1/{(2n-1)^k・((2n-1)^2+1)}を調べた。
フーリエシステムを用いて、ここでは1/{(2n-1)^k・((2n-1)^2+1)}を求めよう。 k=0,1,2の場合、すなわち次である。
1/(1^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(5^2+1) +・・
1/(1(1^2+1)) + 1/(3(3^2+1)) + 1/(5(5^2+1)) +・・
1/(1^2・(1^2+1)) + 1/(3^2・(3^2+1)) + 1/(5^2・(5^2+1)) +・・
これを求める際に活躍する中心的なフーリエ級数の公式は、
sinh a(π/2-x)=(4a/π)cosh(aπ/2){cosx/(1^2+a^2) + cos3x/(3^2+a^2) + cos5x/(5^2+a^2) +・・} (0 <=x<=π)
cosh a(π/2-x)=(4/π)cosh(aπ/2){1sinx/(1^2+a^2) + 3sin3x/(3^2+a^2) + 5sin5x/(5^2+a^2) +・・} (0 <x<π)
である。(例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)p.247を参照) この公式のa=1の場合を用いる。
また、
sinx/1 + sin3x/3 + sin5x/5 + ・・=π/4 (0<x<π)
cosx/1 + cos3x/3 + cos5x/5 + ・・=(1/2)log|cot(x/2)| (0<x<2π、xはπでない)
もなども使う。これらは同書p.72にある。
以下順にみていこう。まずは一番上のk=0の場合から。
k=0の場合、すなわち、
1/(1^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(5^2+1) +・・ ----@
を導出する。
なんとなくζ(2)の親戚のような姿をしているから明示的に求まるのでは?と思われるが。
[1/((2n-1)^2+1)を導出]
@の形から、次のcos級数
f(x)=cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・ -----A
を考える。周期は2π。
この級数の直交性を用いて、
1/(1^2+1)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/(3^2+1)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
1/(5^2+1)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos5x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/(1^2+1)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2+1) + 3sin3x/(3^2+1) + 5sin5x/(5^2+1) +・・ )(sinx/1) dx
1/(3^2+1)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2+1) + 3sin3x/(3^2+1) + 5sin5x/(5^2+1) +・・ )(sin3x/3) dx
1/(5^2+1)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2+1) + 3sin3x/(3^2+1) + 5sin5x/(5^2+1) +・・ )(sin5x/5) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて
1/(1^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(5^2+1) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2+1) + 3sin3x/(3^2+1) + 5sin5x/(5^2+1) +・・)(sinx/1 + sin3x/3 + sin5x/5 +・・) dx ----B
ここでフーリエ級数の公式
cosh a(π/2-x)=(4/π)cosh(aπ/2){1sinx/(1^2+a^2) + 3sin3x/(3^2+a^2) + 5sin5x/(5^2+a^2) +・・} (0 <x<π)
のa=1のものと、
sinx/1 + sin3x/3 + sin5x/5 + ・・=π/4 (0<x<π)
をBに代入して、計算すると、
1/(1^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(5^2+1) +・・ =(π/4)tanh(π/2) ----C
と明示的に求まった。たいへん美しいものとなった。
ここで、tanhx=(e^x-e^(-x))/(e^x+e^(-x)) である。
[終わり]
Cは左辺、右辺を数値的に検証しても、もちろん一致する。
k=1の場合、すなわち、
1/{1(1^2+1)} + 1/{3(3^2+1)} + 1/{5(5^2+1)} +・・ ----@
を導出する。
これは
1/{1^3+1)} + 1/{3^3+3)} + 1/{5^3+5)} +・・
と変形すると、ζ(3)に似ている。奇数ゼータのように非明示となるのだろうか。
[1/{(2n-1)((2n-1)^2+1)}を導出]
@の形から、次のsin級数
f(x)=sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ -----A
を考える。周期は2π。
この級数の直交性を用いて、
1/{1(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sinx dx
1/{3(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sin3x dx
1/{5(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sin5x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/{1(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・ )(cosx/1) dx
1/{3(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・ )(cos3x/3) dx
1/{5(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・ )(cos5x/5) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて
1/{1(1^2+1)} + 1/{3(3^2+1)} + 1/{5(5^2+1)} +・・
=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・)(cosx/1 + cos3x/3 + cos5x/5 +・・) dx --B
ここでフーリエ級数の公式
sinh a(π/2-x)=(4a/π)cosh(aπ/2){cosx/(1^2+a^2) + cos3x/(3^2+a^2) + cos5x/(5^2+a^2) +・・} (0 <=x<=π)
のa=1のものと、
cosx/1 + cos3x/3 + cos5x/5 + ・・=(1/2)log|cot(x/2)| (0<x<2π、xはπでない)
をBに代入して、整理すると、
1/{1(1^2+1)} + 1/{3(3^2+1)} + 1/{5(5^2+1)} +・・=1/(4cosh(π/2))∫(0〜π) sinh(π/2-x)・log|cot(x/2)| dx ---C
と非明示となった。
ここで、coshx=(e^x+e^(-x))/2、sinhx=(e^x-e^(-x))/2、cotx=1/tanx である。
[終わり]
Cの左辺、右辺の一致を数値的にも確認した。右辺の∫の計算には、定積分の値が計算できるフリーの計算ソフト
BearGraphを用いた。
次にk=2の場合、すなわち、
1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・ ----@
