エルフ神族の王国。
その王国は世界の南にあるトエルブス大陸のほぼ中央の広大な森のどこかにある。
世界の剣の役目を果たすエルフ神族の王国ラルドエード。
国王キルジュ・モナ・ダンガーバン・アルドリーは脱走することで有名だった。
「何でまた、あの人の捜索をしなくちゃならないんだ」
キラ・ボガージュは武道場で得意の武術を磨いていた。
格闘術と言うべきか、その体術はキラの家が伝える格闘術でその動きは特殊な動きをし、剣士と対峙してもひけは取らなかった。
いつもは放っておく彼の放浪癖を今回は探し出せと執政官であるバジル・ノーマンはキラに命じたのである。
「あの人がいたって、居なくたって、この国は、変わらないじゃないか」
怒りからか声が外に出ていることにキラは気付いていない。
「キラ」
知っている柔らかい声が聞こえる。
でもキラは返事をしない。
「どこにいるの?キラ」
彼女は武道場の外にいる。
おそらく自分がココにいることを彼女は知っているはずだ。
辞令の後、キラは最後まで話を聞かず呼び出された部屋から逃げるように出て行った。
執政官であるバジルと将軍であるアルマに命じられたのだから行かなくちゃならない。
それは十分に理解していた。
だが何故自分と幼なじみのユリア・フィリスなのか。
それがキラには納得いかないのだ。
キラもユリアも彼ら二人の職業称号は探索には向いていない。
ユリアは聖道士だし、キラは前述の通り武道家だ。
適任ならジェスとリリーの方が向いているのではないのか(ジェスは魔法剣士、リリーは魔道士)そう思っているからだ。
「キラ」
武道場の扉を開けてユリアが入ってくる。
「聞こえてるよ」
むっとした表情のままキラはユリアの声に返事する。
「やっぱりココにいたのね」
「居ちゃ悪いのかよ」
「そう言う訳じゃないわ」
不機嫌表情を見せるキラに対しユリアは笑みを浮かべたまま
「ただ、キラが居るとしたらココしかないと思ったから」
キラに話しかける。
「なぁ、どうしても行かなくちゃダメなのか?リリーやジェスだって居るだろう?」
「………二人は、エディとクリシュナの二人を捜しに出かけたわ」
「は?」
キラは突然のユリアの言葉に驚く。
「どういう事だ?」
エディはこの国の王子でクリシュナはエディの幼なじみの少女だ。
まだ年が若い。
もっともエルフの年齢を人に換算した場合での年だ。
「二人とも突然居なくなったそうよ。クリシュナの所に置き手紙があったから家出なのは間違いない。でもリリーの索敵にかからない。もしかするともうトエルブス大陸にはいないだろうって。そのせいで今朝、探索に出掛けたの」
「だから、オレ達に陛下を捜せって来たわけか。いつもは本人任せなのに。エディがクリシュナと一緒にいなくなったのは問題だもんな」
「……うん」
キラの言葉にユリアは躊躇いがちに頷く。
「ユリア?どうしたんだ」
「エディがクリシュナ連れて家出した理由を考えるとね……」
「守護聖騎士か……」
その言葉にユリアは頷く
ラルドエードでその名がつく人間は一人しかいない。
エディは守護聖騎士なるといつも誓っていたことはキラももちろん知ってることだった。
「分かった、エディのためにもあの人を探さなくちゃな」
「うん」
次の日、キラとユリアは国王探索の為ラルドエードを出る。
すぐに見つかることを祈りながら。
それは後にも先にも変わりません。
現在(本編中)の神娘はクリシュナで守護聖騎士はエディです。
当時はセジェスとハイファです。
ちなみに、王子だからといって守護聖騎士になるわけではないんですけどね。