さして防音の効かないこの部屋で、覚醒めはさほど早くない。
外から車のエンジン音とクラクションが鳴り響く。
彼女のいる場所とココは時差があって、彼女はおそらくまだ眠っているだろうと思いながら。
ココに来た理由は何だろうとすこしだけ、考えた。
世界が変わるのは、オレたちが原因だろうか。
そうあればいいと願いながら、オレは彼女が住む所から遠くにいる。
コロニーに逃げた(と言えば語弊がある)二人ともまた遠い場所。
ここは時間が止まらない。
オレたちの故郷も止まらない所だったけれども、ココはそこ以上な気がする。
回り続ける回転扉は、始終、人が出入りする理由。
新聞を売りに来た少年にダイムを渡して、目を通す。
相変わらず隊長の名前が載っている。
副長も隊長の側にいる。
控えているって言う言葉が相応しい。
あいつらの所はあまり変わりもないようだ。
あいつは彼女を救えたんだろうか。
とりとめもなく外を眺める。
開かずにおいてあるエアメール。
紙の手紙なんて今時珍しい。
そう配達局で言われた。
宛名は不器用そうな字。
お世辞にも綺麗と言えない字は彼女の特徴。
オレたちの根幹の故郷である場所にいる。
彼女の字を見ればあの、異常とも言える空間でさえ懐かしく思える。
つらくても、それでも楽しかったと言える日々。
一つの目標に向かってみんなで向かっていた日々。
「おはよう、ご飯食べたのかい?」
「いや、まだだ」
「だったら、一緒に食べよう。作りすぎたんだ」
「ありがとう。遠慮なく頂くよ」
会話する友人も出来た。
それほど人付き合いの上手でないオレに彼女は呆れるんだろう。
字を見ただけでも思い出せる彼女の様子に、そろそろあの場所に帰るのも悪くないと。
そうして、彼女にもう一度思いを打ち明けるのも悪くないと。
空の箱庭に住む彼らのように一緒に暮らせるのもそう遠くないだろうと。
部屋に戻って空を見上げれば、遠い青が見えた。
彼女が数時間前に見た青。
それを思って、部屋を出た。
名前なしの場合一人から〜3人までが限度ですよね。話の中に登場する人物数としては。
箱庭カップルとは違う主人公です。もちろん、同じ戦艦に乗ってた仲間ですよ。日本に彼女が居る模様。
ダイムっていうのはアメリカの10セントコインの事です。1ドルが百円だとしたら10円ぐらい。
調べたら新聞が25セントから75セントぐらいだから。ダイム数枚渡せば新聞は買えるみたいですね。