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新転位・21
上演リスト
14●アキバ飛べ
13●シャケと軍手
12向日葵
11僕と僕
10ホタルの栖
09嗤う女
08異族の歌
07黙る女
06砂の女
05齧る女
04エリアンの手記
03ジロさんの憂鬱
02パパは誘拐犯
01マーちゃんの神曲
00女殺し油地獄
上演リスト No.03 ジロさんの憂鬱
  
第3回公演
第21回紀伊國屋
演劇賞受賞作品
ジロさんの憂鬱 −練馬一家五人殺害事件−  作演出・山崎哲



  
  
  
  


ジロさんは歯が痛くて
ユーウツだった
水道の蛇口が壊れていて
ユーウツだった
なによりも、シライさんが
家を立ち退いてくれないので
ユーウツだった……
あの衝撃の舞台がいま蘇る!

03年11月11日〜18日

中野光座
開演
平日19:00
土曜14:00 /19:00
日曜14:00/18:00

料金
日時指定/全席自由
前売2800円
当日3000円


出演
村山好文 伊藤悦子
咲羽靖子 松永知秀
穂積美幸 小畑明
おかのみか 嘉手納康江
大畑早苗

 …
神戸誠治 渡邉紀栄
平山潤一郎 
原田習
溝口真貴 黒川達志
谷口瞳
 …
真田知幸
 集山大揮郎
淺川貴道

スタッフ
舞台美術・衣装 蟹江杏
光デザイン 海藤春樹
音楽 半田充
オペレーション 池田沙織
ポスター美術 蟹江杏
宣伝デザイン 松永知秀
菅由貴子
舞台監督 村山好文

制作 新転位・21

協力
唐組
新転位・21演劇学校
第2期生

早稲田大学
舞台美術研究会
ART CORE
斉藤臨 河村賢文
田山奈津子 佐藤浩子
石黒時彦 安藤青太





「マーちゃん」の絶望した美しさから
「ジロさん」の決意へ

野口靖夫氏劇評

(メールから)

昨晩、「ジロさんの憂鬱」の初日を面白く観させていただきました。
山崎さんの芝居を夢中になって観ていたのは
もう20年も昔のことになります。
それが2001年の夏に「女殺し油の地獄」で新転位21と再会した時には、
何ともいえない懐かしさがありました。
作品そのものの出来栄えは、
役者の幼さを印象付けるものでしかなかったかもしれませんが、
近松の作品を再出発の最初の作品に選んだところに
新転位21の決意を見たような気もしました。
どちらも社会的事件のなかに人間のドラマを見るという視点は同じです。
元禄から昭和、そして平成の今、多くの事件が毎日のように報道されています。
「なぜ?」「どうして?」という疑問が毎日のように
テレビや新聞紙上で議論されています。
大した理由もなく人を殺し、傷つける動機のなかに
「人間」のドラマを見ることは難しい時代になってきているのかもしれません。
しかし、それは社会のメカニズムが変化していく過程で
自分を表現する仕方も変化しているためであり、
底辺に流れる人間的な感情は普遍的なのだ、と思います。
恐らく、山崎さんが活動を再開したのも
現代のバーチャルで、等質的な社会から人間的な生き方、感じ方を
再び見出そうとする試みであろうと思います。
そこに、私は深く共感します。

昨年の「マーちゃんの神曲」には役者の幼さがありました。
全体的には山崎氏の作品を演ずるのに戸惑いと手探りの感じはあったが、
これは若い人は勿論、私のような40代の客である、観る側にも言えました。それは、まるで20年前に犯罪を犯した者が
長い年月の刑期を終えて娑婆に出てきて、
現代の人達に事件の物語をもう一度話すことによって、
社会に復帰しようとする試みのようにも取れるのです。
つまり、見る立場である我々も舞台の主人公の人間性を
今の時代に受け入れる戸惑いもあるのでしょう。
その意味で、舞台の「未熟さ」こそが
この「戸惑い」を共有するための手立てであったのかもしれません。
芝居というのは不思議なもので未完成なものが
完成されたものを意識させるというプロセスからしか
独特な時間感覚というものが生み出されないのかもしれません。
「マーちゃん」では特に咲羽靖子さんが印象的でした。
昔に観た木内みどりさんを彷彿とさせるものがあり、
感動して友人を誘って2回も観に行きました。
その時には次のような感想を持ったことを覚えています。

