。

<ゲール語の原稿が消失しているため、以降はマクファソンの補足による>
フィンガルに命じられ、クレサ・モーラがカルホウンに対峙する。しかしカルホウンは、ムーナの息子だった。白髪のクレサ・モーラを見て、自分の父だと思ったカルホウンは相手を殺さず捕らえようとするのだが、クレサ・モーラはフィンガル王のことを思い、若者に致命傷を与えてしまう。倒れたカルホウンは父のことを語る。その最期の言葉から、それが自分の息子だと知ったクレサ・モーラは嘆きの声を上げて倒れる。今、二人の墓は並んで立っているという。

オーイ・ナム・モール・ウール

オシァン自身の記憶の歌である。フィンガルと友好関係にあるフゥアルフェッドのマロルコル王が、トウン・ホルモド王に戦を仕掛けられ、難儀している。援軍として遣わされたオシァンはトウン・ホルモド王を捕らえ、マロルコル王からオーイ・ナム・モール・ウールを与えられようとするが、オーイ・ナム・モール・ウールはトウン・ホルモドを慕っている。それを知ったオシァンは、身を引き、二人を手を取らせるのだった。

グール・ナン・ドゥナ

フィンガル王は、トスカルとオシァンに命じてクローナに戦勝記念の碑を建てに行かせる。
するとカルル王の使いが来て、彼らを饗宴に招く。トスカルはカルルの娘グール・ナン・ドゥナに心奪われる。
翌朝、二人が鹿狩りに出かけると、森の小道から若者が現れる。それは、男装したグール・ナン・ドゥナだった。

クローマ

婚約者オスカルの死を嘆くマルヴィーナに、オシァンは若かりし日の昔物語を始める。
クローマの王クローアルが老齢で戦えなくなったことを知ったローマル王が戦を仕掛けた。友人クローアルの窮地を知ったフィンガル王は、息子オシァンに助けに行かせる。オシァンはローマル王を倒し、クローアルは戦場に倒れた年若い息子のことを思う。

カルホウンとクール・ヴァル

クルーアの河畔に住む人望厚い首領ラーモールを妬んだ、トゥイー河畔の首領ドゥンハルモは、夜襲をかけ、ラーモールを殺してしまう。
残された、ラーモールの二人の幼い息子たちはドゥンハルモに育てられるが、成長し、父の館の荒れているのを見て悲しむので、反逆を恐れられ、別々の洞窟に閉じ込められてしまう。
ドゥンハルモの娘クール・ヴァルは、洞窟に捕らえられている兄弟のうち、兄のカルホウンに思いを寄せ、闇夜にまぎれて解き放つ。弟を残して逃げられない、というカルホウンにクール・ヴァルは、フィンガルに助けを求めましょうと勧める。
フィンガルはすぐさまオシァンに命じ、ドゥンハルモに戦いを挑ませるが、不敵なドゥンハルモは囚えていたカルホウンの弟コルマルを目の前で殺す。たちまち戦いとなるが、夜になり、戦士たちの視界は閉ざされる。

夜、倒れた弟の亡霊を見て目を覚ましたカルホウンは、ひとり弟の死体を捜しに行き、ドゥンハルモの手下に捕らえられてしまう。物音に気づいて後を追ったオシァンは、クール・ヴァルに状況を聞いてすぐさま戦いを始め、ドゥンハルモを倒し、カルホウンを解放する。
二人は、ドゥンハルモ亡き後のトゥイー河畔に住んでいるという。

フィンガル

第一の歌

エーリン(アイルランド)の英雄、クフーリンと、「ローディンの戦い」に登場したスワラン(この話では王になっている)との戦い。
クフーリンはフィンガル王の援軍を待たず戦いを開始し、激しい戦闘に数多くの敵味方が倒れる。夜になり、饗宴を張ってクフーリンは歌人にスワラン王を招かせるが、スワランはこれを拒否する。歌人カルルは宴で歌を歌う。そののち、コナルの提案で偵察隊が送り出される。

第二の歌

コナルは野でクルーゲルの幽霊から敗戦を予言される。スワラン王は、エーリンの支配権とクフーリンの妻、猟犬をよこせと迫るが、クフーリンは受け入れない。夜明けとともにロホラン勢との戦闘が再開され、エーリン勢は敗退する。クフーリンはコナルとともに残り、味方の撤退を助けようとする。気弱になったクフーリンは、亡き親友フェルデの話をする。なぐさめるため、歌人ウリンはクーヴェルの話を始める。

第三の歌

歌人ウリンは、クフーリンに、フィンガル王をはかりごとから救出するために死んだ、ロホランの王女アアイ・ネヘカについて語る。アアイ・ネヘカはスワラン王の妹だった。
フィンガル王が到着し、スワランとの戦いが始まる。フィンガルは孫オスカルの戦いぶりを褒め、息子たちに戦場を見てくるように言う。モルニの息子ガルが立ちあがり、王自身が戦いすぎては自分たちの役目が少なくなるので、明日は丘の上から見ていていただきたい、と言う。

