韓国旅行その2
1998
11日〜13
日付内容行き先
動機+1998.03.09そしてまた韓国へ。ご近所(笑)
1日目1998.03.11カモカモN西君。明洞、梨泰院、ロッテ百貨店、南大門
2日目1998.03.12観光に目覚める。(前編)景福宮、安国(仁寺洞)
観光に目覚める。(後編)安国(仁寺洞)、?、ソウルタワー、漢江
3日目1998.03.13あれ?無くなってるっ!!帰国

昼食

 ここは日本人のいない店で、メニューも日本語のものがない。嬉しいなぁ。ここの注文もPさんにお任せである。何が出てくるのだろうか。落ち着いたところでビデオも再開。

I「はいっ、まずN西君。ここに来ていくら使いましたか?」
N「かなり使いましたぁ〜」
 Pさん笑っている。
N「あなた、お土産ばっかりですわぁ」
I「Pさん、今どうですか」
P「今、食べるから、気持ちいいですねェ」
 
I川君と僕、ウケる。
I「ペルシャさん、どうですか。(笑)」
ペ「僕は何も買ってないのですが、ちょっと、今何が出てくるのか、すごい楽しみです。(笑)」
 
そうなのだ。キノコのおつまみ以外、何も買ってないのだ。僕の目的の物にはまだ出会っていない。もう食べるしか楽しみが無いのだ。
N「自分の物も買えないかもしれませんね」
I「(笑)使い過ぎや、お前」
ペ「…ていうか、もう両手いっぱいで持って帰れないな」
I「(笑)あれ、あのキムチの瓶(かめ)は買わんが?」
N「買わん」
ペ「えーっ」
 
家族に「キムチの瓶を買ってきて」と言われたと、あれだけ言っていたくせに。Pさんも笑ってる。
N「もう、もう全部お土産買いましたし。もう買いませんよ、他の物。後は自分の物だけです」
ペ「あの、でっかいカバン買って、もっと詰めて…」
 
この町の店先で見た大きなカバンのことである。I川君、吹き出す。
ペ「あっ、宅配で送ってもらえ、日本まで。着払いで。(笑)」
N「いくらかかるんスか?」
ペ「わかんない」

I「Pさん、この後、あの〜親父の〜土産買って、その後どこに行くがですか?」
P「それから〜買って、また玩具の、なんとかの国(意味不明)だから、あそこ。…軽くなったね〜財布。(笑)」
N「I川、いくら使った?」
I「え!?今〜10万Wか」
N「いや、円で」
I「え!?円で?」
 
聞き返すI川君。当然である。1/10にすれば済むことである。ところがN西君の質問は「全部で」という意味だったらしく、付き合いの長いI川君は瞬時にN西君の真意を悟る。
I「円で4万ぐらいかな?」
N「あっ、一緒やん。一緒、一緒。…良かった、安心できた」
 
笑うI川君。自分だけたくさん使ったのではないことが判り、安心した様子。だが、これでなぜ安心になるのかは僕には判らないぞ。自分の持ち金次第じゃないのか。(笑)
N「でも俺のが、でかいよな」
I「たぶんな。俺も、スポーンがでかいから」
ペ「俺、なーんにも買ってないから、めちゃめちゃ金もっとるよ」
 
目的のものが買えて満足げな2人を見てうらやましく、ちょっとふて腐れ気味になる。
N「それだったら、ペルシャさんから借りれば」
追い討ちかいっ!(笑)
ペ「俺買ったんは、革ジャンと…ネクタイと…傘だけや。傘は600円だったよな」
I「えっ、ちょっと待てよ。N西、お前革ジャン買っとっから、俺より遥かに使っとあんねあん(使っているんじゃないの)?」予想外のN西君の使いっぷりに驚きのI川君。
N「うん、革ジャン、抜いたら6万。あっ、革ジャン入れたら6万」

ペ「俺、5万換金して〜まだ結構のこっとるもんなぁ。20万W以上持っとるから」
I「じゃ、ご飯が来るまで一回切りま〜す」撮影中断。

食べるのに夢中で、届いた直後の写真を撮り忘れた。手前のが海苔のスープ。 出てきたものは、お好み焼き(パジョンです。前回の屋台で食べたものと同じ物。)と、海苔のスープだった。
 お好み焼きはさすがに美味しく、たれに付けて食べた。皿は瞬く間に空になっていく。スープも海苔の香りのする塩ベースのもので美味しいのだが、量が多くて残してしまった。ここでも中西君は「辛い!」を連発。

ペ「入っている海苔が美味しい」
I「はーい。かなりみんな、満足でーす」

N「でも、辛いでーす」
ペ「またか」
N西君、笑ってる。
I「この根性無しがぁっ」N「でも、辛いでーす」満足。
N「みんなに騙されましたぁ」
ペ「騙されてねーわいや。美味いぞ、これ」
I「Pさん、どうも。美味しかったです」
 
みんな、黙々と食べていてリアクションが少ない。
I「ていうか、みんな、まだ食べとる」
ペ「量が多いね」
うんうんと、納得のI川君。

 海苔のスープのおかげか、I川君の体調が回復する。店を出て、I川君のお父さんに頼まれている「人形」を求めてお店を捜すが、なかなか見つからない。しばらくして判ったのは、建物自体が無くなっていたのだ。取り壊しの途中か?建物の残骸がただ塀の内側にあった。残念ながら手に入らず。

ペ「また、つかまってまーす」
 その取り壊し途中の建物の前で、アクセサリーの屋台がある。N西君がまた声をかけられた。N西君は、このアクセサリー屋さんに興味があるのか、韓国語を知らないのに、1人でちゃんと交渉していたので感心した。少なくとも、初めて韓国に来た時の僕よりもしっかりしていると思う。

