< L(2)の導出 >
< L(4)の導出 >
< L(2n)の研究 その1>
< L(2n)の研究 その2>
ここではゼータ関数L(s)をとりあげ、「その1」で行った<フーリエシステムと奇数ゼータζ(2n+1)>の類似を行う。
L(s)の特殊値L(2)、L(4)・・など偶数L(2n)特殊値の非明示の原因を探りたいのである。
ζ(s)では奇数のζ(3)、ζ(5)、・・が現代数学でも正体が明確につかめていないもの(非明示)だが、L(s)では
偶数のL(2)、L(4)、・・が非明示となっている。
ちなみに、奇数のL(2n+1)は明示的にわかっていて例えば、L(1)=π/4、L(3)=π^3/32である。これは偶数ζ(2n)が
明示的であることに対応している。
L(s)は、ζ(s)の兄弟分ともいえるゼータであり、これまで何度も登場したが、念のため定義を書いておく。
次のものである。
L(s)=1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・
sは複素数だが、ここではsは実数の場合のみを扱う。
L(s)もζ(s)もどちらもディリクレのL関数L(χ,s)の一種のゼータ関数である。
簡単にいえば、ζ(s)は、全てのaに対しχ(a)=1としたときのディリクレのL関数L(χ,s)であり、L(s)は、
a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対しそれぞれχ(a)=0, 1, 0, -1としたときのL(χ,s)に一致する。
整数論においてきわめて重要なディリクレのL関数L(χ,s)は次のように定義される。ディリクレ指標χ(a)に対応
してL(χ,s)は色々と変わる。
L(χ,s)=χ(1)/1^s + χ(2)/2^s + χ(3)/3^s + χ(4)/4^s + χ(5)/5^s + χ(6)/6^s + ・・・・
ディリクレ指標χ(a)は、ある自然数Nについて、次の3条件を満たすものである。
(1)a≡b mod N ならχ(a)=χ(b)
(2)χ(ab)=χ(a)χ(b)
(3)aとNが共通因数を持つときに限り、χ(a)=0
@のディリクレ指標χ(a)すなわち「a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対しそれぞれχ(a)=0, 1, 0, -1」が、3条件を満たしてい
ることを確認いただきたい。このときN=4であり、Nを導手と呼ぶ。導手はχ(a)を特徴づける最小単位となっている。
L(s)のχ(a)の導手は4である。
L(s)関連で最も有名な公式は
1 - 1/3 + 1/5 - 1/7 + ・・・ =π/4
であろう。
これはL(1)=π/4 であり、L(s)の特殊値として現れているのである。
さて、「その1」で行ったことの類似を行いたいわけである。
L(2n)が非明示となる理由をフーリエシステムを使って現代数学とは別の角度から調べたいわけである。
「スワン彗星」の「その3」でL(2)を出したが、じつは私はある困難を感じて、その困難を避ける形で迂回路をとるように
してL(2)を求めた。そしてその姿は今回の研究に適さないものになってしまった。
じつはその困難というのは私の錯覚で、うまくL(s)値が出せることに今回気づいた。例えば、フーリエシステムを使って
L(s)を求めるには
L(s)=cosx/1^s - cos3x/3^s + cos5x/5^s - cos7x/7^s + ・・・
というcos級数を考えるのだが、このとき∫(-π〜π)ではなく∫(-π/2〜π/2)とできるとわかった。これでなんと直交性が示せる
のであった!すなわち、
[mとnが等しくない場合]
∫(-π/2〜π/2) sin(2n+1)xsin(2m+1)x dx=0
∫(-π/2〜π/2) cos(2n+1)xcos(2m+1)x dx=0
[m=nの場合]
∫(-π/2〜π/2) sin(2n+1)xsin(2m+1)x dx=π/2
∫(-π/2〜π/2) cos(2n+1)xcos(2m+1)x dx=π/2
このようになっている。このことに気づかず∫(-π〜π)にこだわっていたので、公式集にある(-π/2< x <π/2)などと
範囲が限定された公式が使いづらいものになっていたのだが、この直交性のおかげでその困難がクリアできる。
ζ(s)と同様にして自然にL(s)値が求められるのである。
まずは最も自然にL(2)、L(4)の積分表示を求めることにしよう。話はそれからである。
