「ミア様。ユエ、ミア様はおられるか?」
奥宮の扉を乱暴に開けてランディールは入ってくる。
「ラン、そんなに慌てる必要はない。ミアは今、瞑想に入っている」
慌てることもなくユエは静かにランを見てもう一つの扉を見る。
そこの奥にはミアが居る。
「ラン、ミアが呼んでる」
ミアが居る部屋の扉からロシュオールが顔を出す。
ロシュオールの言葉にランはうなずき部屋に入る。
「ミア様、失礼いたします?」
一礼して入り顔を上げてランが見たミアの姿はこの神殿にいるときのようなゆったりとした衣装ではなく、神殿から飛び出すときのようなまたは他の地域からこの地にやってくるような人々の服を身に纏っていた。
「み、巫女?一体何をなさっておいでですか?」
唖然となったままロシュオールを見れば既にロシュオールも既に帯剣している。
「ロシュオール、ミア様、これは一体」
「ラン、急いでシャインロイエルを持ってきて」
ランディールの問いに答えずにミアは彼に命ずる。
「しかし、シャインロイエルを使うような時でも場所でもありません」
彼らが帯剣をするのは外に出るときと来訪者と面会するときだけだ。
「ここはそうかもしれないけれど。でも今から行くところはそうではないわ」
「今から行くところ?」
ミアの言葉にランディールは訳が分からず混乱する。
今、世界は安泰ではない。
魔物と呼ばれる魔王配下の異形のモノ達がはびこっているのだ。
そして、ランディールが飛び込んできた理由、魔族と戦い、魔王を滅ぼす力を持ったエルフ神族。
彼らが危機に遭っているのだ。
「ミア」
どうしていいか分からず動けずにいたランをよそにユエが部屋に入ってくる。
「何?ユエ」
「コレ、ランのシャインロイエル、持ってきたよ」
その手には鞘に入ったランディールの剣、聖剣シャインロイエル。
「有り難うユエ」
ミアの言葉に頷いてユエは部屋を出る。
「はぁ、ミア、ちゃんと説明しねえとランの奴止まったまんまになっちまうぜ?」
「そうね。ラン、聞いて。今から、ラルドエードに転移します。ラルドエードは近いうちに…そう、数時間も経たないうちに混乱に陥ります。魔王ゼオドニールは滅びます。でも、魔王軍が破れたわけではないの。私たちはその手助けに行かないといけません。世界の盾として」
ミアは、所々言及を避けてランディールに説明する。
ゴルドバの巫女そして二人の従騎士の役目はただ一つ、エルフ神族が敵に破れた場合の最後の砦そして盾。
彼らが安泰である限り世界は安泰だと言う。
「……了解いたしました。巫女ミア・バード・ゴルドバ。役目に従い、あなたをお守りいたします」
ランディールは片膝をついてミアに誓う。
「ミア、安心しろ。オレとランがついてる。ミアには毛筋すらもつけさせやしねぇよ」
ランディールの振る舞いに大げさだとため息をつきながらロシュオールは彼なりにミアに告げる。
「有り難う、ロシュ、ラン」
二人の言葉にミアは微笑む。
「我がミア・バード・ゴルドバの名において、開け扉よ。我らを約束の地へ」
ミアの言葉に転移の扉が開き彼らを約束の地へと運んだ。
レフ・パルマ暦934年、魔王ゼオドニールが滅びたことにより魔王軍は弱体化をしラルドエードより撤退する。
長いエルフの国の歴史において唯一滅びの危機を迎えたのがこの魔王ゼオドニール軍との戦いだったりします。
詳しくはまた後に…。