火星 その1

  この「火星」では、「地球 その3」で見出した新しい形の中心母等式に統一的法則性を適用して、これまでの結果
を全面的に書き換えていく作業に着手します。ここでは、π/2代入を調べました。


2004/5/7          <新しい形の母等式を中心に据える>

 まず「地球 その3」で見出したこの新しい中心母等式@、Aを書きます。
 この「火星」シリーズでは、この新しい母等式を使い、これに重回積分-重回微分の規則(統一的法則性)を適用して
いくことで、ゼータ関数の性質をさらにさぐりたいと思います。

  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@

  sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・)  -----A

 上の二式は、これまで使ってきた次の中心母等式と本質的に同じものです。

  cosx/sinx=2(sin2x + sin4x + sin6x + ・・・)  -----B

  1/sinx=2(sinx + sin3x + sin5x + ・・・)     -----C

 [@、A]から[B、C]が出てまた逆も真ですので、結局、[@、A]と[B、C]は同値なのです。
同じものなら、これまでの結果と違わないのではないか?と思われるかもしれませんが、@、Aはあまりにもよい
対称性をもっており、ゼータ関数の奥に潜む構造をさぐる上ではB、Cより、@、Aの方が適しているに違いないと
感じます。
また@、Aの式自体は公式集などで知られているようです。以後、これに統一的法則性を適用する観点が重要と
なります。

 今後、@、Aを重回積分-重回微分した式に、さまざまなx値(mπ/n)を代入していくわけですが(m、nは整数)、
その代入する値mπ/nに対して注意を述べておきます。
結論から言えば、mπ/nは、
 @式の重回積分-重回微分の結果に対しては--->0 < |mπ/n| < 2π でなければならない。
 A式の重回積分-重回微分の結果に対しては--->  |mπ/n| < π でなければならない。
ということです。

 その理由を簡潔に述べます。
cot(x/2)をベキ級数展開したときの収束半径は 0 < |x| < 2πであり、またtan(x/2)をベキ級数展開したときの収束
半径は |x| <πであることにまず着目します。@、Aを重回積分したり、重回微分したりするということは、すなわち
cot(x/2)やtan(x/2)のベキ級数展開式を重回積分、重回微分するということに他なりません。
そして、@、Aの場合、それらを重回積分したり、重回微分した式でも収束半径は変らないのです。よって、統一的
法則性を適用していった式に代入してよい値mπ/nは、いつでも上記の範囲でなければならないことになります(そ
の範囲外ですと、デタラメの結果が出る)。
 ただ、以下ではいつでも同時に@とAの統一的法則性を考察して同じmπ/n代入の結果の対比を見ますので、
0 < |mπ/n| < 2π と |mπ/n| < π の共通の範囲を考えることになり、以下の統一的法則性で用いることのでき
る mπ/n は結局、|mπ/n| < π に限られる、ということになります。 

 さらに前準備をします。
@、Aを1回積分した式をまず求めておきましょう。
@、Aをもう一度書きます。これらを0〜xの範囲で1回積分した式を求めたいわけです。今後の多くの計算を行って
いく上でまずほしいものがそれなのです。
  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@

  sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・)  -----A

 まず、Aを0〜xの範囲で1回積分した結果は次のようになります。計算は簡単です。
  log(cos(x/2)) + log2=cosx/1 - cos2x/2 + cos3x/3 - cos4x/4 + ・・・   -----F

次に、@を積分計算した結果はどうなるでしょうか?
これも、簡単です。@とBが本質的に同じ式であること(Bでのxをx/2で置換-->@)に注目すればよいのです。
結局Dのxをx/2に置き換えるだけでよく、@を積分計算した結果は次のようになります。

  log(sin(x/2)) + log2=-(cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 + cos4x/4 + ・・・ )    -----G

 このように、目的の式が求まりました。FとGの対比の妙を味わってください。
 DとEがやや対称性の悪い形であるのに対し、FとGはどちらにもlog2が出ておりじつに対称性のよい形
なっていることがわかるでしょう。
準備は終わりました。