 タクシーで、Pさんの知っている模型店へ。ここではなかなかタクシーがつかまらなくて、じれったく感じた。

現代(ヒュンダイ)アバンテDX。僕のお気に入り。
模型専門店

 タクシーでは、どう移動したのかほとんど覚えていない。金浦空港からホテルに来る時に通ったトンネルと同じ所を通ったようなので、明洞と空港の間のどこかであろう。バッテリーが心もとなくなってきたので、I川君はビデオでの撮影を控えるようになってきた。30分くらい走って到着。この周りは店がたくさんあってごみごみとしていても、さほど都会という感じではなく、昔の日本の風景を感じさせる。大通りから少し入ったところにその目的地はあった。Pさんの話し振りから「問屋さん」を想像していたのだが、そのような感じではなく、昔近所にあった模型屋さんと同じようなたたずまいである。だが、模型の専門店に初めてめぐり合ったのだ。前回の悔いを晴らすことが出来た。すごい!感動する。

 そんなに店は大きくないが、完成品(ほとんどが戦車、飛行機)がたくさん並んでおり、日本のプラモデルも売っていた。初めてガレージ・キットのコピー品も見つけた。以前にある雑誌のライターが、ガレージ・キットのコピー品が出まわって困る、と言う記事を読んだことがある。この記事では台湾や香港が挙げられていたが韓国にもあったのだ。でもひょっとすると生産地は韓国ではなく、コピーした国からの輸入なのかもしれない。と言うのも新しい番組の(今、日本で発売している)物があまり無く、一昔前の作品のばかりだったからだ。そう、丁度「うる星やつら」とか。その価格を調べると海洋堂のEVA(エヴァンゲリオン)弐号機が、30,000Wだ。また、売ってはいなかったが、パッケージの裏にラインナップとして、ボークスの14,800円のK.O.G.ラキシスやクラブMの1/72、YF-19(マクロス・プラス)があった。「また来るので注文しておいて下さい」と言っておけば良かった。(いつ取りに来るか判らないのに。迷惑な話である。)それに反して、プラモデルのコピー品が少ないので驚いた。日本のメーカーの物は同じか、またはやや高く売っていた。試しに売っていたMG量産型ザクの値段を聞くと、2,800円くらいだった。この商品は日本では2,500円なので、韓国だからと言ってここの物価にあわせた価格で売っているわけではないことが判った。

 僕は一通り棚のプラモデルやガレージ・キットを見たのだが、それほど欲しいものが無かった。面白いのは、前回の韓国旅行で「同じガンダムのシリーズがいろんなメーカーから出ている」のが、ガレージ・キットでも同じ現象が起こっていたことである。何か共通する訳があるのだろうか。余裕が出てきたので外からも見えた数々の完成品を見る。完成見本はレベルが高い。Pさんによると、この店の人も手によるものとか。男の人で若い。20代後半くらいか。日本に50回以上来ていたらしいので、個人的に友達になりたいくらいだ。この店はこの人1人で経営している様である。造りかけだが、フルスクラッチのタイガーT戦車が置いてあった。また1/24のエアフィックス「ハリアー」の改造と思われるが、トゥルー・ライズの作品もあった。このハリアーのキットは初期に出たひどいキットで、映画に出ていたような「ハリアーU」にするためにはかなりの技術が必要なはずである。ところが筋彫りやディティールも直されていて素人目には初めから良質なキットだと思えるほど。1/24とはいえ、コクピットに座っている「シュワルツネガー」もそっくりである。僕とI川君、ただ感心してずっと作品に見入る。この店にはショーケースと言うものがほとんど無く、触ろうと思えば触れる状態である。昔、国語の教科書に出ていた「触りたがる日本人(正式な題名を忘れました。)」と言う話を思い出した。

 その本によると、日本人はことさら触りたがる様だ。海外の博物館や美術館ではケースや柵を設けていないところが多い。ところが日本では触ってしまうのでそのような防衛措置をとらざるをえないらしく、また海外でも日本人がケースや柵がないからと触ってしまって、困ってしまう、と言うのだ。僕は触っていいか聞くまでは絶対にその人の作品やコレクションには勝手に触れないことにしている。友達の家に行ってもそうだ。と言うのも、自分が大切にしているものを勝手に触られるのが嫌だからだ。例えば僕の好きな超合金。合金の大部分は亜鉛ダイキャスト製で、低温・水分・油分に弱い。だから長持ちさせるためには、素手で触った後は拭かなくてはいけない。そしてプラモデル。安易に触って壊してしまった時、全く同じ状態に戻せるのか?またその人が作っていた時の苦労は?それを考えると特に他人の作品は、怖くて触れないのだ。

 N西君がまだ商品選びで迷っていたので、僕も商品観察に戻る。バーリンデン関係のものが多く、日本の模型誌もあった。今思えば、韓国の模型誌も1冊買っておけばよかった。次に来るとき本の広告を利用して、他の模型店を捜せたかもしれなかったからだ。ここでは日本でレジン・キャストの商品が、ソフトビニールにコピーされているものも発見だった。レジン・キャスト製の物はやや高め(日本の約1/2。ソフビは約1/10〜1/20でソフビが安すぎる!のだ。)である。N西君異常に買う。僕とI川君は少し(1個2個程度)しか買わなかった。店員さん、喜んでポスターをくれる。Pさんを見ると、待ちくたびれて居眠りしていた。店の名刺をもらわなかったのは失敗だった。そして、写真も撮っておくべきだった!ここで探していた、レベルの1/72コルベット(メーカー名の記憶違いです。正しくはマッチボックスの1/72フラワー級護衛艦、コルベットです。笑)を発見するも、販売はしていなかった。作りかけでショーケースにひっそりと飾ってあったのだ。僕は初めて買ったホビージャパン(1982年7月号)で、プラモ艦をRCに!と言う記事を見て以来、いつか同じ事をしてやるぞ、と思っていたのだ。1度、大学の頃に行き付けの模型屋さんで見かけて「お金がたまったら買う」と思っている内に無くなってしまった、と言う苦い経験があった。当時、8,000円(これも大きな勘違いで、定価は32,000円でした。でも、その模型屋さんでは、この位で売ってくれると言っていたような…。笑)は大金だったのだ。この商品とは縁がないのか。目の前にやっとめぐり合ったのに、残念だ。だが、それと同時に他の店に残っている可能性が韓国にはまだあるに違いない、とも思う。

