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時の話題
2004-2〜1
2004-04-18 版
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今月の目次
◇印は《
日々雑感
》より転載
◇
首相の靖国参拝は憲法違反
(04/2/29) ◇
警察の裏金疑惑
(04/2/29〜3/6) ◇
網野善彦さん
(04/2/28) ◇
国民保護法案批判
(04/2/26) ◇
組織動員
(04/2/25) ◇
戦争の真実を伝えるジャーナリズムを守れ!
(04/2/15〜24) ◇
天理市立小学校障害者差別発言事件
(04/2/14〜21) ◇
奈良県外教第28回学習会
(04/2/11) ◇
高校生の活躍
(04/2/5) ◆
外国人犯罪統計のトリック
(04/2/3〜18)
【外国人犯罪統計のトリック】vol.177《
日々雑感
に加筆》
◆外国人犯罪についての論文をいくつか読んだ。マスコミが煽る「外国人犯罪の急増」がいかに不正確で、外国人一般に対する偏見を助長するものであるか。近い内に「時の話題」で、クリミナルツーリストと定住外国人の統計処理上の問題、犯罪プロファイルと外国人労働者の関係、犯罪者の国籍別通報率の問題、犯罪報道における本名・通名のトリック、無視される犯罪被害外国人の問題、外国人に冷たい司法・入管の問題、犯罪報道一般にみられる排他的無責任センセーショナリズムとそれを受け入れてしまう非共生的庶民意識の問題などを、順次、論じてみたい。(464、04/2/3)
◆
クリミナルツーリストと定住外国人の問題
住民全体に占める外国人の割合に対して、検挙者全体に占める外国人の割合が多いことが、「外国人犯罪が多い」という報道の根拠であるが、実は外国人犯罪の多くはクリミナルツーリスト(犯罪旅行者)が占めている。一般の定住外国人や外国人労働者に絞って比較すれば、決して外国人犯罪は多くない。むしろ日本人より真面目に働き、生活しているともいえる。
クリミナルツーリストとは、犯罪目的で国境を越える人々のことをいうが、こうした人々が国際的に増えているようだ。その背景には、犯罪においてもボーダーレス社会が進行しているという面もあるだろうし、国際的な富の不均衡を拡大させるグローバリゼーションが進行しているという面も指摘しなければいけないだろう。もちろん、「盗人にも三分の理」とはいうものの、そうしたクリミナルツーリストの犯罪に対する対策が必要なことはいうまでもない。
ただし、昨今の外国人犯罪報道における問題点のひとつとして、こうしたクリミナルツーリストと一般の在住外国人とを混同させる「外国人犯罪」という表現で報道が繰り返される結果、「善良な外国人」に対しても、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」式の排外意識を広めてしまっているのだ。新聞報道などをよく読むと、記事本文には「来日外国人の犯罪」と書かれていることもある。外国人を定住外国人と来日外国人とにわけ、定住外国人を「外国人犯罪」から切り離して考えている点は評価できなくもないが、来日外国人といっても、様々な在留資格があり、資格外の「不法滞在」外国人も含めて、来日外国人を一括りに犯罪と結びつけようとする報道には、やはり大きな問題がある。一括りにすることが問題であることについては、以下に触れたい。
なお、外国人登録法自体の問題性を考える時、「不法滞在」というよりも、「非合法滞在」と表現したほうがいいと思う。(04/2/13筆)
ドイツのジーゲン大学社会学教授ライナー=ガイスラーさんによると、ドイツにおいても、外国人労働者に対する偏見が広まっているが、外国人の割合が約10%なのに対し、犯罪者に占める外国人の割合は28%であることが影響していると指摘している。しかし、この28%のうち、7割以上はクリミナルツーリストなどの極一部の外国人によるもので、外国人のほとんどを占める外国人労働者を分けて計算すると、犯罪者に占める外国人労働者の割合は7〜8%にしかすぎなくなる。いいかえると、外国人のほとんどは外国人労働者であるが、極一部の外国人が外国人犯罪の7割以上を占めているために、一般のドイツ人以上に真面目に暮らしている外国人労働者が偏見の目にさらされているということなのである。
日本においても同様のことが言える。警察白書では、検挙件数の内訳として「日本人」と「在留外国人」に分類され、さらに後者は「定着居住者等」と「来日外国人」に分類されているが、検挙者数に占める「定着居住者等」と「来日外国人」の比率には大きな差が見られる。これについては、「
コムスタカー外国人と共に生きる会
」の解説文が詳しいので参照されたい。
江藤隆美(自民党国会議員)は、石原慎太郎(東京都知事)と並んで、外国人に対する差別発言の「常連」であるが、2003年7月には「国内には不法滞在など、泥棒や人殺しやらしているやつらが100万人いる。内部で騒乱を起こす」などと暴言を吐いた。これなども、在日外国人一般に対する虚構の偏見が世間に広まっている反映であろうと捉えられるわけだ。(2004/1/17筆)
※vol.156◇
一連のナショナリズム発言
◆
犯罪プロファイルと外国人労働者の関係
犯罪行為に結びつく人物像を推理するプロファイリングという手法がテレビや映画などで紹介されることが増えてきたが、一般に、男性より女性、老人より若者、地方より都会の住民の方が犯罪率が高くなる傾向があるといわれる。例えば、若い男性が多く含まれる集団と、老人の女性が多く含まれる集団とでは、前者の方が犯罪発生率が高くなるのは、十分予想されることなのである。
外国人労働者は、一般的に若い男性が多く、さらに都会で働く者が多い。教育レベルや社会的階層といったプロファイルからみても、犯罪発生率は相当高くなりそうなものなのだが、実際は、前述のように外国人労働者の犯罪率は、現地の人々よりも低いという実態がある。犯罪プロファイルから予想される犯罪発生率とは裏腹に外国人労働者は真面目に生活しているのであるが、こうした予想が「外国人犯罪」という偏見の拡大を支えているのである。(04/2/18筆)
◆
犯罪者の国籍別通報率の問題
前出のライナー教授は、ドイツの犯罪通報率は約10%であるが、若者犯罪の通報率を親の国籍で比較した調査では、親が移民労働者の場合は2分の1、親がドイツ人の場合は6分の1というデータを紹介している。つまり、犯罪統計に現れる数値は、こうしたエスニック=セレクションの結果、民族的偏見を帯びたものであるといえそうだ。にも関わらず、ドイツにおける外国人労働者の犯罪率はドイツ人より低いのである。
日本でこの種の調査がなされているかどうかは、kurochanは寡聞にして知らないが、容疑者が外国人の場合、ことさらそのことを強調する風潮が強いことを思えば、日本においても、外国人による犯罪は、日本人による犯罪より通報される確率が高いと想像される。また、実は日本人による犯罪なのに「犯人は外国人らしい」という報道がなされていることも多いのではないかと危惧されるのである。(04/2/18筆)
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犯罪報道における本名・通名のトリック
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無視される犯罪被害外国人の問題
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外国人に冷たい司法・入管の問題
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排他的無責任センセーショナリズムと非共生的庶民意識の問題
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