まとめておきます。
 
 cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) を0〜xで積分した結果は、次のようになる。

  log(sin(x/2)) + log2=-(cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 + cos4x/4 + ・・・ )



  sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・) を0〜xで積分した結果は、次のようになる。

  log(cos(x/2)) + log2=cosx/1 - cos2x/2 + cos3x/3 - cos4x/4 + ・・・ 

注意:cos2x/2は、(cos2x)/2の意味であり、cos(2x/2)ではありませんのでご注意ください。


 以下で、いよいよ@、Aに統一的法則性(重回積分−重回微分の規則)を具体的に適用していきます。
ただ@とBは本質的に同じ式ですので、これから出す結果の半分は既に得た結果(「いくつかの点」シリーズや
佐藤郁郎氏の結果)と同じもの(表面的に違っても本質的に同じもの)が出るとは思いますが、複雑化を避ける
ため、それらとの関連は詳しくは述べないことにします。
次の中心母等式を機軸として「いくつかの点」シリーズでは抽象的な書き方をしましたが、「金星」シリーズでは
かなり具体的な表示を与えましたので、わかりやすいと思います。また結果もまったく面白いものとなりました。
  cosx/sinx=2(sin2x + sin4x + sin6x + ・・・)   -----B
  1/sinx=2(sinx + sin3x + sin5x + ・・・)     -----C


 私の考えはこうです。
上のB、Cでも面白い結果が出たが(「金星」)、それよりもとにかく次の@とAという対称性のよい式に統一的
法則性を適用しその結果をペアで並べて比較検討することで、ディリクレのL関数の裏側に潜む構造が@とAの
対称性からこれまで以上に鮮明にあぶり出されるのではないかという期待があり、ただそのためにだけ、わざわざ
@とAを中心に据えて、統一的法則性を調べ直そうとしているということです。

  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@

  sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・)  -----A

 それでは、見ていきましょう。



2004/5/8 <cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x +・・ )の重回積分-重回微分にπ/2を代入>

 ここでは、まず@の統一的法則性の結果に、π/2を代入した場合を調べます。

  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@

 表現の仕方は、「金星」と同じスタイルで書いていきます。最も本質的な点がわかりやすいスタイルと思うから
です。(この結果は「金星 その3」のcosx/sinx=2(sin2x + sin4x +・・にπ/4を代入>と本質的に同値です。
では、@を重回積分-重回微分した結果を書き下していきます。

[重回積分、重回微分した一連の式]
  ・
  ・
4回微分
 {2sinx・sin(x/2)+4(2+cosx)cos(x/2)}/(sin(x/2))^5=2^4sinx + 4^4sin2x + 6^4sin3x + 8^4sin4x + ・・・・

3回微分
 (2+cosx)/(sin(x/2))^4=2^3cosx + 4^3cos2x + 6^3cos3x + 8^3cos4x + ・・・・

2回微分
 cos(x/2)/(sin(x/2))^3=-(2^2sinx + 4^2sin2x + 6^2sin3x + 8^2sin4x + ・・・・) 

1回微分
  -1/(sin(x/2))^2=2(2cosx + 4cos2x + 6cos3x + 8cos4x + ・・・・) 

0回積分
  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・・) 

1回積分
  log(2sin(x/2))=-(cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 + ・・・)

2回積分
 ∫log(2sin(x/2))=-(sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 + ・・・)

3回積分
 ∫∫log(2sin(x/2))=(cosx/1^3 + cos2x/2^3 + cos3x/3^3 + ・・・) - ζ(3)

4回積分
 ∫∫∫log(2sin(x/2))=(sinx/1^4 + sin2x/2^4 + sin3x/3^4 + ・・・) - ζ(3)・x/1!

5回積分
 ∫∫∫∫log(2sin(x/2))=-(cosx/1^5 + cos2x/2^5 + cos3x/3^5 + ・・・) + ζ(5) - ζ(3)・x^2/2!

6回積分
 ∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
     =-(sinx/1^6 + sin2x/2^6 + sin3x/3^6 + ・・・) + ζ(5)・x/1! - ζ(3)・x^3/3!

7回積分
 ∫∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
     =(cosx/1^7 + cos2x/2^7 + cos3x/3^7 + ・・・) - ζ(7) + ζ(5) ・x^2/2! - ζ(3)・x^4/4!