 次に歩いてPさんの良く行くという、スーパーへ。ここは古い建物で半地下の店である。やはり昔近所にあったスーパーを思い出す。I川君のお父さんにもらったお金(実質、我々3人が出したのだが)で、海苔とキムチを買ってくれる。N西君は辛いのに懲りたのか、キムチをいやがり、海苔だけ買ってもらう。僕は明太子のキムチにしたが、白菜のも買っておけば良かった。日本に帰ってきたら無性に食べたくなった。

 いったん、荷物を置きにホテルへタクシーで向かう。ここのタクシーに乗って気付いたのだが、Uターンがすごい。「どこまで行くんやーっ」てな感じで、交差点をいくつも越えないと曲がらないのだ。初めはUターン禁止の標識があるせいかな?と思っていたのだが、どうやらそうではなく「やり易い場所」まで走っているようなのだ。料金がもったいなく感じるが、韓国の交通量では回り道より早いかもしれない。納得。そしてホテルから、僕とN西君の強い希望で「S」店とロッテ百貨店に向かう。近いので歩いて行った。地上からロッテに行く道を初めて知る。

強い希望

 「S」店の近くは市が盛んで、I川君はその屋台で売っていた「虫(フライド蚕?)」を食べたいというが、断る。あんな不気味な物は絶対食べられない。僕はその近くの鯛焼き(N西君曰く、「あれ、金魚焼きですよ」)が食べたかった。靴屋にも興味がいった。

 「S」店に入ったとたん、I川君とN西君は「ここ、ユニー(地元にある、老舗のスーパー。)の匂いがする」と言っていた。ううむ、確かに。はたして!地下にその模型店はあった。ガレージキットの量・質ともに前の店以上だった。狙っていた1/350タイタニックがあったので確保した後、それは目に入ったのである。

ペ「コブラだ!」

 僕は切れた。今までほとんど何も買わなかったのだ。ここで有り金すべてを使ってもいいと思い、異常に買う。I川君、僕のこの切れっぷりに相当ウケている。前の店で見かけなかったアカデミーの1/16「メルセデス300SL(15,000W)」などお買い得なものや、貴重なものを選んではレジに積んだ。袋はゴミ袋のように大きなものとなり、店の人もうれしいのか、カレンダーをサービスしてくれたし、少し安くもしてもらった。N西君もかなり買ったが、I川君はダースベイダーで悩む。もう日本では絶版だ。しかし、結局買わなかった。(後で後悔していた。)N西君はこの後、ロッテでも異常に買うはずなので、どうするつもりなのか楽しみだった。ロイヤルホテルの回転ドアに詰まって、出られなくなる姿を想像してウケた。そういえば初めて来たときも、I川君と2人で回転ドアに入って、ボーイに「1人ずつヨ!」と注意されていたのだ。(笑)歩いてロッテに向かう。指に荷物が食い込むが、少しも苦にならない。Pさんに顔が良くなった(変った。)と言われた。新世界百貨店にも行ってみたかったが、皆、疲れているので言い出せなかった。心残りである。

 ロッテに着いて、N西君は我々の想像を遥かに超えた買い物した。途中でそわそわし始めたので聞いてみると、お金が足りなくなったらしい。買い過ぎだよ。でも、そうめったに来られる所ではないので、気持ちは判る。僕とI川君から借りることになった。N西君の一言のせいで、店員さんも大忙し。ここはビデオで見たほうが面白い。帰る姿も異常だった。Pさん、我々に付き合って疲れたためか、この玩具売り場にバッグを置き忘れてしまった。慌てて戻るとバッグは無事だった。一安心。
歩いてロイヤルホテルに帰る途中、Pさんの携帯電話に呼び出しが。出るとき、本当に「ヨボセヨ(もしもし)」と言っていたので、なんとなくおかしくなってしまう。日本人の語感的に、変に聞こえるのだ。僕は呼びかけの時に使わなくてはならないときも、ためらいがちになる。電話が終わって、また歩き出す。Pさんは気を使ってN西君の荷物を1つ持ってくれる。優しい人だ。

 明洞のメインストリート。映画館の近くに、傷痍軍人らしき人がいた。この人は両足が無く、這った状態で物乞いをしている。傍においてあるラジカセからは軍歌らしき歌が流れている。昔、小学校低学年の頃まで、地元でもよくみかけた。近所の地下道に入るといたものだ。ラジカセから軍歌を流して、ただ黙って恵みを待つのだ。僕はいつも地下道に入るのが怖かった。個人的には関係ないが、日本人としては関係がある。あの人達はいったい何処に行ってしまったのだろう?居たたまれない気持ちになった。

そのとき!どうするの?

 ホテルに戻り、エレベーター前。ボタンを押して、降りてくるのを待っている。
I「エレベーター。邪魔だな〜、君の荷物なぁ。(笑)」
 と、N西君を撮影。
ペ「俺達が(エレベーターに)乗っただけで、もう(内部が)パンパンだ、これ、ちょっと」
N「あっ、持ちますよ、後」
 
