トリトン彗星 その2

 1/{(2n-1)^k・((2n-1)^2+1)}を調べた。
1/{((2n-1)^k・((2n-1)^2+1)}を求める
1/((2n-1)^2+1)を求める
1/{(2n-1)((2n-1)^2+1)}を求める
1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}を求める
フーリエシステムの多様性、再び1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)



2008/9/6             <1/{(2n-1)^k・((2n-1)^2+1)}求める>

フーリエシステムを用いて、ここでは1/{(2n-1)^k・((2n-1)^2+1)}を求めよう。 k=0,1,2の場合、すなわち次である。

 1/(1^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(5^2+1) +・・

 1/(1(1^2+1)) + 1/(3(3^2+1)) + 1/(5(5^2+1)) +・・

 1/(1^2・(1^2+1)) + 1/(3^2・(3^2+1)) + 1/(5^2・(5^2+1)) +・・ 


 これを求める際に活躍する中心的なフーリエ級数の公式は、
sinh a(π/2-x)=(4a/π)cosh(aπ/2){cosx/(1^2+a^2) + cos3x/(3^2+a^2) + cos5x/(5^2+a^2) +・・}  (0 <=x<=π)

cosh a(π/2-x)=(4/π)cosh(aπ/2){1sinx/(1^2+a^2) + 3sin3x/(3^2+a^2) + 5sin5x/(5^2+a^2) +・・}  (0 <x<π)

である。(例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)p.247を参照) この公式のa=1の場合を用いる。
また、
 sinx/1 + sin3x/3 + sin5x/5 + ・・=π/4    (0<x<π)
 cosx/1 + cos3x/3 + cos5x/5 + ・・=(1/2)log|cot(x/2)|    (0<x<2π、xはπでない)
もなども使う。これらは同書p.72にある。

以下順にみていこう。まずは一番上のk=0の場合から。



2008/9/6              <1/((2n-1)^2+1)を求める>

 k=0の場合、すなわち、
   1/(1^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(5^2+1) +・・   ----@
を導出する。
 なんとなくζ(2)の親戚のような姿をしているから明示的に求まるのでは?と思われるが。

[1/((2n-1)^2+1)を導出]
 @の形から、次のcos級数
 f(x)=cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・       -----A
を考える。周期は2π。
この級数の直交性を用いて、
 1/(1^2+1)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
 1/(3^2+1)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
 1/(5^2+1)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos5x dx
   ・
   ・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。

 1/(1^2+1)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2+1) + 3sin3x/(3^2+1) + 5sin5x/(5^2+1) +・・ )(sinx/1) dx
 1/(3^2+1)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2+1) + 3sin3x/(3^2+1) + 5sin5x/(5^2+1) +・・ )(sin3x/3) dx
 1/(5^2+1)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2+1) + 3sin3x/(3^2+1) + 5sin5x/(5^2+1) +・・ )(sin5x/5) dx
   ・
   ・
これらを縦に足し合わせて

 1/(1^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(5^2+1) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2+1) + 3sin3x/(3^2+1) + 5sin5x/(5^2+1) +・・)(sinx/1 + sin3x/3 + sin5x/5 +・・) dx ----B

 ここでフーリエ級数の公式
 cosh a(π/2-x)=(4/π)cosh(aπ/2){1sinx/(1^2+a^2) + 3sin3x/(3^2+a^2) + 5sin5x/(5^2+a^2) +・・}  (0 <x<π)
a=1のものと、
 sinx/1 + sin3x/3 + sin5x/5 + ・・=π/4    (0<x<π)
をBに代入して、計算すると、

  1/(1^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(5^2+1) +・・ =(π/4)tanh(π/2)       ----C

明示的に求まったたいへん美しいものとなった。
 ここで、tanhx=(e^x-e^(-x))/(e^x+e^(-x)) である。

[終わり]
  Cは左辺、右辺を数値的に検証しても、もちろん一致する。

[1/((2n-1)^2+1)導出]

1/((2n-1)^2+1)型cos級数から導出

     1/(1^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(5^2+1) + ・・ =(π/4)tanh(π/2)