8回積分
 ∫∫∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
    =(sinx/1^8 + sin2x/2^8 + sin3x/3^8 + ・・・) - ζ(7)・x/1! + ζ(5)・x^3/3! - ζ(3)・x^5/5!

  ・
  ・
と、このように上下に延々と続いていきます。すべての∫は0〜xの定積分、またdx・・dxは略しました。
なお、”log(sin(x/2)) + log2” は、log2(sin(x/2)) とまとめました。

 上の式の x にπ/2を代入すると、次のようになります。途中計算は省略。

[π/2代入の式]
  ・
  ・
4回微分
  L(-4) = 5/2

3回微分
  ζ(-3)=1/120

2回微分
  L(-2) = -1/2

1回微分
  ζ(-1)=-1/12

0回積分
 2・{1 - 1 + 1 - 1 + 1 - 1 + ・・・}=1
 よって、L(0) = 1/2

1回積分
  1- 1/2 + 1/3 - 1/4 + 1/5 - 1/6 + 1/7 + ・・・=log2

2回積分
  -L(2) =∫(0〜π/2) log(2sin(x/2))

3回積分
  -(1-1/2^2)/2^3・ζ(3) - ζ(3) =∫(0〜π/2)∫log(2sin(x/2))

4回積分
  L(4) - ζ(3)・(π/2)=∫(0〜π/2)∫∫log(2sin(x/2))

5回積分
  (1-1/2^4)/2^5・ζ(5) + ζ(5) - ζ(3)・(π/2)^2/2!=∫(0〜π/2)∫∫∫log(2sin(x/2))

6回積分
  -L(6) + ζ(5)・(π/2) - ζ(3)・(π/2)^3/3!=∫(0〜π/2)∫∫∫∫log(2sin(x/2))

7回積分
  -(1-1/2^6)/2^7・ζ(7) - ζ(7) + ζ(5)・(π/2)^2/2!- ζ(3)・(π/2)^4/4!
                                       =∫(0〜π/2)∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))

8回積分
  L(8) -ζ(7)・(π/2) + ζ(5)・(π/2)^3/3!- ζ(3)・(π/2)^5/5!
                                       =∫(0〜π/2)∫∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
  ・
  ・
と、ζ(2n+1)とL(2n)が現れる式が並びます。
上で右辺の重回積分は最後の∫だけが0〜π/2の定積分で、他の∫はすべて0〜xの定積分。
 念のための注意ですが、log2(sin(x/2)) は”log(sin(x/2)) + log2” とバラせますので、例えば、
(0〜π/2)∫log(2sin(x/2))はバラして書けば「(π/2)^2/2!・log2 +∫(0〜π/2)∫log(sin(x/2)) 」となります。

 ここで、もちろんζ(s)はリーマン・ゼータ関数で次のものです。
  ζ(s)=1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/4^s + ・・・

 またL(s)は、次で定義されるゼータ関数です。
  L(s)=1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・

 ζ(s)もL(s)もどちらもディリクレのL関数L(χ,s)の一種のゼータ関数であります
 簡単にいえば、ζ(s)は、全てのaに対しχ(a)=1としたときのディリクレのL関数L(χ,s)です。
このL(s)は、a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対しそれぞれχ(a)=0, 1, 0, -1としたときのL(χ,s)に一致します。

なお、整数論において重要な関数であるディリクレのL関数L(χ,s)は、次のように定義され、様々なディリクレ
指標χ(a)に対してL(χ,s)は色々と変ってくるゼータ関数です。
 L(χ,s)=χ(1)/1^s + χ(2)/2^s + χ(3)/3^s + χ(4)/4^s + χ(5)/5^s + χ(6)/6^s + ・・・・

 また注目してほしいことは、@やAの等式から重回積分-重回微分を作用させて出てくるものはゼータの特殊値が
明示的に求まらない場合ばかりであるということです。この「明示的に求まらない場合」のものは、奇数ゼータ
ζ(2n+1)や偶数L関数L(2n)などをその代表格とするもので、現代数学でもさっぱりわからないとされているものです。

