ブログ記事 エスペラント

 
エスペラントと反戦平和主義  (2005/07/04)
エスペランティストは左翼だといわれることがある。

エスペラント自体には左翼的な思想はない。
ただ、ザメンホフがエスペラントを作った目的が、
言語の違いによる争いごとを無くすことだったので、
エスペランティストには反戦平和主義者が多い。
その側面だけを見て左翼だという人がいるのだろう。

左翼(共産主義者)=反戦平和主義者ではない。
旧ソ連、北朝鮮、中国を見てわかるとおりである。

エスペラントとデジタル・ディバイド  (2005/11/21)
もう5年も昔の話を出してしまう。

2000年7月21日~23日に開催された沖縄サミットでは、
「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」(沖縄IT憲章)が
採択された。

この中で、情報格差(デジタル・ディバイド)の解消がうたわれているが、
当時、私はなぜかこの宣言が納得がいかなかったが、理由がわからなかった。
しかし、最近その理由がわかり始めてきた。

この憲章の中で、情報格差(デジタル・ディバイド)の解消について次のよう
に、書かれている。

  国内及び国家間の情報格差の解消は、我々それぞれの国民的課題の中で
  決定的に重要性を帯びるに至っている。誰もが情報通信ネットワークへの
  アクセスを享受しうるべきである。

  社会的に恵まれない人々、障害者及び高齢者のニーズ及び制約に特に
  注意を払い、これらの人々のアクセス及び利用を促進するための措置を
  積極的に追求すること。

つまり、だれもが公平に情報を得られるようにしましょう。地方、貧困、身体
障害などによって情報を得ることが制限されないようにしようでないかという
ことなのである。

最近わかったのは、情報格差(デジタル・ディバイド)が発生する要素として、
上記の沖縄IT憲章には、あるものが抜けているということである。それは、
習得している言語によって、得られる情報の量が、制限されるということであ
る。私はネット上で情報を得るとき、特に専門的な情報ほど、英語でないと提
供されていなものが多いと痛感する。日本人の私にとって、英語はとても難し
いものなので、苦労するのである。いわゆる自分は情報弱者ではないかと思う。

このような情報格差(デジタル・ディバイド)を是正するためにも、エスペラ
ントは今後必要とされていくであろう。

2006-1-21追記
沖縄IT憲章に納得いかなかったもう一つの理由は、
これがアメリカの国益のために作られたのではないかということである。
つまり、アメリカ産のOSとCPUの入ったパソコンをもっと売りたいということである。
インターネットの接続環境(回線などのインフラ)作りを各国の政府の資金で
行わせ、パソコンの市場を広げることが本当の目的なのだろう。
だから、情報格差をなくすため、パソコンを導入する環境を整備しましょうとなる。
決して英語の代わりにエスペラントを使いましょうという発想は生まれてこない。

エスペラントの思い出  (2005/11/22)
私がエスペラントに初めて出会ったのは、私が高校生の頃、
今から25年前のことである。

枚方市の市民会館の隣に、市立図書館があり、私はよくそこに通っていた。
図書館のある建物は、図書館の他に、会議室などの市民施設があり、
そこでエスペラントの講習会が行なわれていたらしい。
その建物の掲示版にはエスペラント講習会のチラシが掲示されていた。
そのチラシには漫画の「じゃりんこチエ」が描かれていて、
チエがエスペラントの簡単な紹介をしているものだった。
(じゃりんこチエの作者はエスペランティストか?)
私はそれを見てエスペラントに興味を持った。
講習会には参加しなかったが、図書館でエスペラントの本を借りて
勉強した。(確か「エスペラント四週間」という本だった。)

エスペラントを勉強して、エスペラントがいかに良くできた言語か分かった。
そして、逆に英語には以下のような欠点があることを痛感した。

  ・発音の区別の難しい音が多くある。
   (母音の数が多いとかTHの音とか)
  ・つづりと発音の関係が非常に不規則である。
  ・単語の語形変化が不規則なものが多い。
  ・文の中で各単語の品詞性(名詞なのか動詞なのか等)が
   分かりにくいので、文の構造がつかみにくい。
  ・同音異議語、多義語が多いので、文の意味がつかみにくい。
  ・比喩表現、慣用句が多いので、文中の単語をすべて知っていても、
   文の意味がわからないことが多い。

エスペラントにはこのような欠点はすべて取り除いてある。
英語の学習に要している時間の多くが、このような不規則や不合理さの
ために費やされていることがわかった。
エスペラントは英語の約10分の1の時間で習得できるのである。

もし、標準的な国際共通語が英語ではなく、エスペラントだったなら、
こんなに苦労しなくてもよいのにと思った。

* 「エスペラントの学習容易性と論理性」

エスペラントと実践  (2005/11/23)
エスペラントの創案者ザメンホフはエスペラントの実践に多くの時間をかけた。

エスペラントは考案から発表までに9年の歳月をかけている。
その間、ザメンホフは多くの作品を翻訳したり、創作したりした。
長い時間をかけてエスペラントに磨きをかけたのである。

ザメンホフの翻訳した作品には次ものがある。

  ・シェークスピア「ハムレット」
  ・ゴーゴリ「監察官」
  ・モリエール「ジュオルジュ・ダンダン」
  ・ゲーテ「タウリスのイフィゲニ」
  ・シラー「群盗」
  ・ハイネ「バハラハのラビ」
  ・アレイヘム「ギムナジウム」
  ・オルジェシュコ「マルタ」
  ・ディケンズ「クリスマス・ブックス」
  ・アンデルセンの童話全訳
  ・「旧約聖書」全訳
  ・ザメンホフ父「ことわざ集」

  そのほかにも多くの創作作品もある。

エスペラント以外にも、国際共通語は多く考案されてきたが、
趣味的に作られたものが多かった。
今でも、国際共通語は考案されているが、そのほとんどが、
文法と単語集を作っただけで発表されている。
エスペラントのように何千ページもの翻訳や創作をこなしてから、
発表されたものは、おそらくエスペラントのほかにはないだろう。

他の国際共通語案が廃れ、エスペラントだけが残ったのは、
エスペラントがこのように時間をかけることによって、
実践に耐え得るものとなったからである。

ザメンホフはエスペラントに全生涯を費やした。
ザメンホフが国際共通語の作成を始めたのは、
15歳ごろだと言われる。
そのために古典学校に入学し、ギリシャ語とラテン語を学んだ。
その他にもザメンホフが習得した言語には、
ポーランド語、ドイツ語、ロシア語、ユダヤ語(イディッシュ)
英語、フランス語、ヘブライ語がある。

「眼科医のザメンホフはエスペラントを考案した」と
いう表現がよくされる。
この表現では、ザメンホフは片手間に
エスペラントを作ったようなイメージがある。
しかし、ザメンホフにとって、本職はエスペラントであり、
生活のために医者をしていたのである。
エスペラントのために時間を多く割けるように、
急患のあまりない眼科医を選んだらしい。

エスペラントと識字率  (2005/12/13)
以前の記事でエスペラントとデジタル・ディバイドについて書いた。IT憲章
では、貧富や身体の障害に関係なく、だれでも情報を手に入れられる環境を整
えることをうたっている。しかし、そこには、肝心なものが不足していること
を私は指摘した。多くの情報が英語で提供されていて、その情報を手にいれる
のに、学習に多くの時間を要する英語を勉強しなければならないことこそ、デ
ィバイド(情報格差)を生んでいると私は主張した。

今回はそのことに関連して、識字率について述べよう。低所得者層ほど識字率
は低い。貧しい家庭では、子供も労働をせざるを得なくて、教育を受ける機会
が無いからである。情報格差をなくすためには、コンピュータの普及よりも、
まず、だれでも字が読めるようになることの方が大切だ。

欧米はローマ字を使っていて、覚える字も少ないので、読み書きできない人は
いないはずと思われがちだ。しかし、読み書き出来ない人が多い。文字がわか
らないのではなく、つづりと発音が一致しないため、読み書きできないのであ
る。

欧米のエスペランティストの中には、母国語の読み書きが出来ない人がいると
聞いたことがある。しかし、その人はエスペラントの読み書きはできるのだという。
それは、エスペラントでは、つづりと発音が一致しているからである。私はこ
れを聞いてかなり驚いた。エスペラントは教育を受ける機会が無かった人にも
充分習得可能な言語なのだ。

英語がエリートの国際語ならば、エスペラントは凡人の国際語と言える。現在
は情報化社会と言われる。今後、情報を得られる人とそうでない人とでは、社
会の中で、大きな格差を生じてしまうだろう。

エスペラントこそが情報格差をなくす最も有効な手段だと私は考えている。

エスペラントの改造案  (2005/12/14)
エスペラントが発表されてから、しばらく経ったとき、何人かのエスペランテ
ィストの間からエスペラントの改良案が持ちあがった。改良案のほとんどはエ
スペラントの学習容易性や論理性を破壊するものだった。エスペラントの改良
案を提議した者は、いわゆるエリートと呼ばれる人たちだった。エスペラント
があまりにもシンプルなため物足りなく、もっと高級感のあるものにしたかっ
たのだろう。しかし、そのために学習の容易さが犠牲になった。改良案はエス
ペランティストの前で採決されたが、一般大衆のエスペランティストに受け入
れられず否決された。この結果に不満をもった者たちはエスペラントから離れ
た。エリートたちの離脱はエスペラントの普及に大きな打撃をもたらすと思わ
れたが、一般大衆はエスペラントに残った。改良案は廃れていったが、エスペ
ラントは現在まで生き続けている。

前回の記事にも書いたが、エスペラントは教育を受ける機会が無かった人にも
習得可能な言語だ。そのような一般の人たちにとっては、改良案は受け入れ難
いものであった。ザメンホフがエスペラントを作っていたとき、このような人
にも習得できるようにということが常に念頭にあったに違いない。学者などの
エリートに賞賛されることは全く考えていなかっただろう。

まさにここがエスペラントの価値であると考える。英語があるからエスペラン
トはいらないとは高慢な考えである。英語には成し得ない可能性をエスペラン
トは持っているのである。

エスペラントの展望  (2005/12/15)
掲示板の方に、エスペラントの展望について質問があったので、私の思うとこ
ろを答えた。ここにもその内容を転記しておく。

エスペラントが国際共通語として今後どうなって行くかは、私も興味あるとこ
ろです。

今標準的な国際共通語となっている英語は学習人口が10億人と言われていま
すが、エスペラントは100万人と言われています。1000倍の差がありま
す。これを見ただけでは勝負にはならないようです。

インターネットが普及してからは、エスペラントを使用する範囲が広がりまし
た。それまでは国際文通か世界大会ぐらいしか、エスペラントの使用する機会
がありませんでした。

インターネットの検索サイトのグーグルでも使用言語の選択にエスペラントが
ありますし、インターネットの電子辞書サイトWIKIPEDIAにもエスペラントは
あります。エスペラントはインターネットの世界で結構普及した言語となって
います。

以前、あるサイトでインターネット上の国際的なやり取りでは、どの言語を使
いたいかアンケートが実施されたことがありました。そこで、エスペラントは
英語についで2位になったことがありました。

またEU(ヨーロッパ連合)では、エスペラントをEU機関での公式な作業言
語の1つに使用しようという討議がされていると聞きます。古いですが、98
年10月31日の朝日新聞朝刊の記事によれば、EU議員626人中120人
がこのことに賛成しているとか。今現在はもっと増えているかも知れません。

エスペラントは今後、少しずつですが広まって行くと思われます。もし、EU
の公用語になれば、もっと爆発的に広まるとは思いますが、これはどうなるか
わかりません。

エスペラント:未来の国際共通語  (2005/12/30)
これは私の作ったサイトのタイトルである。

エスペラントは今から約120年前に発表されたものなので、古いが、
「未来の」とつけたのは、「今はまだ標準的な国際共通語ではないが、
今後、国際共通語としての役割が大きくなっていく」と感じるからだ。

楽農倶楽部(別館)というブログサイトで、
> 地域通貨の情報を調べていたときに、エスペラントの情報も載っていまして、
> グローバルな言語を目指すエスペラントと、ローカルな地域の通貨を同列に
> 扱っていることに興味を持ちまして、今日調べてみた次第です。
という記述を発見した。

たぶんこれは私のサイト、「希望ある未来のために」を見られたのではと思う。

この中の「でんし共産制社会」は、未来の社会システムについての私の予測を
述べている。今後は地域通貨などの自由貨幣制度(政府などにコントロール
されない貨幣の制度)が増えていかなければならないと書いた。
地域通貨はボランティア活動などのNPOを主体として広まっているが、
このような中で、エスペラントは大きな役割を果たすだろうと私は予測している。

前のブログ記事でも書いたが、エスペラントは情報弱者に優しい言語だ。
今まで教育を受ける機会の無かった人にも習得できる簡単な言語である。
NPOが中心となる今後の社会とエスペラントとはとても相性が良いと思う。

実際に、沼津エスペラント会のサイトでは、
地域通貨「ワット」すぐに使える入門セットのエスペラント版が紹介されている。

自由貨幣制度を推し進める「ゲゼル研究会」のメーリングリストでも、
このエスペラント版ワット入門セットが紹介されていた。

エスペラント界では今から約10年ほど前までは、
かなりの沈滞ムードが漂っていた。
そのころの論説を見ていると、エスペランティストの高齢化が問題になっている。
しかし、エスペラントが再び脚光を浴び始めたのは、1997年ころからだ。
インターネットの普及。EU(ヨーロッパ連合)の言語問題。国際的なNPOの活動。
この3つが、エスペラントの活躍の場を広げているのである。

私が本格的にエスペラントに取り組み始めたのは、
ネットがきっかけだった。
ニフティーのエスペラント・フォーラムに1997年ころから、参加した。
一緒に学ぶ仲間がいると張り合いがある。

今後も若い人たちが、ネットがきっかけとなり、
エスペラントに触れる機会が多くなることだろう。

エスペラントは少しずつであるが、広まっていくだろう。

エスペラントの不定詞  (2006/01/12)
前回書いた記事「ハートで感じる英文法 会話編 第1回」で学んだことで、
エスペラントの不定詞について、長年持っていた疑問が解決した。

エスペラントの不定詞には次のような使い方がある。

  Mi iris ac^eti  私は買い物に行った。
  Li estas kapabla danci  彼は踊る能力がある。

「まるごとエスペラント文法」などの文法書を見ても、
エスペラントの不定詞には名詞用法(~すること)しかない。
副詞的(~するために)に使うには por などの前置詞が必要である。

しかし、上の例の文では、ac^eti は iris の目的語でもないし、
副詞でもない。kapabla に対する danci も同様である。
私はこれはエスペラントの文法の例外事項だと思っていた。
例外の少ないエスペラントにも例外があるのだなと。

しかし、「不定詞には足りない情報を補足する機能がある」という
新たな文法概念を導入することによって、これは解決する。

Mi iris だけでは、何しに行ったのかと言う情報が不足しているので、
それを ac^eti が補足しているのである。
また、Li estas kapabla だけでは、どんな能力があるのかと言う情報が
不足しているので、danci が補足しているのである。

伝統的な文法概念(名詞用法、副詞用法)に当てはめてみて、
当てはまらないからということで、例外扱いしていただけだった。
ザメンホフは不定詞について、このような用法があると説明しなかった。
こっちが勝手に学校英文法を無理やり当てはめていただけである。

ちなみに ke 節にも不定詞と同様に足りない情報を補足する機能がある。
  Mi estas g^oja, ke ...  ...ことをうれしく思う

エスペラントの不定詞(続き)  (2006/01/14)
不定詞を含んだ文のことで、昔、ニフティーでやり取りされた内容を思いだした。
それを引用する。

引用開始 01982/02623 MGG02127 KENMOTU "c^esi"の疑問 (15) 96/09/11 09:39 コメント数:1 ごぶさたしています。文法のことで教えてください。 "c^esi" は「自動詞」として辞書に載っており、"c^esi  -i" で「~するのを やめる」となります。"fini" は「他動詞」として載っており、"fini  -i" で 「~し終える」となります。類似で"komenci" は「他動詞」として載ってお り、"komenci  -i" で「~し始める」となります。 "fini" や "komenci" が他動詞というのは理解できますが、"c^esi" が 「自動詞」というのが分かりません。英語では、"stop" を他動詞として 使い、"stop  -ing" で "c^esi  -i" と同じ意味になります。 自動詞としての "c^esi"をどのように理解したらいいのか、 また類似の自動詞がありましたらご教示ください。 01989/02623 NCC01734 柴山純一 RE:"c^esi"の疑問 (15) 96/09/14 14:37 01982へのコメント コメント数:1 「知っておきたいエスペラント動詞100」のコラム 「似たもの動詞 c^esi/fini/halti」 には、Li c^esis labori = Li c^esigis sian laboron. Li finis labori = Li finis sian laboron. という例が載っています。 私の考えでは、「述語動詞a+動詞不定形b」(例:devas labori)では、 確かにaはbを支配する、といえるでしょう。しかし、動詞自身の自/他は、 名詞に対するはたらきかけが重要視されます。  Laboro c^esas. ゆえに自動詞となる、と。 似た動詞にdau^ri があります。 Laboro dau^ras.
c^esi の基本の意味は「やむ」という自動詞。   Pluvo c^esas.  雨がやむ。 しかし、後ろに不定詞が付くと、他動詞のように「やめる」という意味になる。   Li c^esis labori.  彼は仕事をやめる。 これも長年の疑問であったが、今までエスペラントの例外として片付けていた。 でも、これも今回のことで解決した。 Li c^esis  彼は止まった。(彼が自分の動きを止めた。) これが、この文の基本の意味である。 つまり、彼が他者の動きを止めたのでなく、 自分自身が止まったから、自動詞なのである。 これだけでは、何に関して「自分の動きを止めた」のかという情報が 不足しているので、それを labori が補足している。 これゆえ、「彼は仕事をやめる」という意味になる。 dau^ri - c^esi komenci - fini という対応関係があるようだ。 Li c^esis labori. は、仕事がまだ残っているのにやめたという感じがする。 Li finis labori. は、やるべき仕事を全てやり終えたという感じがする。 これはあくまで、わたしの感覚なので、正しいかどうかわからない。 そういう感覚があるのは、c^esi が自動詞で、fini が他動詞だからではないか。 fini は labori に対して積極的に働きかける感覚がある。 一方、c^esi は、そのような感覚が無く、ただ labori に関して、 彼の動作が止まっただけの感覚がある。
アイアイサーってエスペラント?  (2006/01/15)
西岸良平さんの漫画「三丁目の夕日」の中で、
「アイアイサー」はエスペラントだと書かれていた。

