第三回文学賞講評 : 『落ちる夢』
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●女子大生特有のリズム感を感じさせる文体で、楽しみながら読めた作品です。主人公の性格付けも、細かな部分で読者に感じさせるような配慮がしてあり、すんなりと作品の中に入ることができました。彼との別れを予感させる夢の展開はややありがちといえばそうなんですが、この作品の後半部分が2パターン用意されていることに工夫を感じました。ただ、その2パターン用意したことが成功しているかというと、個人的な好みによってわかれるとは思いますが、「闇」の方がより魅力的な終わり方で、ショート・ショートとしての味わいがあったように思います。中でも、「あれから落ちる夢どころか、どんな夢も見ない。夢の中の私は、もう死んでしまったから−−−−」の箇所はぞくっとしました。こちらの方が、シャープな仕上がりになるのではないかと思いました。
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●ラストの二選択制(?)には驚きました。「落ちる夢」と現実をうまく対比させた作品です。主人公の驕慢な性格が、彼との会話や地の文で生き生きと描かれていました。「Right」と「Left」の内容は、なんとなく予想でき、いかにもという結末になっているので、もうひとひねり欲しかった気もします。ラストの二選択は、新しい彼氏ができるかできないかによる「飛ぶ」「落ちる」で、彼女自身が自分を変えたり、新たな一歩を踏み出すかどうかの選択でないのは少し残念でした。
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●オンライン小説であることを活かした結末は楽しめます。空を飛び、そして落ちる夢を、背景を違えながら段階的に使い、起承転結がはっきりしています。主人公の女の子の行動、仕草、セリフの表現に時折魅力的なものを感じます。が、夢を除いた筋書き自体はパターン化されたもののようです。途中で分岐点を作り読者に選択させるという形は新しいものかもしれませんが、分岐点に至るまでの過程に複数の可能性を持たせるためどうしても書き込みに制限が生まれてくると思います。ある程度の制限は仕方ないながら、物語そのものを見るなら工夫をと思いました。
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皆様への御礼
前回に続いて、この有意義な文学賞に参加させていただきまして、運営サイドの皆様には大いに感謝いたしております。また丁寧な評をつけてくださった方々には心より御礼を申し上げます。今回、「感想広場」と「合評広場」が新設され、環境が充実したことで、より多方面に学ぶことができました。たくさんの方との出会いや様々な経験が、明日の実りへ繋がると信じて、今後もひたすら精進する所存です。そして、拙い作品に感想を寄せてくださった皆様、陰ながら応援してくださった皆様、貴重な一票を投じてくださった皆様、全ての方々に感謝の気持ちを捧げます。皆様、本当にありがとうございました。
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