 またこの後も、さまざまなゼータ関数(ディリクレのL関数)の特殊値が出現してきますが、全て「明示的に求まら
ない」ものばかりであることを注意しておきます。(「金星」でそうでしたが)
 明示的に求まる場合は、”日本のオイラー”佐藤郁郎氏が詳しく調べておられます。そちらをご覧ください。
--->佐藤氏のコラムの”奇数ゼータと杉岡の公式”「その6」〜「その9」参照。

 さて、とにもかくにも、まず一方の中心母等式の結果がわかりました。
次に、もう一方の式のπ/2代入を調べます。私がやりたいことはつねに二式の結果をペアで並べて比較ということです。




2004/5/8 <sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x +・・ )の重回積分-重回微分にπ/2を代入>

では次に、もう一つの中心母等式(次式)を調べます。

  sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・)  -----@

@を重回積分-重回微分した結果を書き下していきます。

[重回積分、重回微分した一連の式]
  ・
  ・
4回微分
  {8sin(x/2)+4(sin(x/2))^3}/(cos(x/2))^5=2^4sinx - 4^4sin2x + 6^4sin3x - 8^4sin4x + ・・・・

3回微分
  (cosx-2)/(cos(x/2))^4=2^3cosx - 4^3cos2x + 6^3cos3x - 8^3cos4x + ・・・・

2回微分
  -sin(x/2)/(cos(x/2))^3=2^2sinx - 4^2sin2x + 6^2sin3x - 8^2sin4x + ・・・・

1回微分
  1/(cos(x/2))^2=2(2cosx - 4cos2x + 6cos3x - 8cos4x + ・・・・) 

0回積分
  sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・) 

1回積分
  log(2cos(x/2))=cosx/1 - cos2x/2 + cos3x/3 - cos4x/4 +・・・

2回積分
 ∫log(2cos(x/2))=sinx/1^2 - sin2x/2^2 + sin3x/3^2 - sin4x/4^2 +・・・

3回積分
 ∫∫log(2cos(x/2))=(-cosx/1^3 + cos2x/2^3 - cos3x/3^3 + cos4x/4^3 -・・・) + (1-1/2^2)・ζ(3)

4回積分
 ∫∫∫log(2cos(x/2))=(-sinx/1^4 + sin2x/2^4 - sin3x/3^4 + sin4x/4^4 - ・・・) + (1-1/2^2)ζ(3)・x/1!

5回積分
 ∫∫∫∫log(2cos(x/2))=(cosx/1^5 - cos2x/2^5 + cos3x/3^5 - cos4x/4^5 + ・・・)
                            + (1-1/2^2)ζ(3)・x^2/2!- (1-1/2^4)ζ(5)

6回積分
 ∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))
     =(sinx/1^6 - sin2x/2^6 + sin3x/3^6 - sin4x/4^6 +・・・)
                          + (1-1/2^2)ζ(3)・x^3/3!- (1-1/2^4)ζ(5) ・x/1!

7回積分
 ∫∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))
     =(-cosx/1^7 + cos2x/2^7 - cos3x/3^7 + cos4x/4^7 - ・・・)
                    + (1-1/2^2)ζ(3)・x^4/4!- (1-1/2^4)ζ(5) ・x^2/2!+ (1-1/2^6)ζ(7)

8回積分
 ∫∫∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))
    =(-sinx/1^8 + sin2x/2^8 - sin3x/3^8 + sin4x/4^8 - ・・・)
                + (1-1/2^2)ζ(3)・x^5/5!- (1-1/2^4)ζ(5) ・x^3/3!+ (1-1/2^6)ζ(7) ・x/1!
  ・
  ・
と、このように上下に延々と続いていきます。すべての∫は0〜xの定積分、またdx・・dxは略しました。
なお、”log(cos(x/2)) + log2” は、log2(cos(x/2)) とまとめました。

 上の式の x にπ/2を代入すると、次のようになります。途中計算は省略。

[π/2代入の式]
  ・
  ・
4回微分
  L(-4) = 5/2

3回微分
  ζ(-3)=1/120

2回微分
  L(-2) = -1/2

1回微分
  ζ(-1)=-1/12

0回積分
 2・{1 - 1 + 1 - 1 + 1 - 1 + ・・・}=1
 よって、L(0) = 1/2

1回積分
  1- 1/2 + 1/3 - 1/4 + 1/5 - 1/6 + 1/7 + ・・・=log2

2回積分
  L(2) =∫(0〜π/2) log(2cos(x/2))