ネットとで調べるとこのサイトが見つかった。
http://mltr.e-city.tv/faq12b.html#01374(リンク切れ)

【質問】 最近、西岸良平の「夕焼けの詩」を読んで知ったのですが、 「アイアイサー」の語源はエスペラント語だったって本当ですか? 【回答】 英語の「Aye aye, Sir!」が語源. AyeはYesと同じ意味で、イギリスの一部の地方で使われていた言葉。 ちなみに2回繰り返すのは、相手の言葉を確かに聞き取ったという 意思表示のため。 これが16世紀頃から一般的な船舶用語となり, さらにはエスペラント語にも採用された。 つまり,同一語源. なお,現在でも英国議会では賛成を"Aye"と言う.
エスペラントの辞書を見たが、見当たらない。 音訳だと aj aj sar 意訳だと jes jes sinjoro だと思うが、 どちらの表現もない。 どこからエスペラントだということになったのか。 もしかしたらガセ? イーハトブがエスペラントというのと同じ感じか? 追記 該当の箇所は「三丁目の夕日 夕焼けの詩」第36巻 (小学館)の102ページ目。 子供たちの「アイアイサー」のせりふの横に、 「昔、はやったエスペラント語のイエス・サー」と解説がある。
ベーシック・イングリッシュとエスペラント  (2006/01/28)
ベーシック・イングリッシュとは、エスペラントと同じように、
国際共通語として考えられた言語案である。
しかし、英語そのものに対して文法規則を変えたものではない。
ただ、使用する単語を850語に制限したものである。
単語を少なくすることによって、学習者の利便性を考慮したのである。

この言語案は1930年ごろCharles Kay Ogdenによって発表された。
850語を選定するに当たっては、統計上の出現度数によってではなく、
単語のもつ意味の広さと明確さで選んだ。
日常的に使用される7500語を選び、その中で他の単語の組み合わせで
置き換え可能なものは除かれていき、最終的に850語がのこった。
その7500語はこの850語の組み合わせで表現可能だという。
例えば、walkはgo on footで、returnはgo backで表現できる。

驚くべきなのは、動詞が16個しかないことである。16個しか無くて
大丈夫かと思われるかもしれないが、前置詞や副詞との組み合わ
せで、ほとんどの動詞の意味範囲はカバーできるとのことである。
動詞の意味パターンを16個に整理したのはとても興味深い。

850語の一覧はこちら。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/esp-siryo7.htm

単語に対する記憶をできるだけ少なく済まそうという試みは、
エスペラントでも行なわれている。その工夫が接頭辞と接尾辞である。
約10個の接頭辞と、約30個の接尾辞によって、
語根から多くの単語を派生させる。
このことによって記憶の労力が減るのである。

エスペラント発表当時は語根の数が約1900個だったが、
現在のエスペラント学士院公認の語根は約4700個になっている。
エスペラントはベーシック・イングリッシュのように、
語根数を限定しなかったので、多くの新たな語根を受け入れたために
このように増えてしまったのだ。
ザメンホフの苦労が台無しになっている。

1905年発行のFundamento de Esperanto(エスペラントの基礎)の
単語集には、病院を表すhospitaloという語は入っていないが、
現在の公認語根には入っている。
これはmalsanulejo(mal:反、san:健康、ul:人、ej:場所、o:名詞)という
派生語で表現できるので当初の語根にはなかったのである。

エスペラントの合成語も、ベーシック・イングリッシュの単語句も、
表現の違いはあるけど、同じ目的である。
ベーシック英英辞典では約20000語を基本850語で置き換えている。
同じようにエスペラントの20000語の単語も1000個以内の語根の
派生語、合成語で置き換えられるかもしれない。
使用する語根を1000個以内に制限した単語集を作って
みるのもいいかもしれない。名付けてBaza Esperanto。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/baza-esperanto.htm

ヘブライ語とエスペラント  (2006/01/30)
ミルトスのホームページの「ヘブライ語は諸国語の母」(現在、記事なし)では、
エスペラントの造語法はヘブライ語から着想を得ているとしている。
このことの真偽はわからない。
造語法についてはロシア語から着想を得たということを読んだことがある。
このことは『エスペラント国の旅』というサイト(現在、サイトなし)に載っているので引用する。

やがて、その言語を損なうこともなく、数ページを超えない非常に小さな 文法に到りました。しかし膨大な語彙はまだ決して私を安心させては くれませんでした。一度、私は偶然(ロシア語の)「シュヴェイツェルスカヤ」 (門衛所)という標札に、それから「コンディトルスカヤ」(菓子屋)という 看板に注意を向けました。この「スカヤ」が、私の興味を引きつけ、 別々に学ばなくてはならない多くの単語を一つの単語から作りだす 可能性を、接尾辞が与えることを私に示してくれました。 この考えは私をすっかりとらえ、私は急に足が地に着いたと感じました。 一条の光が、恐ろしく膨大な語彙に差し込んで、私の目の前で語彙は 急速に小さくなっていきました。 私は単語の比較を開始し、その中で恒常的な、定まった関係を調べ、 毎日、新しい大きな一連の語群をある関連を意味する一つの接尾辞を 使って作り替えながら、辞書から削除していきました。 それからしばらくして私は文法全部と小さな辞書を書き上げました。 私は現在の諸言語には、国際語としてすぐに使える、あらゆる民族に 知れられている単語の大きな貯えがあり、将来の国際語のための 宝庫を作っていることに気がついて、当然のごとく、私もその宝を 利用しました。
ヘブライ語の影響について、もう一つ気づいたことがある。 ヘブライ語などセム語族に共通で見られる言語的特性の一つに文章の中で 動詞に関連した名詞を使う「同系対格」というものがある。 「私は彼を大きな打撃で打った。」「私は夢を夢見た。」などの表現だ。 同じ意味の語が重複して用いられている。 重複した語を使う例はザメンホフの文例(「エスペラントの基礎」の「練習問題集」) にも見られる。
Venu kune kun la patro.   お父さんと一緒に来なさい。   kune kun Du ekbriloj de fulmo trakuris tra la malluma c^ielo.   雷の二つのきらめきは暗い空を走り抜けた。   trakuris tra g^i nur deflugis de la arbo, alflugis al la domo kaj surflugis sur la tegmenton.   それは木から飛んで、家へ飛んで、屋根の上へ飛んだだけだ。   deflugis de   alflugis al   surflugis sur
もしかしたら、これもヘブライ語の影響かもしれない。
エスペラントの文法  (2006/02/12)
「ハートで感じる英文法 会話編 第6回」の記事で、文法では、
「これはこうしなければいけない」
「これはこうしてはいけない」という
制限事項を教えるのではなく、
「こうすればこう言う表現ができる」
「こういうことを言いたいときは、こうすればよい」
というような表現の幅を広げることを教えるべきだと述べた。

これはエスペラントでも当てはまることだ。
一例をあげると、

目的語には語尾 n を付けなければならない。 形容詞には、名詞に合わせて複数形語尾 j や 目的語語尾 n を付けなければならない。
こう言う説明で終わってしまうと、初心者はただの面倒な規則に感じてしまう。 英語にはないのに、どうしてこう言う無駄なことをするのかという意見が出る。 しかし、エスペラントの文法には無駄は無い。 これは、文のあいまいさを防いで、誤解の無いようにしたり、 表現の幅を広げるためにある。 目的語の語尾 n があるおかげで、文中の語順が自由になる。 強調したい語を簡単に文の先頭に持っていくことができる。 Akvon volas trinki mi.  水を飲みたいんだ、私は。 形容詞に複数形語尾があるおかげで、どの名詞に掛かるか明確になる。 blanka hundo kaj kato  「白い犬」と「猫」 blankaj hundo kaj kato  白い「犬と猫」 形容詞に複数形語尾があるおかげで、名詞を重複して言わなくて済む。 amiko el la miaj (amikoj)  私の複数いる友達の中の一人の友。 形容詞に目的語語尾があるおかげで、 形容詞が補語なのか修飾語なのか明確になる。 Mi trovis lin malsana.   彼が病気だとわかった。 Mi trovis lin malsanan.  病気である彼を見つけた。 文法事項は「これで何がうれしいのか」を理解しないと、 身に着いていかないと思う。
エスペラントの文法(続き)  (2006/02/15)
日本人にとって、習得しにくい文法事項が定冠詞である。
一度、話に出てきたものはlaを用いなければならないとか、
一つしかないものにはlaを付けなければならないとか、
代名詞の所有形容詞があるとlaは付けてはいけないとか、
「なければならない」「してはいけない」事項がたくさん。

詳しくは、http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/esp20.htm
または、「ハートで感じる英文法 第2回」を参照。

ザメンホフは冠詞を持たない言語を母語とする人々を考慮して、
「エスペラントの基礎」の「練習問題集」の第27章に
次のように書いている。

冠詞の使い方を理解できない人たち(例えば、自国語以外の 他の言語を知らないロシア人やポーランド人)は、 初めのうちは冠詞を全く使わなくてもよい。 なぜなら、それは便利だが必要ではないからだ。
エスペラントにとって、冠詞はがんじがらめの制限事項ではなく、 表現を広げるための便利な道具ということである。 ザメンホフは定冠詞を持たないロシア語やポーランド語を知って いたので、エスペラントの学習を易しくするために、定冠詞を エスペラントに採用しないことも考えたことだろう。 しかし、定冠詞はあると便利で、それを用いると多彩な表現が 可能となるので、必須事項でなく、任意事項として採用されたのだ。 定冠詞を用いると、いろいろ便利な表現ができる。 G^is revido.    では、いつかまた。 G^is la revido.  では、次回また。 前者は再会がいつになるのかわからないとき。 後者は二人の間で次に会う約束ができていることがわかる。 La suno brilas.   太陽が輝いている。 Suno brilas mem.  恒星は自ら輝く。 La suno は 私達の恒星、すなわち太陽を表す。 Amo estas   kau^zo por edzig^i.   愛は結婚する理由の1つだ。 Amo estas la kau^zo por edzig^i.   愛は結婚する唯一の理由だ。 la を付けると一つしかないことを示す。 つけないといくつかあるうちの一つを示す。 定冠詞は使えるようになると面白い。
エスペラントの文法(さらに続き)  (2006/02/16)
前回の記事で定冠詞 la は必須事項でなく任意事項として、
エスペラントに採用されたという話をした。
同じく任意事項として採用されたものに、複合時制がある。
複合時制とは、現在、過去、未来の基本時制と、
完了、進行などの状態を表す分詞を組み合わせたもの。
いわゆる、現在完了とか現在進行とかの形式である。

エスペラントでは、これらは重い表現として普通は用いられない。
現在完了の代わりに過去が、現在進行の代わりに現在が用いられる。
これらの違いは副詞によって判断される。
  j^us  たった今
  jam   もう既に
  nun   今
  iam   かつて
  ekde  ~以来

これは、エスペラントの学習の容易さを確保するためだ。
しかし、複合時制があると細かい表現ができるので、
任意事項として採用されている。
つまり、エスペラントでは、文法事項を必須事項と任意事項に
分けることによって、学習の容易さと、表現の豊かさを、
同時に満たしているのである。

エスペラントの文法用語、特に「相」  (2006/02/23)
文法用語の例。

  日本語     英語        エスペラント
  品詞      part of speech   partoj de parolo
    名詞    substantive     substantivo(o-vorto)
          or noun
    形容詞   adjective      adjektivo(a-vorto)
    動詞    verb        verbo(i-vorto)
    副詞    adverb       adverbo(e-vorto)
    冠詞    article       artikolo
    定冠詞   definite article  difina artikolo
    代名詞   pronoun       pronomo
    人称代名詞 personal pronoun  persona pronomo
    数詞    numeral       numeralo
    前置詞   preposition     prepozicio
    接続詞   conjunction     konjunkcio
    間投詞   interjection    interjekcio
    分詞    participle     participo
    関係詞   relative      rilativo
  性       gender       genro
    男性    masculine      vira
    女性    feminine      ina
    中性    neuter       neu^tra
  数       number       nombro
    単数    singular      singularo
    複数    plural       pluralo
  格       case        kazo
    主格    nominative     nominativo
    対格    accusative     akuzativo
    属格    genitive      genitivo
    与格    dative       dativo
    奪格    ablative      ablativo
    呼格    vocative      vokativo
  人称      person       persono
  級       degree       ?
    原級    positive      ?
    比較級   comparative     komparativo
    最上級   superlative     superlativo
  法       mood        modo
    直説    indicative     indikativo
    条件    conditional     kondicionalo(us-modo)
    (仮定,叙想,接続)subjunctive  subjunktivo
    命令    imperative     imperativo(u-modo)
    (意志)            volitivo
    不定    infinitive     infinitivo(i-modo)
  時制      tense        tempo
    現在    present       prezenco(as-tempo)
    過去    past        preterito(is-tempo)
    未来    future       futuro(os-tempo)
  態       voice        voc^o
    能動    active       aktiva
    受動    passive       pasiva
  相       aspect       aspekto
    継続    durative      durativo
          or progressive   ?
    完了    perfective     perfektivo
          or perfect     perfekto
    未然    prospective     ?
    起動    inchoative     inkoativo
          or inceptive    ?
    終結    terminative     ?
    反復    iterative      iterativo
          or frequentative  ?
    瞬間    momentane      momentaneo
          or punctual    ?