荷物をずっと持ってくれていたPさんを気遣う、N西君。
P「いーいーいー、大丈夫」
I「Pさん、優しいです。…さすがN西の奥さん。(笑)」
 エレベーターが到着する。ホテルマンがエレベーターのドアを押さえている。さっ、この隙に乗り込むのだ。
N「I川、これ、乗れんな」
I「乗れるやろ」
ペ「乗れる、乗れる」
 別のお客さん(日本人)が、「入れるの?」と聞きながら一緒に乗ろうとする。さすがに無理だろ、と思っていたらホテルマンが一言、「大丈夫です」と言ったためにすし詰め状態に。我々だけで丁度だったはずが、2名も。
I「はいっ、何とか入ったー」
 しかし、両手に荷物を持っているは、身動きが取れないはで、僕達はボタンに手が届かない。後から来た2人が操作パネルの前に位置していたので、
ペ「なっ、7階押して下さい」とお願いしたのだが、無反応である。N西君がもう1度「7階、押してもらえますか?」と言うと、ようやく押してくれた。少し嫌な気持ちになる。いい歳をしたおじさんだ。僕が逆の立場だったら「何階ですか?」と、先に聞くけどなぁ。小声でI川君が僕に話しかける。

ぎっしり。

I「どーしよ?」
ペ「ちょっと冷や汗かいとるわ、俺。(笑)」
N「すっごい俺も疲れとる」
 チン。到着のベル。特に会話を交わすでもなく、あの内の1人は4階で降りた。
I「Pさん、もう少しがんばって」
 疲れているだろうに、笑顔のPさん。
ペ「でも、この後焼肉を食って、ちょっと」
I「ホクホク。(笑)でもペルシャさん、1万(円負担)
ペ「いいヨ、いいヨ。イチマン(1万)、出すヨ」
I「”出すヨ”、(笑)韓国調だ〜」
ペ「ポクに任せるヨ」
I「ポクに任せる…。(笑)」ホテルマンのポクさんの真似。I川君はその話を知っているのだ。(韓国その1参照)
 エレベーターが止まり、後から乗りこんできたもう1人が降りた。
I「あ〜、やっと、僕達だけの空間だね」
ペ「うん」何かほっとする。
N「ああ、大変な買い物」みんなで笑いながら、苦労をねぎらう。
I「Pさん、お疲れ様でした。(笑)」
P「いいー、大丈夫。私も今日、"EYE SHOPPING"いっぱいした。(笑)」
I「アイ・ショッピング!?」ウインドー・ショッピングのことらしい。納得してI川君、笑う。和やかな雰囲気に。7階に到着。N西君を先頭に部屋に向かう。それをビデオで追い続ける、I川君。
I「♪〜さぁ〜部屋へ戻ろお〜。…どんな歌よ」
 自分で作っておいて「突っ込み」を入れてる。

I「何か、N西の背中に、哀愁が。(笑)この、超合金を持った…」
 
言い方が面白い。
ペ「明日、空港〜どうするんだろう」
N「持っていきますよ!全部」ちょっと、切れ気味。
I「この男、こんなもんいっぱい買いながら実は今度、○○(日本有数の会社です。)に就職。信じられねェ。(笑)」

 休憩がてら荷物の整理をした。箱をつぶしたり、中身を1つにしたりしながら荷物を減らしていく。N西君は、箱を捨てるか残すかで迷い、Pさんはそれを見るに見かねて手伝って荷造りした。僕の整理をPさんは「さすが先輩は旅行慣れしてるネ。アナタだめネ」と誉めてくれた。(アナタとは、N西君のことだ。)

満足と罠

 夕食はカルビ。銀タクシーで出かける。着いたところは見たことも無い場所だった。すっかり日も沈み、真っ暗でどこを走ってきたのかも判らない。Pさんが先に店のほうに歩き出し、僕はタクシー料金の支払い。その間に、またN西君は「チップ」のことでI川君と話していたそうだ。ここはビデオに残っている。

I「はいっ、焼肉屋さんにィ着きましたぁ〜」
N「I川ちゃん、いくら盗られたと思う?2,300Wかかった。いくら、盗っていかれる?」
 I川君が撮影していると、後ろからN西君が車から降りるなり、この質問。「盗る」とは人聞きの悪い。
I「えっ!?」
N「いくら盗って行かれると思う?チップに」
I「いくら盗ってかれたん?」
N「判らん。2,300かかったん。今、いくらになるかな?」
I「いくらだしたん?」
N「5,000」
 こんな会話をしている中、支払いを追えて僕はタクシーから出る。
I「ペルシャさん、いくら返って来た?」
ペ「ちゃんと返って来た」
IN「おおーっう」ハモる。もういいじゃん。
I「偉い、タクシーの鏡だ」運転手の鏡、である。
N「ああいう人に、チップあげていきたいね」
I「うん」
ペ「どこ入ってった?」
 すっかりPさんを見失ってしまった。急いで店内へ。この店はテーブルと、座敷(オンドル)が用意されていて、更に厨房が寿司屋の様に良く見えて、その場で肉をさばいていた。この店のお客さんも韓国の人しかいない。話し声が全く理解できない。2つテーブルが並ぶところに陣取る。すぐ後ろには、韓国のサラリーマン風の3人が食事をしている。

