たくさんの花が所狭しと飾られる。
抱えきれないぐらいの花束を持って。
今日を迎えられた喜びを、あなた達へ。
「ほんとねぇ、ありがとうだよね」
「いや、これ凄いねぇ」
楽屋に戻ってきて思わず絶句する。
ロビーにも飾られてたけど、楽屋も多い。
たくさんの花という花。
今日がどういう日なのかみんな覚えているらしい。
僕たちの方は忘れてたわけじゃないけれど、もちろん大切な日ではあるけれど。
それでも、この日は通過点の様な。
大体、最初のこの日は家にいたりバイトに行ってたり、どっか何かしてた。
3人で何かしてたわけじゃない。
アイドルのように、イベントなんてやってた日じゃない。
変わる日を、普通の日と同じように過ごしていた。
変わった日を、普通の日と同じじゃなく過ごし始めたのはいつだろう。
誰もが誕生日以外の日を毎年おめでとうと言ってくれて、祝ってくれる。
そんな日がもう何年も続いている。
僕たちがこれからも過ごすようにみんなが祝ってくれるんだろう。
毎年、今日という日を迎えられるのも、応援してくれるみんなのおかげなんだろう。
このところ、僕は強く思う。
もちろん、僕だけじゃなく、チェスターやクロンメルの二人だってそう思ってるはずだ。
「行方不明になってた事、……分かってもらえて良かったよね」
ポツリとチェスが呟く。
僕たちの意志ではあるけれど、僕たちの意志だけじゃなく。
突然、姿をくらました僕たちにみんなはどれだけ不安で気をもんでいたのだろう。
そう思うとちょっと申し訳なく思えたりする。
今日の待っていてくれたファンの声を聞いたりすると余計にそう思う。
「さて、このツアーが終わったら新曲でも作りましょうか」
「お、本当に実行するんだ」
「あのねぇ、嘘言うつもりはないよ。ボクだって次の曲作りたいと思ってるんだから、みんなに聞いてもらいたいと思う曲。軽く出来てるから、後でデモ聞いてね。それから、クロンもだよ」
「え、オレも?前あんなに作ったじゃん」
「ちょっと、作らないつもり?」
「そう言うつもりじゃなくてですねぇ、今度はあなたの曲を待ってるかも知れないじゃないですか」
「ボクだけじゃなくってクロンのだって待ってるよ」
「そ、そうかなぁ」
「そうそう。って言うか、僕はどっちでも良いけどさ」
クロンとチェスの掛け合いに僕はそう口を挟む。
次の曲を待ってくれているみんなも同じ気持ちだろうな。
また、次の年も待ってくれてるみんなに会えるように、僕はクロンとチェスの会話に相づちを打ちながらそんなことを思った。
TMスキに20のお題13・花と併用。
しかもTMデビュー記念。
デビューして数年後のワール・ワーズのお話。