この中の多くはエスペラントの16条の文法に出てくる。
しかし、相(そう)は16条の文法には出てこない。

相を見かけるのはエスペラントの分詞の説明のときである。
分詞の -ant- -int- -ont- のそれぞれは、
普通、時制の現在、過去、未来という言葉で説明される。
これを、継続相(進行相)、完了相、未然相(将然相)という
言葉で説明しているものがある。

時制と相は、どちらも時間的な概念について言っている
ようだが、どういう違いがあるのか。
私は相に詳しくはないので、いろいろと調べてみた。

「Wikipedia」の「相」の項目
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8_%28%E8%A8%80%E8%AA%9E%E5%AD%A6%29

相(そう)とは、言語学、文法学上の用語で、 動詞の文法カテゴリーの一つであり、 動詞が表す出来事の完成度の違いを記述する文法形式のことを言う。 アスペクト(aspect)ともいう。 出来事を完結したまとまりのあるものと捉えるか、 未完結の広がりのあるものと捉えるかによる語形交替などをいい、 また出来事が瞬間的なのか、継続的か、断続的か、反覆するのか、 やがて終わるのかといった全過程のどの局面にあるのかと面に 着目して区別を行うことをもいう。
「広辞苑」の相の項目
動詞が表す動作や状態の時間的な局面・様相 (例えば開始・終結・継続・反復)。 動詞自体にアスペクトが含まれていることもあれば 完了形や進行形などの形式で表現されることもある。
時制とは「そのことがいつ起こったか」であり、 相とは「その時どういう状態であったか」であるらしい。 相には継続、完了、未然、起動、終結、瞬間、反復などが あるらしい。   継続 そのとき動作が継続中   完了 そのとき動作が終わってしまっている。   未然 そのとき動作がまだ行なわれていない。   起動 そのとき動作が始まった。   終結 そのとき動作が終わった。   瞬間 そのとき瞬間的な動作が行なわれた。   反復 そのとき動作が反復して行なわれていた。 動詞自体に相が含まれることもあれば、 分詞や接辞等を用いて相を作り出すこともできるらしい。 エスペラントには相を作り出す方法として、次の方法がある。 ・esti と分詞形容詞(-anta,-inta,-onta)を組み合わせる。   -anta  継続   -inta  完了   -onta  未然 ・動詞に接頭辞、接尾辞(ek-,-ad-)を付ける。   ek-  起動、瞬間   -ad- 継続、反復 ・動詞(komenci,fini)と不定詞を組み合わせる。   komenci  起動   fini   終結 「英語から入るエスペラント」の「動詞の相」の項目 http://plaza.harmonix.ne.jp/~sakat/aspekto2.htm
動詞の示す動作の様態は,その動詞が表す意味によって, 瞬間的, 継続的, 反復的などに分けることができますが, これを相(アスペクト)といいます。 アスペクトの分類やその名前は文法家によって違うので, 瞬間相, 継続相, 反復相のほかに, 起動相, 完了相などの ような名前を見ることもあります。 エスペラントでも正しい文を書くには, アスペクトについての知識が必要です。 しかし,アスペクトをいくつもの種類に分けて, それぞれについて学ぶことは, 作文する上では必要ありません。 そこで、わたしは動詞をアスペクトによって二つに大別し, それぞれを線動詞, 点動詞と名付けました。 線動詞は動作や状態の継続を表す動詞で, 点動詞は動作や状態の始まり,または終りの瞬間を表したり, frapiのように始まりと終りが同時である瞬間的な動作を 表す動詞です。 ただし,frapiに継続,反復を示す接尾辞 -ad を付けた frapadiは線動詞になります。
動詞ごとに含まれる相に違いがある。 それによって意味や使い方に違いがでるので、 その動詞の持つ相を知って置く必要がある。 例えば havi や koni は、持つ、知るという瞬間動作でなく、 持っている、知っているという継続動作である。 しかし、相という言葉はわかりにくい。 これを、点動詞と線動詞という2つに集約したのは とても素晴らしいアイデアだと思う。 他の文法用語と違って、相については、 私はなかなか分かった気になれない。 それは、人によって分類の仕方が違ったり、 名称が違っていたりするからだろう。 まだ統一的な整理がされていないのである。 とりあえず、エスペラントでは、 点動詞と線動詞の違いと、-ant- -int- -ont- の使い方が 分かっていればいいのではと思う。 もう一つ分かった気になれないのは、 「ハートで感じる英文法 第5回」で紹介した、 You are selfish (あなたはわがままだ) という状態を表す be 動詞を進行形にすると、 You are being selfish (あなたはわがままなことをしている) という一時的な状態を表すという件である。 エスペラントでも、このような例があるのだろうか。
エスペラントの受け身文  (2006/03/01)
エスペラントで受け身の文を作るときに迷うのが分詞に-ata を
使うか、-ita を使うかである。

英語の場合は、受け身の文で使う分詞が過去分詞一つしかない
ので、迷うことが無い。
しかし、エスペラントでは受け身の分詞が3つある。
-ata, -ita, -ota
-ota はあまり使う機会がないので、-ata, -ita のどちらを使う
のかが問題になる。

これらの3つは次のように使い分けられる。

  -ita 事柄が始まって、終わっているとき。
  -ata 事柄が始まっているが、まだ終わっていないとき。
  -ota 事柄がまだ始まっていないとき。

文脈によってどれを使うかが決まってくる。

完結しているものは -ita を使う。

  Mi skribis leteron hierau^.
  きのう手紙を書いた。

  これは書き始めから書き終わりまでの一連の作業について
  言っているので、-ita を使うことになる。

  Letero estis skribita de mi hierau^.
  きのう手紙が書かれた。

継続中のものは -ata を使う。

  Mi skribis leteron, kiam vi venis al mi.
  あなたが私の所に来た時、手紙を書いていた。

  これは、あなたが来た時には、書いている途中だったので、
  -ata を使うことになる。

  Letero estis skribata de mi, kiam vi venis al mi.
  あなたが私の所に来た時、手紙が書かれていた。

現在行なわれている動作も -ata を使うことになる。

  Mi skribas leteron nun.
  今、手紙を書いている。

  Letero estas skribata de mi nun.
  今、手紙が書かれている。

現在の習慣や繰り返しの動作、永遠の真理についても -ata を
使うことになる。

  Mi skribas leteron c^iutage.
  毎日、手紙を書く。

  Letero estas skribata de mi c^iutage.
  毎日、手紙が書かれる。

過去の習慣や繰り返しの動作にも -ata を使うことになる。

  Antau^e mi skribis leteron c^iutage.
  以前は毎日、手紙を書いた。

  Antau^e letero estis skribata de mi c^iutage.
  以前は毎日、手紙が書かれた。

上記の例のような、受け身にしなくても言えるものは、
普通、あえて受け身にすることはしない。
受け身文が使われるのは次のような場合である。

・誰の行為か分からないとき。

  Juveloj estis s^telitaj el la butiko.
  宝石が店から盗まれた。

・誰の行為か言う必要がないとき。

  Tiu c^i fervojo estas konstruota en la dau~ro
  de du jaroj.
  この鉄道は2年間で建設される予定だ。

・誰の行為か言うことができないとき。

  La artikolo "la" estas uzata tiam,
  kiam ni parolas pri personoj au~ objektoj konataj.
  冠詞 "la" は、私たちが知っている人か物について話すとき、
  使われる。

・受け身文を用いる方が一般的なとき。

  Georgo Vas^ington estis naskita la dudek-duan
  de Februaro de la jaro mil-sepcent-tridek-dua.
  ジョージ・ワシントンは1732年2月22日に生まれた。

  「生まれた」という場合は、行為者を言わないのが一般的。

  -ita が形容詞化してしまっている語がこのパターンになる。
  elvendita 売れきれた fermita 閉じた finita 終わった

・話の中心人物を主語に置くとき。

  Kristo estis mortigita de potenculoj.
  キリストは権力者に殺された。

・客観性を与えるとき。

  Estas dirite, ke la medikamento estas tre efika.
  この薬はとても効くと言われている。

英語やフランス語などのヨーロッパの言葉では、受け身の分詞が
一つしかないので、ヨーロッパのエスペラント使用者では、
-ita が多用される傾向があるようだ。
-ata を用いるべきところでも、-ita が誤用されることが多い
らしい。

エスペラントの受け身文が、どうしても複合時制の形になって
しまうので、それを解消するために -es- という接尾辞が提案
されたことがあった。しかし、これは広まらなかった。
例)Letero skribesis hierau^. 手紙がきのう書かれた。

これ似た接尾辞で -ig^- というものがある。
英語では be -ed となるところを
エスペラントでは -ig^- とすることがある。

  surprizi (surprise) 驚かす
    surprizig^i (be surprised) 驚く

  interesi (interest) 興味を起こさせる
   interesig^i (be interested) 興味を持つ

「言語の発展」(フランソワ・ロ・ジャコモ著 水野 義明訳
 大村書店)という本には、昔、-ata と -ita について、
アータ派とイータ派に分かれて論争があったことが書かれている。
この問題はエスペラント界をにぎわせる大問題だったようだ。

デビ夫人はもちろんアータ派だろう。

アータ・イータ論争  (2006/03/11)
1960年代、エスペラント界では、受身文に使う分詞について、
アータ派とイータ派に分かれて論争があった。

アータ派とは、時制派とも呼ばれ、分詞の -ata と -ita の
違いは、時制の違いだとする意見を持つ人たちだ。

イータ派とは、相(アスペクト)派とも呼ばれ、
分詞の -ata と -ita の違いは、相の違いだとする意見を持つ
人たちだ。

アータ派によると、-ata は話題の時点の現在を表し、
-ita は話題の時点よりも過去を表す。

  「その手紙は昨日書かれた」という文は次のようになる。
  La letero estis skribata hierau^.

  La letero estis skribita hierau^. という文にすると、
  昨日以前に手紙が書かれたということになる。

イータ派によると、-ata は話題の時点での継続を表し、
-ita は話題の時点での完了を表す。

  「その手紙は昨日書かれた」という文は次のようになる。
  La letero estis skribita hierau^.

  La letero estis skribata hierau^. という文にすると、
  昨日ずっと手紙が書かれ続けていたということになる。

最終的にはエスペラント・アカデミーオ(学士院)が次の決定を
出して決着した。
http://www.akademio-de-esperanto.org/decidoj/participoj.html

1967年11月25日 外交、商業、法または政治の文書の 4つの典型的な文の正しい意味について相談を受けた。 "Ni garantias, ke la domoj detruitaj dum la milito estos rekonstruataj en 1970"   戦争の間に破壊された家は1970年に再建されることを   私達は保証する。 = do la garantiantoj estos kvitaj,   その保証人が義務を果たすことになるのは、 A) se en la dau^ro de 1970 oni komencos kaj dau^rigos la rekonstruadon;   1970年の間に再建が始まり、継続される場合。 B) nur se en la dau^ro de 1970 oni finos la rekonstruadon.   1970年の間に再建が完了する場合。 "Mi promesas, ke mia s^uldo estos pagita la 9-an de Majo" =   私の負債は5月9日に払われる事を約束する。 A) la s^uldanto sens^uldig^os la 9-an de Majo;   債務者は5月9日に返済する。 B) la s^uldanto sens^uldig^os plej malfrue la 8-an de Majo.   債務者は最もおそくても5月9日に返済する。 "Ni asertas, ke la au^tomobilo de s-ro X estis efektive riparata la lastan semajnon" =   X氏の自動車は先週、実際に修理されていた事を   私達は主張する。 A) la lastan semajnon oni efektive okupig^is pri la riparado de la au^to   先週、人々は実際に自動車の修理に従事していた。 B) la lastan semajnon oni efektive finis la riparadon.   先週、人々は実際に修理を完了した。 "Via propono estis unuanime akceptita la 3-an de Junio" =   あなたの提案は6月3日に一致して受け入れられた。 A) oni akceptis la proponon la 3-an de Junio;   人々は6月3日にその提案を受け入れた。 B) oni akceptis la proponon antau^ la 3-a de Junio.   人々は6月3日の前にその提案を受け入れた。 これらの文のすべてはAの意味だけが 伝統的なザメンホフの言語使用に適合する。 すべての他の解釈は非公式である。
結論はこういうことである。 ・-ata については、話題の時点では、まだ完了していない。 ・-ita については、話題の時点に、完了した。  話題の時点までに、完了しているとは解釈しない。 つまり、イータ派の意見が採用されたことになる。
ザメンホフの文例の中の仮定法  (2006/03/12)
仮定法は動詞に語尾 -us を付け、「非現実」を表す。
そのことから、次のような使い方をよくする。

・あり得ないことへの想像(~かも知れない)
  Mi ne farus la eraron,
  se li estus dirinta al mi la veron.
  もし、彼が私に真実を話していたら、
  私は間違いをしなかったかも知れない。
  (実際は間違いをした)

・望みの薄い希望(~ならいいのに)
  Se mi estus sana, mi estus felic^a.
  もし私が元気なら、幸せなのに。
  (実際は元気ではない)

・控えめな嘆願(~していただけますか)
  C^u mi povus peti vian helpon?
  お手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか。
  (実際はお手伝いをお願いできないけれどもという
  気持ちを出すことによって、控えめさを表す)

Fundamento de Esperanto(エスペラントの基礎)の中の
EKZERCARO(練習問題集)の文例を見ると、
上記に当てはまらない使用があるように感じる。
以下はその例と自分なりの解釈である。

C^u ne estus al vi agrable havi tian saman kapablon? (SS17)
  そのような同じ能力を持つことがあなたには楽しくないだろうか?

  同じ能力を持つことができるか不確定なので、
  仮定法が使われている。

Estus tre bele, ke mi iru al la fonto! (SS19)
  私を泉に行かせるなんて、とてもすばらしいわね。

  泉に行くように命令されただけで、まだ行っていないし、
  行くかどうかも分からないので、仮定法が使われている。

La reg^ido konsideris, ke tia kapablo havas pli grandan indon,
ol c^io, kion oni povus doni dote al alia frau~lino, (SS23)
  人々が他の未婚女性へ持参金として与えることのできる全てよりも、
  その能力は大きな価値を持っていると、王子は考えた。

  実際にはそのような能力は「与えることのできない」
  ものなので、仮定法が使われている。

trovinte neniun, kiu volus s^in akcepti, (SS23)
  彼女を受け入れたい人がみつからず、

  実際は「彼女を受け入れたい人」がいないので、
  仮定法が使われている。

En tiaj okazoj
ni uzus la finig^on "n"
tute egale c^u ia prepozicio starus au~ ne. (SS28)
  そのような場合には、
  なんらかの前置詞があるかないかを問わず、
  語尾 "n" を使う。

  「そのような場合」とは、移動の方向を表すために、
  語尾 "n" を使う場合を言っている。
  「前置詞がある」かどうかが不確定なので、
  仮定法が使われている。

Metro de drapo signifus metron,
kiu kus^is sur drapo, au~ kiu estas uzata por drapo. (SS32)
  Metro de drapo(ラシャのメートル)は、
  ラシャの上に置いてあるか、ラシャのために使われる
  メートル尺を意味するかもしれない。

  実際はmetro da drapo(1メートルのラシャ)が使われ、
  metro de drapo の使用は現実性が低いので、
  仮定法が使われている。

こじつけて解釈しているのだが、正しいかどうか分からない。

その他にも次のような仮定法の使用例がある。

Li traktis min, kvazau^ mi estus malsanulo.
  彼は、私が病人であるかのように、扱った。

  実際は、私は病人ではないので仮定法が使われている。



エスペラントや英語などに共通していると感じるのは、
身近なものと、身近でないものの区分けがされていると
言うことである。

代名詞でいうと、tio (that) と tio c^i (this) である。
動詞でいうと、身近なものが現在や命令(意志)で、
身近でないものが過去や仮定になる。
英語では、現在や命令に現在形が、過去や仮定に過去形が、
用いられる。
時間的に遠いものや、非現実なものは身近でないものと、
みなされるからだ。
ヨーロッパ人にはそのような世界観がある。

現実と非現実という観点でいうと、
エスペラントでは動詞の形に、現在、過去、未来、仮定法、
意志法があり、そのうち、現在と過去は現実の記述であって、
未来、仮定法、意志法は非現実の記述である。
一般的には仮定法だけが非現実の記述であるといわれているが、
未来も意志法もそれが話された時点では現実になっていない。
この3つは、非現実から現実への移行に関して、
話者がどういう主観を持っているかで変わるのである。
話者の意志にかかわらず、非現実から現実への移行があると
考えられる場合、未来形が使われる。
話者の意志によって、非現実から現実への移行があると、
考えられる場合、意志法が使われる。
話者の意志によっても、非現実から現実への移行がないと、
考えられる場合、仮定法が使われる。

仮定法は日本語にないので、異質なものと感じられるが、
上に述べたような感覚は日本人でもあるはずだ。
ただ、日本語にそのための専用の表現手段がないだけである。

エスペラントの人称代名詞  (2006/03/13)
エスペラントの人称代名詞の体系は、
民族語に大きく影響を受けている。
英語の体系と一致する。

       単数   複数
1人称    mi(I)   ni(we)
2人称    vi(you)  vi(you)
3人称 男性 li(he)
    女性 s^i(she) ili(they)
    中性 g^i(it)

共通点
・複数形の形が違う。
・2人称の単数と複数が同じ。
・3人称の単数に、男性、女性、中性があるが、
 複数は性の区別がない。

よく初心者から出る意見は、次のようなもの。
・代名詞も名詞なのだから、一般の名詞とそろえるために、
 mi を mio とした方が良いのではないか。
・ni は mio に複数形語尾を付けて mioj とすると
 規則的になる。
・そうすると、vi も単数と複数を区別できるようになる。
 vio, vioj
・また3人称の複数の性の区別もできるようになる。
 lioj, s^ioj, g^ioj

ザメンホフは上記のようなことも考えただろう。
なぜなら、ザメンホフが知っていたヘブライ語では、
人称代名詞が上記のようになっているからだ。
  1人称の複数は単数から作られている。
  2人称に単複の区別がある。
  3人称の複数に性の区別がある。
しかし、彼はわけあって、今の形にしたと思う。
その理由はわからないが、私は次のように推測する。

・複数形の「私達は」miojとなるが、その所有形容詞がmiajと
 なり、mia が複数形の名詞を修飾した時にmiajとなるのとが
 混乱するので、複数形語尾を使うのを避けた。
・人称代名詞はよく使うので1音節にした。
・ni は mi の複数ではない。「私」はこの世に二人といない。
 mi kaj mi ではなく、mi kaj vi とか mi kaj li などである。
 だからmiojとするのはふさわしくないので、別の単語にした。
・vi は 聞き手にとっては、複数であろうが、単数であろうが、
 関係無い。聞いている人にとっては、自分しかいないからだ。
 だから実際には、vi の単複の区別がないと困るということが
 ない。
・実際上、3人称複数の性の区別が必要になることがない。
 3人称複数が同性で構成されるよりは、混ざっている方が
 多いので、性の区別が無い方が便利である。
 複数に性の区別があると、混ざっている場合、lioj kaj s^ioj
 という言い方をしなくてはいけないので、逆に不便である。



ci(おまえ)という代名詞もあるが、あまり使われていない。
でも、フランスでは、よく使われているらしい。
http://blog.goo.ne.jp/esperakira/e/73c3c767f14e2a264ff4d53acc1f4910
これを見ると、2人称の単複の区別に使われているかも知れない。