L(2)=1/1^2 - 1/3^2 + 1/5^2 - 1/7^2 + ・・・ ----@
を求める。
[L(2)導出]
@の形から次のCos級数
f(x)=cosx/1^2 - cos3x/3^2 + cos5x/5^2 - cos7x/7^2 + ・・・ -----A
を考える。
この級数の直交性
[mとnが等しくない場合] ∫(-π/2〜π/2) cos(2n+1)xcos(2m+1)x dx=0
[m=nの場合] ∫(-π/2〜π/2) cos(2n+1)xcos(2m+1)x dx=π/2
を用いて、
1/1^2=(2/π)∫(-π/2〜π/2) f(x)cosx dx
-1/3^2=(2/π)∫(-π/2〜π/2) f(x)cos3x dx
1/5^2=(2/π)∫(-π/2〜π/2) f(x)cos5x dx
-1/7^2=(2/π)∫(-π/2〜π/2) f(x)cos7x dx
・
・
∫内は偶関数であるから、次のようにできる。
1/1^2=(4/π)∫(0〜π/2) f(x)cosx dx
-1/3^2=(4/π)∫(0〜π/2) f(x)cos3x dx
1/5^2=(4/π)∫(0〜π/2) f(x)cos5x dx
-1/7^2=(4/π)∫(0〜π/2) f(x)cos7x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/1^2=(4/π)∫(0〜π/2) (sinx/1 - sinx3x/3 + sin5x/5 - sin7x/7 + ・・・)(sinx/1) dx
-1/3^2=(4/π)∫(0〜π/2) (sinx/1 - sinx3x/3 + sin5x/5 - sin7x/7 + ・・・)(sin3x/3) dx
1/5^2=(4/π)∫(0〜π/2) (sinx/1 - sinx3x/3 + sin5x/5 - sin7x/7 + ・・・)(sin5x/5) dx
-1/7^2=(4/π)∫(0〜π2/) (sinx/1 - sinx3x/3 + sin5x/5 - sin7x/7 + ・・・)(sin7x/7) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて(左辺は@より)
L(2)=(4/π)∫(0〜π/2) (sinx/1 - sinx3x/3 + sin5x/5 - sin7x/7 + ・・)(sinx/1 + sin3x/3 + sin5x/5 + ・・) dx ----B
ここでフーリエ級数の公式
sinx/1 - sin3x/3 + sin5x/5 - sin7x/7+ ・・=(1/2)log(tanx+1/cosx) (-π/2 < x < π/2)
sinx/1 + sin3x/3 + sin5x/5 + sin7x/7+ ・・=π/4 (0< x <π)
をBに代入して整理すると(この公式は、例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)p.72を参照)、Bは次のようになる。
L(2)=(2/π)∫(0〜π/2) (π/4)log(tanx+1/cosx)dx ----C
L(2)の積分表示が求まった。右辺は後の考察のためこのままにしておく。
[終わり]
Cの正しさは、Excelと定積分の値が計算できるフリーの計算ソフトBearGraphで検証済み。
L(4)=1/1^4 - 1/3^4 + 1/5^4 - 1/7^4 + ・・・ ----@
を求める。
[L(4)導出]
@の形から次のCos級数
f(x)=cosx/1^4 - cos3x/3^4 + cos5x/5^4 - cos7x/7^4 + ・・・ -----A
を考える。
この級数の直交性
[mとnが等しくない場合] ∫(-π/2〜π/2) cos(2n+1)xcos(2m+1)x dx=0
[m=nの場合] ∫(-π/2〜π/2) cos(2n+1)xcos(2m+1)x dx=π/2
を用いて、
1/1^4=(2/π)∫(-π/2〜π/2) f(x)cosx dx
-1/3^4=(2/π)∫(-π/2〜π/2) f(x)cos3x dx
1/5^4=(2/π)∫(-π/2〜π/2) f(x)cos5x dx
-1/7^4=(2/π)∫(-π/2〜π/2) f(x)cos7x dx
・
・
∫内は偶関数であるから、次のようにできる。
