撃墜王に関わる
        6つの場面


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手紙


 手紙とは思えない文字の連なりを送る。
 この状況下で何をしているんだと思われるかもしれない。けれど、信じている。きっと気づいてくれる。
 そう言い聞かせている自分に改めて気づいた。この立場が洒落になってないことは解っているくせに、それを不安がっている自分がいるらしい。
 冷徹な思考を総動員して、それを無理矢理暴いた。
 隠されていた恐怖は、自覚することで恐怖ではなくなる。どこに問題があり弱さがあるのか認識できるのならば、克服することは可能だ。
 ――あいつを信じられないのなら、誰を信じればいい?
 その言葉は絶大な魔法のようだ。
 誰を信じればいいのだ。あいつ以上に、あいつ以外に。
 悪夢のような6ヶ月が思い起こされる。
 ポロポロと欠けていく同期生たちの名前が、自分を苛ましていた時期だ。食欲も失くし、睡眠もとれずにただ痩せていき、瞳だけが別の生き物のようにギラギラとしていたあの頃。「なぜ死なないんだろう」という気持ちがいつも神経を削っていた。
 無理矢理とらされた休暇に、合わせるように会いにきてくれたたった一人の友人が「とうとう2人だけになったな」と呟いたその時、初めて涙を流すことができた。そしてようやく生きてやるとあがくようになって。
 そんな恩人を信じられない自分なんていらない。
 手紙に封をした。