3回積分
  -(1-1/2^2)/2^3・ζ(3) + (1-1/2^2)ζ(3)=∫(0〜π/2)∫log(2cos(x/2))

4回積分
  -L(4) + (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)=∫(0〜π/2)∫∫log(2cos(x/2))

5回積分
  (1-1/2^4)/2^5・ζ(5) - (1-1/2^4)ζ(5) + (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)^2/2!
                             =∫(0〜π/2)∫∫∫log(2cos(x/2))

6回積分
  L(6) - (1-1/2^4)ζ(5)・(π/2) + (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)^3/3!
                               =∫(0〜π/2)∫∫∫∫log(2cos(x/2))

7回積分
 -(1-1/2^6)/2^7・ζ(7) + (1-1/2^6)・ζ(7)
           - (1-1/2^4)ζ(5)・(π/2)^2/2!+ (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)^4/4!
                                  =∫(0〜π/2)∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))

8回積分
  -L(8) + (1-1/2^6)ζ(7)・(π/2) - (1-1/2^4)ζ(5)・(π/2)^3/3! + (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)^5/5!
                                      =∫(0〜π/2)∫∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))
  ・
  ・
と、ここでもζ(2n+1)とL(2n)が現れる式が並びました。
上で右辺の重回積分は最後の∫だけが0〜π/2の定積分で、他の∫はすべて0〜xの定積分。

 一つ上の結果と比べてみてください。両者は、面白い対比をなしています。
例えば、ここでは
  L(2) =∫(0〜π/2) log(2cos(x/2))
ですが、一つ上では、
 -L(2) =∫(0〜π/2) log(2sin(x/2))
となっています。
 まったく面白いではありませんか!

また、さらに、こちらでは、
  -L(4) + (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)=∫(0〜π/2)∫∫log(2cos(x/2))
ですが、一つ上では、
  L(4) -ζ(3)・(π/2)=∫(0〜π/2)∫∫log(2sin(x/2))
となっている。

 もう一つ見ましょう。
こちらでは、
  (1-1/2^2)(1-1/2^3)ζ(3) =∫(0〜π/2)∫log(2cos(x/2))
ですが一つ上では、
 -{1+ (1-1/2^2)/2^3}ζ(3) =∫(0〜π/2)∫log(2sin(x/2))
となっています。
これもよく見ると、味のある対比をなしていることに気付きます。

 このページでは、中心母等式@、A(次の)に統一的法則性を適用してπ/2代入の場合を調べたわけですが、
@、Aが際立った対称性を有しているがゆえに、出てきた特殊値もやはり面白い対比をなしているといえるで
しょう。
  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@

  sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・)  -----A


 念のための注意ですが、log2(cos(x/2)) は”log(cos(x/2)) + log2” とバラせますので、例えば、
(0〜π/2)∫log(2cos(x/2))はバラして書けば「(π/2)^2/2!・log2 +∫(0〜π/2)∫log(cos(x/2)) 」となります。

 また、今回の上の結果から、ζ(2n+1)とL(2n)は[偶数ゼータの無限和]で表現できることがわかることも指摘して
おきます。これは、金星 その2でも指摘したことですが、繰り返します。

log (cos(πx/2))= -{x^2(1-1/2^2)ζ(2) + x^4(1-1/2^4)ζ(4)/2
                                   + x^6(1-1/2^6)ζ(6)/3 + ・・・} -----B
                                               (0 < x < 1)

という式があり(「いくつかの点」シリーズ その14の「logのトンネルを抜ける式」参照)、Bで変数変換などして、
log(cos(x/2))=・・・としたものを、上の一連の重回積分の式に代入し計算していくと、(項別積分を行っていくが、
この場合収束半径の問題もうまくクリアされていく)、
   ∫・・∫log(cos(x/2))=[偶数ゼータを係数にもつ無限べき級数]
となるため、結局すべてのζ(2n+1)とL(2n)は[偶数ゼータの無限和]で表現できることになります(全ての∫は
0〜xの定積分)。
 ただし、∫(0〜π/2)∫∫log(cos(x/2)) や ∫(0〜π/2)∫∫∫log(cos(x/2)) などの姿を見るだけで、いま指摘した
ことは容易にわかりますから、この「火星」シリーズでも「金星」同様に重回積分の姿のままでおいておきます。
log(2cos(x/2))=log2 + log(cos(x/2))に注意。