1/1^4=(4/π)∫(0〜π/2) f(x)cosx dx
-1/3^4=(4/π)∫(0〜π/2) f(x)cos3x dx
1/5^4=(4/π)∫(0〜π/2) f(x)cos5x dx
-1/7^4=(4/π)∫(0〜π/2) f(x)cos7x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/1^4=(4/π)∫(0〜π/2) (sinx/1^3 - sinx3x/3^3 + sin5x/5^3 - sin7x/7^3 + ・・・)(sinx/1) dx
-1/3^4=(4/π)∫(0〜π/2) (sinx/1^3 - sinx3x/3^3 + sin5x/5^3 - sin7x/7^3 + ・・・)(sin3x/3) dx
1/5^4=(4/π)∫(0〜π/2) (sinx/1^3 - sinx3x/3^3 + sin5x/5^3 - sin7x/7^3 + ・・・)(sin5x/5) dx
-1/7^4=(4/π)∫(0〜π2/) (sinx/1^3 - sinx3x/3^3 + sin5x/5^3 - sin7x/7^3 + ・・・)(sin7x/7) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて(左辺は@より)
L(4)=(4/π)∫(0〜π/2) (sinx/1^3 - sinx3x/3^3 + ・・)(sinx/1 + sin3x/3 + ・・) dx
これはSin-Cos移動の法則(部分積分)より、次のように機械的に変形できる。
L(4)=(4/π)∫(0〜π/2) (cosx/1^2 - cos3x/3^2 + ・・)(cosx/1^2 + cos3x/3^2 + ・・) dx
L(4)=(4/π)∫(0〜π/2) (sinx/1 - sinx3x/3 + ・・)(sinx/1^3 + sin3x/3^3 + ・・) dx ----B
ここでフーリエ級数の公式
sinx/1 - sin3x/3 + sin5x/5 - sin7x/7 + ・・=(1/2)log(tanx+1/cosx) (-π/2 < x < π/2)
sinx/1^3 + sin3x/3^3 + sin5x/5^3 + sin7x/7^3+ ・・=πx(π-x)/8 (0<= x <=π)
をBに代入して整理すると(この公式は、例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)p.72を参照)、Bは次のようになる。
L(4)=(2/π)∫(0〜π/2) {πx(π-x)/8}log(tanx+1/cosx) dx ----C
L(4)の積分表示が求まった。右辺は後の考察のためこのままにしておく。
[終わり]
Cの正しさは、Excelと定積分の値が計算できるフリーの計算ソフトBearGraphで検証済みである。
L(2)の結果と合わせてまとめておく。
L(2)、L(4)の積分表示が求まった。
L(2)=(2/π)∫(0〜π/2) (π/4)log(tanx+1/cosx)dx ------@
L(4)=(2/π)∫(0〜π/2) {πx(π-x)/8}log(tanx+1/cosx) dx ----A
この積分からどうしても明示的な値(例えばL(3)=π^3/32のような)は得られないようなのである。
しかし本当なのか?これは証明されているわけではなく現代数学でも謎に包まれている。
@、Aの右辺を見ると、∫内は次のようになっている。
L(2) --->(0次の多項式)×log(tanx+1/cosx)
L(4) --->(2次の多項式)×log(tanx+1/cosx)
さらに、L(6)、L(8)・・では、
L(6) --->(4次の多項式)×log(tanx+1/cosx)
L(8) --->(6次の多項式)×log(tanx+1/cosx)
・
・
となる。一般化しておく。
L(2n) -->{(2n-2)次の多項式}×log(tanx+1/cosx) ----B
この事実から、L(2n)を再考したい。
L(1)=π/4、L(3)=π^3/32、L(5)=5π^5/1536・・などと奇数の場合が明示的に得られることはよく知られている。
ところが偶数のL(2n)がこんなふうに明示的に求まるのかどうか、現代数学でも全くわかっていない。おそらく明示的には
求まらないのではないか?と言われているが、もちろん証明はされていない。
L(2n)は明示的に求まらないのか?