エスペラントは人工語か  (2006/03/14)
エスペラントは人が作ったものだから人工語である。
日本語や英語などの民族語も人が作ったと思われるから人工語だろう。
エスペラントと民族語の違いは、その発生の仕方である。
エスペラントは計画的に発生した。しかし、その発展は自然的である。

エスペラントの新語の作成や単語の意味の変化は、
特定の言語管理機関が決めているのではない。
エスペラント使用者への普及度によって決まる。
より多くの人が使えば、広まるし、
だれも使わなければ、廃れる。
これは民族語と全く同じである。

以下はエスペラントの発展、変化の例である

・コンピュータが出始めたとき、それに対する単語として、
 komputero, komputoro, komputro, komputilo など出たが、
 最終的に komputilo に落ち着いた。

・人称代名詞の3人称単数の性の区別を無くそうとして、
 li s^i の代わりに ri という3人称無性の人称代名詞を
 用いようという意見がある。
 この試みは riismo(ri主義)と言われる。
 また riismo では、語根が男性を表す patro 等の語を無性化して、
 女性接尾辞 -in- の対に、男性接尾辞 -ic^- を導入して、
 男性、女性を区別しようという提案もしている。
 patro 親 patric^o 父 patrino 母
 これは、まだ広まっていないが、多くの人が使えば、
 エスペラントの語彙として採用されるだろう。

・幾つかの語彙の変化もある。
  ・エスペラントでは h^ という音があるのだが、
   発音しにくいという理由で、k に置きかえられる傾向にある。
    h^emio -> kemio(化学)
    arh^ivo -> arkivo(古文書保管所)
    h^aoso -> kaoso(無秩序)
    h^ を k に置き換えると同形の語と重なる場合は
    別の語形になる。
    h^oro -> koruso(コーラス)
    h^olero -> kolerao(コレラ)
  ・発音しにくい子音の連続は、省略される傾向にある。
    budg^eto -> bug^eto(予算)
    matc^o -> mac^o(試合)
  ・malのつく語を避ける傾向にある。
    malsupreniri -> descendi(下る)
    maljuna -> olda(年老いた)
    mallonga -> kurta(短い)
  ・長い語を避ける傾向がある。
    metalfadeno -> drato(針金)
    s^arg^veturilo -> kamiono(トラック)
    piedbati -> kiki(蹴る)
    duonnegro -> mulato(黒人と白人のハーフ)
    fotografaj^o -> foto(写真)
    aviadilo -> avio(飛行機)
    fare de -> far(~によって)
    fortepiano -> piano(ピアノ)
    au^tobuso -> buso(バス)

・新語を導入する場合、翻訳式より借用式になる傾向がある。
 また既に存在する語彙も借用式になる傾向がある。
   malsanulejo -> hospitalo(病院)

・語の意味範囲の変化
  ・ami と s^ati
    s^ati は「価値を認める,尊重する」という意味をもっているが、
    「好む」という意味で用いる例が出てきている。
    「好む」という意味は ami が持っているが、
    これを人にだけ使って、物にはs^ati を用いる傾向もある。

これらの変化は特定の少数の人間によって行なわれているのでなく、
大衆によって自然に行なわれる。

エスペラント学士院(アカデミーオ)という言語管理組織がある。
しかし、これは、エスペラントの発展をコントロールしない。
現状を追認して、公認語根を決めるだけである。
文章を作るとき、公認語根を使っていれば、
多くの人に理解されるという保証が得られる。
その便宜のため公認語根が定められているのである。

エスペラントの辞典の出版時期  (2006/03/15)
大きなエスペラントのイベントがある時は、
エスペラント界は大いに盛り上がる。
それに合わせたように、エスペラント辞典が出版される。
その他、エスペラントの書籍も出版されたり、
いろいろな媒体で特集が組まれたりする。

・1965年に東京で、日本で初めて世界エスペラント大会が
 行なわれた。
  ・1963年「新選エス和辞典」
  ・1965年「エスペラント小辞典」
  ・1961年「エスペラント4 週間」
  ・1963年「基礎エスペラント」

・1987年、エスペラント発表100周年。
  ・1983年「日本語エスペラント辞典」
  ・1988年「エクスプレス・エスペラント語」
  ・1983年10月号の月刊「言語」に
   エスペラントが特集された。
  ・1986年にはNHKラジオ「外国語への招待」で
   2夜に渡ってエスペラントが特集された。

・2006年、エスペラント日本伝来100周年。
  ・2005年にザメンホフの伝記が3冊出版された。
    ・ザメンホフ通り(原書房)
    ・ザメンホフ(原書房)
    ・武器では地球を救えない(文溪堂)
  ・2006年5月に「エスペラント日本語辞典」が出版予定。
    これは、「日本語エスペラント辞典」並のボリュームに
    なるらしい。

・2007年8月には世界エスペラント大会が横浜で行なわれる。
 日本では2度目、42年ぶりである。
  ・放送、出版でエスペラントの特集が組まれるかも。

5月20日追記
日本エスペラント学会の情報によると、「エスペラント日本語辞典」は
7月初旬に発売とのこと。価格は年内は5000円+税+送料。
http://www.jei.or.jp/hp/novaVortaro.html
一般書店で購入の場合は、正規価格の6000円+税。

小学校での英語必修化とエスペラント  (2006/04/08)
小学校での英語学習の是非を検討してきた中央教育審議会外国語専
門部会は、3月27日、全国の小学校で英語を必修にすべきだとす
る報告をまとめた。5、6年生で「週一回程度、共通の教育内容」
を設定するよう求めている。文部科学省は、中教審の最終決定を受
け、早ければ2006年度にも行う学習指導要領改定で、小学校の
英語必修化を盛り込む方針。実際の導入は、移行期間を経た数年先
になるとみられる。

エスペランチストには、このことに異論を唱える人が多い。中教審
が今回の結論を出した理由として、「次世代を担う子どもたちに国
際的な視野を持ったコミュニケーション能力を育成する必要がある」
ということあげているからだ。国際的な視野を持たせるには、まず
周辺国の言葉である中国語や韓国語を体験させるほうがよいという
意見や、日本語があやふやで、自国語でのコミュニケーション能力
が満足でないのに、英語でのコミュニケーション能力を上げようと
するのは本末転倒だという意見がある。

私の意見は、条件付きの賛成である。中学、高校で行なっている英
語教育をそのまま、小学校にシフトさせるのは反対だ。しかし、ネ
イテェブ・スピーカの英語を生で聞き、音声としての英語に慣れる
という目的なら賛成である。

私が英語やエスペラントをやっていて苦労するのは、読み書きでは
なく、会話である。何年勉強しても、LとRの区別、BとVの区別
が定かではない。また、英語やエスペラントの語順は日本語の語順
と逆なことが多いので、後ろから前に訳す癖がついてしまっている。
書き言葉だと問題ないのだが、会話では、こんなことをしていては
追いつかない。

このような、言語の感覚が固定されるのが、10から12歳までと
言われる。つまり、中学生ぐらいから始めたのでは遅いわけである。
だから、音の区別、語順の感覚は、小学生のうちにやっておいたほ
うがよい。そして、難しい文法事項や単語を覚えることなどは、中
学校以降でかまわない。

私が国際語として英語よりもエスペラントを推すのは、エスペラン
トの方が学習が簡単だからである。しかし、英語を勉強していなか
ったらエスペラントが簡単だという感覚はなかっただろう。英語の
知識はエスペラントを学習する上で大いに役に立った。ローマ字、
語順、関係代名詞という仕組みなど、英語で慣れていなかったら、
エスペラントの学習は難しく感じただろう。現に、学校に通うこと
ができず、英語を習ったことがなく、ローマ字すら知らないお年寄
りにエスペラントを教えるのは苦労するという話を聞いたことがあ
る。

中学校、高校では英語をしっかり学んでおけば、エスペラントは大
学や社会人になってからでも、簡単に習得できる。だから、私は、
学校で英語教育に力を入れていくことに異論はない。むしろ、その
ほうが、エスペラントの学習ためにも役に立つのである。

また、エスペラントの学習は、英語の理解を深めるためにも役に立
つ。英語自体が整理されていないので、整理されたエスペラントを
学ぶと、英語の整理ができる。特にそう感じるのは、エスペラント
の相関詞である。これは私も目からウロコだった。その詳細はこち
ら。 http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/esp26.htm

フットサルってエスペラント?  (2006/04/16)
各方面からフットサルがエスペラントであるとの情報を聞く。

http://dictionary.goo.ne.jp/search/%A4%D5333521830000000000/jn/5/topic/(リンク切れ)
http://www.health-net.or.jp/kenkozukuri/healthnews/030/080/k757/index.html(リンク切れ)

これらの情報によると「フットサル」とは、サロンフットボール
(室内サッカー)をエスペラントにしたものらしい。

サロンは salono で、フットボールは futbalo だから、
そのようにいえなくはないが、エスペラントなら futsalo でしょう。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B5%E3%83%AB

ウィキディアではポルトガル語って書いてある。こっちの方が正解かも。
だれが、エスペラントだと言い出したんだろうか。

エスペラントのネイティブ・スピーカー  (2006/04/23)
オンラインで外国語学習ができるというサイト
http://www.mylanguageexchange.com/Learn-Languages_jpn.asp

その言語のネイティブ・スピーカーとEメール、文章チャット、
音声チャットで、やりとりできる場を提供しているサイトである。
面白いのが、ネイティブ・スピーカーがいないと思われる
エスペラント語、イド語、サンスクリット語、ラテン語などもある。
まあ、その言語に習熟した人という意味で捉えておこう。

エスペラント語のページを見てみると、気になるのが、
ネイティブ・スピーカーメンバーのコメントに英語が多いこと。
エスペラントで書いてほしい。

ネイティブ・スピーカーというのは、その言語を母国語とする人
のことを言う。エスペラントを公用語とする国がないので、
エスペラントのネイティブ・スピーカーはいない。しかし、
エスペラントを通じて国際結婚した家庭の子供の中には、
生まれながらのエスペランティスト(denaska esperantisto)
はいる。

知っておきたいエスペラント動詞100  (2006/05/04)
「知っておきたいエスペラント動詞100」は、
日本エスペラント学会から出版されていて、
「エスペラント日本語辞典」編集委員会編の
エスペラント学習書である。

前回紹介した「Eゲイト英和辞典」に似た編集の仕方の本である。
まず、基本義として、その単語の中心となる意味を載せている。
Eゲイトのようにイラストはないが、考え方は同じだ。
そのあと、それぞれの派生した意味群の説明がある。
最後に似たような意味の単語には、それぞれの違いの説明が
入っている。

  内容例1
  内容例2
  内容例3

例えば Eゲイトでは、see と look の説明は、
see が、「視界・視野に対象をとらえる」
look が、「何かに視線を向ける」とある。

一方、それに当たるエスペラントのvidi と rigardi は、
「知っておきたいエスペラント動詞100」では、
vidi が、「視覚で捕らえている」
rigardi が、「視線をある方向に向ける」とあり、
ほぼ同じ解説内容になっている。

see も vidi も、ともに「会う」「理解する」という意味を派生させている。
look も rigardi も、ともに「注目する」という意味を派生させている。

その他に、「hear と listen」 と 「au^di と au^skulti」、
「come と go」 と 「veni と iri」、
「say と tell」 と 「diri と informi」の
違いの説明なども同じような内容になっている。

どちらかが、どちらの真似をしたわけでは無いだろうが、
面白い。エスペラントと英語って似てると思う。

Eゲイトの on の説明も、エスペラントの sur の意味として、
受け入れることができるので、Eゲイトはエスペラント学習にも
役立つかもしれない。

「知っておきたいエスペラント動詞100」前書きによれば、
この本は、今月に刊行される予定の「エスペラント日本語辞典」の
制作過程で副産物としてできたものだそうだ。
「エスペラント日本語辞典」は高度の学習辞典として
編集されているとのこと。
「知っておきたいエスペラント動詞100」の内容が、
「エスペラント日本語辞典」にも盛り込まれるようである。

日本エスペラント運動百周年記念事業委員会のサイト(現在、サイトなし)の情報によると、
「エスペラント日本語辞典」は次のような内容になるそうだ。
本辞典は、B6版で1300ページ程度を予定しており、 見出し語は「主見出し語」を約17000語、 その元に「副見出し語」として、語根を共通にする 派生語・合成語を約26000語収録しております。 すなわち、一般の外国語辞典であれば、約43000語相当となります。 なお、その内の2400語を重要語とし、 さらに重要度によりランクA,B,Cにわけ、ていねいに説明しています。 また、付録として、略語一覧や文法の手引きなどもつけています。
5月20日追記 日本エスペラント学会の情報によると、「エスペラント日本語辞典」は 7月初旬に発売とのこと。価格は年内は5000円+税+送料。 http://www.jei.or.jp/hp/novaVortaro.html 一般書店で購入の場合は、正規価格の6000円+税。
エスペラントの造語法  (2006/05/15)
他の言語にはなくて、エスペラントにしかない特徴をあげるなら、
「造語法」「相関詞表」であろう。
この2つだけでもエスペラントを学ぶ価値はある。
私は、エスペラントの造語法に惹かれて、
エスペラントを学び始めたと言っても良い。

造語法の要素である「接頭辞」「接尾辞」「語尾」は、
民族語にも無いことはないが、痕跡みたいなもので、
整理されていない。だから、新しく語を造る力は弱い。
エスペラントの造語法は強力な創造力をもっているので、
既存の民族語にない単語まで作れてしまう。
そのため、エスペラントの合成語を民族語に訳すとき、
とても苦労する場合がある。

エスペラントの合成語、派生語を英語に訳す例

kioma (何番目)
  英語には「何番目」を表す単語がない。
  辞書には kioma ― what number と載っているが、
  これが全ての場面で使えるわけではない。

  ・kioma horo ― what time (何時)

  ・Kioma lernejestro estas li ?
   ― How many principals were before him?
   (彼は何代目の校長ですか?)

  このように場面ごとに表現を考える必要がある。

doktorino(女医)
  1語で表す単語がない。
  'woman doctor' というように複数語になる。

分詞名詞
  これも1語で表現できないことがある。
  Savonto de la mondo
  ― One who will save the world
  (世界を救うであろう者)

povi, devi
  povi, devi にあたる英語の can, must は助動詞なので、
  will と一緒に使えなかったり、分詞、不定詞の形がない
  という制限がある。

  Mi devos iri kun li.
  ― I will have to go with him.
  (彼と一緒に行かねばならないだろう。)

  Povi vidi estas tre bone.
  ― To be abel to see is very good.
  (見ることができることはとてもすばらしい。)

  be able to, have to で代用する。


*参考となるサイト

「エスペラント国の旅」の「エスペラントの接辞」
http://www.geocities.jp/akvoju/vel/lec19.html#tekst2(リンク切れ)

エスペラントの電子辞書  (2006/05/16)
私はパソコンで使用する電子辞書にはEPWING形式の
辞書を利用している。

きっかけは、購入したパソコンに付属していた広辞苑と
研究社の新英和・和英中辞典がこの形式だったからだ。

辞書検索ソフトはDDWINというフリーソフトを使っている。
http://kazuma.cool.coocan.jp/(Window XP版 までの対応)

DDWINはWindow XP版で開発が終わっているので、EBWINを使うとよい。
EBWin4

エスペラントの辞書は広高さんの作った
『実用エスペラント小辞典』を使っている。
EPWING形式に変換済みのものもある。
Vastalto のエスペラントの部屋

日本エスペラント運動百周年記念日  (2006/06/04)
6月12日は日本エスペラント運動百周年記念日だ。
これは、1906年6月12日に、「日本エスペラント協会」
が設立されたことによる。

「日本エスペラント運動百周年記念事業委員会」サイト
http://www2.tokai.or.jp/esperanto/jjj.html(リンク切れ)

5月22日の日本経済新聞で、日本エスペラント学会
の柴山純一理事長が日本のエスペラント運動の歴史に
ついて語っていた。

「日本エスペラント協会」が設立されたのと同じ年に、
二葉亭四迷が日本で最初のエスペラント学習書「世界語」
を出版した。
これは、国立国会図書館のデジタルコレクションで、
「世界語 長谷川二葉亭」で検索すると出てくる。

1919年には「協会」を発展させた「日本エスペラント
学会」が発足した。
1927年にはNHKでラジオ講座が開始されたという。
このころが日本のエスペラント運動の全盛期で、会員数
が約3000人だったそうだ。

戦争中は800人まで減ったが、1965年に東京で
世界エスペラント大会が行われたころには、約2400人
まで回復した。
このころはエスペラント運動は学生運動と、つながりが
強かったらしい。