また、同様の視点から、一つ上で出てきた∫・・∫log(sin(x/2)) も結局、
  ∫・・∫log(sin(x/2))=[偶数ゼータを係数にもつ無限べき級数]
となることが示せます。
 よって、一つ上でのζ(2n+1)もL(2n)ももちろんそれらは[偶数ゼータの無限和]となるわけですが、詳細は
金星 その1」に述べましたので参照ください。

 すなわち、ζ(2n+1)もL(2n)もまた後から出てくる様々なディリクレのL関数の特殊値(明示的に求まらない場合)も
すべて[偶数ゼータの無限和]という形で表現できることがわかるのです。

 π/2代入の結果は、以上のようになりました。

 では、2π/3、π/3、π/4、・・などの場合はどうなるのでしょうか?
とても興味がありますが、これらは「その2」以降で調べたいと思います。




2004/5/9           <ある奇妙な変形>

 新しい形の中心母等式(次の@、A)に対し、ある奇妙な変形を見つけましたので、お知らせします。
(ただし、上からの流れの本筋とは関係なく、単なる興味で載せています。)

  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@

  sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・)  -----A

 上は、”ある等式”を使うと、面白い形に変形できるのです。ある等式とは公式集などにも載っている次のものです。

 sinx/x=cos(x/2)・cos(x/4)・cos(x/6)・cos(x/8)・cos(x/16)・・・・  -----B

 「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R. Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社)ではじめてこの公式を
見たとき、「これなんだ?」という衝撃的なものを感じました。
サインがコサインの無限積で表されていますが、一種異様なものがあります。
そして、この証明はたいへん難しいのだろうと思い込んでいたのです。ところが佐藤郁郎氏は氏のHPで簡明な
証明を載せておられ、これにも驚きました。--->佐藤氏のコラム 【3】漸近挙動の世界(無限的公式) 。

 さて、Bの x を x/2 で置き換えると、次のようになります。
 sin(x/2)=(x/2)・cos(x/4)・cos(x/8)・cos(x/12)・cos(x/16)・・・・  -----C

 これを@とAに代入すると、次が出ます。

 cos(x/2)/{(x/2)・cos(x/4)・cos(x/8)・cos(x/12)・cos(x/16)・・・・}
                            =2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  ----D


 {(x/2)・cos(x/4)・cos(x/8)・cos(x/12)・cos(x/16)・・・・}/cos(x/2)
                            =2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・)  ----E

 この不思議な式を見てください。
 コサインたちが団子のようになってサインたちを生み出そうとしている式に見えます。

 数学の要となる重要な式には、このような「無限積」=「無限和」の式がよく出てきますが、それに近いものを
感じます。(上ではわずかにx/2だけが、三角関数がはみ出していますが)
例えば、次のような式があります。

 {1/(1-2^(-s))}・{1/(1-3^(-s))}・{1/(1-5^(-s))}・{1/(1-7^(-s))}・{1/(1-11^(-s))}・・・

=1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/4^s + 1/5^s + 1/6^s + 1/7^s + 1/8^s + ・・・  -----F

 これは、オイラーが発見した式で「素数に関する積」=「自然数に関する和」となっているものですが、
私が全数学の中でもっとも好きな式がこれです。ゼータ関数や整数論の世界において、中心に位置するもっとも
重要な式でもあります。
 また、ラマヌジャンが発見した2次のゼータに関する「無限積」=「無限和」の式などもあって、それも現代数学に
大きなインパクトを与えているものですが、詳しくは「解決!フェルマーの最終定理」(加藤和也著、日本評論社)や
「数学の夢 素数からのひろがり」(黒川信重著、岩波書店)を見てほしいと思います(この二つ本はまったく面白い)。

 このFを解釈すると、「素数たちが協力して、自然数を生み出している式」といえます。
DやEは、コサインたちが協力し合い、必死にサインの軍団(基底?)を生み出そうとしている式なのかもしれません。
私の勝手な解釈にすぎないのかもしれませんが。

 ここで一つちょっとした疑問(問題)が浮かびました。
 D、Eで類似の式で、サインとコサインが逆になったような式は存在しないのでしょうか?
 すなわち、「サインの無限積」=「コサインの無限和」となっているような式は存在するのか否か。
もし、否定的な結果となれば、それはサインとコサインの本質的ななにかが違っているということなのかもし
れません。読者はどう思われるでしょうか?




