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【選考委員様の講評】
主催者の大江眞輝様と歴代選考委員の方々にいただいた有難い講評です。今後の創作に向けて親身に考えてくださった内容で、励みになるやら感動するやらで、とっても嬉しかったので、大江様のご了承を得て掲載させていただきました。第二回・第三回は無記名で、第四回・第五回は選考委員様のご芳名を記載させていただいてます。第六回からは作品個々の講評はありません。言わずもがなのことですが、順番も文面もそっくりそのまま転載させていただきました。
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第二回文学賞講評 : 『テスト』
●暖かい内容の物語であった。暖かい雰囲気の漂う穏やかな作風なので、読み手が安心できる作品であった。 テーマが良く、読後感のいい作品であった。 それだけに、ストーリーを作りすぎているのがちょっと気になったところだ。 夢の中の「タカシ」が兄であるというのが早々に分かってしまったし、ちょっと展開としてはできすぎている。 また、教訓色が少し強いので、そのあたりをもう少しセーブしながら書くと、ストーリーに自然さが生まれるのではないだろうか。
●兄弟の温かく優しい物語でした。お兄さんの思いやりがとても良く伝わってくる作品です。兄に劣等感を抱いていた弟が、「タカシ」と接していくことで、劣等感のもととなっていた勉強への見方を180度転換し、更に兄も自分を羨望の目で見ていることを知り、成長していく様がうまく描かれていたと思います。ただ、主人公が小学校の低学年というところに違和感を感じました。それだけ幼ければもっと子供っぽさを出した方が良かったのではないでしょうか。セリフや行動にそう思わせる部分がありました。この設定でいくなら、いっそのこと童話のような語り口にした方が良かったかもしれません。もしくは、主人公を中学1年生くらいにするのも良かったかもしれません。反抗期の時期ですから、出来すぎるお兄さんに憎しみすら抱いている設定にすれば、ラストも更に生きてくるような気がします。
●気どりのない素直な文章で好感がもてる。この作品の魅力は、多かれ少なかれ、似たような経験をしたと読み手に感じさせるところだ。主人公、兄〈タカシ〉どちらかの立場に読み手は自身を重ね合わせて読むことができるからだ。しかし、夢の中に現れる人物が兄と同じタカシという名であることを認識していながら、タカシ=兄だとすぐにわからないところに疑問を感じた。例えば、夢の中では名前や顔ははっきりとしないが、あれは兄ではないかと思うことはあっても、名前ははっきりとわかっていて人物が誰なのか見当がつかないということがあり得るのかどうか。仮にそうだとしても、幼い頃の兄の写真を見てやっと、夢に出てくる人物が兄だとわかるという設定はちょっと作りすぎという感じがする。また、作品の中では現実での兄との会話はない。高校受験を控え、部屋に閉じこもりっきりという説明だけしか書かれていなくて、その代わりに夢の中で兄と会話をするという設定になっているが、そこに物足りなさを感じた。ラストあたりに、現実の兄の姿をちらりと覗かせてもよかったのではないか。だが、これだけ無駄のない文章が書けるのだから視野を拡げ、独自の作品世界を築いてほしい。
皆様への御礼
今回初めてこの文学賞に参加させていただいたことに深く感謝し、また丁寧な評をつけてくださった方々には心より御礼を申し上げます。期間中、多くのことを学ばせていただき、文章を書くことの難しさを痛感いたしました。拙い作品に感想を寄せてくださった皆様、陰ながら応援してくださった皆様、貴重な一票を投じてくださった皆様、全ての方々に感謝の気持ちを捧げます。今後ともこの経験を励みに新たな飛躍を目指してがんばって書き続けようと思います。本当にありがとうございました。
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第三回文学賞講評 : 『落ちる夢』
●女子大生特有のリズム感を感じさせる文体で、楽しみながら読めた作品です。主人公の性格付けも、細かな部分で読者に感じさせるような配慮がしてあり、すんなりと作品の中に入ることができました。彼との別れを予感させる夢の展開はややありがちといえばそうなんですが、この作品の後半部分が2パターン用意されていることに工夫を感じました。ただ、その2パターン用意したことが成功しているかというと、個人的な好みによってわかれるとは思いますが、「闇」の方がより魅力的な終わり方で、ショート・ショートとしての味わいがあったように思います。中でも、「あれから落ちる夢どころか、どんな夢も見ない。夢の中の私は、もう死んでしまったから−−−−」の箇所はぞくっとしました。こちらの方が、シャープな仕上がりになるのではないかと思いました。
