撃墜王に関わる
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積み木


 子どものように、俺は壁をけりつけた。
 ほんの少し前までは上手くいっていたはずだ。国一番の飛行隊ではなかったけれど、それでも3本の指には入るようになっていた。
 自分の若さが暴走しないように、副長がいつもブレーキをかけてくれて。
 平均年齢が若い隊員たちは、めきめきと実力をつけ、馬鹿をやりながら空を飛ぶ。
 順調だったはずだった。だからかもしれない。油断していたのかもしれない。
 俺たちは大丈夫だと。
 歯車が狂ったのに気づいた時には、もう手遅れだった。

 今まで俺たちは、きちんと家を築いていたと思っていた。
 しっかりとした柱があり、それは揺るがないものだと思っていた。
 しかし、本当は積み木の城だったのだ。
 どこか根本のパーツが抜けてしまった。そうなれば、がらがらと音を立てて壊れていく。
 もう一度積み上げようにも、パーツはどこへ消えたのだろう。
 この前までは手に入れていたはずなのに。

 うまくいかない積み木遊びに癇癪を起こした子ども。
 エースでも小隊長でもなんでもなく。
 今の俺には、それが一番似合っている。