常温核融合は本当だった! その2


三菱重工の成果
山口栄一博士の業績
池上博士のコメント
第10回常温核融合国際会議--岩手大学・成田晋也氏の報告--
山口栄一博士の業績 その2
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2005/4/8                 <三菱重工の成果>

 水野先生からのメールとビッグニュース!でも紹介しましたが、日経新聞でこれからの革新的 な研究課題20選
に三菱重工・岩村氏の研究(常温核融合)が第三位にランクされたのは、たいへんうれしいニュースでした。
 日本でも、いよいよ常温核融合が本格的に動き出したといえるでしょう。

 さて、注目を集めている岩村氏の研究結果ですが、それがつぎの三菱重工のサイトに載っているのでぜひご覧
ください。
http://www.mhi.co.jp/atrc/project/pdtamakuso/index.html

なんとシンプルな実験系でしょうか!
 これだけのもので、科学の常識を覆す結果が出るのですから、驚き以外のなにものでもありません。
Cs(原子番号55)がまったく違う元素Pr(原子番号59)に、またSr(原子番号38がMo(原子番号42に70℃の
常温で転換するのですから!しかも高い再現性で知られています。

 三菱重工の岩村康弘氏は、北海道大学の水野忠彦博士とともに2004年国際的なPreparata賞を受賞された方
ですが、これは当然の結果であろうと思います。

 まだまだ理論的にはわからない点も多いようですが、しかし再現性ほぼ100%の条件が見いだされたわけです
から、今後理論的な整備も進んでいくものと期待されます。

 なお、岩村博士の結果は高橋亮人博士(大阪大学名誉教授)の次の論文でも「驚くべき核変換のクレーム・・」
として紹介されています。
 http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/No75-06.pdf

(「非熱核融合」とか「凝集体内核融合」などと呼ばれいるものもみな「常温核融合」と同じものです。)

 企業では、三菱重工が一歩リードといったところでしょうか。




2005/4/10              <山口栄一博士の業績>

 上の三菱重工・岩村氏の結果は、たいへん重要なもので、今後の発展に向けた大きな一歩となることは
間違いありません。ただ私が一つ疑問に思ったのは、岩村氏はなぜこんな実験を思いついたのか?という
ことです。
 あの実験がヒントになっているのだろうか・・・

 私は半年程まえに、会社の図書室で常温核融合を特集した雑誌の記事を見つけました。
その雑誌と特集は、次の通り。
 「日本の科学と技術 特集 常温核融合」(1994,Vol.35,No.271,日本科学技術振興財団)----@

 なんと11年も前のものです。
 この特集で、多くの錚々たるメンバーが常温核融合のメカニズムをさぐる約十もの論考を寄せている。
その中でひときわ光を放っているのがNTTの山口栄一博士(当時NTT基礎研究所 主幹研究員、現同志社大学教授)
の論文です。

 「核生成物を追う新しい試み 重水素のマイグレーションに着目」(山口栄一) ----A

 この実験結果は、それまで中心的に行われていた重水の電気分解の方法とはまったく違った観点にたったもので、
記念碑的なものでした。
これは水野博士が著書「核変換」(工学社)で「この会議でのトピックはNTTの山口の発表につきる」と絶賛していた
ものと同類の実験だったのです。

 山口博士らの実験とはどんなものか?
私のヘタな説明より、水野博士に語ってもらいましょう。その著書より引用。

「核変換」(水野忠彦著、工学社)p.128〜129
 6.第3回常温核融合会議

 第3回の常温核融合会議は、名古屋の国際会議場で1992年10月21日から5日間開かれた。

NTTの山口の発表

 この会議でのトピックはNTTの山口による発表につきる。
 この研究は今までの重水の電気分解によるものとは違い、まったく別の見地から研究の進展を見たもので、
出色のものである。
 パラジウムの板(3×3×0.1センチ)にマンガン酸化物を片面に被覆(ひふく)し、重水素ガスを吸収させ、その
後冷却する。そうしておいて、もう一方の面に金を200オングストロームまで被覆し、重水素が抜け出ないように
処理する。その試料に電流を流すと、突然発熱し、サンプルが曲がり、ヘリウムが検出され、4.5〜6メガエレクト
ロンボルトと3メガエレクトロンボルトの陽子が放出されたのであった。
 また、この試験を水素中で行なっても何も生じないという。
 明らかに核融合の存在を証明したもので、画期的なものであった。この間の山口の研究については、ぜひ、
論文(4)を一見することをおすすめしたい。