は、現代数学の大問題の一つなのである。
この問題に対して、上のBの事実から新しい光を当てられないかという試みが以下である。
まずL(2)を取り上げ、具体的に見る。
L(2)=(2/π)∫(0〜π/2) (π/4)log(tanx+1/cosx) dx ------@
いま、1回微分してlog(tanx+1/cosx) になるような初等関数f(x)が存在したとして、
f´(x)=log(tanx+1/cosx)
としよう。
すると、@は次のように書き換えられる。
L(2)=(1/2)∫(0〜π/2) f´(x) dx
=(1/2)[f(x)](0〜π/2) ----B
f´(x)=log(tanx+1/cosx)
と仮定してBが出たが、もしf(x)が有限個数の初等関数の和からなる関数(以下これを”初等関数”と表現する)で
あるとすると、Bは計算できてしまい(なぜならf(x)のn回微分は明示的なものとなるから!)、L(2)は明示的な値として
求まることになる。
(注意:「B右辺の値は確定するのか?発散しないのか?」との疑問に対しては、それは確実に確定する。なぜなら
L(2)は数値的に確定しているから。L(2)=0.91596559・・)
次にL(4)を見てみよう。
L(4)=(2/π)∫(0〜π/2) {πx(π-x)/8}log(tanx+1/cosx) dx ----A
右辺に着目して、
g(x)={πx(π-x)/8}
とおく。
いま3回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数f(x)が存在したとすると、
f´´´(x)=log(tanx+1/cosx)
とできる。
すると、Aは次のように書き換えられる。
L(4)=(2/π)∫(0〜π/2) g(x)・f´´´(x) dx
右辺を部分積分していく。
L(4)=(2/π)∫(0〜π/2) g(x)・f´´´(x)dx
=(2/π){[g(x)・f´´(x)](0〜π/2) -∫(0〜π/2) g´(x)・f´´(x) dx}
=(2/π){[g(x)・f´´(x)](0〜π/2) - ([g´(x)・f´(x)](0〜π/2) -∫(0〜π/2) g´´(x)・f´(x) dx)}
=(2/π){[g(x)・f´´(x)](0〜π/2) - [g´(x)・f´(x)](0〜π/2) + ∫(0〜π/2) g´´(x)・f´(x) dx}
=(2/π){[g(x)・f´´(x)](0〜π/2) - [g´(x)・f´(x)](0〜π/2) + ∫(0〜π/2) A・f´(x) dx}
=(2/π){[g(x)・f´´(x)](0〜π/2) - [g´(x)・f´(x)](0〜π/2) + A[f(x)](0〜π/2) } -----C
ここでAは、A=g´´(x)の定数。
もし3回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在したら、CよりL(4)は明示的な値として求まってし
まうことになる。なぜなら、その場合f(x)もf´(x)もf´´(x)も初等関数となり、したがってA・f(x)もg´(x)・f´(x)もg(x)・f´´(x)も
初等関数となってC右辺が明示的に計算されるからである。
L(6)、L(8)、・・の場合も全く同様にできる。
以上をまとめると、次のようになる。
[まとめ1]
1回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(2)が明示的に求まる。
3回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(4)が明示的に求まる。
5回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(6)が明示的に求まる。
・
・
じつは、3回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、そのときはL(4)のみならずL(2)も明示的
に求まることがいえる。その理由を述べる。
y´´´=log(tanx+1/cosx) ---(A)
となる初等関数yがあったとしよう。
y´´=zとおくと、zは当然初等関数となる。(A)は z´=log(tanx+1/cosx)
と同じであり、これは1回微分してlog(tanx+1/cosx)となる初等関数が存在していることが言えていることになる!
つまりL(2)も明示的に求まる。
以上。
この理屈はL(6)以上にも当然当てはまるので、「まとめ1」は次のように書き換えられる。
[まとめ2]
1回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(2)が明示的に求まる。
3回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(2),L(4)が明示的に求まる。
5回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(2),L(4),L(6)が明示的に求まる。
一般化すれば、次のようになる。n>=1の整数。
(2n-1)回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(2)〜L(2n)が明示的に求まる。
ここで「(2n-1)回微分してlog(tanx+1/cosx)となる初等関数が存在する」ことは、「L(2)〜L(2n)が明示的に求まる」こと
の十分条件となっていることに注意いただきたい。
さて、「1回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(2)が明示的に求まる。」
をとり上げると、それは
y´=log(tanx+1/cosx)
となるような初等関数yがあるか?