2008/9/6              <1/{(2n-1)((2n-1)^2+1)}を求める>

 k=1の場合、すなわち、
   1/{1(1^2+1)} + 1/{3(3^2+1)} + 1/{5(5^2+1)} +・・   ----@
を導出する。
 これは
    1/{1^3+1)} + 1/{3^3+3)} + 1/{5^3+5)} +・・  
と変形すると、ζ(3)に似ている。奇数ゼータのように非明示となるのだろうか。

[1/{(2n-1)((2n-1)^2+1)}を導出]
 @の形から、次のsin級数
 f(x)=sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・         -----A
を考える。周期は2π。
この級数の直交性を用いて、
 1/{1(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sinx dx
 1/{3(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sin3x dx
 1/{5(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sin5x dx
   ・
   ・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。

 1/{1(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・ )(cosx/1) dx
 1/{3(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・ )(cos3x/3) dx
 1/{5(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・ )(cos5x/5) dx
   ・
   ・
これらを縦に足し合わせて
1/{1(1^2+1)} + 1/{3(3^2+1)} + 1/{5(5^2+1)} +・・  
 =(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・)(cosx/1 + cos3x/3 + cos5x/5 +・・) dx  --B

 ここでフーリエ級数の公式
 sinh a(π/2-x)=(4a/π)cosh(aπ/2){cosx/(1^2+a^2) + cos3x/(3^2+a^2) + cos5x/(5^2+a^2) +・・}  (0 <=x<=π)
a=1のものと、
 cosx/1 + cos3x/3 + cos5x/5 + ・・=(1/2)log|cot(x/2)|    (0<x<2π、xはπでない)
をBに代入して、整理すると、

1/{1(1^2+1)} + 1/{3(3^2+1)} + 1/{5(5^2+1)} +・・=1/(4cosh(π/2))∫(0〜π) sinh(π/2-x)・log|cot(x/2)| dx   ---C

非明示となった
  ここで、coshx=(e^x+e^(-x))/2、sinhx=(e^x-e^(-x))/2、cotx=1/tanx である。

[終わり]
 Cの左辺、右辺の一致を数値的にも確認した。右辺の∫の計算には、定積分の値が計算できるフリーの計算ソフト
BearGraphを用いた。

[1/{(2n-1)((2n-1)^2+1)}導出]

1/{(2n-1)((2n-1)^2+1)}sin級数から導出

 1/{1(1^2+1)} + 1/{3(3^2+1)} + 1/{5(5^2+1)} +・・=1/(4cosh(π/2))∫(0〜π) sinh(π/2-x)・log|cot(x/2)| dx 




2008/9/6              <1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}を求める>

 次にk=2の場合、すなわち、
   1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・   ----@
を導出する。
 これは
    1/{1^4+1^2)} + 1/{3^4+3^2)} + 1/{5^4+5^2)} +・・  
と変形するとζ(4)に似ているから明示的に求まるだろうとの予想がたつ。

[1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}を導出]
 @の形から、次のcos級数
 f(x)=cosx/{1^2(1^2+1)} + cos3x/{3^2(3^2+1)} + cos5x/{5^2(5^2+1)} +・・         -----A
を考える。周期は2π。
この級数の直交性を用いて、
 1/{1^2(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
 1/{3^2(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
 1/{5^2(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos5x dx
   ・
   ・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。

 1/{1^2(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sinx/1) dx
 1/{3^2(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin3x/3) dx
 1/{5^2(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin5x/5) dx
   ・
   ・
これらを縦に足し合わせて

1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・)(sinx/1 + sin3x/3 + ・・) dx

 Sin-Cos移動の法則(部分積分)より、

1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・
=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1) +・・)(cosx/1^2 + cos3x/3^2 + ・・) dx  ---B

 ここでフーリエ級数の公式
 sinh a(π/2-x)=(4a/π)cosh(aπ/2){cosx/(1^2+a^2) + cos3x/(3^2+a^2) + cos5x/(5^2+a^2) +・・}  (0 <=x<=π)
a=1のものと、
 cosx/1^2 + cos3x/3^2 + cos5x/5^2 + ・・=x(π-2x)/8      (0<=x<=π)     ----C
をBに代入して計算を行うと、

  1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} + ・・=π^2/8 - (π/4)tanh(π/2)   ---D

明示的に求まった。これもきれいである。
 (Cは例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)p.73にある。)

[終わり]
 Dの左辺、右辺の一致を数値的にも確認した。

[1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}導出]