1990年以降はエスペラント運動が縮小していて、
現在の会員数は約1400人だそうだ。
国際語としての英語の台頭が大きな原因だと分析している。

来年の横浜での世界大会のことが紙面の都合で割愛され
たのは残念だったが、来月、発売される「エスペラント
日本語辞典」が紹介されたのは良かったと思う。
これは、私も長年心待ちにしていたものだ。
これを機会に「日本語エスペラント辞典」と「エスペラ
ント日本語辞典」の電子辞書化がされると、
さらに嬉しいのだが。

エスペラント組織に所属するエスペランチストが減少して
いるそうだ。組織を脱退するということではなく、若者の
加入が少ないからだ。エスペラント大会の写真を見ると、
高齢者が多いのが目立つ。一方、1997年以降、イン
ターネット上でエスペラントを使用する人が増えている
ように思う。これ以前は、エスペラントを使用する機会は、
エスペラント会に所属するか、文通ぐらいしか無かったが、
最近はインターネットでのエスペラント使用が大きな割合を
占め始めている。

私自身は、エスペラント会に所属していない。ネットでし
かエスペラントを使用しない、ネット・エスペランチスト
(reta esperantisto)である。私と同類は結構いるはず
なので、組織の会員数が減少していても、憂えるに
及ばないと思う。エスペラント使用の舞台が変わって
きたのだ。

エスペラントの普及活動についても、ネットを利用すべきだ。
NHKがラジオ語学講座にエスペラントを採用しなくても、
ネット上にMP3ファイルで提供することもできる。
来年の世界エスペラント大会の模様をマスコミが取り上
げなくても、大会の模様をネットで動画配信することも
できる。学習書、辞書も電子化して、どんどんネットで
提供するとよいと思う。

たとえば、「アイヌ語ラジオ講座」の音声ファイル。
http://www.stv.ne.jp/radio/ainugo/index.html(リンク切れ)

エスペラントの語尾 "-au^" について  (2006/06/13)
ザメンホフ著「エスペラントの起源」を読んでいて気に
なる部分があった。次の部分である。

いろいろ試してみた結果、理論的には完全と思ったもの も、実用には不十分なことがわかりました。削ったり、 取り替えたり、直したり、まったく別の形にしました。 理論的にも、また個々に検討しても問題はないと思われ るのに、実際は単語や語形どうし、原則や要件どうしが 互いに矛盾するのです。たとえば、汎用の前置詞 "je" や、応用自在な "meti" (置く)や、特定の意味がなく ても用法が一定の語尾 "au^" などは、いくら理論的に 考えても思いつかなかったことでしょう。 「国際共通語の思想」(水野義明訳 新泉社)の 「エスペラントの起源」より
気になったのは、「特定の意味がなくても用法が一定の 語尾 "au^"」の部分。 エスペラントの単語の中には、"au^" で終わる幾つかの 語がある。それは、以下の17語である。 (au^, nau^, lau^ は1音節なので入れていない。)                  語源   antau^   ~の前に     ante   (ラテン)   kontrau^  ~に向かって   contra  (ラテン)   c^irkau^  ~のまわりに   cirka  (ラテン)   malgrau^  ~にもかかわらず malgre  (フランス)   anstatau^  ~の代わりに   anstatt (ドイツ)   hierau^   昨日       hier   (フランス)   hodiau^   今日       hodie  (ラテン)   morgau^   明日       morgen  (ドイツ)   baldau^   まもなく     bald   (ドイツ)   ankorau^  もっと      ancora  (イタリア)   apenau^   かろうじて    appena  (イタリア)   kvazau^   まるで      quasi  (ラテン)   preskau^  ほとんど     presque (フランス)   ankau^   また       anche  (イタリア)   almenau^  少なくとも    almeno  (イタリア)   adiau^   さようなら    adieu  (フランス)   ambau^   両方       ambo   (ラテン) 「用法が一定」とは何であろうか、 "au^" が付く語と付かない語の違いは何であろうか。 "au^" が付く語の共通の特徴とは何であろうか。 これらの語は前置詞や本来副詞として使われるのであるが、 "au^" で終わらない前置詞や本来副詞もいっぱいある。 分からないので、とりあえず語源を調べてみた。 語源に "au^" を付けたものが、エスペラントの語になっ ているらしい。共通しているのは、母音で終わったり、 連続した子音で終わっているということ。母音で終わっ たままだと、一般的な母音の語尾で終わる語と紛らわし い。連続した子音で終わると発音がしにくい。そのため、 融通語尾 "au^" で音を整えたのではないかと思う。
エスペラントの外来語  (2006/06/14)
最近の日本語には外来語(カタカナ語)が氾濫している。
もしかしたら、助詞(~が、~の、~を、など)と助動
詞(~だ、~な、~に、など)と代名詞と「する」だけ
を残して、全て外来語(カタカナ語)に置き換えても日
本語として成り立つのではないか。

たとえば、全部英語で置き換えてみよう。
・私は学校へ行った。
 → 私はスクールへゴーした。
・これは赤い本だ。
 → これはレッドなブックだ。
・彼は楽しく話している。
 → 彼はハッピーにスピークしている。
日本語として成り立っている。

日本語の構造は膠着語と呼ばれ、単語に文法的な役割を
する助詞や助動詞などの助辞をつけて、文を構成すると
いう構造である。そのため、助辞さえ付ければ、どんな
単語も受け入れられるのである。それが、カタカナ語が
氾濫する原因になっている。つまり、世界中の言語の持
つ単語すべてを日本語の中に取り込むことが可能なので
ある。

実は、エスペラントもこの膠着語の性質を持っている。
そのため、外来語を受け入れやすい。他の言語の単語を
持ってきて、エスペラントの語尾(-o, -a, -i, -e など)
や接辞(-ul-, -il-, -ant- など)を付けるだけで、
エスペラントの単語が出来上がってしまう。

外来語については、「エスペラントの基礎」の「16条
の文法」の中に規定されている。

16条の文法の第15条 ・いわゆる外来語、つまり、多くの言語で同じ語源から  取り込んでいる語は、エスペラントでもそのままでエ  スペラントの正書法に沿って取り入れる。 ・基礎的な語根から派生語ができる場合は、基礎的な単  語だけを取り入れて、派生語は、エスペラントの規則  に従って作る。
これはエスペラントの将来の拡張性を保証するものであ る。そして、エスペラント自体が最初からこの原則に従 って造られている。エスペラントの単語のうち、エスペ ラント独自のものは語尾、接辞、相関詞だけしかない。 その他はすべて外来語である。 冒頭に、日本語は助詞、助動詞、代名詞、「する」とい う柱だけあれば、他は外来語のみで成り立つと言ったが、 それと同じようなことが、既にエスペラントでは行なわ れている。エスペラントでは、その柱にあたるものが語 尾、接辞、相関詞であり、その他はすべて外来語である。 これは、エスペラントの最もすごいところである。 「エスペラントの造語法」の記事でも語ったがエスペラントの「造語法」「相関詞」には、他の言語には無い大きな力がある。 ザメンホフはエスペラントの開発の経緯を次のように語 っている。
ずっと以前、文法の簡略化の仕事をしていた頃に、語彙 についても経済の原則を適用してみたいと思いました。 単語の意味を一定にしておけば、どんな語形にしても同 じだと思い込んでいたので、単語を作るにも、余分な文 字を減らしできるだけ短くなるように努めました。たと えば、十一文字の "interparoli"(話し合う)は、二文 字の "pa" で表せば充分だと考えたのです。そこで、極 端に短くて誰にでも発音容易な、数学記号のような文字 の組み合わせを作り、その一つ一つに一定の意味を与え ました。(a, ab, ac, ad, ... ba, ca, ... e, eb, ec, ... be, ce, ... aba, aca, ...などなどです)でも、 そんな考えはじきに捨てました。自分で試してみると、 そういう思いつきの単語は習うのがひと苦労で、覚えて いるのはもっと大変なことが、わかったからです。それ で、はやくもそのときに、「語彙の材料は、フランス語 やドイツ語などロマンス、ゲルマン系の言語から取り入 れ、新しい言語の規則性や重要原則に違反しない程度に 修正を加えたものにするべきだ」と、確信をもちました。 この原則に立ってみると、「今ある諸言語には、いわゆ る国際的な単語がげんに大量に存在し、各民族の人々も よく知っていて、将来の国際語の語彙の宝庫にもなるこ と」に、まもなく気がつきました。そこで、もちろん、 私はこの宝庫を利用したのです。 「国際共通語の思想」(水野義明訳 新泉社)の 「エスペラントの起源」より
エスペラントの単語はどのくらいの数があるかと聞かれ れば、世界中の言語が持つ単語すべてがエスペラントの 単語だと答えても間違いではない。今はそうする人がい なくても、そのようなことが可能なのだから。
エスペラントの動詞 "meti"  (2006/06/16)
以前の記事「エスペラントの語尾 "-au^" について」の
続きであるが、"au^" 以外にも "meti" が気になる。

汎用の前置詞 "je" や、応用自在な "meti" (置く)や、 特定の意味がなくても用法が一定の語尾 "au^" などは、 いくら理論的に考えても思いつかなかったことでしょう。 「国際共通語の思想」(水野義明訳 新泉社)の 「エスペラントの起源」より
「エスペラントの基礎(FUNDAMENTO DE ESPERANTO)」の 「練習問題集(EKZERCARO)」の中から、"meti"の使用例を 抜き出してみた。
Oni metis antau~ mi mang^ilaron, kiu konsistis el telero, kulero, tranc^ilo, forko, glaseto por brando, glaso por vino kaj telertuketo. 人々は皿、スプーン、ナイフ、フォーク、ブランデーの グラス、ワインのグラス、布巾から成る食器一式を私の 前に置いた。 Mi metis la manon sur la tablon. 私は片手をテーブルに乗せた。 Grandega hundo metis sur min sian antau~an piedegon, 巨大な犬が大きな前足を私に乗せた。 tubeto, en kiun oni metas cigaron, kiam oni g^in fumas, estas cigaringo. 人々が喫煙する時、 葉巻を入れるパイプは葉巻パイプである。 Vortoj kunmetitaj estas kreataj per simpla kunligado de vortoj; 合成された語は、語の簡単な組み合わせで作られる。
5番目は、kun/met/i という合成語になっている。 「組み立てる、合成する」という意味である。 「知っておきたいエスペラント動詞100」では、 meti の基本義は「物を動かして、新しい位置・状態で 静止させる」とある。 ちなみに meti に当たる英語の単語は put である。 「新感覚★キーワードで英会話」のサイト(現在、サイトなし)には、 put のコア・イメージは、「何かをある所に位置させる」 とある。(Back Number の第3週) これは、「物」と「位置」が意識される単語である。 「物」と「位置」は具体的な物だけでなく、抽象的な事 であってもよい。これが、この単語の応用範囲を広くし ている。だから、日本語の「置く」が持つ意味範囲より も広い領域をカバーしている。「何」を「どこ」に位置 させるかによって、日本語での訳語に違いが出てくる。 上記の練習問題集の文例で説明するとこうなる。 「犬の前足」を「私」に位置させる => 乗せる 「葉巻」を「パイプの中」に位置させる => 入れる 「複数の語」を「一箇所」に位置させる => 合成する さらに、「知っておきたいエスペラント動詞100」に ある文例で見ていこう。 Mi metos sur min novan jakon. 新しいジャケットを着るつもりだ。 「ジャケット」を「私の体」に接して位置させる => 着る meti pos^tmarkojn sur koverton 封筒に切手を貼る 「切手」を「封筒」に接して位置させる => 貼る meti sian subskribon al letero 手紙に署名をする 「署名」を「手紙」へ位置させる => 署名する meti aferojn en ies manojn 仕事を人の手に委ねる 「仕事」を「人の手の中」へ位置させる => 委ねる meti finon al la diskuto 議論を終わらせる 「終了」を「議論」へ位置させる => 終わらせる meti timon en ies koron 人の心に恐怖を植え付ける 「恐怖」を「人の心の中」に位置させる => 恐怖を植え付ける Tiu ideo metis lin en bonan humoron. その考えは彼を上機嫌にさせた。 「彼」を「上機嫌な状態」に位置させる => 上機嫌にさせる 日本語の訳語を見ると、meti の意味は多彩である。 しかし、基本義をちゃんと抑えておけば大丈夫である。 このように meti が応用自在だというのは分かる。しか し、同様なことは英語では put で表現できる。なぜザ メンホフが meti に対して、特別な発見のような言い方 をしているのかが私には分からない。このような応用自 在な動詞は他に fari, preni, doni などがある。 今では、このような基本的な単語の多彩な意味は、基本 的なイメージから派生しているものだという説明がなさ れている。もしかしたら、ザメンホフの時代には、この ような発想はなかったのかも知れない。つまり、ザメン ホフの大発見だったのかも知れない。「新感覚★キーワ ードで英会話」に出演しているネイティブ・スピーカー の人もコア・イメージでの説明には新しい発見があると 言っていた。
エスペラントと英語の動詞の対比表  (2006/06/17)
「知っておきたいエスペラントの動詞100」に載って
いる動詞と、それに対応する英語の動詞の一覧表。

エスペラントの動詞には「基本義」を記載した。
英語の動詞には「新感覚★キーワードで英会話」(現在、サイトなし)にある
「コア・イメージ」を記載した。
英単語の動詞の後ろにある数字は、Back Number の週数
である。


preni      積極的に対象を自己の影響範囲内に捕らえる
  take  01 何かを自分のところに取り込む

doni      所有権・支配権などを他に渡す
  give  01 何かを自分のところから出す

havi      自身に付随させている
  have  01 何かを自分のところに持つ

teni      ある物を自己の影響範囲内から離脱しないように
        とどめておく
  hold  02 何かを一時的におさえておく
  keep  02 何かを比較的長いあいだ保つ

lasi      対象の状態をそのままにする
  let     相手の意志・意向を尊重したり、
        ことが自然に流れるままにさせる
        妨げないでさせる

kapti      速やかに自分の影響範囲に取り込む
  catch  04 動いているものをパッとつかまえる

gajni      (偶然的要因で)望みのものを手に入れる
  gain    (価値あるものを)得る、増す

meti      物を動かして、新しい位置・状態で静止させる
  put   03 何かをあるところに位置させる


fari      物事をおこなってある結果をもたらす
  make  02 何かに手を加えて何かを作る
  do     何かをする

rompi      急な分解によって機能を失わせる
  break  02 力を加えて何か(の形、機能、流れ)をこわす


esti      ある
  be   03 何かがどこかにある

s^ajni     見かけが~である
  seem    ~のように思われる


veni      話者(または聞き手)の影響範囲内に移動して来る
  come  04 何かが視点の置かれているところに移動する

iri       自分の力で移動する
  go   04 何かが視点の置かれているところから離れていく

veturi     乗り物が人を乗せて進む
  ride    (コア・イメージ未掲載)

kuri      速く進行する
  run   04 何かがある方向に途切れることなくスルスルと連
        続的に動く

atingi     隔たりを乗り越えて目的に達する
  reach    対象・目標に届く


sendi      ある物を自分の所から、遠くの他者のもとに移す
  send    送り出す

movi      物を別の位置に移動させる
  move  08 何かが移動する(何かを移動させる)


rigardi     視線をある方向に向ける
  look  05 視線を向ける

vidi      視覚で捕らえている
  see   05 視覚器官がちゃんと働いて、対象を視野にとらえる


au^skulti    耳を傾ける
  listen 06 耳を傾ける

au^di      耳で音を感じとる
  hear  06 聴覚器官がうまく機能して、声・音を聞く


senti      感覚によって知覚する
  feel    (感触を知るために)触れる


diri      口頭で、ときにそれ以外の方法で、事実・考え言
        い表し、伝える
  say   05 何かを言う

informi     情報を伝達する
  tell  05 相手に何かを伝える

paroli     口頭でことばを発する
  speak  05 言語音を出す
  talk  05 言語でやりとりをする


tiri      引き寄せたり移動させたりする目的で張力を加える
  pull  06 力をいれてぐいっと引く
  draw  06 ゆっくりなめらかに引く


fali      上方にある物が落ちる、立っている物が倒れる
  fall  07 落下する
  drop  07 ポッタンと落ちる(落とす)


porti      重みのある物が落ちないように支え持つ
  carry  07 何かを身につけて持ち歩く
  bring  07 何かをある場所に移動させる


resti      そのままであった位置や状態にとどまる
  remain 07 周囲の変化があっても残る
  stay  07 違うところに移動せず、そこにとどまる


kus^i      水平方向に伸びた姿勢で安定して位置している
  lie   08 平らに接して動かない

stari      垂直方向に伸びた姿勢で位置している
  stand    立っている

sidi      下半身が安定した状態で位置している
  sit     (コア・イメージ未掲載)


turni      (対象物自体を軸に回転させて)進む向きを変える
  turn  08 まわして向きを変える

s^ang^i     物や状態を変える、代える
  change 08 別のものに変える


renkonti    人と人とが違った方向からやって来て出会う
  meet  09 あるものとあるもの(2つ以上のもの)が出会う


fermi      閉める、出入りをなくす
  close  09 端と端をくっつけるように閉じる
  shut  09 すきまなくぴしゃっと閉める


levi      対象を高みへ移動させ、または起こして、目立つ
        状態にする
  lift  09 まっすぐ持ち上げる
  raise  09 手にしているものを現状よりさらに高くする


