ガウスの超幾何関数値を係数にもつζ(s)類似の値を求める。
フーリエシステムを用いて、ここではガウスの超幾何関数値を分子にもつζ(s)類似値を求めよう。
すなわち次の二つの積分表示を求める。
(1/2^1)F(1,2,2; 1/4)/1^4 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)/2^4 + (1/2^3)F(1,4,4; 1/4)/3^4 + ・・・ ----@
(2/2^1)F(2,3,2; 1/4)/1^4 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)/2^4 + (4/2^3)F(2,5,4; 1/4)/3^4 + ・・・ ----A
狽ナ書くと
(n=1〜∞) (1/2^n)F(1,n+1,n+1; 1/4)/n^4 ----@
(n=1〜∞) ((n+1)/2^n)F(2,n+2,n+1; 1/4)/n^4 ----A
青字からζ(s)類似と書いた意味がわかるであろう。上はζ(4)類似である。
上でF(a,b,c; x)はガウスの超幾何関数であり、次式で定義されている。
F(a,b,c; x)=(n=0〜∞){Γ(a+n)・Γ(b+n)・Γ(c)}/{Γ(a)・Γ(b)・Γ(c+n)}(x^n/n!)
ここでΓ(x)はガンマ関数であり、Γ(x)=∫(0〜∞) e^(-t)・t^(x-1) dt (x>0)
またn>=0の整数とすると、Γ(n+1)=n!である。
ガウスの超幾何関数を含めた超幾何級数については、以前より興味があったが、詳しく把握しているわけではない。
これらについては次の佐藤郁郎氏のサイトを参照されたい。読むと、超幾何級数はたいへんな深みをもつ重要な関数で
あるとわかる。超幾何関数とフックスの問題 http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/tyoukika.htm
さて、ここで活躍する中心的なフーリエ級数の公式は、
1/(1-2a・cosx+a^2)^α=F(α,α,1; a^2) + 2(n=1〜∞) (a^n・Γ(n+α)/(n!Γ(α)))F(α,n+α,n+1; a^2)cos(nx)
(-π<= x <=π,α>0,|a|<1)
である。@を求めるにはこの式でのa=1/2,α=1の場合、すなわち、
1/(5/4-cosx)=F(1,1,1; 1/4) + 2(n=1〜∞) ((1/2^n)Γ(n+1)/(n!Γ(1)))F(1,n+1,n+1; 1/4)cos(nx)
(-π<= x <=π)
を用いる。
またAを求めるにはa=1/2,α=2の場合、すなわち、
1/(5/4-cosx)^2=F(2,2,1; 1/4) + 2(n=1〜∞) ((1/2^n)Γ(n+2)/(n!Γ(2)))F(2,n+2,n+1; 1/4)cos(nx)
(-π<= x <=π)
を用いる。(上の公式は、例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)p.251を参照)
また同時に公式
cosx/1^4 + cos2x/2^4 + cos3x/3^4 + ・・=(1/48){2π^2(x-π)^2-(x-π)^4-7π^4/15} (0<=x<=2π)
も使う。これらは同書p.74にある。
では@から求めていく。
(1/2^1)F(1,2,2; 1/4)/1^4 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)/2^4 + (1/2^3)F(1,4,4; 1/4)/3^4 + ・・・ ----@
すなわち、
(n=1〜∞) (1/2^n)F(1,n+1,n+1; 1/4)/n^4 ----@-2
の積分表示を求める。
[(n=1〜∞) (1/2^n)F(1,n+1,n+1; 1/4)/n^4 導出]
@の形から、次のcos級数
f(x)=(1/2^1)F(1,2,2; 1/4)cosx/1^4 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)cosx/2^4 + (1/2^3)F(1,4,4; 1/4)cos3x/3^4 + ・・・ ---A
を考える。周期は2π。
この級数の直交性を用いて、
(1/2^1)F(1,2,2; 1/4)/1^4=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
(1/2^2)F(1,3,3; 1/4)/2^4=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
(1/2^3)F(1,4,4; 1/4)/3^4=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
(1/2^1)F(1,2,2; 1/4)/1^4
=(2/π)∫(0〜π) ((1/2^1)F(1,2,2; 1/4)sinx/1^3 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)sin2x/2^3 + ・・)(sinx/1) dx
(1/2^2)F(1,3,3; 1/4)/2^4
=(2/π)∫(0〜π) ((1/2^1)F(1,2,2; 1/4)sinx/1^3 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)sin2x/2^3 + ・・)(sin2x/2) dx
(1/2^3)F(1,4,4; 1/4)/3^4
=(2/π)∫(0〜π) ((1/2^1)F(1,2,2; 1/4)sinx/1^3 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)sin2x/2^3 + ・・)(sin3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて
(1/2^1)F(1,2,2; 1/4)/1^4 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)/2^4 + (1/2^3)F(1,4,4; 1/4)/3^4 + ・・・