ペ「三脚でここに(ビデオカメラを)固定して…。(笑)」
I「(笑)そんなバッテリー無いって」
ぺ「そっかぁ」残念だ。全行程は撮れないのか。
P「カルビ、ジュセヨ(カルビ下さい。このときは聞き取れませんでした。)店員のおばさんにPさんが注文をする。他にビールも注文。僕は今回はお茶でなく、水を飲む。店員さんは注文を確認(3人分か?などと聞いています。やはりこのときは聞き取れず。)。程なくして、肉が到着。この店はテーブルにコンロが置かれており、その上には石で出来た直径30p程のプレートが置いてある。見たところ、石焼ビビンバの器と同じ材質の様。これが鉄板の代わりをするのだ。韓国が初めてのN西君に、食べ方を教えながら、早速みんなで焼いて食べる。手に持ってるのはサンチュ。
これがすごく美味しい!やはり日本人のいないところは美味いのか!色々と見たこともない、カニや塩(韓国で味噌を付けて食べるのは知っていたが、塩は初めて見た。)味付けしてあるカルビが美味しくない(鮮度が低い)、というのも初めて知った。
I「美味いか」I川君が、N西君に撮影しながら感想を聞く。
N「美味い!」
ペ「美味いなぁ」自然に口から漏れる。
I「美味いスか」
ペ「めっちゃ美味い」目じりにいっぱい小じわが出来てしまう。
I「うぅ〜ん」鼻を鳴らすような言い方。
ペ「もうね肉、見るの嫌になるくらい、食うよ。(笑)」
 ジュージュー焼ける音と、いい匂い。そして、作戦開始。N西君を鍛え、作戦終了。特に打ち合わせをしたわけではなかったのだが、上手くいった。そして店員さんの勧めでユッケを注文することに。僕は焼肉屋さんのメニューに疎く、ユッケと言われてもよく判らない。届いてビックリ、肉を焼いていた石のプレートとほぼ同じ大きさの皿に生肉が。I川君は「でっけーっ」「この大きさは、見たことが無い」と、奇声をあげる。I川君とN西君は、先を争うようにユッケを自分の小皿に取る。2人は手を付けようとしない僕に勧めてくれるが、僕は生肉が苦手で食べる気にならないのだ。何事もチャレンジ、と少し口に入れてみるがだめだ。まるで焼く前のハンバーグを食べたみたいだ。目の前の石のプレートで焼いて食べようとすると、I川君に「そんな、もったいないこと!」と、叱られた。細切りの大根が乗っているのかと思ったら、甘い。ユッケには梨が乗っていたのだ。手にしているのは「金属製の箸」。


I「食べ終えたところで」カルビを焼いた石が空になったので、撮影再開。
ペ「ユッケがでかい」
I「ユッケがでかい。(笑)」
大人とは思えない感想に、I川君はウケている。
I「どうスか?N西さん」
N「
美味いよ」
I「
美味いスか。…Pさんも食べて下さい」
P「楽しいです」
リアクションに、I川君は笑う。
P「ああ、今が1番、楽しいね」
I「この、特大ユッケを見よ」
 アップで撮影。
N「あ、ユッケなん?」
ペ「…何を寝ぼけたこといっとあん。(笑)」
 今まで何だと思って、食べていたのだろうか
I「これが、2,500円だぁっ!(笑)」更にアップ。
N「あっ、ニッケじゃなかった?」
 そんなわけは無い。肉桂だと、浅田飴のような味のはずだ。(笑)
P「さっきからこれ撮ればよかったのに、全部無くなったとき撮る。(笑)」
I「無くなってしまったぁ〜!」
石の上にはニンニクと玉ねぎのかけらしか残っていない。
P「食べるのが忙しかったから(笑)、撮ることが出来なかった」
I「いやぁ、これ(肉)、ビデオ撮っとったら無くなってしまうから。(笑)」
ぺ「そうやね。早いもん勝ちや」
N「肉無いです」
ペ「いや、俺もう、ニンニクと玉ねぎ代表で」
I「ほう〜、やっぱいい〜」
またユッケをアップで撮る。そうしていると店員さんがやってきて、テーブルを指差しながらPさんに何やら話しかける。
N「えっ、何です、何ですか?」
 Pさんが説明してくれた。
P「今、これェ、撮るのがぁ、写真撮る、ビデオ撮ると、あんまり良くないじゃない、何も無いのにと。で、若いから、食べるのに忙しいでしょーう?」
N「もうちょっとお金持ってれば、もう1つ位追加するんですけどね」
P「私も2個ぐらいしか食べてない、と言ったよ。今。(笑)ほんとに」
 I川君が笑う。
P「ね、3人とも、若いから。(笑)しょうがない」

I「ペルシャさん、(ユッケの味)どうスか?」
ペ「こんなん食べるの、実は初めてでね」
 その頃N西君が、「水をもらえませんか」とPさんに言っている。
I「ああー。ユッケ、100点満点の内、何点くらい?」
ペ「よー判らん。(笑)」
I「よー判らん。(笑)」
I川君は、僕の反応にウケている。ユッケを口に運ぶ僕を見て、
I「じゃ、俺も飲もっ」
そして「作戦」の感想も撮影。

N「2回目や。また、また騙しやがって。(笑)」
I川君、バカウケ。Pさんも笑ってる。
ペ「何言ってるんだよぅ。(笑)」
N「2回目だ。(笑)噛む前から辛かったんだっ」
 辛いのが苦手のN西君を鍛えるため、僕、I川君とPさんで唐辛子キムチ入りサンチュをお見舞いしたことを言ってる。結果は、大成功だったのだが、この計画はすでに初日から予定されていたのであった。(笑)
P「あれもある。ククスチョンゴル(麺類すき焼き鍋?←今の能力で、直訳。笑)と言って、9,000W書いてある、あれ。メニュ」
と、箸で天井近くの横一列に貼ってあるメニューを指し示す。お勧めの料理らしい。辛いのかな?
ペ「あそこの方も撮ったら?切ってるよ、バシバシって」
 厨房を見て、I川君に撮影の指示を出す。
N「くそっ、怒ってやるっ。(笑)」
ヤケ酒。(笑)
I「Pさん」
P「ピース。(笑)今日の、疲れが、治りましたよ。はい。焼酎、飲んだら。(笑)」
みんなで笑う。

3人の動物。N西君は僕達にはめられた後。(笑)
 さん撮影。僕のカメラの使い方をちゃんと説明できなかったので、奥にピントが合ったまま写っている。
P「あの、この3人の動物が(笑)、私9時半から、あっちこっち連れて行って、帰ってきて」
I「ありがとうございました。本当に」
N「ありがとうございました。本当に2日間」
P「ねっ、自分(N西君)の荷物の段取りも、下手なんですよ。(笑)先輩は、やっぱり〜素晴らしい。ちゃんと、する。2人は(I川君とN西君を見て)、1番アナタが、ガンだよ。(笑)」
と、N西君を指差す。
I「お前、問だーい
(問題)。(笑)」
 