第四の歌

オシァンは昔を懐かしみ、マルヴィーナに、オスカルの母となるエヴィル・アーリンに求婚した時の話をする。
エーリンでの戦いで、エヴィル・アーリンの亡霊がオスカルの危機をつげ、オシァンは救出に向かう。フィンガル王は丘の上から戦いを見守っていたが、ガルが窮地に陥っているのを見て速やかに救出に向かう。激しい戦にロホラン勢は倒れる。
歌人カルルから戦況を告げられたクフーリンは、フィンガル王にカーバッドの剣を捧げてくるようにと託す。


第五の歌

クフーリンとコナルの見ている前で、フィンガルとスワラン両王の戦いが始まる。すさまじい激突の末、フィンガルはスワランを捕らえる。また、情けをかけられることを潔しとせず、瀕死の重傷を追いながら戦いを挑んだオルラも倒れる。戦勝の宴を開こうとするが、フィンガル王の末子、ローネの姿が無い。戦場に倒れたローネを悼み、ラーヴ・ジェラクとウリンの石積みの傍に眠らせる。
クフーリンは、自分が戦に破れたことを嘆き、歌人カルルをオシァンのもとに遣わす。カルルは、オシァンの妻エヴィル・アーリンの思い出を語るが、オシァンは亡き妻の話をしないでほしいと言う。


第六の歌

戦勝の宴。戦に破れたことで沈んでいるスワラン王を慰めるたるため、歌人ウリンは宴を盛り上げる遠い昔の歌を歌う。
フィンガルの祖先、トレンモール王がロホランへ行き、帰国しようとしたとき、ロホラン王の妹イネヴァーカが男装してたずねてくる。コルレという男に愛されているが、嫌いな相手なので匿ってほしいという。トレンモールはコルレに戦を挑むが相手は現れない。ロホランの王は、妹をトレンモールに与えた。という歌だった。
またフィンガルは、かつて自分が愛した王女、アアイ・ネヘカがスワランの妹であることを語り、王の気持ちを落ち着かせ、海の向こうへと送り返す。その後、クフーリンを慰める宴が開かれ、フィンガルもまた、自分の国へ帰ってゆく。


タイモーラ

第一の歌

エーリンの王、コルマクがカラバルのはかりごとによって殺され、フィンガルはカラバルを攻める。勝ち目が無いと思ったカラバルはオスカルを偽りの饗宴に呼び寄せる。カラバルはオスカルに槍を渡せと迫るが、オスカルはコルマク王にもらったタイモーラの槍を手放すなど出来ないと答え、たちまち戦いになる。カラバルが隠れて放った槍はオスカルを貫くが、オスカルもまた、槍でカラバルを刺し殺す。
夜になり、コルマク王の歌人アルハンが訪れ、コルマクの最期を語り、カラバルの弟カーモールが復讐にやってくるだろうということを告げる。

第二の歌

夜になり、息子オスカルのことを思っていたオシァンは、異母弟フィランの姿が見えないのに気づき、探しに行く。フィランが偵察に行こうとするのを止めたオシァンは、たとえ息子が倒れても父は覚えている、という話をし、祖先トラーハル王の弟、コナルが、かつてアイルランドの王として招かれた時代、トラーハルの息子コルガルの倒れたことを語る。そこへ敵の近づく音がする。オシァンは火を焚き、カーモールの軍勢を牽制する。
歌人フォウナルは、カーモールにクローハル王の昔語りをするが、戦場から退いた王の話などするなと追い払われてしまう。寝付けないカーモールはひとり盾を手に立ち上がる。誰かの近づくのを感じたオシァンも出てゆき、二人は互いに闇の中で出会う。カーモールは、兄カラバルが歌も歌われず(=きちんと葬式をされず)、石積みの下に眠っていることを語り、彼のための頌歌(ほぎうた)を歌わせて欲しいという。オシァンが許すと、喜んだカーモールは自らの剣をオシァンに渡して去ってゆく。
翌朝、カルルは太陽の顔に不吉が見えると語るが、オシァンは、太陽の顔に陰りなど無い、カラバルのために歌ってやれと言う。

第三の歌

そして、いよいよ決戦が始まる。フィンガル王は、これが自分にとって最後の戦場であると宣言し、オシァンとともに丘の上から指揮をとる。モルニの長男ガルが先陣をきり、フィランがそれに続く。歌人たちが声を張り上げて戦意を呼び起こす歌を歌う。
戦の中、老齢の歌人コナルが倒れる。フィンガルはオシァンに命じて、コナルの若き日の歌を歌わせる。戦いの後、歌人たちの歌う歌が響いている。
フィンガル王は、息子フィランの戦功をほめるが、戦いの時、一人で突っ込みすぎた、いつも背後に戦士がいるようにしろ、と諭す。