akcepti     差し出された物を同意のうえ受け入れる
  accept   (コア・イメージ未掲載)

ricevi     他者の意思により、あるいは自然のなりゆきで、
        ある物を自己の影響内に取り入れる
  receive   (コア・イメージ未掲載)


ami       愛情を抱いている
  love    (コア・イメージ未掲載)

s^ati      価値のあるものと判断する
  appreciate (コア・イメージ未掲載)

preferi     他との比較のうえ、相対的に好ましいと思う
  prefer   (コア・イメージ未掲載)

plac^i     ある人に好みを感じさせる
  please   人を満足させる


atendi     対象や事象の出現や生起を予期して待機している
  wait    (コア・イメージ未掲載)
  expect   見張って待ち受ける

esperi     望ましいことの実現を心待ちする
  hope    (コア・イメージ未掲載)

dau^ri     行為や状態が持続したまま時間が経過する
  continue  (コア・イメージ未掲載)

c^esi      持続していた活動や事象が持続しなくなる
  cease    (コア・イメージ未掲載)


komenci     継続的な行為・過程の発端を開く
  begin    (コア・イメージ未掲載)

fini      物事や活動を終結させる
  finish   (始めたことをりっぱに仕上げて)終える


koni      体験により知っている
  know    (事実・人・技能など)を知っている

scii      情報・知識を持っている
  know    (事実・人・技能など)を知っている


voli      意志を持つ
  want    (欠けているものが)(必要で)欲しい

deziri     好ましい事象の生起や物の入手を情動的に願う
  desire   (コア・イメージ未掲載)


helpi      だれかが何かをするのに、うまく行くように援助
        する
  help    手を貸す

g^eni      他者の平穏や円滑な活動を阻害する
  trouble   (コア・イメージ未掲載)


kredi      対象の内容・存在・実現などを確実だとみなす
  believe   (コア・イメージ未掲載)

dubi      確信できないが真実ではないと思う
  doubt    (コア・イメージ未掲載)


legi      言語表現を見てその意味を解する
  read    (コア・イメージ未掲載)

skribi     書く、書いて意志を伝える
  write    (コア・イメージ未掲載)


vivi      生命を維持し、活動する
  live    (コア・イメージ未掲載)

morti      生命体が生命を失う
  die     (コア・イメージ未掲載)


demandi     質問する
  ask     ことばを使って物や事を求める

respondi    相手の発言や行動に応じて反応を示す
  respond   (コア・イメージ未掲載)


povi      あることをおこなう能力がある
  can     あることが実現可能である
  may     ある行為や認識に対して、「それを妨げる
        ものがない」ということを示す

devi      (話者の主観、あるいは客観的な基準から)
        ~して当然である
  must    ある行為や認識に対して、「強制力が働き、
        そうせざるをえない」ということを示す


memori     記憶にとどめている
  remember  記憶にとどめていて必要なときに取り出す

forgesi     無意識に記憶・関心の対象でなくしてしまう
  forget   (コア・イメージ未掲載)


disponi     思いのままにする
  dispose   (コア・イメージ未掲載)

okupi      他者に属する物や空間を一時的に自己の所有の下
        に置く、置いている
  occupy   (コア・イメージ未掲載)

regi      ある物や空間を自己の影響下において、その行動
        を思いのままにする
  control   うまく管理する


serc^i     見つけようと努める
  search   (コア・イメージ未掲載)

trovi      未知の物や所在不明の物を新たに認める
  find    (努力してあるいは偶然に)見つける

aparteni    本来の帰属先が~である
  belong   (コア・イメージ未掲載)

aperi      人や物事が視覚的・心理的に射程範囲に入っている
  appear   (コア・イメージ未掲載)

bezoni     必要な物がなくて充たされていない
  need    (コア・イメージ未掲載)

cedi      主張できる権利や立場に固執することをやめる
  cede    (コア・イメージ未掲載)

estimi     他人の人格やおこないを尊び敬う
  esteem   (コア・イメージ未掲載)

g^oji      望ましい物の生起や入手のために、心地よい状態
        にある
  joy     (コア・イメージ未掲載)

interesi    人に興味を抱かせる
  interest  あることに心をひかれ、もっと知りたいあるいは
        関わりたいと思う気持ち

kompreni    意味・性質・状況・真理・方法などについて明確
        な知識を持つ
  understand (コア・イメージ未掲載)

konsili     他の人のためを思って、何かするように言う
  advise   (コア・イメージ未掲載)

ludi      娯楽の、または無為の活動をする
  play    気晴らしや娯楽のための活動をする

manki      あるべき物、必要な物がない、または不足している
  lack    (コア・イメージ未掲載)

montri     物や事柄を他の人に知覚できるように提示する
  show    人前に示す

okazi      ある事態が自発的に生起する
  happen   予期せぬ事が偶然起こる

ordoni     ある行為をおこなうように強制的に求める
  order    順序づけられた秩序

pardoni     罪を赦して、とがめないことにする
  pardon   (コア・イメージ未掲載)

pensi      思考をめぐらしてある判断を下す
  think    (コア・イメージ未掲載)

perdi      意思に反して、自己の所有物を所有しない状態に
        なってしまう
  lose    (コア・イメージ未掲載)

permesi     ある行為をおこなうことを権限に基づいて容認する
  permit   (コア・イメージ未掲載)

peti      物や行動によって好意を示すよう求める
  ask     ことばを使って物や事を求める

provi      ある物が完全か、うまくいくか、を知るために仮
        の行動を起こす
  try     (コア・イメージ未掲載)

prunti     貸借関係を持つ
  lend    (コア・イメージ未掲載)
  borrow   (コア・イメージ未掲載)

sekvi      (空間的、時間的、また論理的に)ある物の後ろ
        からついて行く
  follow   あとに続く

suferi     苦悩・損害を受ける
  suffer   (コア・イメージ未掲載)

surprizi    不意を打って狼狽させる
  surprise  (コア・イメージ未掲載)

timi      恐れ・不安・遺憾の気持ちにより、平気でいられ
        ない
  fear    (危険などに対する)恐怖

vesti      衣服を着用させる
  clothe   (コア・イメージ未掲載)

zorgi      他の人によかれと気遣いをする
  care    注意を向ける(気にかける)こと


行くと来る、goとcome、iriとveni  (2006/06/18)
Sさんがアメリカでホームステイしたときの失敗談。
その家の奥さんに「もうすぐ食事の時間よ」と呼ばれ、
Sさんは「すぐ行きます」と言うつもりで、「I'm going」
と答えた。少しした後、Sさんが食堂に行くと、そこには、
Sさんの分の食事が準備されていなかった。その家の奥
さんは、Sさんの「I'm going」を、「すぐ出かけます」
(だから食事はいらない)と受け取ったからだ。

日本語の「行く」と「来る」、英語の「go」と「come」
の意味範囲は似ているようで、少しずれている。

「go」は「何かが視点の置かれているところから離れて
いく」ことで、
「come」は「何かが視点の置かれているところに移動す
る」ことである。

「行く」は「今自分のいるところから移動する」ことで、
「来る」は「今自分のいるところへ移動する」ことである。

だから、上記の状況の場合、日本語の場合、今自分のい
るところから、食堂へ移動するのだから、「行く」でよ
いのだが、英語の場合、「go」を使うと、「視点の置か
れているところ」=「食堂」から離れることになるから
「出かけます」と受け取られてしまう。この場合、「視
点の置かれているところ」=「食堂」へ移動するのだか
ら、「I'm coming」と言わなければならない。

エスペラントの動詞、iri と veni の持つ意味範囲は、
英語の go と come にほぼ同じである。
「知っておきたいエスペラントの動詞100」では、
「iri」は「自分の力で移動する」ことで、
「veni」は「話者(または聞き手)の影響範囲内に移動
して来る」こととあり、英語の説明と少し違っているが、
これは、説明の観点が違っているためだ。
似たもの動詞「veni/iri」の説明を見ると、英語と同じ
だと分かる。

例えば、友人に電話で呼び出されて「すぐ行くよ」と言 うのは、エスペラントでは "Mi tuj venos!" である。 "Mi tuj iros!" では、「すぐ出かけるよ」であって、 相手の居場所に「到着」することは保証していないこと になる。
エスペラント日本語辞典(予告編)  (2006/06/25)
近日発売される新しい辞典に関するネット上の情報を
まとめてみた。

書名:エスペラント日本語辞典
   Esperanto-Japana Vortaro
編者:エスペラント日本語辞典編集委員会
発行所:財団法人日本エスペラント学会
発売日:7月初旬
定価:6000円+税
特価:2006年12月末までは、日本エスペラント学会に
   直接注文の場合、5000円+税+送料。
   ただし、書店注文の場合は定価。
ISBN:4-88887-044-6 C0587
サイズ:B6
ページ数:1352(付録含む)

辞書の特徴:
・中級学習者の役に立つ、高度な学習辞典
・見出し語は語根方式の配列
  ・語根を主見出しに、合成語を副見出しに。
   合成語でも推察しにくいものは見出し語に親切表示。
   初学者でもまよわずに引くことができる。
  ・主見出し語数:17633語、副見出し語数:26181語
   合わせて見出し語総数:43814語
   (世界最大のPIVの46890語に匹敵する)
・重要語彙にていねいな説明
  ・重要語の2400語をA、B、Cにランク分け
     ランクA:550語
     ランクB:650語
     ランクC:1200語
  ・動詞には自動詞・他動詞の区別、
   アスペクト情報(点動詞・線動詞)、
   動詞型(文型)を表示。
  ・語義の理解を助ける基本義を表示。
・豊富な用例と参照指示
  ・用例は38000例以上を収録。
  ・類義語、関連語などへの参照指示
  ・「類義比較」「関連語」コラム
・充実した付録
  ・現代生活に必要な略語
  ・ISOによる国名・通貨名表記を併記した国名・通貨名
  ・品詞、造語法、文の構成、句読法、数などの文法的な解説
  ・日常のあいさつ
・現代的な需要を満たす新語の採用
  blogo(ブログ)、birda gripo(鳥インフルエンザ)、
  sudoko (数独)など
・実用性重視
  ・今までの辞書ではザメンホフやほか作家の文例を載せているが、
   それは例えば聖書などの数千年前の遠く国の出来事や、
   アンデルセンの童話などの空想上の事柄なので、
   学習者の実用的使用に合わない。
  ・多くの辞書では"ajna"という語に対して"ajna nombro"(乱数)
   という数学の専門用語の例しか挙げていない。
   それ以外でも、これは他の語と自由につなげて使われる。
   "ajna temo"(自由課題)や "ajna formo" (自由形式)など。

参照先:
http://www.jei.or.jp/hp/novaVortaro.html#novaVortaro
http://blog.mag2.com/m/log/0000185468/107310836.html?page=1(リンク切れ)
http://www.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/ro0606.html
http://www.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/ro0608.html

エスペラント日本語辞典(感想編)  (2006/07/01)
6月27日に発売されたとのことなので、さっそく今日(7月1日)
に早稲田の会館へ買いに行ってきました。

画像

普通の語学辞典と同じサイズです。今までの辞典は小型のものだけ
だったので、やっと本格的な辞典が出たんだと感動。

語彙数もPIVに引けをとらないということなので、これさえ持っ
ていれば完璧でしょう。

このエスペラント日本語辞典と、既刊の日本語エスペラント辞典の
セットは、エスペラント学習者の必需品になるでしょう。

この辞典の執筆者の皆様に感謝します。

内容も読みやすい配列になっています。
合成語は改行して、太字にして、+を付けて表示しているので、
分かりやすい。(従来のものは、用例と合成語を区別しにくい)
用例も豊富ですので、文章を作る場合にとても役立ちます。

発見した点:
・入門書には紹介されない接辞が掲載されている。
 pseu^do-, tera-, giga-, mega-, kilo-, deka-,
 deci-, centi-, mili-, mikro-, nano-, piko-,
 -esk-, -ilion-, -iliard-, -iv-, -iz-, -oid-, -oz-
・ri, -ic^- も載っている。
・-unt-, -ut- も載っている。
・-uj/an/o も載っている。
・krom の「以外にも」「以外は」の違いの問題。
・-ebl- と -iv- の違い。
・baldau^ と tuj の違い。
・ajn が neni- の語にも使える。
・c^ar が等位接続詞として使える。(英語の for 相当)
・-um- の意外な使い方。
・je の意外な使い方。
・apenau^ は「ほとんどない」であっても肯定の意味をもつ。
・aliel, alies が載っている。
・neniaj^o, neniigi, neniig^i が載っている。
・golfo「湾」と「ゴルフ」が別語源として載っている。
・Nipono「日本」が載っている。
・nu, do が3段論法の接続詞として載っている。
・ne devi の問題が詳しく書かれている。

エスペラントと英語の前置詞・副詞の対比表  (2006/07/02)
エスペラントと英語の前置詞・副詞の一覧表。

エスペラントの単語には「エスペラント日本語辞典」から「基本義」
を記載した。
英語の単語には「新感覚★キーワードで英会話」(現在、サイトなし)にある
「コア・イメージ」を記載した。
英単語の後ろにある数字は、Back Number の週数である。


en        対象の内部
  in    10 空間内
ekster      対象の外部
  out    12 (内との対比で)外に
el        対象の中から外へ
  from     (物事の起点を示して)~から
de        起点・発生源
  of    11 切っても切れない関係
  from     (物事の起点を示して)~から
  since     事柄の起点を表す
  by      ~に近接して(受け身文の行為者)
da        対象の数量的指定
  of    11 切っても切れない関係
g^is       範囲の終端
  by      ~に近接して(~までには)
  until     (時間の終点を示して)ある時点まで
sur        対象の表面に接して
  on    10 接触関係
for        場所からの離脱や視野からの消失
  off    12 (接触との対比で)分離して
  away   12 ある地点から離れている
c^e        対象と近接した位置関係
  at    10 場所(~のところに)
al        (基本義未掲載)~へ
  to    11 対象に向き合って(相対して)
per        道具・手段
  by      ~に近接して(手段)
  with   11 何かとともに(道具)
kun        対象の随伴・共同
  with   11 何かとともに
sen        対象の不在
  without    ~なしで
por        目的への適合
  for    11 対象に向かって(を指して)
pro        動機・理由
  for    11 対象に向かって(を指して)
pri        対象との関係一般
  about   13 ある対象の周辺(あたり)に
c^irkau^     対象の周囲・周辺
  about   13 ある対象の周辺(あたり)に
  around  13 (ぐるっと一回りするような)周囲に
antau^      対象の前方の場所・部分
  before    ~より前に
post       対象よりも後に置かれる時間や場所
  after     基準(時)よりあとに
super       対象から上方に離れた位置関係
  above     ある基準点から離れて上に
  over   13 弧を描くように超えて
  up    12 基準から上のほうに(移動する、ある)
sub        下側
  under   12 何かの下に
  down   12 基準から下のほうに(移動する、ある)
apud       (基本義未掲載)~のそばに
  by    10 ~に近接して
preter      対象の近くでの通過・移動
  past     (コア・イメージ未掲載)~を通り過ぎて
tra        対象空間の貫通的移動
  throught 13 空間内を通り抜ける
trans       対象の向こう側
  across  13 平面を横切って
lau^       (基本義未掲載)~に沿って
  along   13 何かに沿って
kontrau^     対象と向かい合った関係
  against    ~に対抗して
krom       言及対象からの除外
  except    ~を(例外として)除いて
  besides    ~を横に置いて
inter       複数の対象の間
  between    2つのものの間に
  among     (囲まれて)~の間に
dum        継続した時間の範囲
  for    11 対象に向かって(を指して)
  during    ある特定の期間の間に
malgrau^     対象との因果関係に逆らって
  in spite of  (コア・イメージ未掲載)~にもかかわらず
anstatau^     (基本義未掲載)~のかわりに
  instead of  (コア・イメージ未掲載)~のかわりに
po        対象の数量的配分
je        意味不定