N西君、笑いだす。
N「
(買い)過ぎましたぁー、すいませんでしたぁー。今度から、考えて買うようにします。(笑)」

P「でも、荷造りすることも、やっぱり、いっぱい旅行したことがあると、頭使うね。ちゃんと」
ペ「うーん」確かに。玩具が趣味なら、尚更だ。
N「旅行、ぜんぜん行きません。親父、連れてってくれーっ!(笑)」
I「連れてってくれーー!(笑)」哀願。


 しばらくして最後にと、余ったユッケとご飯を使って石焼ビビンバを作ってもらった。生肉が苦手の僕には嬉しい配慮。野菜が少なかったので、Pさんが何を入れて欲しいか聞いてきたので「玉ねぎ」を希望。追加注文の時に判ったのだが、玉ねぎは昔の日本統治の名残で、韓国でも同じ言葉だったのである。Pさんにそのことを聞いて、前の旅行と同じく心が痛んだ。程よく焼けたところを食べ始めるが、ここに至るまでに結構お腹が充実していたので、食べきれない。途中からお弁当にしてもらうことになる。

 N西君、煙草を一服。すっかり気分は食後という感じ。
I「ユッケ、美味しかったっスか?」
N「辛かったですね」
I「辛かったっスか」
N「あっ、ユッケは美味かったっス」

P「あの、唐辛子」
I「あの唐辛子。かなり」
P「もう1回やってあげようか?記念で。(笑)」N西君、それは止めて!とPさんに勘弁してもらう。そしてN西君に、両親も韓国に来るように勧めていた。I川君のお父さんに言うと、ガイドしてもらえるそうである。
I「さっきのユッケーの残りで、作った石焼ビビンバ。…かなり美味いです」と、またアップで撮影。
I「これを明日の弁当にして、もしくは今日の深夜に食べるかな」
 その間もPさんはN西君に、韓国のWが安くなってきているので、日本で国内旅行するより韓国に来た方が安く、そして買い物もたくさん出来ると言うことを切々と説いていた。12月頃にも日本の企業が、忘年会でたくさん来ていたそうだ。何でも不況のために日本国内で、忘年会が予算以内で出来なかったとか。酔いがまわってきたのか、Pさんの滑舌がだんだん悪くなってきた。
I「ペルシャさん、このユッケの残りの石焼ビビンバ。どうすか?」
ペ「焦げたところが、すごい美味しい」ジュ〜。
 I川君、うわぁ〜とか言ってる。
I「この、食いっぷりが何とも。(笑)もう1回ちょっと、この美味い石焼ビビンバを」
ペ「見せてあげるよ、この焦げたところを」
 ビデオカメラの前で、スプーンでかき混ぜて見せる。
I「この、焦げたところを。(笑)」
ペ「この焦げたところ。(笑)もー、美味いんだ。ここが。おーわぁ(感嘆の声)。日本じゃ食えませんぜ、旦那」I川君がウケている。
I「これだけで10万(W)…、じゃないわ。(笑)…5万はいかん…ね?」
ペ「うん」


 Pさんが昨日の酒宴時にも話題になった、ホテルの料金の話を始める。VIPカードを持っているので安くなることや、3人部屋で僕達の料金は高いとか、昨日話した内容とほとんど同じである。Pさんが、それでも3人一緒だったから寂しくなかったでしょう、と言うとN西君が。
N「2人部屋(にエキストラ・ベッドを入れて3人で使っていたこと)、寂しかったです。…僕なんか、(2人の)足元だったんで、なんか…寂しかったですね」
ぺ「いいやん、トイレ近くて。(笑)」彼は笑ってはいるが、そんなに寂しかったとは。存在が近すぎて、気持ちが判らなくなる、ということもあるのだな。ビデオ撮影は終了。デザートに梨が出てきた。韓国(ソウルだけ?)では梨が名物らしい、これも美味しかった。

 この後はソウルタワーに行ってホテルへ、という予定だった。ところがPさんはタクシーで行って、見ている間待ってもらう料金を払うなら、知り合いに頼むと言い出したのだ。電話をかけだすPさん、そこまでするのなら僕達3人だけで行っても、と意見を言ったのだが、もう聞いてくれない。結局、10時に待ち合わせで、Pさんの妹の旦那さんの車でソウルタワーと漢江ツアーと言う事になった。その旦那さんはまだ会社にいるらしく、無理に来てもらうのだから、とお礼として5万W渡すように言われる。これも先輩である僕が負担。少し納得がいかない。しかし、もう事が運んでしまっているので言う通りにするしかあるまい。待っている間に石焼ビビンバを、アルミ箔の入れ物2つに詰めてもらう。そして前から気になっていた韓国の金属製の箸をもらう。Pさんによると、韓国では資源を大切にするために箸が金属製になったというのだ。前の旅行でY岸が言っていた「王朝の名残」というのは、勘違いであったことが判った。

 昨日飲んだウーロン茶のせいか、やたらオシッコに行きたくなる。この店で2回。

 10時を少し過ぎて、Pさんの妹の旦那さん(義理の弟になるのかな?)が到着。お礼のお金を渡す。彼は事情が判らない様で、最初はお金を受け取ろうとはしなかったが、Pさんが何やら喋ると、受け取ってくれた。Pさんはかなり仕上がって来ているようで、迎えの車のところに動こうとしない。立ち上がったI川君とN西君に「なぜ立つっ!」などと訳の判らない事を言って、絡む絡む。こういうのって、つらいなぁ。

 お勘定のために、僕達はお金を出し合う。Pさんが支払いに。レジに行ったところ、バックマージンをもらう。この店に日本人が来たのは本当に珍しく注文も多かったので、また日本人を連れて来て欲しいという意味で1万Wぐらいもらったらしい。Pさんは、ここの店員さんで分けるように、と受け取りを拒否。それでも7,000Wは返って来たらしく、車内で僕にくれた。Pさんはビール→焼酎と注文したせいか、疲れのせいか、かなり「絡み(からみ)酒」になってきていた。焼酎の瓶(びん)を持って外に出る、Pさん。