2004/5/16           <π/2代入の比較>

 上で見たπ/2代入の二つの場合を、さらにきっちりと表の形で比較しておきたいと思います(上ではいくつか拾っただけ
の比較でしたが)。

  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@

  sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・)  -----A

 このページでの<cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x +・・ )の重回積分-重回微分にπ/2を代入>の結果と
<sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x +・・ )の重回積分-重回微分にπ/2を代入>の結果を、比較すると以下の
ようになります。
 微分の方は無視し、積分側だけを書きました。
Aが@に対応する結果、BがAに対応する結果です。

 π/2代入の場合の比較

1回積分

A  1- 1/2 + 1/3 - 1/4 + 1/5 - 1/6 + 1/7 + ・・・=log2

B  1- 1/2 + 1/3 - 1/4 + 1/5 - 1/6 + 1/7 + ・・・=log2
2回積分
A  -L(2) =∫(0〜π/2) log(2sin(x/2))

B   L(2) =∫(0〜π/2) log(2cos(x/2))
3回積分
A  -(1-1/2^2)/2^3・ζ(3) - ζ(3) =∫(0〜π/2)∫log(2sin(x/2))

B  -(1-1/2^2)/2^3・ζ(3) + (1-1/2^2)ζ(3)=∫(0〜π/2)∫log(2cos(x/2))
4回積分
A   L(4) -ζ(3)・(π/2)=∫(0〜π/2)∫∫log(2sin(x/2))

B  -L(4) + (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)=∫(0〜π/2)∫∫log(2cos(x/2))
5回積分
A (1-1/2^4)/2^5・ζ(5) + ζ(5) - ζ(3)・(π/2)^2/2!=∫(0〜π/2)∫∫∫log(2sin(x/2))

B (1-1/2^4)/2^5・ζ(5) - (1-1/2^4)ζ(5) + (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)^2/2!
                                   =∫(0〜π/2)∫∫∫log(2cos(x/2))
6回積分
A  -L(6) + ζ(5)・(π/2) - ζ(3)・(π/2)^3/3!=∫(0〜π/2)∫∫∫∫log(2sin(x/2))

B  L(6) - (1-1/2^4)ζ(5)・(π/2) + (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)^3/3!
                               =∫(0〜π/2)∫∫∫∫log(2cos(x/2))
7回積分
A  -(1-1/2^6)/2^7・ζ(7) - ζ(7) + ζ(5)・(π/2)^2/2!- ζ(3)・(π/2)^4/4!
                                       =∫(0〜π/2)∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))

B  -(1-1/2^6)/2^7・ζ(7) + (1-1/2^6)・ζ(7)
           - (1-1/2^4)ζ(5)・(π/2)^2/2!+ (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)^4/4!
                                  =∫(0〜π/2)∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))
8回積分
A L(8) -ζ(7)・(π/2) + ζ(5)・(π/2)^3/3!- ζ(3)・(π/2)^5/5!
                                 =∫(0〜π/2)∫∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))

B -L(8) + (1-1/2^6)ζ(7)・(π/2) - (1-1/2^4)ζ(5)・(π/2)^3/3!
                               + (1-1/2^2)ζ(3)・(π/2)^5/5!
                                 =∫(0〜π/2)∫∫∫∫∫∫log(2cos(x/2))



 両者を比較すると、興味深い対比をなしていることに気付くでしょう。 なにかがある・・と感じます。
A、Bで(1-1/2^n)の係数をとり除けば、各項の符号(+,-)を除いて両者の左辺は同じものになってしまうことは面白い点
と思います。
そして、驚くべきことに、この性質は、2π/3、π/3、3π/4代入の場合にも引き継がれることになるのです。






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