Angiosperms (Magnoliophyta) 被子植物
被子植物とは?:
いわゆる花を咲かせる植物のことで、Flowering plants つまり顕花植物とも呼ばれます。ただし、コケの胞子嚢や裸子植物の球花も植物の生殖器官ですから同じように、”花”と呼ばれる場合があります。そういうこともあって被子植物は”きれいな花を咲かせる植物のことである”といわれたりします。
実際、多くの被子植物が目立つ花びらや匂い、そして蜜を使って昆虫を誘き寄せます。誘き寄せられた昆虫たちは花を訪れた時に、雄しべの花粉を身体にくっつけ、そして別の花を訪れたさいにその花の雌しべに花粉をくっつけていきます。昆虫にそんな気は全然ありませんが、結果的に彼らは植物の受粉を手助けすることになります。昆虫が花の受粉を媒介するのですから、こういう花を虫媒花と呼びます。被子植物が”きれいな花”を発達させたのは昆虫を誘き寄せて彼らを利用し、遺伝子をやりとりするためだというわけですね。被子植物の花というと虫媒花と思われるのもこんなところに理由があります。また、昆虫だけでなく、鳥やコウモリのような哺乳類が花粉を運ぶ場合もあります。
しかし、虫媒花は別に被子植物の専売特許ではありません。裸子植物のグネツムも昆虫によって受粉しますし、ソテツにも甲虫に花粉を運んでもらうものがいます。反対に受粉に昆虫を使わない被子植物も数多くいます。イネ科植物の多くは花粉を風にのせて飛ばすことで他の花へと花粉を届けます。風を媒介することで受粉する花ですから、こういうものを風媒花と呼びます。キクの仲間のオナモミやヨモギ、ブタクサなども風媒花です、イネやヨモギやブタクサは秋になると大量の花粉を風にのせて飛ばすので、しばしば花粉症の原因になります。秋に花粉症のような症状が出た場合、身近に生えているイネ科植物や風媒花であるキク科の植物を疑った方がいいでしょう。5〜6月ぐらいでもイネ科植物が花粉をばらまいているので花粉症の症状が出る人もいます。なお、風媒花から二次的に虫媒花に戻った植物もあります。
被子植物とは、より正確には”胚珠が子房に包まれる植物”のことをさします。”胚珠が子房に完全に包まれる”、この状態が彼らの共有派生形質であると考えてかまいません。現在の地球では被子植物は圧倒的に数の多い陸上植物で、標高5000メートルあまりのヒマラヤ山脈から、北極海の島々、南極大陸、砂漠、水中、海中に至るまで様々な環境に生えています。
共有派生形質:
胚珠が子房に完全に包まれる
被子植物の系統:
以下に示した系統は「植物の多様性と系統」裳華房 1997 や[Plant systematics a phylogenetic approach 3ed] Sinauer Associates,INC 2008 を参考にして整理とメモを兼ねて暫定的に描いたものです。メモ的に書くと、被子植物の中ではスイレンとかセンリョウが一番原始的な系統となります。同じく原始的であると考えられてきたモクレン、クスノキ、コショウ、ドクダミはもう少し派生的な位置にきて、なおかつ単系統群でよいらしい。この単系統群はMagnoliid clade(まんま訳すとモクレン系統群)とか、Magnoliids(モクレン群)と呼ばれています。単子葉植物は単系統群。残りの被子植物の大部分はエウディコットという単系統群を作っています。つまり、
(スイレンやセンリョウなど((モクレン群)(単子葉植物)(エウディコット))
という感じになります。単子葉植物とモクレン群が単系統を作るという見解もあります。
双子葉植物と単子葉植物について:
古典的には被子植物は2つの大きなグループ、双子葉植物(Dicots)と単子葉植物(Monocots)とに分類されていました。それぞれ双子葉類、単子葉類とも言います。例えば種子から発芽する時に2枚の葉っぱを出せば双子葉類、1枚の葉っぱだけを出せば単子葉類という具合にです。また葉脈が網目状であれば双子葉類ですし、イネのように葉脈が平行するようであれば単子葉類です。しかし系統学が進んでくると双子葉類は系統を反映しないグループ(自然界には実在しない、人間の認識が作り出したグループ)であることが明らかになりました。古典的に双子葉類と呼ばれていたグループの中でも三溝型花粉を持つ被子植物(これをエウディコットと呼びますし、真正双子葉類という訳語もあります)は単系統で良いようです。
しかしスイレンやセンリョウ、モクレン、ドクダミなどは発芽のさいに2枚の葉っぱを出す植物ではありますが、エウディコットではありません。モクレンやドクダミはエウディコットや単子葉類と共にひとつの系統群を作りますし、スイレンやセンリョウはそのさらに外にきます。以下の系統を見れば明かなように、双子葉類は実体のないものであることが明らかになりました。
根______Amborellaceae:アンボレラ科
|____Nymphaeaceae:スイレン科
|____Chloranthaceae:センリョウ科
|__________Magnoliid clade:マグノリッドクレード(まま訳せばモクレン系統群)
| →モクレン クスノキ ドクダミなど
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|_______Monocots:単子葉植物/単子葉類(文献によってはLiliopsida:ユリ綱)
| |__Commelinaceae:ツユクサ科:ツユクサ
| |__Liliaceae:ユリ科:ブルーチューリップ モンテカルロ
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|_______Eudicot(Tricolpates):エウディコット
より詳しくは順次補完の予定