エスペラントの文体  (2006/07/04)
エスペラントの簡易性(simpla)と論理性(logika)について

La vera stilo Esperanta estas nek slava, nek germana, nek romana, エスペラントの本当の文体は、スラブ語系でもなく、 ゲルマン語系でもなく、ロマンス語系でもない。 g^i estas - au~ almenau~ devas esti - nur stilo simpla kaj logika. それは-そうであるべきなのだが-簡単で論理的な文体だけだ。 La stilo Esperanta ne imitas blinde la stilojn de aliaj lingvoj, エスペラントの文体は他の言語の文体を盲目的に模倣せず、 sed havas sian karakteron tute specialan kaj memstaran, まったく特別な自立した性質を持つ。 "Lingvaj Respondoj" L. L. Zamenhof 「言葉についての応答」L・L・ザメンホフ PRI LA ESPERANTA STILO 「エスペラントの文体について」より
*注釈 スラブ語系 - ロシア語、ポーランド語、ブルガリア語など   東ヨーロッパ系の言語。 ゲルマン語系 - ドイツ語、オランダ語、英語など   共通ゲルマン語から分派・発展したと考えられる言語。 ロマンス語系 - スペイン語、フランス語、イタリア語など   ラテン語に由来する言語。 エスペラントは、語彙はロマンス的で、文法は英語的で、 文体はスラブ的だと言われる。 確かに、語彙の80%はロマンス語系から採用されている。 これは、昔のヨーロッパの共通語がラテン語だったため、 ヨーロッパの各言語に共通な単語を選ぶと、ラテン語由来の単語、 つまりロマンス語系の単語が多くなってしまうからだ。 ゲルマン語系からは15%しか採用されていないが、 エスペラントの単語の75%が英語の単語に似ている。 これは英語にも多くロマンス語系の単語が入ってるからである。 文法も英語の簡単な文法を参考にしたといわれている。 これもエスペラントを簡単なものにしたいということ の表れである。しかし、英語の文法をそのまま取り入れ なかったのは、エスペラントには英語に無い形容詞の複数語尾(j)、 対格語尾(n)があることからもわかる。 文体については、スラブ語系がより簡単な語順、つまり、 エスペラントの語順により近い語順を持つというだけだ。 つまり、エスペラントが、何々系に似ているという現象は、 すべて、エスペラントの簡易性を得るために起こったもの であるということである。 だからザメンホフは上記の「エスペラントの文体について」の中で、 「エスペラントの文体はスラブ語系そのものだ」という意見に対して、 次のように反論している。
Por ekzemplo mi citos al vi pecon de unu el tiuj leteroj, kiujn mi ofte ricevas de rusoj, 例えば、私がロシア人からしばしば受け取る手紙の一つの 一部分をあなたに引用しよう。 kiam ili ellernis la gramatikon kaj vortojn de Esperanto, 彼らはエスペラントの文法と単語を習得したとき、 sed ne konas ankorau~ g^ian stilon kaj tradukas lau~vorte el sia nacia lingvo. その文体をまだ知らないで、自分の民族語から逐語的に翻訳する。 Komparu la stilon de tiu c^i peco (gramatike kaj vortare senerara!) kun la stilo Esperanta, この部分の文体(文法的、語彙的には間違いない!)と エスペラントの文体を比較しなさい。 kaj tiam vi tuj vidos, kiel erara estas la opinio de kelkaj personoj pri la “slaveco” de la Esperanta stilo: エスペラントの文体がスラブ的だという何人かの意見が どうして誤りであるか、あなたはすぐにわかるだろう。 “Favora Regnestro! 「好意的な君主! Honoro havas alkus^igi, 名誉が置かれることを持ちます。 kio lau~ kau~zo de antau~skribita al mi kun kuracisto kuraco 医者の治療とともに私のに前書きされた原因にしたがって、 mi en efektiva tempo ne en stato elpleni de donita kun mi al vi promeso; 私は、実在の時間の中では、私とあなたに与えられた約束を果たせる 状態の中にありません。 apud kio postaperigas, そのそばで後で表します。 ke mi turnos sin al domo tra du monatoj, 私は2ヶ月を通して自分を家に帰します。 ne pli frue de fino de Au~gusto”. 8月末より早くなることはありません。」 Tiu c^i sama peco en stilo Esperanta sonus tiamaniere: これと同一の部分はエスペラントの文体ではこういう 風になるだろう: “Estimata sinjoro! 「尊敬される紳士! Mi havas la honoron raporti al vi, 私はあなたに報告する名誉を持っています。 ke kau~ze de kuracado, rekomendita al mi de la kuracisto, 医者が私に推薦した治療のため、 mi en la nuna tempo ne povas plenumi la promeson, kiun mi donis al vi; 私は今の時間では私があなたにした約束を果たすことができません。 mi ankau~ sciigas vin, 私はまたあなたに知らせます。 ke mi revenos hejmen post du monatoj, 私は2ヶ月後に家へ帰ります。 ne pli frue ol en la fino de Au~gusto”. 8月末より早くなることはありません。」
前半のロシア語からの逐語訳は、文の構造がめちゃくちゃで、 非常に分かりにくい。これを見ると既存の民族語の文体が、 いかに複雑で、非論理的かが分かる。 ザマンホフが国際共通語に民族語を使わずに、自ら作った言語を 使おうとしたのは、既存の民族語には、簡易性(simpla)と論理性 (logika)が欠けていたからである。既存の民族語から、簡易性と 論理性の部分は取り入れた。その部分はエスペラントが、何々語 系に似ているといわれる点である。しかし、その性質をそのまま 採用はしなかったのである。エスペラントの言語構造は、徹底的 に、簡易性(simpla)と論理性(logika)が追求されている。 詳しくは以下のサイトを参照のこと。 エスペラントの学習容易性と論理性 http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/esp01.htm エスペラントで論理的でないものを民族語から取り入れてしまった 例としては、ne devi も devi ne も禁止を表すというものがある。 論理的に見れば、ne devi は義務の否定だから「しなくてもよい」 になるはず。でも、どちらも「してはならない」という意味になる。 英語の場合、don't have to は「しなくてもよい」となり、論理的 であるので、英語以外のどこかのヨーロッパの言語の影響だろう。 日本語では、「しないべきだ」と「するべきでない」がどちらも 禁止をあらわすので、エスペラントの場合と似ている。
EUとエスペラント  (2006/07/09)
以前から、EU(ヨーロッパ連合)の中では、エスペラントを
公用語にしようという動きがある。

98年10月31日の朝日新聞朝刊では、EU議員626人中
120人がこのことに賛成していると報じられた。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/esp-siryo4.htm

最近では、2004年4月のRondo Harmoniaの
メーリングリストに次のような記事が載せられた。
http://mylab.ike.tottori-u.ac.jp/~broker/esp-rh/ml/700/769.html(リンク切れ)
そして、先週の木曜4月1日ですが、ストラスブルグでの全EU議員に よる投票で、エスペラントを橋渡し言語として継続的に審議すべき だという議員が、英語推進派を越えたと、UEA会長から報告してき ました。エスペラントがEU議会で取り上げられたのは、歴史上始め てのことで、「エスペラント誕生以来117年ぶりの快挙だ」と喜び のメイルが届きました。
始めは4月1日という日付が気になったが、情報経路が明確に示さ れているので、信用できる情報だと思う。 一方、今年の6月には、EUの公用語が英語に決まったという 怪情報が流れたが、こちらはガセネタだったらしい。 そのことは「中四国だより」416号に報じられている。 http://blog.mag2.com/m/log/0000185468/107375246.html(リンク切れ) EUでのエスペラントの必要性については、下記のサイトが 詳しいので、参照してほしい。 「みんながわかり合える、よりよい世界」(現在、サイトなし) 注)このサイトに掲げられている数字に、誤訳が見られる。 「エスペラント語を話す人は何人いる?」のページ。   「2万人」は「200万人」の間違い。 「ラテン語」のページ。   「600万人」は「6億人」の間違い。 このサイトでは誤訳の問題が取り上げられているが、 まさにその問題が出ている。 エスペラントが役に立たないという意見があるのは、エスペラント の使用人口の問題であって、エスペラントそのものの問題ではない。 つまり、エスペラントが役に立たないから使用人口が少ないのでは なく、使用人口が少ないから役に立たないのである。 もし英語の使用人口が100万人しかいなかったら、 英語は役に立たないものになるだろう。 エスペラントをEUの公用語にするのが難しいと言うのであれば、 EUに加盟するすべての国の中学校で、週3回、エスペラントの 学習の時間を設けると、EU議会で決定してくれるだけでいい。 10年後にはエスペラントは使用人口1億の役に立つ言語になる。 上記のサイトでは、次のように書いている。
平均的な日本人や中国人の場合、2000時間にものぼる英語学習を経 ても、英語を実際に使えるようになるだけの十分な知識を得られま せん。しかもまだ英語の発音について、問題が残っています。 エスペラント語であれば、今までの例から、アジアの若者でも平均 250時間の教育を受けると、発音の問題もなく、英語よりはるかに 上手に話せるようになることがわかっています。
英語の場合、学校の開校日が年200日あったとして、 毎日1時間勉強しても10年かかる。 しかし、エスペラントだと、1年半で習得できる計算になる。 英語の場合は、それだけ時間をかけても、習得が難しいことが 書かれている。
西ヨーロッパ6カ国で行われた調査結果によれば、一般的な難易度 の英文を十分に理解できたのは、全体のたった7%にすぎなかった そうです。
一方、エスペラントの方は次のような例が書かれている。
私は、ヨーロッパ山村の農家の子どもたちが、たった6か月エスペ ラント語を習っただけで、日本の人たちと話したり笑ったりしてい るのを目にしました。
スウェーデン、ウプサラ大学のクリステル・キーゼルマン教授 (Christer Kiselman)は、中国の大学でエスペラント語を使って 数学を教えたそうです。 「学生たちは6年間も英語を勉強してきたが、自分の言いたいこと を英語では表現できず、私にも彼らの言っていることが理解できま せんでした。しかし、エスペラント語を8か月も勉強すると、私た ちはお互いに話せるようになりました。」
エスペラント語ができるイギリス人が言っていた話ですが、エスペ ラント語が話せると言う日本人とエスペラント語で話す方が、英語 ができると言っている日本人の英語を理解するより簡単だそうです。
日本の場合は大学入試の外国語は、センター試験の場合、英語、 フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語があるが、その選択枝に エスペラントを加えてくれるだけでいい。そうすれば、多くの受験 生が学習に時間がとられないエスペラントを選ぶことになるだろう。 どれだけの受験生が救われることか。英語の成績が悪くて、父親 に怒られるのが怖くて、自分の家に放火してしまった少年の事件 があったが、そのような例も無くなることだろう。
エスペラントで一番長い単語  (2006/07/21)
英語で一番長い単語として、電子辞書の英辞郎には、
次の単語が載っている。
http://www.alc.co.jp/

pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis 塵肺症 ◆【語源】pneumono(肺)+ultra(超)+micro(微細な) +scopic(見る)+silico(石英)+volcano(火山) +coni(ほこり)+osis(病気の状態) ◆英語で一番長い単語
あまりに長いので実際には、pneumoconiosis を使っている。 エスペラントでも、pneu^mokoniozo という。 エスペラントで一番長い単語を、今公開されている電子辞書から 探してみた。 「電単」では、   desoksiribonukleata   デオキシリボ核酸の 「実用エスペラント小辞典」では、   dokumentoprilaborilo   ワードプロセッサ エスペラントは造語法が使えるので、いくらでも長い単語が作れる だろう。また、外来語をエスペラント風の綴りにして、受け入れる ことができる。上記の英語の一番長い単語をエスペラント風にする と、あっという間にエスペラントで一番長い単語のできあがり。   pneu^monoultramikroskoposilikovulkanokoniozo
あるアイヌの問いかけ(言語権について)  (2006/07/24)
2006年7月22日、NHK教育テレビで、アイヌ文化の
保護活動を行なっていた萱野茂さんの生涯を特集していた。

北海道旧土人保護法のもと、保護という名目で、同化政策が行なわ
れてきた。つまり、アイヌの人たちから、住む場所、主食となるサケ、
言葉、文化が奪われてきたのである。

萱野さんの活動は言葉の保存から始まる。
私財を投じて、お年よりのアイヌ語をテープレコーダーに記録したり、
アイヌ語教室を開いたり、アイヌ民話やアイヌ語辞書の出版などを
行なっていった。

86年の中曽根総理の「日本は単一民族国家だ」という発言に
見られる通り、アイヌは先住民族として認められずにきた。
94年、萱野さんが国会議員になると、この状況に変化が起こった。
97年3月、二風谷ダム訴訟で、初めて司法の場で、
アイヌは北海道の先住民族と認められた。
97年5月、北海道旧土人保護法が廃止され、
アイヌ文化振興法が制定された。
98年、萱野さんが国会議員引退。

今年の5月、萱野さんは亡くなった。
最後は、記録したテープからの翻訳作業を行なっていたという。

この番組を見て驚いたのは、これまで、一般の日本人に、
日本は複数民族国家という意識がなかったことである。
90年代になって初めて、少数民族に対しての意識が向き始めた
のである。

よく考えてみると、私自身もエスペラントをするまでは、
そのような意識がなかった。

日本語エスペラント辞典第2版(88年7月)の付録、
「世界の国ぐに」の日本の欄に、私は衝撃を受けたことがある。
この辞書には、国民名と民族名を明確に意識していたのだ。

日本 Japanio : Japana Regno 国民名 japanianoj(日本人) 民族名 japanoj(大和民族), koreoj(朝鮮民族), ainoj(アイヌ民族)
日本国籍を持つ者としての、japaniano、 大和民族としての、japano が区別されている。 世間が意識するずっと以前に、エスペラントはその違いを 表現していたのだと感動した。 琉球民族が抜けているのが気になる。大和民族と琉球民族を区別 しない考えもあるようなので、このようにしたのかもしれない。 日本語と琉球語との間には方言ほどの違いしかない。 一方、アイヌ語や朝鮮語は日本語との相違点が多い。 しかし、沖縄の人たちは、ウチナンチュ(沖縄の人)と ヤマトンチュ(大和の人)という風に区別をしている。 言語的には違いは少なくても、文化的には違いが大きい気がする。 日本には、少数ではあるが、120万人の琉球民族、 100万人の朝鮮民族、2万5千人のアイヌ民族の 人たちが住んでいるのである。 小渕総理の時代、英語を日本の第二公用語にしようという話しが 持ち上がったことがあった。しかし、英語を母国語にする人が、 これらの民族の人たち以上いるとは思えない。スイスでは、 5万人が話すレトロマン語に公用語の地位を与えている。 英語を公用語する前に、日本の少数民族の言語を公用語に するほうが先である。 20世紀前半までは、強い民族が弱い民族を支配して同化させてい くということは、当たり前のように行なわれてきた。 優れた民族が、その優れた文化を、未開な民族に伝えて行くという 意識があったらしい。「ダーウィンの進化論」の考えによって、 優れた民族とその文化が世界を支配し、未開な民族と文化は、 淘汰して消えていくのが自然の摂理だと考えられるようになった。 しかし、その考えの暴走がナチスのユダヤ人虐殺に至ったのだ。 大戦後、このような考えは間違いであることが言われ始めた。 1948年の国連総会で採択された世界人権宣言は、 そのようなことを謳っている。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/index.html
第2条1 すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、 民族的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに 類するいかなる事由による差別をも受けることなく
ここにある通り、民族、出身、人種、性による差別は、今まで、 かなり改善されてきた。しかし、言語については、まだ意識は低い。 今も多数派言語が少数派言語を食いつぶすという現象が続いている。 その一つが英語を日本の第二公用語にしようと意見に現れている。 言語に関する人権を「言語権」という。 言語権が意識されはじめたのは、1990年代になってからである。 1996年に世界のさまざまなNGO(非政府組織)が集まって、 言語権に関する声明が出された。 「言語の権利に関する世界宣言」(世界言語権宣言) http://www.tooyoo.l.u-tokyo.ac.jp/ichel/udlr/udlr-j.html(リンク切れ) https://gengo21.com/archives/3424 「世界言語権宣言」とは http://www.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/ro9901.html エスペランティストも、これに合わせて、1996年の世界大会で、 言語権に関する声明を出した。 「国際語エスペラント運動に関するプラハ宣言」 http://www.sal.tohoku.ac.jp/~gothit/manifestoprago.html 言語権という発想はエスペランティストにとっては新しいことではない。 1913年の「人類人主義宣言」で既に述べられている。 http://www.tt.rim.or.jp/~ishato/jap_esp/homaran.htm
私とは違う言語を用いている人々に私の言語を強要する 過ちを犯さないために, またその人々が私に彼らの言語を強要することのないことを 希望する道徳的な権利を私が保有するために
これをエスペランティトでない人が行ってるのは、新しいことである。 言語権の改善は始まったばかりで、その中で、エスペラントは、 大きな役割を担っていくだろう。
ブラジルとエスペラント  (2006/07/29)
エスペラントが盛んな国は、ポーランド、フランス、ブラジルのようだ。
アジアでは日本、中国が比較的盛んと聞いている。

「ザメンホフ通り」という本によると、
ザメンホフ・エスペラント・関連記念物(ZEO)は、
フランスが181個、ポーランドが173個、ブラジルが172個の順。
その内、ザメンホフの記念碑に絞ると、
ブラジルが28個、ポーランドが15個、フランスが5個の順である。

ポーランドはエスペラントの発祥の地である。
フランスは第1回世界大会が行なわれたりした
エスペラント発展の地であるから、
エスペラントが盛んなことは分かる。
しかし、ブラジルが盛んなことは意外だった。