「自分にしか見えない、あるいは
自分にしか通用しない考えに集中している人間は
周りの人間から見ると異様なものだ。
しかし、とことんまで自分の
暗い内面の奥底まで手探りで入り込んで行って、
底にある何か確かな存在に触れることが出来れば
そこから普遍性のある真実が表現できる、とも言えるのではないか?
オイディプスが自分の犯した罪の恐ろしさに自らの目を潰し、
究極的な内面の苦しみの中を彷徨ったように。
愛や憎しみ、悲しみなどの究極には
生命の根源に共通した力があるのかもしれない。
孤立した人間同士が肩を寄せ合い、
お互いの愛の確認が広く人類の愛に繋がっているという
見事なまでの自己本位な思い込み。
世間からいじめられてきた人間は、
自分が誰よりも卓越した存在であると思い込み、
いじめをしている人間を許すことでいじめられている自分を肯定する。
実利的で騒々しい社会や世間から見れば、弱々しく、
はかない絆でしかない関係を軸にドラマは展開した。
自分と社会(世間)との間に存在する「断絶」。
無理解なのは自分の側か、あるいは社会の側か?
おそらく社会と個人の間の関係で
理解などと言うことはあり得ないのかもしれない。
どちらも一方的な要求を相手側に行い、その対応の不完全さに
不満を抱きながら出来る限りの利益を得ようとするのだろう。
その意味で、理想的な社会や純粋な自己を目指そうとすればするほど、
傷つき、絶望するのかもしれない。
そこにはかない美しさを見ることが出来る」というものでした。

そして、今回の「ジロさんの憂鬱」です。
家族の中に社会を騒がせた者がいると、
その家族は世間に対して肩身が狭くなり
家族同士で身を寄せ合うように生きていく。
そこでは通常の家族よりも愛憎の感情が強く出る。
閉塞的な家族のなかでは時には近親愛も芽生えるのかもしれない。
彼らの罪悪感は呵責となり自らを苛む。
それは誰かに苛められているという錯覚と、
誰かを苛めているという錯覚とが交錯する奇妙な自意識を生み出し、
その自意識を家族が共有化することで
家族という単位は閉塞した甘えの集合体となる。
こうした傾向は、現代でも三十代や四十代になっても
実家から独立できない子供たちを生み出し、
家庭の中に殺意をも生み出す一方で、
べったりとした親子愛を生み出す現象にも繋がっています。
このような家族関係は芝居がかっており、
外部からの視線がなければ
「幸せ」や「不幸」という認識すら持てない、ということになる。
白井さんの家庭だけではない、
ジロさんの弟のいやがらせによって家族の団結を強め、
ジロさんの犯行によって更に具体的な家族愛に目覚めた家族も同じである。
閉塞的な家族は息も詰まるような状況のなかで
「ユーモア」と称する遊びをしなければ、想像力の逃げ場はなくなる。
ジロさんはそのような逼塞した家庭をぶっ潰さなくてはならない。
そして、挨拶をして普通に世間と付き合える家族を再構築しなくてはならない。
個人個人が家庭人でありながら、
社会と繋がれる有機的な関係を目指さなくてはならない。



舞台は「マーちゃん」の絶望した美しさから、「ジロさん」の決意へと進化する。
どちらが悲劇的か?
おそらく、本当の悲劇はこれからだろう。
次に刑期を終えて、自らの過去の犯罪ドラマを語るのは誰か?
エイリアンとは本当は誰なのか?

