東山温泉


向瀧旅館 客室「のぎく」
山の斜面に
建つ旅館
庭園と離れ 登録有形文化財
第1号の宿
廊下
きつね湯 さる湯 家族風呂の
天井

【向瀧】
 東山温泉は、行基により発見されたと伝えられる、大変歴史ある温泉です。会津若松市内から車で10分弱の山間に、由緒ある日本旅館が立ち並んでいます。その中で、古くは会津藩の保養所、また建物が国の登録有形文化財第1号に登録されたことでも知られる老舗旅館「向瀧」を訪ねました。川に沿って立ち並ぶ美しく重厚な木造建築の建物は、説明を受けるまでもなく、一見して歴史ある旅館であることを認識します。昔ながらの玄関を上がり、黒光りの美しい長い廊下を歩くと、左手に美しい日本庭園と池が見えてきます。その右上には、山の斜面に沿って建てられた重厚な木造建築の建物が見えます。

 滞在した客室は、池の前の廊下から黒光りで美しく急な階段を上ったところにある2階のトイレ付き8畳間
「のぎく」です。部屋からは、美しい川と山々を望むことができます。また、客室前の廊下からは、先ほどの美しい庭園を望めます。静かな客室からは、川の音だけが小さく心地よく聞こえています。木造の窓枠、襖、床の間、天井等、昔ながらの雰囲気で情緒があります。風流なトイレの木製扉や窓の外にかかる簾、襖の上にかかる額や、床の間のお花、テーブルや窓際廊下の応接セットに至るまで、すべてが美しく調和しています。この客室のある棟は、明治時代建築と言われており、随所に往年の姿が残されています。二十数室ある客室は、一つ一つ造りが異なります。旅館ホームページ掲載の各客室情報や、旅館備え付けのパンフレット記載の館内図を見ると、それぞれ違った趣があり、どの部屋も魅力的に感じます。右奥の建物等は昭和初期に増築された建物のようで、創業125年を超える名旅館が時代とともに変遷していった歴史を伺い知ることができます。

 一方で歴史・格式ある旅館にあるような敷居の高さはなく、全客室でワイヤレスインターネット環境が整備されていること、ホームページの充実振り等、古きものを活かしつつ、若いご主人/女将様が新しいものを取り入れご努力されている姿も感じられます。従業員の方のサービスも行き届いており、チェックイン時間前でも待つことなく即座に客室へ案内いただけたこと、電話等を受けるフロントの方がご自分の名前を名乗られること、幼児用の浴衣・茶菓用意等、細かいところでサービス・クオリティの高さを感じ、大変満足しました。

 お風呂は、玄関を入ってすぐ左手にある、昔ながらの
「きつね湯」、一番奥にある「さる湯」、廊下途中の右手階下の3つの家族風呂「蔦」「瓢」「鈴」の5つがあります。お湯はいずれも源泉100%かけ流しで、透明マイルド、ほのかな香りのある大変体に心地よいものです。「きつね湯」と3つの家族風呂は、シャワーもない昔ながらのお風呂で、天井には、それぞれの名前を表す紋が彫刻されています。左側に源泉の蛇口、右側に水の蛇口があり、いずれも一旦流し台のようなところに溜まって、そこから湯舟へ注ぎ込む仕組みになっています。昔ながらの木造の更衣室、白壁の天井、大理石とタイルの湯舟等、情緒満点であり、ゆっくり良質のお湯に浸かって天井の彫刻を眺めていると、何とも言えない心地よい気持ちになります。「きつね湯」は44〜45度の熱めと聞いていましたが、寒い日だったせいか、熱くなく、ゆっくり浸かることができました。源泉の蛇口についた白い塊が、温泉の長い歴史を感じさせます。「さる湯」はシャワーや洗い場のある、少し新しい感じのお風呂で、お湯は42〜43度の温めです。一面ガラス戸の開放的な構造で、外の景色をゆっくり眺めることができます。各風呂ともバスタオルが更衣室もしくは入り口に備え付けになっています。週末とは言え、閑散期に訪れたためか、「きつね湯」「さる湯」とも貸切状態でゆっくり贅沢に過ごすことができました。

 食事は夕食朝食とも部屋食です。夕食は、鯉の甘煮、柳川鍋、山菜等、郷土色とオリジナリティのあるヘルシーなメニュー、朝食もヘルシーで満足できるメニューです。昔ながらの客室で静かに過ごしていただくため、客室には冷蔵庫がありませんが、代わりに備えてある冷水が大変美味しく、風呂上りに沢山いただき、ヘルシーに過ごすことができました。

 チェックアウトの際には、ご主人、女将様、従業員の方々等、大勢の方に暖かくお見送りいただきました。女将様自身に写真を撮っていただく等、暖かいサービスに大変満足し、また訪れたいという気持ちで帰路に着きました。

 前日には、蔵のまち「喜多方」とSLばんえつ物語号を楽しみ、当日は鶴ヶ城と会津若松の古い町並みを訪ねました。会津エリアには見どころが多く、歴史や町並み、自然散策、SL、温泉等、いろいろな楽しみ方ができそうです。東北地方とは言え、首都圏から車でも新幹線でも3時間程度の距離であり、1泊2日の週末旅行で気軽に立ち寄ることができますので、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

→喜多方、会津若松については、「レトロな食事処/列車旅/町並み」のコーナーに掲載しました。


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