を導出する。
これは
1/{1^4+1^2)} + 1/{3^4+3^2)} + 1/{5^4+5^2)} +・・
と変形するとζ(4)に似ているから明示的に求まるだろうとの予想がたつ。
[1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}を導出]
@の形から、次のcos級数
f(x)=cosx/{1^2(1^2+1)} + cos3x/{3^2(3^2+1)} + cos5x/{5^2(5^2+1)} +・・ -----A
を考える。周期は2π。
この級数の直交性を用いて、
1/{1^2(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/{3^2(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
1/{5^2(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos5x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/{1^2(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sinx/1) dx
1/{3^2(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin3x/3) dx
1/{5^2(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin5x/5) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて
1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・)(sinx/1 + sin3x/3 + ・・) dx
Sin-Cos移動の法則(部分積分)より、
1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・
=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・)(cosx/1^2 + cos3x/3^2 + ・・) dx ---B
ここでフーリエ級数の公式
sinh a(π/2-x)=(4a/π)cosh(aπ/2){cosx/(1^2+a^2) + cos3x/(3^2+a^2) + cos5x/(5^2+a^2) +・・} (0 <=x<=π)
のa=1のものと、
cosx/1^2 + cos3x/3^2 + cos5x/5^2 + ・・=x(π-2x)/8 (0<=x<=π) ----C
をBに代入して計算を行うと、
1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} + ・・=π^2/8 - (π/4)tanh(π/2) ---D
と明示的に求まった。これもきれいである。
(Cは例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)p.73にある。)
[終わり]
Dの左辺、右辺の一致を数値的にも確認した。
この頁の分をまとめておく。
上の一番目と3番目は偶数ゼータζ(2n)に、2番目は奇数ゼータζ(2n+1)に対応していることがわかる。
よって、もし4番目の
1/{1^3(1^2+1)} + 1/{3^3(3^2+1)} + 1/{5^3(5^2+1)} +・・
を求めると、もちろん非明示となる。
フーリエシステムも一本道ではなく、変形版を考えることで様々なルートをたどることができる。
例えば、一つ上で1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}を出したが、次の別ルートでも導出できるのである。
一つ上での導出と比べてもらいたい。システムの多様な側面を感じられるであろう。
では別ルートで
1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・ ----@
を導出する。
[1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}を導出]
@の形から、次のcos級数
f(x)=cosx/{1^2(1^2+1)} + cos3x/{3^2(3^2+1)} + cos5x/{5^2(5^2+1)} +・・ -----A
を考える。周期は2π。
この級数の直交性を用いて、
1/{1^2(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
0=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
1/{3^2(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
0=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos4x dx
1/{5^2(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos5x dx
・
・
わざわざ0=・・の式を追加した点に注目!これでcos2x、cos4x・・を強引に出してきた。これらの右辺を部分積分
する。f(x)はAであるから、簡単な計算より次となる。
1/{1^2(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sinx/1) dx
0=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin2x/2) dx
1/{3^2(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin3x/3) dx
0=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin4/4) dx
1/{5^2(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin5x/5) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて
1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・)(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 +・・) dx
Sin-Cos移動の法則(部分積分)より、
1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・
=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1)+・・)(cosx/1^2+ cos2x/2^2+ cos3x/3^2+・・) dx --B
ここでフーリエ級数の公式
sinh a(π/2-x)=(4a/π)cosh(aπ/2){cosx/(1^2+a^2) + cos3x/(3^2+a^2) + cos5x/(5^2+a^2) +・・} (0 <=x<=π)
のa=1のものと、
cosx/1^2 + cos2x/2^2 + cos3x/3^2 + ・・=(x-π)^2/4-π^2/12 (0<=x<=2π) ----C
をBに代入して計算を行うと、
1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} + ・・=π^2/8 - (π/4)tanh(π/2)
と、当然ながら一つ上と同じ結果が得られた。
[終わり]
ここで、ごく普通に公式集に載っているCが使えるようになったのが大きな利点である。
一つ上では、
cosx/1^2 + cos3x/3^2 + cos5x/5^2 + ・・=x(π-2x)/8 (0<=x<=π) ----D
を使ったのであるが、薄っぺらな公式集にはDは載っていないかもしれない。またその場合、CからDを手計算で出す
ことになるが、やっかいである。
最初に0=・・の式を追加する工夫を行うことで、普通のCが使えるようになったことが面白い点である。
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