第四の歌

フィンガル王はフィランに、自分の若い頃の話をする。それは、アイルランドからコナルが助力を求めてきたのに応じ、アイルランドへ行って、王子カラバルとともにコルク・ウラヴと戦い、妻として王女ロスクランナを得た時の話だった。自分は軍に支えられて戦ったので勝利を得られた、一人で闘う者に長い栄誉は得られない、と諭す。
一方カーモールは、歌人フォウナルの歌を聞きながら落ち着かないでいる。傍にはクーン・モール王の娘スール・ヴァルが控えている。彼女は男装してついてきたのであった。勇士ヒダラは、戦場で倒れた者たちのために歌うことを求めるが、フィランは苛立ち、それを許さない。二人の争いに苛立ったカーモールは人々を追いやり、一人横になる。フォウナルの歌う頌歌(ほぎうた)も耳に入らない。
やがて夢の中にカラバルが現れ、カーモールの死を予言する。カーモールは目を覚ますが、逃げることはすまいと思う。
外に出たとき、眠っているスール・ヴァルが目に留まる。男装していたため、これまで彼女と気づいていなかったカーモールは驚くが、今は心を乱すときではないと考え、そのまま戦場に出て行く。目覚めたスール・ヴァルは亡き父に語りかけ、頼りにするカーモールが倒れた時は、自分を空へ呼んで欲しいと呟く。

第五の歌

再び戦いが始まる。エーリン勢はフォルダが率い、カーモールは丘の上にいて戦を眺めている。傍にはスール・ヴァルが立っている。
フィンガルは、ガルに息子フィランを守って欲しいと頼む。ガルは前の日の戦闘で手を射抜かれており、剣を持てないので盾を手にしている。セルマ勢ではフィランが活躍するが、エーリン勢ではフォルダが次々とセルマ勢を破る。フィンガル王の甥、ディアルマッドが傷つき、味方が壊走する中、駆けつけたフィランはフォルダを倒す。駆けつけたマルホスはフォルダに、石積みはどこに作ればよいか尋ね、フォルダは一人娘のジァールサ・レーナのことを口にして息絶える。オシァンは、フィランの倒れることを語る。

第六の歌

フィランが危機に晒されているのを見たフィンガルは、オシァンに命じて助けに行かせる。カーモールが武具をつけて丘を下りてくる。戦いのさなか、カーモールの周りにエーリン勢が集まり、味方は敗北してゆく。オシァンが近づくより早く、フィランとカーモールはぶつかり合い、辿り着いたときには既に遅い。フィランは力なく倒れており、自分の負けたことを嘆きながら息絶える。オシァンは悲しみがら戻る。
息子の倒れたことを知ったフィンガルは、明日は自分が闘おうと言う。
一方カーモールは、壊走する敵を追ううち、洞窟に横たえられたフィランの遺体に気づく。傍には猟犬のブランが番をしている。彼の気持ちは沈み、一人で眠る。スール・ヴァルは、そっと悲しみの歌を歌う。

第七の歌

夜、眠っていたフィンガル王は、夢枕に立つフィランを見て飛び起きる。盾を打ち鳴らすが、カーモール王は頓着せず眠っている。スール・ヴァルはそっとカーモールを起こしにゆき、フィンガル王を恐れる言葉を口にする。カーモールは安心させようと語り、戦いが終わるまで、ローンに住む歌人のもとに行っているようにと諭す。話が終わると、カーモールは盾を叩いて手勢を召集する。
一方スール・ヴァルは、言われたとおりローンへ向かおうとしていたが、何度も振り返り、涙を流し、カーモールが見えなくなったところで倒れ伏す。

第八の歌

フィンガル自らが戦場に出る。打ち沈んでいるガル、ディアルマッド、カルルを激励し、亡きフィランを思い、行軍する。やがてエーリン勢と出会い、両群は海のように激突する。激戦の中で多くの者が倒れる中、カーモールもフィンガルの剣に倒れる。
フィンガルは、駆けつけたオシァンに槍を手渡し、自分は戦から勇退する、と告げる。
洞窟で待っていたスール・ヴァルは、戦の音が止んだのを知り、丘を見て、下ってくるカーモールの亡霊を見て嘆く。
アルホ王が到着し、宴が張られる。フィンガルは、国へ戻ろう、と人々に言う。

クーン・ルーフとグーホウナ

高齢となったオシァンのもとに、亡霊のクーン・ラーフが現れ、いつまで自分たちの頌歌(ほぎうた)が歌われないのかと尋ねる。盲目のオシァンは勇士たちの姿が見えないと言い、竪琴に過去を見せて欲しいと願う。やがて若きトスカル、高齢のフェルグー、涙を流す娘グーホウナの姿が蘇る。攫われたグーホウナを取り戻すため、クーン・ラーフはイー・ホウン島でトスカルに戦いを挑み、ともに倒れたのだ。
愛するクーン・ラーフに逢えるだろうかと尋ねるグーホウナに、オシァンは逢えるだろうと答え、自分に話しかけないで欲しい、と嘆く。

わが高殿に声を聞かせないでほしい 夜の亡霊とともに眠らせてもらいたい
悲しいことに、自分には、無用の体が高齢に打たれ寒い暗い石積みの中に落込み、
山の上を歩く自分の姿が見られなくなり皆のところへ歓んでゆくまでは
どうしても仲間のことが忘れられない


…こうして、「オシァン」は幕を閉じる。




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