=(2/π)∫(0〜π) ((1/2^1)F(1,2,2; 1/4)sinx/1^3 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)sin2x/2^3 + ・・)(sinx/1+sin2x/2+・・) dx
左辺を@-2の形で書くと、
(n=1〜∞) (1/2^n)F(1,n+1,n+1; 1/4)/n^4
=(2/π)∫(0〜π) ((1/2^1)F(1,2,2; 1/4)sinx/1^3 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)sin2x/2^3 + ・・)(sinx/1+sin2x/2+・・) dx
ここで、右辺にSin-Cos移動の法則(部分積分)を適用すると、次のように機械的に変形できる。
(n=1〜∞) (1/2^n)F(1,n+1,n+1; 1/4)/n^4
=(2/π)∫(0〜π) ((1/2^1)F(1,2,2; 1/4)cosx/1^2 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)cos2x/2^2 + ・・)(cosx/1^2+cos2x/2^2+・・) dx
(n=1〜∞) (1/2^n)F(1,n+1,n+1; 1/4)/n^4
=(2/π)∫(0〜π) ((1/2^1)F(1,2,2; 1/4)sinx/1 + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)sin2x/2 + ・・)(sinx/1^3+sin2x/2^3+ ・・) dx
(n=1〜∞) (1/2^n)F(1,n+1,n+1; 1/4)/n^4
=(2/π)∫(0〜π) ((1/2^1)F(1,2,2; 1/4)cosx + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)cos2x + ・・)(cosx/1^4+cos2x/2^4+・・) dx ---B
ここで冒頭で見たフーリエ級数の公式
1/(5/4-cosx)=F(1,1,1; 1/4) + 2(n=1〜∞) ((1/2^n)・Γ(n+1)/(n!Γ(1)))F(1,n+1,n+1; 1/4)cos(nx) ----C
(-π<= x <=π)
に着目しよう。冒頭の定義より、F(1,1,1; 1/4)はF(1,1,1; 1/4)=4/3となるから、Cより次を得る。
(1/2^1)F(1,2,2; 1/4)cosx + (1/2^2)F(1,3,3; 1/4)cosx + ・・ = 1/(5/2-2cosx) - 2/3 ----D
このDと、別のフーリエ級数の公式
cosx/1^4 + cos2x/2^4 + cos3x/3^4 + ・・=(1/48){2π^2(x-π)^2-(x-π)^4-7π^4/15} (0<=x<=2π)
をB右辺に代入して、整理すると、
(n=1〜∞) (1/2^n)F(1,n+1,n+1; 1/4)/n^4
=(1/(12π))∫(0〜π) {1/(5-4cosx) - 1/3}{2π^2(x-π)^2-(x-π)^4-7π^4/15} dx ----E
となり、目的の積分表示が得られた。
じつは、F(1,2,2; 1/4)=F(1,3,3; 1/4)=F(1,4,4; 1/4)=・・=1+(1/4)^1+(1/4)^2+・・・=4/3
が言える。
よって、E左辺は簡単になって次を得る。
(4/3){(1/2^1)/1^4 + (1/2^2)/2^4 + (1/2^3)/3^4 + ・・・}
=(1/(12π))∫(0〜π) {1/(5-4cosx) - 1/3}{2π^2(x-π)^2-(x-π)^4-7π^4/15} dx
萩L号で書くと、
(4/3)(n=1〜∞) (1/2^n)(1/n^4)
=(1/(12π))∫(0〜π) {1/(5-4cosx) - 1/3}{2π^2(x-π)^2-(x-π)^4-7π^4/15} dx
[終わり]
数値計算を行いEの左辺と右辺が一致することを確認した。左辺はExcelを利用した。右辺の計算は、定積分の値が
計算できるフリーの計算ソフトBearGraphを用いた。E左辺の収束は速い。
ζ(4)類似の場合を求めたのは、収束が速くなって検証が容易に行えるというそれだけの理由からである。ζ(2)類似など
も同様に求められることはいうまでもない。
今回の場合(冒頭@)は左辺が簡単化されてしまったが、冒頭のAではそんなに簡単にはならない。
次にそれを求めることにする。
では次に
(2/2^1)F(2,3,2; 1/4)/1^4 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)/2^4 + (4/2^3)F(2,5,4; 1/4)/3^4 + ・・・ ----@
すなわち、
(n=1〜∞) ((n+1)/2^n)F(2,n+2,n+1; 1/4)/n^4 ----@-2
を求める。
[ (n=1〜∞) ((n+1)/2^n)F(2,n+2,n+1; 1/4)/n^4導出]
@の形から、次のcos級数
f(x)=(2/2^1)F(2,3,2; 1/4)cosx/1^4 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)cos2x/2^4 + (4/2^3)F(2,5,4; 1/4)cos3x/3^4+ ・・ ---A
を考える。周期は2π。
この級数の直交性を用いて、
(2/2^1)F(2,3,2; 1/4)/1^4=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
(3/2^2)F(2,4,3; 1/4)/2^4=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
(4/2^3)F(2,5,4; 1/4)/3^4=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
(2/2^1)F(2,3,2; 1/4)/1^4
=(2/π)∫(0〜π) ((2/2^1)F(2,3,2; 1/4)sinx/1^3 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)sin2x/2^3 + ・・)(sinx/1) dx