世界では大国の大儀なき侵略に対して反抗集団による報復が続いています。
国内では自殺者の数が年々増え続け、
社会犯罪も若年化、特殊化してきています。
マクロにしろミクロにしろ、人間に対するシンパシーを失うところに
救いはないと思います。
そして現代ほど、想像力が正しく必要な時代はないかもしれません。
想像力の活かし方次第で我々は共に幸せに生きていけるし、
人の不幸にも同情し救済できるのでしょう。
山崎さんの芝居は、そうした想像力を強く刺激するパワフルなものです。
次回作も楽しみにしています。
劇団員の皆様もあまり声をからさずに
(特に伊藤さん、最後の「キャー」の声がかれて出なかったのが印象的でした)
頑張ってください。

掲載を許可していただいた杉並区の野口靖夫さんに感謝します

●●●
日本の演劇に多少期待してスペインから帰国したところもあったのですが、
つまらない芝居にがっかりさせられることが多い中、
山崎さんの芝居は素晴らしいですね。
骨太で思想を感じると共に、それを実際に若者達と実践していらっしゃる。
私は感激します。健康上の理由から、
すごく感受性が強くなっていまして、純粋なものに感動します。
美しいです、山崎さんの芝居は。あなたは日本の演劇の宝です。
(グラシアス小林)
         
 ● ● ●

新転位・21、やっと見に来れました。
山崎さんの芝居を見るのはこれでやっと通算3回目です。
今回見せて頂いて思ったのは、人は追いつめられないように一生懸命生きているはずなのに、いつの間か気づかずに、どうしてここまで追いつめられてしまったのだろうということだと思います。
いつも悪いのは自分のはずなのに、それを他人のせいにしてしまうのはどうしてなんだろう?
日常にそんなことはゴロゴロしているんだということを、意識させてくれてありがとうございます。(小平市 K.T)

初めて見ましたが、今まで観に来なくて残念でした。
もっと足を運ぼうと思います。
日本の家族の姿にメスを入れた素晴らしい作品を、
もっと多くの人に観てもらいたいと思います。
役者も力があって、スゴイですね。(町田市 M.S)

ものすごく怖いですね。今までこんな体験はしたことなかったです。
前半と後半のギャップがあまりにもありすぎて、ショックが大きかったです。
すばらしいと思いました。見に来てよかったです。(昭島市 Y.O)

初めて新転位・21さんの舞台を見ました。
すごく独特な雰囲気が出ていて引きこまれました。
人間の心の奥を見た気がします。
背景のトビラがドラエもんぽくて良かったと思いました。
チェーンソーの場面はマジでビビリました。とても面白かったです。(無記名)

山崎哲氏は天才だとあらためて思った。
今後も新転位・21は見続けて行こうと思う。
シライサチコは美人で演技力もあり、いい役者です。
頑張ってください。(武蔵野市 Y.F)

新転位・21の芝居は3回目ですが、
山崎哲氏の犯罪シリーズは今でも色あせてません。
今度の「エリアンの手記」は初演も観たと思いますが、また観たいと思います。(昭島市 M.O)

一場面一場面が思い出に残るお芝居でした。
観に来て良かった。(豊島区 H.S)

おもしろかった! 衝撃でした!
セリフが胸につきささって何度も涙がこぼれそうになりました。しばらく残像が残りそうです!!
カズエさん役(注・伊藤悦子)の女優さんがよかった!!(中野区 A.S)

悲しいです。すごく悲しいです。
家族を守るために家族を殺さなければなにない。
2回目ですが、とても面白かったです。
音響、照明も素晴らしいです。(日野市 R.Y)

15年位前、この本を上演させて頂きました。
サチコをやりました。いい本なんですね……。
3回観に来ました。いい役者さんが入られて……、
今まで以上に面白かったです。(K.N)

今まで観たことのない、感じたことのない衝撃を受けた芝居でした。すごい勢いでした!! 声をお大事に……。
また見せていただきたいと思います。お疲れ様でした。(N.A)

転位が復活(?)したことを知って、十数年ぶりに来ました。
久々に山崎ワールドに触れられて、
妙に懐かしく、感激しました。昔、学生劇団で
「うお伝説」「質屋」を上演させていただいたこともあり、
特別な感情で見てしまいました。
脚本の素晴らしさ、これに尽きます。
次回以降も来ますので、がんばってください!!
最後に、カズエさん、good! でした。(千葉市 T.K)