註:色は杉岡が入れました。

 私も今回@をもう一度読み直しましたが、まさに水野博士の言われるように、疑問の余地なく核融合反応の
証拠”ヘリウム-4の生成”を確認した決定的な実験でした。
上に少し付け加えると、この実験は真空中で行なわれたため、生成されたヘリウムの検出をより確実なものと
している。

 ただ・・時期があまりにも悪すぎたのでしょうか(その頃は、常温核融合なんてウソというようなデマが広まって
いたようです)。あまり世間では大きくとりあげられずに終わってしまった感があります。
それがなんとも残念なのですが、しかしこの実験はどこか三菱重工・岩村氏の実験につながっているような気が
します。
 もちろん、三菱重工の結果はオリジナルな見事なものですが、この山口博士らの実験がヒントになって、それに
岩村氏らの深いアイディアが加わって、あの成果へとつながった気がします(私の推測にすぎませんが)。

 私が読んだAは日本語のもの(Aはヘリウム生成に焦点が絞ってある)でしたが、水野博士が「ぜひ論文(4)
一見することをおすすめしたい。」と言われるその論文(4)(次のものです)もいつか熟読したいものです。

 E . Yamaguchi and T. Nishioka :”Direct Evidence for Nuclear Fusion Reactions in Deuterated Palladium”,
 ”Frontiers of Cold Fusion” Frontiers Science Series No. 4,Universal Academy Press,(1993)179-188.


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追記2005/4/10  「池上博士のコメント」

 上の@の中で、池上英雄博士(当時,文部省核融合科学研究所教授)はそれまでの常温核融合の総括とも
いえる報告をしている。
 その中で、山口博士(当時NTT)の研究に対して、次のように言及されている。
@p.10〜p.17 「最近の研究の焦点と推移 材料の物性論的研究が主役に」池上英雄 
・・・
 NTT基礎研究所の実験(図-5)では超精密質量分析装置を用いて、ヘリウムの発生を観測している。軽水
素を用いた場合にはヘリウムは検出されない。驚くべきことには、同時に、4〜6MeVのアルファ粒子,3MeV
の陽子なども同時に検出され、常温核融合の存在を疑いないものとした。このアルファ粒子の発生はきわめ
て異常である。常温核融合の過剰熱源がヘリウムであるとの報告は、すでに米国海軍研究所のMilesによっ
てなされていたが、NTTの研究はより確かな実験によって、その可能性を再確認することとなった。
・・・

註:色は杉岡が入れました。

 このように、池上博士も山口博士らの成果を重大な結果と受けとめていることがわかります。
最後のところで、まったく未知の機構が働いて核融合が起こっている可能性を指摘されています。
 これは、今後の科学においてたいへん重要な示唆となってくるにちがいありません。
まだ現在でも解明されてはいないでしょう。

 いったいどんな未知の機構がはたらいているのでしょうか?




2005/4/17    <第10回常温核融合国際会議--岩手大学・成田晋也氏の報告-->

 岩手大学の成田晋也氏が、2003年第10回常温核融合国際会議(ICCF10)の報告をされているので紹介して
おきます。最新の成果がわかりやすくまとめられており、常温核融合の世界の現状を知る上で格好の資料となって
います。---->http://jcfrs.org/file/ICCF10_report.pdf

 うまくまとめられた報告だと思います。常温核融合の現状の概略がつかめてしまいます。
 三菱重工・岩村氏の研究が注目されているのは当然として、レーザー照射による反応の促進など、新しい研究も
はじまったようで、興味深いことです。この元素変換現象を応用して、放射性廃棄物処理まで検討されいるとは驚き
ました。多用な手法で、この現代科学の常識では説明のつかない元素転換(核変換)へのアプローチが続けられ
ているのです。
 なお、2004年第11回常温核融合国際会議(マルセイユ)については、水野博士から私へのメールに詳しく書かれ
ています。--->水野先生からのメールとビッグニュース!

