「リー……ミディアがアルガトム帝国に捕まった」
フェノーがリーにそう言った。
どういう状況だか理解しているだろうに。
このエルフの王子だとのたまったこいつはそう言った。
「……で、?フェノーはどうするつもり?」
自分が何をすると答えもせずリーはフェノーに問い掛ける。
「オレは…助けに行く」
そう言う顔はエルフの王子だと言うことを半ば信じられそうな表情だった。
「リー、どうしてココに」
何故か貼り付けになっているミディア。
あたしは空から呪文を使って彼女の側に向かう。
「助けに来たのよ、バカ」
「自分が狙われてるの忘れてない?それに今ココは」
「召喚魔法の実施中って奴?」
「分かってるならあなたも巻き込まれるわよ。ここは呪文を使えばいつココに充満している魔力が暴発するか分からないのよ?」
「あたし使ってるわよ?」
ミディアは分かってない。
あたしが呪文使ってここまでダイレクトにやってきてることを。
「ロンにバレたの。ココに来るって事、フェノーもすぐに来ると思うわ。ヴィルド残してるし、あの子はすぐに他の子達と合流する。この外周部にロン達もすぐに来れる」
遠くから爆発する音がする。
「な、何?」
「イフィーリの合図。ロンとフェノーが到着したって。すぐこっちに来るわ。ここは見晴らしが良いものね」
周囲には何も無い。
ただ貼り付けになってるミディアだけ。
それから少し遠く離れた場所に見物席。
あれだけ離れたって安全だと思ってるのかしら?
足下が揺れる。
地鳴りがする。
あわてふためく見物席。
あぁ、来たんだわ。
「来たわよ、ミディア。まずはこいつを押さえるわ」
その為に、小アルカナ何も入れないでおいたんだから。
「リー、影が集まってる」
「闇の門よ、そこから出てくるの」
そこら中から影が集まってくる。
膨大な影が盛り上がり闇が増えていく。
そしてミディアとあたしを見つける。
「リー、来るわよっ」
「今、展開させるわ」
持っていたカードを展開させる。
「宙の海よ、偉大なる星々の力を結べ、アレフ・ベートを解しセフィラに至れ!!」
影が展開されているカードの前で止まる。
「リー、どうなってるの?大体、そのカード」
「ミディア黙ってて死にたくないなら」
地鳴りが止んだ地面に落ち着いたのか見物席の面々が今起っている状況に沸き立っている。
そしてあたしに気付いたらしい。
気付かれたら困るし、捕まる前にあと一回。
「私は、汝等の力を解すもの。闇の海よ、脅威となる星の宮の力を結べ。シン・クブを解しクリファに至れ!そして、私は汝等の力を拘束し使役するもの。バチカル・エーイーリー・シェリダー・アディシュス・アクゼリス・カイツール・ツァーカブ・ケムダー・アィーアツブ・キムラヌート」
もがき始めた影が最期の言葉で円上に展開されているカードの中に吸い込まれていった。
「終了」
「リー、どういう事?」
「詳しくは後で、今は逃げるわよ」
なんか頑丈に縛られているミディアの手足のひもを切り落とす。
「そうはさせない」
あたし達の目の前に立ちふさがるフェルト。
「まさか、召喚魔法を吸収するとは思わなかった。帝国の威信丸つぶれってやつだ」
「あたしとやり合うの?」
「剣と呪文、どっちが早いかな?」
悔しいけど、こう近いと剣の方が早いかも。
カード展開させればで乗り切れるけど、少し落ち着かせたい。
「君には、死んでもらう」
そうフェルトが剣を振り上げたときだった。
剣を折る金属音。
「残念ながら殺させる訳にはいかないな。リー、ミディア。二人とも走れるか?」
声を上げるのはロン。
もちろんフェルトの剣を折ったのもロンの銃。
「大丈夫よ、いけるわよ」
ロンの言葉に頷いたあたしとミディアはロンの威嚇射撃の横を抜けて走り出す。
逃げ出した先にはフェノーが転移の呪文を展開させていてあたし達はそれを使ってアルガトム帝国から逃げてきた。
「リー、無茶しすぎだ」
「まあね。でもこれで小アルカナも活用できるわ〜」
「リー、タロットは占いに使ってよ。魔法に使用するなんて……」
固いこと言わないのっっ。
「あんたのせいでますます帝国から狙われる羽目になったんだからね」
「ご、ごめん」
「謝るんだったら帝国つぶす方法考えて」
「相変わらず無茶言うなぁ」
「遠回しに助けてくれっていったフェノーもよ」
「うわ、やぶ蛇って奴だ」
まったく。
「ホント全くだ」
ロンと二人で思わず頷き合ってしまった。
大アルカナの呪文は出来てるのに、小アルカナの呪文が出来てなかったので。
ちなみに本編主人公であるシェリーは両呪文は使えません。