撃墜王に関わる
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 彼は、自分の小隊が悪いとは思ってはいない。
 少なくとも、技能だけで言えば国1番の小隊だ。この時期は、本来なら新人教育をしなければならないのだが、彼の小隊だけはそれを免除されている。
 その分だけ技能を伸ばし最前線にでろと言われているのだ。チームワークと、個人技と。どちらも磨けという圧力を最大に受けるのは、彼でしかありえない。
 小隊長になってから劇的に落ちた撃墜数もそれに輪をかけている。
 国属の威信にかけても、領属の人間にその数を抜かされることはあってはならないのだ。
(だったら、スカウトでも何でもしてくればいいのに)
 彼を脅かす人間は1人しかおらず、その人間を国属にすればすむ話だと思うのだが、上層部にとってはそんなに簡単な話ではないらしい。
 その分の鬱憤が、彼に対する発破となっているのには辟易している。
(向こう側の方が、気が楽だよな)
 領属の小隊長が撃墜数を落とさないのは、その副長が原因だ。こちらの副長とは質が違いすぎて、羨ましいとも思えない。
 それすらわからない上層部に、何を言っても無駄だ。
 ため息をついて彼は旋回をする。その途中で、今度向こうの副長にあったら、スカウトしてやろうかと考えた。