●ラストの二選択制(?)には驚きました。「落ちる夢」と現実をうまく対比させた作品です。主人公の驕慢な性格が、彼との会話や地の文で生き生きと描かれていました。「Right」と「Left」の内容は、なんとなく予想でき、いかにもという結末になっているので、もうひとひねり欲しかった気もします。ラストの二選択は、新しい彼氏ができるかできないかによる「飛ぶ」「落ちる」で、彼女自身が自分を変えたり、新たな一歩を踏み出すかどうかの選択でないのは少し残念でした。
●オンライン小説であることを活かした結末は楽しめます。空を飛び、そして落ちる夢を、背景を違えながら段階的に使い、起承転結がはっきりしています。主人公の女の子の行動、仕草、セリフの表現に時折魅力的なものを感じます。が、夢を除いた筋書き自体はパターン化されたもののようです。途中で分岐点を作り読者に選択させるという形は新しいものかもしれませんが、分岐点に至るまでの過程に複数の可能性を持たせるためどうしても書き込みに制限が生まれてくると思います。ある程度の制限は仕方ないながら、物語そのものを見るなら工夫をと思いました。
皆様への御礼
前回に続いて、この有意義な文学賞に参加させていただきまして、運営サイドの皆様には大いに感謝いたしております。また丁寧な評をつけてくださった方々には心より御礼を申し上げます。今回、「感想広場」と「合評広場」が新設され、環境が充実したことで、より多方面に学ぶことができました。たくさんの方との出会いや様々な経験が、明日の実りへ繋がると信じて、今後もひたすら精進する所存です。そして、拙い作品に感想を寄せてくださった皆様、陰ながら応援してくださった皆様、貴重な一票を投じてくださった皆様、全ての方々に感謝の気持ちを捧げます。皆様、本当にありがとうございました。
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第四回文学賞講評 : 『鬼の目にも涙』
●夢童子様
 まずこの語り口がいい。大仰でユーモラスな言い回しが楽しめる。
 大仰でユーモラスな言い回しを軸足にして転がっていく話が面白い。語り手が「実は力自慢でもあった」と言うとこの赤鬼太郎さんはむくむくと力持ちになって片手で大木を抱えてしまう。語り手が「とんでもない事態が湧き起こった」と言うと、愛妻弁当が崖下目がけて突進し始めたことが本当にとんでもない事態のように思えてくる。
 「平和主義で博愛主義」の赤鬼太郎さんの「外見が少しばかり人間とは違うだけ」で「親切心からの行動もすべて裏目に出る」お話である。木彫り職人の赤鬼さんが山へ向かう途中で道を塞いでいる倒木を脇へ寄せる。その勢いで愛妻弁当が崖下へ落ちてしまう。赤鬼が崖を降りるとそこは白砂の浜辺で浦島太郎さんがいて、赤鬼さんの愛妻弁当を「神様のお恵み」だなぞと言って食べてしまう……。
 テンポがよくてストーリー展開も面白い。「亀の心、鬼知らず」とか「漁師のくせに、釣らずに釣られていたのだ」と語り手は痛快にお道化倒しながら、最後はちゃんと「人の目にも涙」という辛口で止める。
 ややテンポに停滞が感じられたのは、赤鬼さんを竜宮城へ連れて行こうとする亀吉と、遠慮しまくる赤鬼さんとのやりとりであるが、全体を通して、イキのいい自由奔放な語りっぷりとこの展開は、大いに楽しめた。
●iuaoiio様
 書き出しからして肩の力を抜いて楽しんでいいんだなと思わせてくれる作品でした。そして期待に違わず充分に楽しめました。
 主人公、赤鬼太郎のキャラクターもしっかり構築されていました。またこのキャラクターが話中において様々な動機付けを用意しているわけで、脱線(まさしくこの物語は弁当を道の脇に落とすことから始まる脱線の物語ですよね)を繰り返す物語に安定感、そして収拾をもたらしているのでした。
 脇役としての浦島太郎、そして亀もいい味を出していました。善良であるはずの浦島太郎の怠け者ぶり、またこの怠け者ぶりは赤鬼太郎と亀を引きあわすだけの理由と思いきや、怠け者からは運も逃げると言った教訓まで作者は引き出して退場させています。亀についても小姓などといった具体的な役柄をあてたり、姫の性格を粘着質と表現させたりして読者の想像力をかき立てます。また「めいっぱい伸ばした首」などと目に浮かぶような描写も忘れていません。そして赤鬼太郎を何とか竜宮へと連れて帰ろうと口にした言葉が次第にキャバレーの呼び込み口調に近付いていくところも可笑しさを誘いました。このような台詞の中で聞くと秘宝という言葉も卑猥に聞こえますね。時折、入る作者のつっこみも文体のリズムの一つとなっていて良かったです。
 只、ラストの文章、「〜を騙す者に比べれば、遙かに〜」、比べようもないほど赤鬼太郎さんは情に溢れていますよ。ということで「鬼の目にも涙」というタイトルに相応しい物語であったかどうか、少し疑問ですね。
●大江眞輝様
 リズミカルな文体で一気に読み通せる楽しい童話パロディである。主人公の赤鬼太郎の人(鬼)の良さには笑えて涙が出てくる。文学とは小さな思いこみ、固定概念をうち砕く作業から始めなければならない。この作品では、そうした固定概念をうち砕いた位置から童話を見つめ直した作品である。
皆様への御礼