豹変


 Pさんの弟さんも、Uターンは「どこまで行くんやーっ!」という感じだった。車の中でPさんはどんどん話しかけてくる。こちらに全く口を挟ませない勢いで、僕達は圧倒されて後部座席で小さく寄りそうしかない。僕達に韓国語で話しかけたり、カーステレオから流れてくる歌に合わせて歌い出したりしていた。僕達は、「大丈夫か?」「ヤバイ」などと小声で話し合う。まるで誘拐された子供状態。I川君は、その模様を撮影中。

「どう思いますか?」こっそり聞いてきた。
ぺ「…ノリノリですね。(笑)ていうか、彼女、出来上がっています。…ぼ僕、怖いっス」I川君、笑いをこらえている。Pさんは上機嫌で歌っている。
N「いい曲ですね」I川君、また笑いをこらえている。N西君の心にも無いセリフにハマったのか。
P「ハァーっ、見えた見えたっ!」
ぺ「あ、見えた」目的地が見えた。もうすぐ出られる。
N「こっちこっちこっち?」
ぺ「こっちや」
N「こーっち、こっちこっち!」I川君に撮ってもらおうと、場所を教える。
ぺ「もうだめや」木の間に入って見えなくなってしまう。
I「あー、暗いから判らんかなー、これ」
ぺ「もう2周」道は南山をぐるぐると回って、上がる。

P「少し飲むよぅー、頂戴、瓶。瓶!
 焼酎の瓶を預かっていた、N西君に向かって命令。まだ飲むの?もうよせばいいのに。N西君は、なかなか袋から取り出せない。

P「何がダメ!?それ取るのーっ!!」

ぺ「ああっ」
叱られているようで、すっげー怖い。そのうちN西君が持っていた袋を取り上げて、中を捜し始める。中を捜すが見つからない。焼酎はN西君が預かっていたのではなく、Pさんが手に持ったまま助手席に持ち込んでいた事が判明。
I「Pさん、今気分はどんな感じ?」
P「気分…酔っ払ったような感じ。(笑)酔って無いようにも思えるよ」
舌が回っていない。笑いをこらえる、 I川君。そしてPさんは関係の無いことを喋り出す。するとN西君が蚊の鳴くような声で、
「酔ってま〜す」
ぺ「超蛇行運転(カーブが多いので)しとるから、(アルコールが)まわるまわる」
 Pさんは勝手に盛り上がっている。I川君は黙って外の景色を撮影していた。
P「あうわーっ!」
Pさんが奇声を上げる。
ぺ「あれがソウルタワーです。240mあります」


I「はいっ、ソウルタワー着きました」駐車場に到着したのだ。開放感。ところが、ウインウインと、けたたましいサイレンのような音が鳴り出す。
ぺ「今、横の車、盗難防止かかりましたぁ。(笑)…やつらが犯人?いやいやいや。(笑)」
と、PさんとN西君を見る。
I「いやいやいや。(笑)」
I川君はウケている。Pさんは何やら義理の弟さんに指示をしている。待ってもらう時間などを話しているらしい。相変わらず警報は鳴りっぱなし。
ぺ「車ドロなんでしょうか、この人たちは。(笑)」
I「ソウルタワーでけェ」
I川君は見るのが初めてなのだ。
ぺ「今から歩いていくよ」
Pさんが行くよ、といったのでI川君に説明。駐車場からタワーまでは少し距離がある。そこは上り坂になっているのだ。前に来た時、競争したのを思い出す。隣の車の警報がいったん鳴り止む。が、すぐにまた鳴り始めたのでPさん、爆笑。

I「あ〜のー、N西つかまったんですけど。(笑)」
今度はお店の売り子ではなく、Pさんにである。
ぺ「むう…ちょっと、政府としての正式な見解としましては、彼女はものすごい絡み酒ということで。(笑)」
I川君、吹き出す。
ぺ「…もう、口答えすると、やられちゃうんスよ!(笑)」
I川君、爆笑。
 僕達ががんばって歩いている横を、バイクが2台通過。
ぺ「ちょっと、今途中の段階の夜景を。ちらりと。…途中でこれです。今からもっとすごくなります」
I川君は ビデオカメラをそちらの方に向ける。相変わらず美しい。

P「この方、もうクビ!クビにするよっ!」
PさんはN西君に背中を押してもらいながら、僕とI川君の後を歩いている。N西君は「クビ」だそうだ。そうか、解雇されたか。お努め、ご苦労さんです。
P「この方も、今言ったからこう(背中を押して補助)する。おばあさん(自分の事)を。何っ、それを全部ビデオに撮るのっ!?(笑)」
僕とI川君爆笑。
ぺ「じゃあ俺は連結」
と、Pさんを押すN西君を後から押す。N西君が笑い出す。
I「じゃあ俺、後ろ(から撮影)
P「じゃあ一緒に4人、4人一緒に、これからは。バランス合わせてェ行くからぁ。ねっ!(笑)」
ぺ「はい」
P「先輩がもっと…よし」
と言った後、先を行くI川君とN西君に体力が違う、年齢を考えろ、と大声で説教を始める。


「ペルシャっさんっ(困ったような口調)…はいっ、3、2、1…」小声で僕に「キュー」出しをする。
「誰か、助けて…」僕とI川君、爆笑。こんな事をしている内にタワーの根元に到着。

I「はいっ、もう1回」
N「疲れてまっス」
ぺ「今から、中に入ります」
P「…焼酎、焼酎…」
N「今から中に?」

ぺ「うん」


I「ソウルタワーでけェ〜」
改めて感動。
ぺ「満月が綺麗」
 N西君がまた撮影している前をジャンプする。
I「お前、写ってねーわ」
ぺ「月撮っとるもん、月」
 ハアハアいいながら必死に高く飛ぶ、N西君。もう、ええっちゅーに。
I「満月です」
N「くそっ。(笑)」

