撃墜王に関わる
        6つの場面


ダレモシラナイ

背中


向こう側

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一度きりのウソ

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背中


 その人間の背中はどう贔屓目に見ても、広いとは言えない。
 けれど、ウォリックにとっては、果てしない壁に見える。
 父親がいないウォリックにとっては、その代わりとして見ているのかもしれない。
 しかし、その背中の持ち主はウォリックよりも4歳年上なだけだ。父親の代わりなんです、と言えばきっと嫌な顔をするだろう。
 初めて会った時には、彼はもう撃墜王の名を手にしていた。名実ともに国のトップだったのだ。
 新人の頃には、越えてやると躍起になっていた時もある。
 しかし実戦をするたびに、その思いが無謀であることを知った。
(あの飛び方は、俺にはできない)
 効率の良い、最上の飛び方なのはわかる。けれども、それを自分がするには、技量も度胸も足りなかった。
 無理矢理真似をしてもどこか不安定で、逆に命の危険にさらされる。
「やっぱすげーなぁ」
 彼のエースパイロットの記録も、小隊長になった記録も塗りかえたが、ただそれだけだ。
 あの背中をいつか越えたい。
 半分夢になりつつある目標を心に掲げながら、ウォリックは愛機へと乗り込んだ。