「どこに行くの?」
「さて。どこが良い?」
運転席に座る男は楽しそうに言う。
「質問してるのはあたしなんだけど」
「軍資金もあるしなぁ〜」
トランクにはつぶした組織からせしめた金塊入りのジェラルミンケースが何ケースか転がっていた。
その日、あたし達は別で仕事をしていた。
撩は冴子さんからの依頼。
あたしは、男の人からの依頼。
例によってあのバカは男からの依頼をけっ飛ばし、もっこり一発に目をくらんで冴子さんの方にそれはもう見事なしっぽの振り方で行ってしまったのだ。
そう言うところはホントに相変わらずでむかつくし、冴子さんも冴子さんよねぇ。
で、相も変わらず金欠な冴羽商事。
目の前の高額依頼にあきらめるわけにはいかなかったの。
そう、だってだって、依頼料言い値で払ってくれるって言ったんだもん。
知り合いのクラブとかでバイトしようかって本気で思ったぐらいでさぁ(撩は反対してるけど。反対できる立場か!!!付けで飲みやがって!!!)。
そんなときに言い値で払ってくれる太っ腹な依頼主の依頼に飛びつかない人間がどこにいるのよ〜〜〜〜!!!
いたわね。男だと分かった瞬間逃げ出したバカが。
…………結局、バカだったのはあたしの方だったんだけど…………。
言いたくないんだけど。
えっと、だまされてたみたいで。
って言うか、撩だって教えてくれればいいものを!!!!
……逃げ出した時点で撩は依頼主がどんな奴か知らなかったんだから。
意味ないのよ。
あいつはあたしが捕まってることすら知らない。
撩に知らせるって言ったけど、あいつら撩の居場所知ってるのかしら?
そんなこと考える。
はぁ、どうせ当分、助けになんて来てくんないわよ。
あいつは冴子さんから報酬もらうのにしっぽ振ってる最中なんだから。
撩のあれは一生直らないわね。
他の女の人にいい顔するのも、冴子さんにしっぽ振るのも。
こういうとき……嫌に思うのよ。
あいつにとってあたしは特別じゃないって。
なんか、泣きたくなってきて………。
「…………はぁぁぁぁぁ………」
ものすごいため息が聞こえた。
「お前、何やってんのこんなところで」
いつも聞き慣れた声がする。
と顔を上げれば撩がそこにいた。
ジト目で見てるけど。
「何って……………………見てわかんない?捕まったんだけど」
「捕まるような間抜けから成長したと思ったんだがなぁ〜〜」
「悪かったわね、あたしは相変わらず間抜けよ〜〜」
だまされたわよ。
高額依頼に目がくらんだわよ〜〜〜。
どうせ、あたしは間抜けよ〜〜〜。
「ったく、オレがこなかったらどうするつもりだったんだ?」
あたしに掛けられている枷を外しながら撩は聞く。
「………連中があんたを捜すわよ」
あたしをどんな風に騙したかってこいつに自慢げに話すわよ。
そしてあたしはあんたからねちねちと嫌み言われるんだわ。
「だろうな」
「むー」
「で、どうする。香はここでおとなしく待って………ないか」
「当たり前よ!!!復讐するわよ。やられたらやり返す!!!!」
「どんなことされたんだよ」
「捕まった。それ以上でもそれ以下でもないから」
「へいへい」
………?
なんか様子おかしくない?
「あたしは平気よ?…ただあんたへの人質にされただけだから。何もされてない」
されたらあんたの事だもん、やばいことになるって事かなり有名よ?
「されてたら、跡形もなくすさ」
……それがやばいんだけど……な……。
そうだ。
「撩の用事は終わったの?」
「んにゃ、これから。さて、さっさと依頼片付けるか」
「そうね。あたしも鬱憤を晴らさなくっちゃ」
「程々にな」
という言葉もむなしく。
冴子さんの依頼とあたしの鬱憤を晴らしてたら組織は全壊滅……。
組織があった場所は残骸だけ。
冴子さんに押しつけて、金塊の入ったケースを回収して、帰路につくんだけど。
………ホント、ねぇ。
「どうすんの?」
と冒頭の会話に戻る。
あとちょっとで終わるなぁと思ってたらBURNIN'っぽくなっちゃってどうしようと思って途中に書き直し。
BURNIN'もリズレに収録なんだよね。