 
ここは僕の記憶違いのため、全員に迷惑をかけてしまった。夜景を写すには、この階(タワーの根元の柵のところ)がベストポジションであったのに、タワーの上からだと思っていたのだ。上がってみるとガラス張り(当然)で、室内の明かりがガラスに反射している。これでは綺麗に写真が撮れない。だが、僕は「前回、夜景を見たのは絶対タワーの展望台からのはずだ」と思いこんでいたため、みんなをエレベーターで上下させてしまう。Pさんの酔い、ますます回る。I川君とN西君は逃げてしまって僕がなだめていたおかげ(?)で、Pさんと仲良くなる。が、大声で誕生日の歌(ハッピーバースデー・トゥ・ユーというやつ。)を歌い始めたので、正直言って「もう、ついていけない」と思っていた。同じ展望台に日本人らしき人がいたので、すごく恥ずかしかった。誰もいなかったら別に羽目を外してくれても僕は大丈夫だったのだが。特に僕は酒宴の時から、Pさんを人間的に(性格的に)尊敬していたので、別に悪くはなかった。Pさんは、漢江の近くにある63階のビルでもっと綺麗な夜景が見れるのだが、僕が希望したのでソウルタワーに来た、と言っていた。
満月(左上)が美しい。近すぎてソウルタワーは全部入らなかった。絞り優先でF22。
 ソウルタワーと、僕達。なるべく全体にピントが合うようにしたのだが、セルフタイマーを待ちきれずに動いてしまった瞬間である。ストロボが作動したにもかかわらず、距離があったため人物が真っ暗になってしまった様だ。

 帰るとき、初めて夜景を見た場所を勘違いした事に気付いた。もう堪能している時間はない。I川君は展望室で撮影中に、ビデオカメラのバッテリーが切れたと言っていた。もう、ここからビデオの映像は無い。

 ソウルタワーの職員が、Pさんの焼酎を取り上げた。Pさんは「焼酎、なくなったよ!」と、自然に紛失したような言い方だったので、もう前後不覚になっていたらしい。本当のところ、取り上げられたことは後でN西君から聞いたのだ。I川君も「俺、エレベーターの人(運行を管理している職員)に、目で助けを求めてたもん」と言っていた。Pさん、「オシッコ行きたいヨ!」と叫ぶ。あの駐車場に向かう坂道のところにトイレがあるので、そこですれば?と提案してみるも、あんなところでは出来ないと言い出す。困ったなぁ。

 移動開始。夕食を調子に乗って食べ過ぎたせいか、少し気分が変だった。疲れ、眠気のせいかもしれない。車に乗ってると気持ち悪い。早く漢江に着いて欲しい。20分くらいで到着。

30秒バルブ。セルフタイマー使用。街の灯のせいで明るくなってしまった。15秒位でよかったかもしれない。
 僕の勘違いのせいで時間がなくなり、帰るとき急いで写したもの。

 ここで僕にとって今回の旅で1番の事件が起きてしまった。(ご想像にお任せします。)

暗かったので、川ぎりぎりだと思っていたのだが、まだ先があったので写真としては面白くない。
 明るいのは、後ろの売店、駐車場のせいだと思うが、ファインダーをふさいでなかったせいかもしれない。
 漢江。こんなに近くに来たのは感激だった。その後、売店でPさんはガムとクッキーを買う。(お金は僕が出した)I川君とN西君が心配だったので行ってみると、2人はカメラのセッティングをしたまま待っていた。僕とI川君はここで連れションをした。自然の中で豪快に。気持ちいい。

 時間がかなり遅くなったので、急いで写真を撮って帰路につく。何しろ明日は7時にチェックアウトしなければならないのだ。Pさんは、まだ何かしたかったようだが、N西君が必死にPさんの義理の弟さんにホテルに帰ってくれるように伝えてくれたらしい。この人もPさんの酔っ払いぶりに、すまなそうな顔をしていた。帰りの車内で、更にPさんの「絡み」がひどくなる。I川君が切れる。あれだけ喋っていたのに黙り始めたのと、表情から僕にもびりびりと伝わった。僕はPさんををなだめるが、もう効き目がない。

 車内で先ほど買ったクッキーを食べてみる。韓国のバター製品は僕に合わず(前回食べたケーキと同じ)、今回のピーナツバター・クッキーも食べるごとに胃がもたれて気持ち悪くなった。

 ホテルに着いて、Pさんと、その義理の弟さんにお礼を言って判れた。I川君は切れていたせいか、素直にお礼が言えなかったようだ。N西君はPさんに抱きしめられ、頬にキスされる。口数少なく、711号室に戻る。部屋に入ると、I川君、N西君は共にPさんの文句を言い出す。僕は事件のこともあり、あまり2人の様には言えず、なだめに回る。I川君は、
I「これ(酔って暴れた事)、親父に言ってもらうわ。親父も聞いたら切れるかもしれん」と言っている。また、僕に「よく我慢できたね」と聞いてきた。N西君も不思議そうだ。そこで僕の大学時代の部活の飲み会の事、中国旅行での飲み会で苦労した事を話す。酒が苦手な僕は、上手く立ち回らないといけなかったのだ。2人は僕に感心した様子。僕の事件については2人は気付いていなかった。自分1人で抱え込むのがつらかったので告白した。このことを知ってるのはこの2人しかいない。

 しばらくしてN西君が、お腹空きませんか?と言ってきた。さっきあんなに食べたのに。僕が売店でクッキーを買ったのを思い出して食べたいと言うが、あれは合わなかったので車にそのまま置いてきたのである。
N「あれ無いんですか?もっと食べたかったのに。気に入ってたんですよ」と、言ったので驚いた。

 持って帰る荷物の最終チェックをしてベッドに横になる。N西君は相変わらず迷っている。I川君は面堂終太郎(うる星やつら)の真似をして、ベッドの隙間にはまっている。今日は大変な1日だった。2人の話し声を聞きながら、自然に眠ってしまった。


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