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ガレ場の下りが始まる。足下は崩れやすく、注意が必要である。
踏み跡やペンキ印を頼りに下る。すると、下の方から人が登ってきた。落石を起こさないように更に注意をして慎重に下る。
登ってきた人と話をする。聞けば、観音平から登って来られたとのこと。小生が、真教寺尾根を登って
赤岳を往復し、
この後、権現岳から天女山へ下り、
そこから美し森に戻ると言ったら怪訝な顔をされた。距離が離れているので、ピンと来なかったようだ。
また、権現岳の登りにある梯子 (源治梯子) のことに話を振ったら、今朝ほどのことを思い出されたようで、
強い風、ガスで全く視界が利かない中、鉄梯子を下るのは本当に怖かった。また、素手だったので、手が冷たく辛かったと堰を切ったように話し始めた。
余程の思いをしたのであろうし、誰かに話したかったのだろう。その気持ち、凄くよく分かる。 |
ガレ場を下り終えて一安心。
右手後方を見れば、今まで ガスに隠れていた阿弥陀岳がその姿を現している。
陽が当たっている部分と、雲の影が映っている部分があり、なかなか神秘的である。
また、赤岳から阿弥陀岳の間の稜線も見えるようになってきた。
途中にある中岳に向けて赤岳から下りてくる稜線のカーブは、いつ見ても美しい。しかし、
その稜線の下側はかなり抉れており、この山も年をとってボロボロになりかけているように感じる。
前を向けば、まだやや霞み気味ながらも、権現岳が見える。
そこに至るまでにいくつかのピークを越えねばならないようで、まだまだ厳しい行程が残っている。 | |
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周囲にはハイマツが見え始める。ハイマツの 雄花であろうか、緑の中の紅色は本当に鮮やかである。
道は今までの厳しい下りが嘘のように、一般的な登山道へと変わり、やがて樹林の中に入るようになる。
もう既に核心部は通り過ぎたようである。キレット小屋も近いかなと思っていたら、ここで道が 2つに分かれることになった。
まっすぐの道は尾根通しの道のようで登り。左の道は平らで、傍らの小さな標示板にはキレット小屋という文字が見える。
ここで急にへそ曲がりの性分が頭をもたげ、まっすぐに尾根道を進むことにした。小屋も良いのだが、やはり尾根を行ってこそ登山かなと勝手に思ったからである。
緩やかな登りを進む。 |
少し高度を上げて振り返れば、
今まで下ってきた斜面が見える。赤岳方面はさらに左側だが、
ガスに隠れてしまっている。本当に目まぐるしい変化である。
それにしても、やはりこちらを登りにとらず、下りにとって正解である。先程の人は、観音平から
権現岳を越え、
この赤岳岳への登りに挑戦していたが、若いから出来ること。
この山の斜面を見たら、とても挑戦する気になれない。
尾根通しの緩やかな登り下りが続く。
振り返れば、こちらから見上げる大天狗は、かなりの鋭鋒に見える。 | |
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尾根通しの道には写真のような砂礫の部分が時々現れる。
その向こうにはこれから登るべき山々が見える。すぐ目の前にあるピークがツルネ、その左後方のゴツゴツした山が旭岳、そしてその旭岳の左後方、
少々ガスが掛かっている山が権現岳ということであろう。
権現岳以外は推測だが、恐らく間違いなかろう。まだまだ距離がある。
また、振り返れば、
阿弥陀岳に掛かったガスが取れ、
再び姿を現した。ここから見る阿弥陀岳は、先程とは形を変え、照る照る坊主を彷彿させる。 |
この尾根通しの道も下りに入る。
下る前に、赤岳方面の写真を撮ろうと思ったが、
赤岳の頂上にガスが掛かって、なかなか頂上が現れない。数分待ったが、一向に赤岳頂上がスッキリ現れないので、
妥協した写真がこの 1枚。
何遍も言って恐縮だが、赤岳から中岳へと下る斜面が描く曲線は美しい。
それにしても、よくもまあ、こんな斜面を下ってきたものだ。イヤ、それよりも、途中、先程の若者も含め、3人とすれ違ったが、
彼らはよくもまあこんな斜面を登っていこうという気になったものだ。
感心する。 | |