Commelina communis

ツユクサ

 

ツユクサの花は1日でしぼむのでスケッチの日付が違ったらそれは別の花。スケッチの日付はそれぞれ示してある。2009.06.17の緑の矢印は葉っぱが食べられているので途中で切れていることを、オレンジの矢印は雄しべを示す。画面中央下の2009.06.19に描かれたオレンジの矢印は”仮雄ずい→飾りとして働く雄しべ”をしめしている。薄紫の矢印は雌しべを、灰色の矢印は花粉を示す。2009.06.20のスケッチのオレンジの矢印は、それぞれの”仮雄ずい”、上からX字型雄しべ、Y字型雄しべ。そしてそこにある花粉を示す。

 なお、2009.06.20の日付があるスケッチだけは別の株のもの。2009.06.20は近所の公園の丘の上からとってきたもので、家の庭で育てたものとは花の形や雄しべの形、模様に違いがあります。この違いが何を反映したものなのかは不明。

 去年、公園の近くにうっそうと生えていたツユクサの種子をとってきて、それから植木鉢にまいておいたもの。ツユクサの種子は大きさ数ミリ、白くてぴかぴかしたちょっと不思議な感じのするものでした。数個まいておいたのだけど、生えたのは1つだけ。芽が出てからしばらくは小さなままでしたが、6月上旬の1週間ぐらいの間に一気に成長。盛んに枝分かれし、いつの間にやらぎょっとするほど大きくなっていました。

 ツユクサは朝に咲いて夕方にはしぼんでしまうので、それぞれ正午のうちにささっとスケッチ。青い2枚の花びらと黄色のスポットがトレードマークの、どこにでも生えている、そして誰もが一度は見たことがあるきれいな花です。

 調べて見ると花びら3枚、萼が3枚。しかしきれいで目立つのは2枚の青い花びらのみ。他の花びらや萼はほとんど無色で目立ちません。鮮やかな黄色いものは、実は雄しべ。雄しべは全部で6本、3種類あります。このうち2種類、4本の雄しべは受精には基本的に関与せず、昆虫を花に引きつける役割があるそうで”仮雄ずい”と呼ばれています。ようするに飾りとしての役割があるわけですね。

 一番上にある3つの雄しべは着ぐるみを着た人形というかひしゃげたX字型。 森田・山本・濁川 1999 [花の性型の可塑性:雄花を咲かせるツユクサの不思議な性表現]・「花の自然史」北海道大学図書刊行会 ではX字型雄しべと呼ばれています。人間でいう脇の部分と言えばいいのか、そこにオレンジの小さな丸いものがありまが、これが花粉の固まり。個々の花粉は顕微鏡で覗いてみるとゼリービーンズのような形をしていて、他の雄しべのものよりも若干小さいらしい。この雄しべは以上で述べた”仮雄ずい”です。鮮やかな黄色は確かに目をひきます。なお2009.0619と2009.06.20のイラストを見れば分かりますが、株によって形や模様が違うのですが、これが何を反映した違いなのか分かりません。

 次にその下にある雄しべは漢字の八というか、Yの字をひんまげたような形をしています。先の森田・山本・濁川 1999 ではY字型雄しべと呼ばれています。Yの字の側面にあたる部分に花粉がもっさりついていて、花粉の形はこれまたゼリービーンズ状。ただしX字型雄しべの花粉よりもやや大きな印象。このY字型雄しべも”仮雄ずい”です。

 一番下に左右対称に配置されている2つの雄しべは基本的に黒っぽく、そこにやや薄い肌色をした花粉がついています。これだけが雄しべ本来の役割である受精に関与するそうな。花粉の大きさはY字型のものとほぼ同じ。ただ、花粉を顕微鏡でのぞくと色が薄く見えます。そしてその間にくるんと巻いているのが雌しべ。

 ツユクサはいかにも昆虫の注意をひきそうな目立つ花なのですが、自家受精もするのだとか。どの花も雌しべがくるんと巻いて下の雄しべとからまり、柱頭の先に花粉をつけていました。

 ツユクサにはこういう両性花だけでなく雄花もあります。そのスケッチはまた後日。

 ←被子植物へ戻る