1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}cos級数から導出

  1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・=π^2/8 - (π/4)tanh(π/2) 



 この頁の分をまとめておく。

[1/((2n-1)^2+1)導出]
 1/((2n-1)^2+1)型cos級数から導出

  1/(1^2+1) + 1/(3^2+1) + 1/(5^2+1) + ・・ =(π/4)tanh(π/2)


[1/{(2n-1)((2n-1)^2+1)}導出]
 1/{(2n-1)((2n-1)^2+1)}sin級数から導出

  1/{1(1^2+1)} + 1/{3(3^2+1)} + 1/{5(5^2+1)} +・・=1/(4cosh(π/2))∫(0〜π) sinh(π/2-x)・log|cot(x/2)| dx 


[1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}導出]
 1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}cos級数から導出

   1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・=π^2/8 - (π/4)tanh(π/2) 



 上の一番目と3番目は偶数ゼータζ(2n)に、2番目は奇数ゼータζ(2n+1)に対応していることがわかる。
よって、もし4番目の
  1/{1^3(1^2+1)} + 1/{3^3(3^2+1)} + 1/{5^3(5^2+1)} +・・
を求めると、もちろん非明示となる。




2008/9/8    <フーリエシステムの多様性、再び 1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}>

 フーリエシステムも一本道ではなく、変形版を考えることで様々なルートをたどることができる
例えば、一つ上で1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}を出したが、次の別ルートでも導出できるのである。
一つ上での導出と比べてもらいたい。システムの多様な側面を感じられるであろう。

では別ルートで
   1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・   ----@
を導出する。
 
[1/{(2n-1)^2((2n-1)^2+1)}を導出]
 @の形から、次のcos級数
 f(x)=cosx/{1^2(1^2+1)} + cos3x/{3^2(3^2+1)} + cos5x/{5^2(5^2+1)} +・・         -----A
を考える。周期は2π。
この級数の直交性を用いて、
 1/{1^2(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
           0=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
 1/{3^2(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
           0=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos4x dx
 1/{5^2(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos5x dx
   ・
   ・
 わざわざ0=・・の式を追加した点に注目!これでcos2x、cos4x・・を強引に出してきた。これらの右辺を部分積分
する。f(x)はAであるから、簡単な計算より次となる。

 1/{1^2(1^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sinx/1) dx
           0=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin2x/2) dx
 1/{3^2(3^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin3x/3) dx
           0=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin4/4) dx
 1/{5^2(5^2+1)}=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・ )(sin5x/5) dx
   ・
   ・
これらを縦に足し合わせて

1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/{1(1^2+1)} + sin3x/{3(3^2+1)} + sin5x/{5(5^2+1)} +・・)(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 +・・) dx

 Sin-Cos移動の法則(部分積分)より、

1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} +・・
=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2+1) + cos3x/(3^2+1) + cos5x/(5^2+1)+・・)(cosx/1^2+ cos2x/2^2+ cos3x/3^2+・・) dx --B

 ここでフーリエ級数の公式
 sinh a(π/2-x)=(4a/π)cosh(aπ/2){cosx/(1^2+a^2) + cos3x/(3^2+a^2) + cos5x/(5^2+a^2) +・・}  (0 <=x<=π)
a=1のものと、
 cosx/1^2 + cos2x/2^2 + cos3x/3^2 + ・・=(x-π)^2/4-π^2/12      (0<=x<=2π)     ----C
をBに代入して計算を行うと、

  1/{1^2(1^2+1)} + 1/{3^2(3^2+1)} + 1/{5^2(5^2+1)} + ・・=π^2/8 - (π/4)tanh(π/2)

と、当然ながら一つ上と同じ結果が得られた。

[終わり]

 ここで、ごく普通に公式集に載っているCが使えるようになったのが大きな利点である。
一つ上では、
 cosx/1^2 + cos3x/3^2 + cos5x/5^2 + ・・=x(π-2x)/8      (0<=x<=π)           ----D
を使ったのであるが、薄っぺらな公式集にはDは載っていないかもしれない。またその場合、CからDを手計算で出す
ことになるが、やっかいである。

 最初に0=・・の式を追加する工夫を行うことで、普通のCが使えるようになったことが面白い点である。




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