毎回この有意義な文学賞に参加できて、回を追うごとに有難さが深まります。運営サイドの皆様や丁寧な評をつけてくださった方々には心から敬意を表します。今回は合評に参加いたしませんでしたが、いただいた講評や感想や励ましの言葉に、常にも勝る手ごたえと達成感を噛み締めております。文学賞終了後に語り合える仲間ができたことも素晴らしい財産ですね。何よりも、拙い作品に感想を寄せてくださった皆様、陰ながら応援してくださった皆様、貴重な一票を投じてくださった皆様、全ての方々に感謝の気持ちを捧げます。集う皆様の温かい心に触れ、さらなるヤル気が湧いてきました。今後もひたすら精進します! 本当にありがとうございました。
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第五回文学賞講評 : 『ヒロくんの大冒険』
●taremomo様
 高校生の大冒険が、一人でバスに乗ること? と、はじまりから意表をつかれました。いえ、大冒険はいくつになったってできますよね。ヒロくんの場合は地理的な冒険ではなく、心理的なものでした。普段は乗らないバスに乗り、気の進まない用事でのおでかけ。そんな中で妙に気になったのが、混雑したバスで座れずにいたおばあさん。そのおばあさんを見ているうちに、ヒロくんが心の奥底におしこめていた思いがじわじわと引き出されます。彼のおばあさんの死、おじいさんからの突然の悲しい拒絶。バスで出会ったおばあさんは、前の年に亡くなった旦那さんへの思いと一緒に花見をしに来たのだといいます。ヒロくんには心が離れてしまってはいても、確かに生きているおじいさんがいる。きっとまた仲良くなれる、一歩踏み出すことができれば。歩き出そうとしているヒロくん、応援したくなりました。題名と作りは児童文学風ですが、内容的には小説風な感じもしました。
●大江眞輝様
 主人公が高校生というのは多少無理があるように思います。バスの中でおばあさんを助けたり荷物を持ったりというくだりである程度の体格を必要としたのでしょうが、性格的にも主人公は高校生にしては子供過ぎますし、子供さんに向けた作品であるならば、同世代の子供を主人公にする方が自分自身と重ねることで本の世界に入っていきやすくなります。バスで出逢ったおばあさんとのお花見という柔らかなエピソードが中心の物語ですから、小学校高学年ぐらいの設定の方が良いかもしれません。また、冒頭で語り手が顔を出し、主人公と会話をしますが、視点の混乱に結びつくので避けた方が良いでしょう。
皆様への御礼
引き続きこの有意義な文学賞に参加でき、新たに色々と学ばせていただけたことに有難さもひとしおです。運営サイドの皆様や丁寧な評をつけてくださった方々に厚く御礼申し上げます。今回、分に合わぬ試みをしてみたところ、ターゲットを変える難しさをひしひしと感じるばかりでした。しかし、実行委員の方々のご尽力で、プロの童話作家である赤羽じゅんこ様のご意見を伺えたことが大きな実りとなりました。温かく重みのあるお言葉に、勇気を奮い起こさせる心強さをいただきまして、ほんに感謝感激です。加えて、拙い作品に感想を寄せてくださった皆様、陰ながら応援してくださった皆様、貴重な一票を投じてくださった皆様、全ての方々に感謝の気持ちを捧げます。本当にありがとうございました。
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第六回文学賞〜総括より抜粋 : 『天狗山−異形闇伝−』
●文=実行委員長:大江眞輝様
 のびのびとした文章で、好印象でした。書くことを楽しんでいる、作品世界という生き物を自らに宿して書いたという印象を受け、「トキ」という存在が愛おしく感じました。ただ、田舎の村社会の冷酷さについての作者自身の必然性が見えなかったので、物語に終わってしまったことが惜しい作品です。もう少し文章を整理すれば、50枚で表現するべきものの密度を上げることも可能ですし、今後が楽しみな書き手さんです。
※【み】のお勧め的補足
 今回のブツに触れていただいた部分は以上が主ですが、この委員長の総括には、文章修行者の心得とも称すべき素晴らしいアドバイスがてんこ盛りです。オフにしろオンにしろ文学賞を狙っている文章修行者の方、またそうでない修行者の方々にも、ひとつの光明になるのではないでしょうか。真面目な話、一読の価値有りですよ、お勧めですよ。興味を惹かれた方は↑の講評目録のリンクから【うおのめ文学賞】本家へどうぞ。
皆様への御礼
この有意義な文学賞への参加も年中行事の如くになりまして、改めて喜びと有難さを噛み締めております。運営サイドの皆様や丁寧な評をつけてくださった大江様には感謝の気持ちで一杯です。今回なんと、最終選考の手前の手前まで生き残っていた上に、委員長の総括で取り上げていただけるという栄誉に輝きました。選外なんですけど今までにない快挙に驚きです。文学賞という枠を取っ払って自由奔放に書いたものにも拘らず、何やら進歩を感じて嬉しゅうございました。この経験を生かして今後も精進あるのみです! これも偏に、拙い作品に感想を寄せてくださった皆様、陰ながら応援してくださった皆様、水面下で励ましてくださった皆様、全ての方々のお蔭です。本当にありがとうございました。
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