という問題と同じことだから、結局は微分方程式の問題であるともいえるが、それは後回しにして、次では「まとめ2」を
さらに考察したい。
引き続き、L(2n)の問題を考察する。上では新しい観点からL(2n)を調べたが、それをさらに一歩おし進めたい。
<奇数ゼータの研究 その2>の類似を行う。
そこでは log(tanx+1/cosx)を見たが、これに関しては、
(1/2)log(tanx+1/cosx)=(0〜π/2) (1-)^(n-1)・sin(2n-1)x/(2n-1) ----@
(-π/2 < x <π/2)
狽外して書けば、
(1/2)log(tanx+1/cosx)=(sinx)/1 - (sin3x)/3 + (sin5x)/5 - (sin7x)/7 +・・・ ----@
(-π/2 < x <π/2)
という公式がある。(この公式は、例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)p.72を参照)
ここではこれを使う。「その1」の結果を再掲しよう。
[まとめ2]
1回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(2)が明示的に求まる。
3回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(2),L(4)が明示的に求まる。
5回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が存在すれば、L(2),L(4),L(6)が明示的に求まる。
まず「1回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が・・」の問題を考える。
この問題は、
y´=log(tanx+1/cosx) ----A-1
と、@から
y´=2{(sinx)/1 - (sin3x)/3 + (sin5x)/5 - (sin7x)/7 +・・・} ----A-2
のようなyが存在するのか?という問題になる。両辺を1回積分(不定)すると、次のようになる。
y=-2{(cosx)/1^2 - (cos3x)/3^2 + (cos5x)/5^2 - (cos7x)/7^2 + ・・・} + C1 ----B
となる。C1は任意定数。
これは1回微分したらA-2すなわちA-1のlog(tanx+1/cosx)になるものであることに注目していただきたい!
B右辺の
(cosx)/1^2 - (cos3x)/3^2 + (cos5x)/5^2 - (cos7x)/7^2 + ・・・ ----C
の部分がもし初等関数で表されたら、Bのyは初等関数となり、それは「1回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等
関数が存在した!」ということになって、L(2)は明示的に求まるということになる。
はたしてCを与える初等関数はあるのだろうか?
Cはフーリエ級数の形をしている。そこで、
初等関数=(cosx)/1^2 - (cos3x)/3^2 + (cos5x)/5^2 - (cos7x)/7^2 + ・・・
の形のものが公式集に載っていないか?と探してもないのである。
これは偶然ないのではなく、本質的な困難から書かれていないものである。
さらにL(4)の問題「3回微分してlog(tanx+1/cosx)になるような初等関数が・・」の問題も同様に考察できる。
それも結局、
y=2{(cosx)/1^4 - (cos3x)/3^4 + (cos5x)/5^4 - (cos7x)/7^4 + ・・・} + C1・x^2 + C2・x + C1 ----D
という式が導出できて(C1,C2,C3は任意定数)、
(cosx)/1^4 - (cos3x)/3^4 + (cos5x)/5^4 - (cos7x)/7^4 + ・・・
が初等関数で表されるか?という問題に帰着される。
しかし、これも公式集にない。
以下、L(6)、L(8)、・・も同様にない。
ここでわかったことは、L(2n)の問題は
(cosx)/1^m - (cos3x)/3^m + (cos5x)/5^m- (cos7x)/7^m+ ・・・ ----E
のmが偶数の場合、すなわち、
(cosx)/1^2 - (cos3x)/3^2 + (cos5x)/5^2 - (cos7x)/7^2 + ・・・
(cosx)/1^4 - (cos3x)/3^4 + (cos5x)/5^4 - (cos7x)/7^4 + ・・・
(cosx)/1^6 - (cos3x)/3^6 + (cos5x)/5^6 - (cos7x)/7^6 + ・・・
・
・
が、これらだけを避けるようにして公式集(フーリエ級数の箇所)に載っていないことと密接に関係しているということ
である。
ちなみに、Eのmが奇数の場合はきちんと載っていて次のものとなる。
π/4=(cosx)/1 - (cos3x)/3 + (cos5x)/5 - (cos7x)/7 + ・・・ (-π/2 < x <π/2)
(π/8)(π^2/4-x^2)=(cosx)/1^3 - (cos3x)/3^3 + (cos5x)/5^3 - (cos7x)/7^3 + ・・・ (-π/2 <= x <=π/2)
・
・
以上より、
(cosx)/1^m - (cos3x)/3^m + (cos5x)/5^m - (cos7x)/7^m + ・・・
が公式集にある・ないということと、L(n)の明示・非明示との間には密接な関係があることがわかった。
|