(3/2^2)F(2,4,3; 1/4)/2^4
=(2/π)∫(0〜π) ((2/2^1)F(2,3,2; 1/4)sinx/1^3 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)sin2x/2^3 + ・・)(sin2x/2) dx
(4/2^3)F(2,5,4; 1/4)/3^4
=(2/π)∫(0〜π) ((2/2^1)F(2,3,2; 1/4)sinx/1^3 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)sin2x/2^3 + ・・)(sin3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて
(2/2^1)F(2,3,2; 1/4)/1^4 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)/2^4 + (4/2^3)F(2,5,4; 1/4)/3^4 + ・・・
=(2/π)∫(0〜π) ((2/2^1)F(2,3,2; 1/4)sinx/1^3 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)sin2x/2^3 + ・・)(sinx/1+sin2x/2+・・) dx
左辺を@-2の形で書くと
(n=1〜∞) ((n+1)/2^n)F(2,n+2,n+1; 1/4)/n^4
=(2/π)∫(0〜π) ((2/2^1)F(2,3,2; 1/4)sinx/1^3 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)sin2x/2^3 + ・・)(sinx/1+sin2x/2+・・) dx
ここで右辺にSin-Cos移動の法則(部分積分)を適用すると、次のように次々に機械的に変形できる。
(n=1〜∞) ((n+1)/2^n)F(2,n+2,n+1; 1/4)/n^4
=(2/π)∫(0〜π) ((2/2^1)F(2,3,2; 1/4)cosx/1^2 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)cos2x/2^2 + ・・)(cosx/1^2+cos2x/2^2+・・) dx
(n=1〜∞) ((n+1)/2^n)F(2,n+2,n+1; 1/4)/n^4
=(2/π)∫(0〜π) ((2/2^1)F(2,3,2; 1/4)sinx/1 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)sin2x/2 + ・・)(sinx/1^3+sin2x/2^3+ ・・) dx
(n=1〜∞) ((n+1)/2^n)F(2,n+2,n+1; 1/4)/n^4
=(2/π)∫(0〜π) ((2/2^1)F(2,3,2; 1/4)cosx + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)cos2x + ・・)(cosx/1^4+cos2x/2^4+・・) dx ---B
さて、ここで冒頭で見たフーリエ級数の公式
1/(5/4-cosx)^2=F(2,2,1; 1/4) + 2(n=1〜∞) ((1/2^n)・Γ(n+2)/(n!Γ(2)))F(2,n+2,n+1; 1/4)cos(nx) ----C
(-π<= x <=π)
に着目する。Cより次を得る。
(2/2^1)F(2,3,2; 1/4)cosx + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)cos2x + ・・
=1/{2(5/4-2cosx)^2} - (1/2)F(2,2,1; 1/4) ----D
このDと、別のフーリエ級数の公式
cosx/1^4 + cos2x/2^4 + cos3x/3^4 + ・・=(1/48){2π^2(x-π)^2-(x-π)^4-7π^4/15} (0<=x<=2π)
をB右辺に代入して、整理すると、次を得る。
(n=1〜∞) ((n+1)/2^n)F(2,n+2,n+1; 1/4)/n^4
=(1/(48π))∫(0〜π) {1/(5/4-cosx)^2 -F(2,2,1; 1/4)}{2π^2(x-π)^2-(x-π)^4-7π^4/15} dx ----E
目的の左辺の積分表示が得られた。左辺のいかつい形とは裏腹に、右辺は意外にシンプルである。
∫内のF(2,2,1; 1/4)だが、冒頭の定義より、F(2,2,1; 1/4)=(n=0〜∞) (n+1)^2・(1/4)^n=2.96296296・・ となる。
[終わり]
数値計算を行いEの左辺と右辺が一致することを確認した。左辺はExcelを利用した。右辺の計算は、定積分の値が
計算できるフリーの計算ソフトBearGraphを用いた。E左辺の収束は速く、はじめから6項分を確認しただけだが十分である。
まとめておく。
Eを再掲する。
(2/2^1)F(2,3,2; 1/4)/1^4 + (3/2^2)F(2,4,3; 1/4)/2^4 + (4/2^3)F(2,5,4; 1/4)/3^4 + ・・・
=(1/(48π))∫(0〜π) {1/(5/4-cosx)^2 - F(2,2,1; 1/4)}{2π^2(x-π)^2-(x-π)^4-7π^4/15} dx ----E
この左辺は、一つ上で得た結果と違って、ガウスの超幾何関数F()の形のままおいておくしかないものである。
ちなみにF(2,3,2; 1/4)、F(2,4,3; 1/4)、F(2,5,4; 1/4)、・・を定義に従って記すと、次のようになる。数値計算結果と共に示す。
F(2,3,2; 1/4)=(n=0〜∞) {(n+2)(n+1)/2}(1/4^n)=2.37037037・・
F(2,4,3; 1/4)=(n=0〜∞) {(n+3)(n+1)/3}(1/4^n)=2.17283950・・
F(2,5,4; 1/4)=(n=0〜∞) {(n+4)(n+1)/4}(1/4^n)=2.07407474・・
・
・
この頁で求めた分をまとめておく。
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