あたしは雁字搦めで。
あたしは自由にならなくて。
あたしは一人で。
あたしが必要じゃない。
でもあたしは自由になりたくて。
自由であろうとした。
「お前、剣菱財閥の令嬢には見えないよな」
「そう言うお前だって、警視総監の息子には見えないよな」
そう言い合って、魅録とあたしは意気投合した。
お互い『家』が堅苦しい。
だから喧嘩して、族で遊んでみたり。
まぁ、かなり派手な遊び方してたと思うけど。
あの時のあたしの時間は何て言うか、魅録と逢うときだけだったんだなぁと、今更ながらに思わされた。
とお見合い中のあたしはそんなこと考えてる。
「で、悠理さんは高校で生徒会に入ってるとか?」
どこかの成金おばちゃんーーあの乗っ取りをやらかした気持ち悪い化粧お化けを思い出してちょっとだけ憂鬱だーーは、あたしに向かって言う。
生徒会って言ったって、乗っ取った結果生徒会の役員になっただけであって、別に立候補とか推薦とかじゃないのが………こういうときシラヌガハナって言うんだっけ?(知らぬが仏と聞かぬが花)
「聖プレジデントと言えば、こちらで〜〜」
なんていうおばちゃんの話は右から左に流れてる。
母ちゃんはつまらなそうにしてるし、………っていうかなんで千秋ちゃんと時宗のおっちゃんまでいるのやら。
「うちの愚息と生徒会に入ってるんですよ」
なんて時宗のおっちゃんは魅録の自慢話してる………。
取り残されてるのはあたし……じゃなくて見合い相手だなとあたしはぼんやりと思う。
「兄ちゃん、なんで千秋ちゃんと時宗のおっちゃんがいるの?」
友達と会ってる父ちゃんの代わりに兄ちゃんが母ちゃんと来たわけだけど、結局この見合いってあんまり気乗りしないものなんだろうなって思う。
「時宗さんとこちらの方のおじさんが昔からの知り合いらしくてね、剣菱と知り合いだと言ったら紹介して欲しいっていったらしいよ」
そう言うことらしい。
結局、メンドーにあたしは巻き込まれたらしい。
おっちゃんも千秋ちゃんも断ってくれりゃいいのに。
そうすればあたしは着物なんて着なくて済んだわけで。
まぁ、着物着るの嫌いじゃないけどさ。
派手ながら多いし。
これじゃ、バイクには乗りづらいな……。
そんなことぼーっと思ってたら、先に千秋ちゃんが気付いてあたしを見てにんまりと笑った。
あぁ、千秋ちゃんぜってー盗聴器仕掛けてるぜ?
前、野梨子と可憐が仕掛けてるって言ってたらしいからなぁ……。
「じゃあ、後は若い人同士で……」
「そうですね」
なんておきまりらしい文句を成金おばちゃんと兄ちゃんの会話。
千秋ちゃんは母ちゃんに目配せして、嬉しそうにしてる。
「悠理ちゃん、そろそろ時間はいいの?」
なんて千秋ちゃんの態度でばれて焦った顔してる某人物の方を見る。
「迎えが来るんだったら迎えが来るっていいなさい」
母ちゃんも楽しそうだ。
「じゃあ、行っても良いの?」
千秋ちゃんと母ちゃんは楽しそうに頷く。
時宗のおっちゃんは訳が分からないのか某人物……(そろそろ名前出してやるか)魅録と千秋ちゃんを交互に見る。
兄ちゃんは溜め息着いて苦笑してるし、一番訳わかんないと思ってんのは目の前のあたしのお見合い相手らしい人物となり金おばちゃんだよな。
「どこ行くかぐらい言いなさい」
「えっと、どこだっけ?」
ジャングルじゃないんだよな……可憐と清四郎の希望だっていうのは覚えてんだよな……。
最後の最後であたしは清四郎に負けたんだ。
「ニューヨークだよ」
いつの間に側に来たのか魅録は苦笑いを浮かべてる。
「全く、迎えに来るんだったらさっさと迎えに来れば良いものを。魅録、場所教えたお礼しなさいよ」
「分かってるよ」
そう言いながら魅録はあたしの手を引いてその場から離れる。
後は兄ちゃんが何とかしてくれるだろう。
別にどうってことない相手だし。
駐車場まで来たらいつもあるはずのバイクがない。
珍しく車だ。
「あれ?バイクじゃないの?」
「お前さぁ、着物でバイク乗る気だったのか」
う………。
「いや、バイクはこれじゃ乗れないなとは思ったけどさ」
「どうせ着物だと思ってくるまで来たんだよ」
そう言いながら助手席のドアを開ける。
ついでに座席もあたしが着物だと言うことを考えて後ろに下げる。
「気配り出来る男はいい男なのよ」
なんて力説する可憐の言葉を助手席に座ったあたしは思い出して少し笑ってしまった。
「何笑ってんだ?そんなに良かったのか?」
「何がだよ」
不満そうに車を発進させた魅録の言葉にあたしは首をかしげる。
「見合い」
「別に?どうやって逃げ出すかって事しか考えてなかったぞ?」
どうやって母ちゃんの事誤魔化すかとか千秋ちゃんに言うかとか。
母ちゃんと千秋ちゃんがそろうと絶対に怖いものなしだと思うもん。
「あ、そう言えば、魅録と逢ったときの事思い出してた」
うんうん、あれがなかったらあたしは今こうしてないな。
「………バーカ」
「な、」
いきなりなんでバカって言われなきゃなんないんだって、文句言おうとしてやめた。
魅録の耳が赤い。
「………バーカ」
思わず、あたしまで赤くなるじゃねえか。
「………あ、あのさぁ」
間が持たなくって何か言おうとしたら、間抜けな携帯の着信音。
「美童?」
「うん」
そう言ってあたしは携帯に出た。
ケータイで話しながら、あたしは今日のこととかこれからの事考えてみた。
「悠理」
「ん?」
携帯を切って美童の用事をつげた後、魅録はあたしの名前を呼ぶ。
「………とりあえず、ついてからだな」
何がって言おうとしてやめた。
「そうだな」
あたしもその意味分かってる。
「まぁ、何とかなるだろう」
楽しそうに笑う魅録にあたしも楽しくなる。
「悠理、とりあえず、あいつらには秘密にしとこうぜ」
言ったらどんな反応するか想像出来てるからあたしは頷いた。
ドラマ化なんて〜〜って思って周囲を読んでたら清悠ばっかでまぁありかと思ってたら結局落ち着くところに落ち着いた感じ。