成田報告でわかる通り、「まさかそんなことが本当に起こっているのか?」などという段階はとっくに過ぎています。
多くの日本人はまだこの段階だと思いますが、かなり以前から、この不思議な現象が確実に起こっていることは
常温核融合研究者の間では確められていた。
(しかし一時期「常温核融合なんてウソ」というデマが広まってしまい、それにかき消されていただけなのです。
害の大きいデマでした!)

 最後に述べられた「若手研究者が少ない」ということが気がかりです。
この研究は、まだまだはじまったばかりであり、未知の巨大な世界が広がっています。
これからもどんどんと革新的な発見がなされていくことは間違いありません。
科学としてこれほど面白い領域があろうかと思います。若手の積極的な参加を望みたい。

 未踏の森に足を踏み入れることが、科学の本質だと思います   江崎玲於奈

 この言葉は、科学ジャーナリスト・窪田登司氏のサイトのこの頁よりとりました。




2005/4/19            <山口栄一博士の業績 その2>

 上で、常温核融合における大きなエポックとなる山口栄一博士(現・同志社大学教授)の研究を紹介しましたが、先生の
サイトの「研究歴」の中で、私の知らなかった重大な仕事について書かれています。ここで引用させてもらいます。

5. 固体内重水素の異常核効果に関する研究 (実験: 1989 - 1998)

1989年3月に、2人の化学者(Martin Fleischmann−英国Southampton大学教授−とStanley Pons−米国ユタ
大学教授−)が、「陰極にパラジウムを用いて重水の電気分解を行うことにより異常なほど大量の発熱を観測
した」と発表し、「パラジウム内に吸蔵された重水素による常温核融合」の可能性を示唆した。しかし、常温での
固体内核反応という核物理学の「常識」に反することの存在を検証するには、核生成物を疑義なく観測しなけれ
ばならず、水のように不純物を貪欲に含みえる媒質の存在下では困難である。そこで、真空下で同様の実験を
行うことのできる装置を開発し、1989年より1992年に至るまで、NTT基礎研究所・材料物性研究部において、
固体内に吸蔵した重水素がもたらす異常発熱効果の起源を究明する研究に従事した [44 - 56]。

この新しいアイディア(真空法)による実験の結果、異常発熱とヘリウム-4の生成とが同期して起こることを観測
することに成功。第3回常温核融合国際会議(名古屋)で発表した [51]。この成果により、1992年12月、NTT研究
開発本部長表彰をうけた。また1993年6月、Fleischmann教授とPons教授の招聘をうけ、渡欧した。その後、同教
授が現に実験を行っているIMRA Europeサイエンスセンターで、1998年3月まで引き続き実験を行った。実験の結
果、真空法により異常発熱効果を100%再現する条件を見いだし、第7回常温核融合国際会議(Vancouver)で発表
した [57,58]。

註:色は杉岡が入れました。

 なんと、あのFleischmann教授とPons教授の招聘を受けられていたとは!まったく知りませんでした。
 赤字の部分は、二つ上で紹介したヘリウム-4を検出した実験のようですが、青字部分でそれをさらに進化させた
結果を出されていたようです。
「異常発熱効果を100%再現する条件を見いだし、・・」という部分は、驚きに値します。
常温核融合では、再現性が非常に重要なことと考えられるからです。
それにしても、岩村氏の結果のずっと以前に、こんな素晴らしい結果が存在していたとは知りませんでした。

 常温核融合は疑いの目で見られていた時期が長かったので、ややもすると大きな結果でも歴史の影に埋もれて
しまいがちなのですが、それはあまりにもったいことです。
 この辺で改めて、これら過去の偉大な結果を見つめ直すときに来ているのかもしれません。




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