「ザメンホフ通り」の中で、著者の一人、ザメンホフの孫である
ザレスキ・ザメンホフ氏はブラジルの印象について次のように、
語っている。

ブラジルを訪れたときに、私はその国では人種差別がなくなってい ることを知って、うれしく思いました。なぜなら、人種の混合が並 みはずれた人類の変化を創りだすことにつながるからです。多分、 将来の人類の新しい生物学的なモデルが、ここブラジルに生まれて いるのでしょう。
差別の少ない理想的な地ではエスペラントは根付きやすいのかも知れない。 インターネットの世界でも、ブラジルは目立っている。   エスペラント最大の総合ポータルサイト(現在、サイトなし)   エスペラント初のインターネットテレビ(現在、サイトなし)   エスペラントの優れた無料学習ソフト(現在、サイトなし) いずれも優れたサイトである。 エスペラント・ラジオ・アーカイブ(現在、サイトなし)を見ると、 エスペラントのラジオ放送を実施している国は次のものがある。   フランス 8局   ドイツ 3局   スペイン 3局   ブラジル 2局   ポーランド 1局   イタリア 1局   バチカン 1局   オーストリア 1局   オーストラリア 1局   エストニア 1局   パナマ 1局   キューバ 1局   カナダ 1局   中国 1局   韓国 1局   無国籍 2局 日本がないのが残念だ。
エスペラントのバージョン  (2006/08/09)
インターネット上の百科辞典、Wikipediaの「エスペラント」の
ページはよく出来ていて、秀逸な記事にも選ばれた。

Wikipedia「エスペラント」

このページを茶化したサイトがある。

Uncyclopedia「エスペラント」

ほとんどがくだらない文なのだが、エスペラントをソフトウェアに
なぞらえ、バージョンという言葉を使って説明しているところが、
おもしろい。

ザメンホフはバージョンアップを重ね1905年にエスペラ ントの最終バージョンをリリースした。 フランスのボーフロンとクーチェラが、これがエスペラ ントの最後のバージョンと銘打って改造案となる「イド」 を発表し、運動は分裂の危機に見舞われた。特に熱心だ った指導者が分離派に転向してしまったため、エスペラ ントの擁護派は指導者無しの戦いを強いられ「エスペラ ントは隊長なしの軍隊、イドは隊長だらけの軍隊」とい われた。しかし、最終的に数で勝るエスペラント擁護派 が勝利した。
今回、私もエスペラントをソフトウェアのバージョンになぞらえて、 語ってみたいと思う。 まずは、ソフトウェアのバージョンについて説明する。 ソフトウェアが最初に出来あがって、製品として世に出す前に作る のがα(アルファ)版とβ(ベータ)版である。 α版は社内検証用で、これを元に多くの不具合を取る。 β版は社外検証用で、一般使用者に広く使ってもらって、社内では 見つけられなかった不具合を取るのである。 そして、内容が確定された正式版が製品として販売される。 その後、幾度か改善が行なわれたバージョンがでることがある。 バージョン1、バージョン2というようにバージョン番号があがる。
1878年 α版   Lingwe Universala (世界語)を発表。   ザメンホフは数人の友人にこれを発表した。   プラ・エスペラントとも呼ばれる。 Wikipedia「プラ・エスペラント」 ザメンホフは、翻訳や創作を繰り返しながら、不具合な点を修正し ていった。β版を出すまでに2、3回大きな作り直しをしている。
1887年 β版   Lingvo Internacia (国際語)を発表。   発表はロシア語のパンフレットによって行なわれ、   多くの人に配布された。   これは Unua Libro (第一書)とも呼ばれている。   語根数は915語。 Wikipedia「第一書」 ザメンホフは一般の人たちから、エスペラントの誤りの指摘や意見 を募った。 1894年、集まった幾つかの改善案をザメンホフ自身が取りまとめて、 一般のエスペランティストの投票を行なった。 内容は、対格の除去、複数語尾-jを-sに変える、動詞の活用語尾を -an,-in,-onに変えるなど。結果は圧倒的多数で否決された。 文法事項については、第一書の内容が維持された。 語彙については、若干の変更が行なわれた。 つづりの変更   c^ian → c^iam (いつも)   ian → iam (いつか)   kian → kiam (いつ)   nenian → neniam (決して~ない)   tian → tiam (その時)   speri → esperi (希望する)   vinki → venki (勝利する) 意味の変更   erari (さまよう→誤る)   militi (戦う→戦争する)   forko (熊手→フォーク)   stalo (鋼→馬小屋)   s^tofo (物質→布地)   vaski (成長する→蝋を塗る)   tombi (落ちる→tombo 墓)
1905年 正式版 (バージョン0)   フランスで行なわれた第1回エスペラント大会で、   Fundamento de Esperanto(エスペラントの基礎)が、   変更不可の事項として可決された。   これで文法、語彙の変更ができなくなり、   エスペラントの仕様が確定された。   語根数は2769語。 Wikipedia「エスペラントの基礎」 エスペラント学士院「エスペラントの基礎」
1908年 海賊版   エスペラントを不正改造した Ido が出まわった。
語彙の変更はできないが、語彙の追加は何度か行なわれた。 公認語根の認定はエスペラント学士院で行なわれている。 1909年 第1回公認語根追加 806語(バージョン1) 1919年 第2回公認語根追加 587語(バージョン2) 1921年 第3回公認語根追加 203語(バージョン3) 1923年 公認語根ANALOG追加  1語(バージョン3.1) 1929年 公認語根MIS追加    1語(バージョン3.2) 1929年 第4回公認語根追加 118語(バージョン4) 1934年 第5回公認語根追加  8語(バージョン5) 1935年 第6回公認語根追加  21語(バージョン6) 1953年 公認語根END追加    1語(バージョン6.1) 1958年 第7回公認語根追加  31語(バージョン7) 1974年 第8回公認語根追加 200語(バージョン8) 2007年 第9回公認語根追加 209語(バージョン9) 現時点の公認語根数は4955語。
1974年 簡易版   Baza Radikaro Ofciala(公認基礎語根)が、   エスペラント学士院より発表された。   語根数は2419語。   学習者の便宜を図って公認語根のうち基礎的なものを選定。   重要度をランク1から9に分けている。 ランク1、必須の文法的語179語根 ランク2、101語根 ランク3、121語根 ランク4、151語根 合わせて552語根が「初級者用」 ランク5、154語根 ランク6、241語根 合わせて395語根は「中級者用」 ランク1から6までの947語根が「日常語」 ランク7、289語根 ランク8、456語根 合わせて745語根は「上級者用」 ランク9、727語根は、「おまけ」
エスペラント学士院の公認語根のリストは以下のサイトで 見ることができる。 Akademia Vortaro Serc^i の欄に * をいれ Ek! ボタンを押すと全リストが出る。
Plutono farig^is nano  (2006/08/27)
冥界の王が小人になった。

惑星     planedoj
  水星   Merkuro
  金星   Venuso
  地球   Tero
  火星   Marso
  木星   Jupitero
  土星   Saturno
  天王星  Uranuso
  海王星  Nepturno

準惑星    nanaj planedoj
  冥王星  Plutono
  セレス  Cereso
  エリス  Eriso

小惑星帯  asteroidoj

エスペラントで動詞不定形や文節の補語が副詞になることについて  (2006/09/22)
エスペラントでは、esti 文の主語が文節や動詞不定形の場合や、
無主語の場合、補語に形容詞でなく副詞を用いる。

  Lerni Esperanton estas grave.
    エスペラント学ぶことは重要だ。
  Estas grave, ke vi lernas Esperanton.
    あなたがエスペラントを学ぶことは重要だ。
  Estas varme.
    暑い。

これはロシア語などのスラブ系の言語の影響だと言われている。

菅野裕臣さんは『講演録 言語的多様性の中の国際語を考える』の
中で次のように述べている。

ザメンホフはスラブ人であるということに由来するエスペラントの スラブ語性ですが、これは想像以上に多いのでありまして、例えば 無主語文、つまり主語のない文章があります。英語で言いますと、 "It's warm"にあたる、エスペラントで"Estas varme"。エスペラン トをご存知でない方にご説明しますと、英語の it にあたる語がエ スペラントの文にはありません。そして warm にあたる varma、こ れが varme と副詞形になっているわけです。これなどは、ザメンホ フが言語学者でないことの端的なあらわれであります。スラブ語に おいて無主語文は中性形を用いる、その中性形は副詞と全く同じで あるということに関するザメンホフの誤解、もし誤解でないとすれ ばなんと言いますか、彼には男性形と女性形という物的なものに対 して、中性という事的なものを区別したいという意欲があったため かもしれません。
"Fundamento de Esperanto"(エスペラントの基礎)は英語、ドイツ 語、フランス語、ロシア語、ポーランド語で書かれている。ザメン ホフがロシア語やポーランド語のスラブ系の言語しか知らなかった としたら、標記の件がロシア語からの影響による誤りだと言えるだ ろう。しかし、それ以外の言語も堪能だったので、この見方は正し くないと思う。 "Lingvaj Respondoj"(言語についての質疑応答)の "Pri la Esperanta stilo"(エスペラントの文体について)の中で、 ザメンホフは「エスペラントの文体がスラブ的だ」という批判に対 して反論している。 エスペラントの簡易性と論理性を追求した結果、エスペラントの文 体がスラブ的になったのであって、スラブの文体を盲目的に取り入 れたのではないと主張している。 http://esperanto.org/Ondo/L-lr.htm#20stilo(リンク切れ)
あるエスペランティストは、私が著作の中でスラブ語的な文体を使 っていると思っている。しかし、その意見はまったくの誤りである。 スラブ語話者はゲルマン語話者やロマンス語話者よりも、しばしば エスペラントでよりよい文体を使うのは真実である。しかし、これ は、エスペラントの文体がスラブ語的だというからではない。スラ ブ語がより簡単な語順、つまり、エスペラントの語順により近い語 順を持つというだけだ。エスペラントの本当の文体は、スラブ語的 でもなく、ゲルマン語的でもなく、ロマンス語的でもない。簡易で 論理的な文体だけだ。エスペラントの文体は他の言語の文体を盲目 的に模倣せず、まったく特別な自立した形をしている。
つまり、主語が名詞の場合の補語は形容詞、動詞や文節の場合の補 語は副詞という規則は、ザメンホフにとって、論理性を考えた結果 だったのだろう。 どうしても、補語に副詞を用いるのが気持ち悪いというのであれば、 tio で受けたり、名詞を主語に置いて、次のように言えばよい。   Tio estas grava, lerni Esperanton.   Tio estas grava, ke vi lernas Esperanton.   La vetero estas varma. ちなみに「エスペラントの基礎」では次の例文が載っている。
Resti kun leono estas dang^ere.   ライオンと一緒にいることは危険だ。 c^u ne estus al vi agrable havi tian saman kapablon?   そのような同じ能力を持つことがあなたには楽しくないだろうか。 Estus tre bele, ke mi iru al la fonto!   私を泉に行かせることが、とても良いなんて Morti pro la patrujo estas agrable.   祖国のために死ぬことは快い。 C^u hodiau~ estas varme au~ malvarme?   今日は暖かいか寒いか。 estas bone uzadi la vorton "je" kiel eble pli malofte.   "je" という語はできる限りまれに使うのが良い。
「エスペラントの基礎」に載っているということは、 これらは文体は変えてはいけないということである。 目的語と目的語補語の関係にあるときは例外的に形容詞になることがある。 「エスペラント翻訳のコツ」(山川修一)にはこのようにある。
B) 名詞+動詞+不定法・名詞節+形容詞 語順は例文に示す通りである。不定法や名詞節は普通副詞で受けるが、 意味の混乱を防ぐため、形容詞を用いる。 1.Antau^ kelkdek jaroj oni opiniis neebla sendi raketon gxis la luno.   数十年前、月にロケットを飛ばすことは不可能と考えられていた。 2.Multaj studentoj trovas necesa scii la anglan por legi fakan literaturon.   専門文献を読むために英語が出来ることが必要だと考える学生は多い。 3.Mi trovas malfacila paroli antau^ granda au^skultantaro.   私は大勢の聴衆の前で話すのは大変なことだと思う。 4.Mi opinias natura, ke infanoj amu ludi ekstere.   私は、子供が外で遊びたがるのは当然のことだと思う。 [注] Mi opinias nature, ke infanoj amu ludi ekstere. 当然私は、子供は外で遊ぶのが好きでなくてはいけない、と考える。
私の場合、例えば4の文は、次の文の tion が省略されているもの と理解している。   Mi opinias tion natura, ke infanoj amu ludi ekstere. 主語が名詞でないときその補語を副詞にすることの利点 ・命令法(意思法)の文では、補語の語尾で意味が区別できる。   1.Estu varme.  (部屋を)暖めなさい。   2.Estu varma.  (あなたが)暖まりなさい。   3.Estu varmaj.  (あなたたちが)暖まりなさい。   1はもともと無主語の文であり、副詞が用いられる。   環境が暖かくなるようにしなさいという意味になる。   2は「あなた」が省略されたので、形容詞が用いられる。   ちなみに自分の周りに何人かいた場合、自分だけに言われた   のか、みんなに言ったのかは、2と3のように、形容詞の   単複の違いで区別が付く。 ・主語が不定詞句か文節の場合、主語が後置されるばあいが多い。  その場合、esti の次が副詞になっていることによって、後に  主語としての不定詞句か文節がくることがすぐにわかる。 形容詞の複数形語尾もそうだが、エスペラントでのわずらわしいと 思えるような規則は論理性の観点で考えてみると納得がいくことがある。
アカデミーオ第9次公認語根について  (2006/10/30)
エスペラント学士院の第9次公認語根追加の発表が近く行われるようである。
http://www.akademio-de-esperanto.org/oficialaj_informoj/oficialaj_informoj_3_2006.html
1974年に第8次の公認語根の追加があったので、今回は32年ぶりになる。
今は案の段階であるが、今回追加される予定は以下の209語である。

adrenalino   アドレナリン agresi     戦いをしかける,侵略する aidoso     エイズ akupunkturo   鍼治療 alergio     アレルギー algoritmo    アルゴリズム amebo      アメーバ amendi     (法律・議案などを)修正する,改正する anc^o      (管楽器の)リード,簧(した) Antarkto    南極地方 antibiotiko   抗生物質 anuso      肛門 aperitivo    アペリチフ,食前酒 areo      区域 Arkto      北極地方 asbesto     アスベスト aspirino    アスピリン avokado     アボカド bankedo     宴会 baskulo     シーソー beletro     文芸,純文学 bemolo     フラット,変記号(♭) betono     コンクリート bito      ビット bizono     バイソン,野牛 blufi      はったりをかける,虚勢を張ってだます boaco      トナカイ bradipo     ミツユビナマケモノ brito      イギリス国民 brokolo     ブロッコリー burokrato    官僚,役人 cico      (ヒトの)乳首 cirkumcidi   割礼を行う,(男子の)包皮を切除する c^ampiono    チャンピオン c^asio     シャーシー,車台 c^impanzo    チンパンジー c^ino      中国人 defii      挑戦する delto      三角洲 demografio   民勢・人口統計学 detektivo    探偵 dieso      シャープ(#) diskriminacii  差別待遇する dizerti     (軍から)脱走する drasta     効き目の激しい,激烈な drivi      漂流する ekologio    生態学 etikedo     ラベル etno      民族 etnologio    民族学 etoso      エトス eu^femismo   婉曲(えんきょく)語法 eu^kalipto   ユーカリ eu^ro      ユーロ(通貨) farc^o     詰め物 feki      大便をする festivalo    祭典,フェスティバル folkloro    民俗,民間伝承,フォークロア,民俗学 foto      写真 framo      フレーム,枠 frustri     (欲求不満に陥れるようなもの)を奪う furzi      おならをする galaksio    銀河 geno      遺伝子 genro      性,(生物分類上の)属 gic^eto     (受付などの)窓口,切符売り場 glisi      滑空する grafiko     図式表示法,グラフィックス gujavo     ばんじろう hormono     ホルモン ideologio    イデオロギー,観念形態 ikso      エックス inflacio    インフレーション insulino    インシュリン ipsilono    イプシロン Israelo     イスラエル japano     日本人 j^azo      ジャズ j^okeo     騎手,ジョッキー j^udo      柔道 kalcio     カルシウム kampanjo    野戦,キャンペーン kancero     ガン,いちょうがに,胴枯れ病,根瘤(りゅう)病 kanguruo    カンガルー kapsiko     とうがらし karoserio    車体上部 kasedo     (音楽などの)カセット katapulto    カタパルト(投げ槍や飛行機などの発射装置) kibuco     (イスラエルの)キブツ(共同体) kimono     着物 kiosko     あずまや(風の売店) klitoro     陰核 klono      クローヌス(間代(かんたい)),クローン(分岐群) kodo      コード,法典,遺伝暗号 kodekso     局方,古写本 kohera     凝集した,(論理が)首尾一貫した,(光が)干渉性の komenti     論評する,解説する kompakta    ぎっしりつまった komputi     (コンピュータで)演算する,処理する kondomo     コンドーム konekti     接続する kooperativo   協同組合 kramfo     けいれん kromosomo    染色体 kuo       キュー(ラテン文字Q,q) kurzo      相場 kvakero     クェーカー教徒 kvorumo     必要定足数 lanc^i     発進させる,進水させる lasero     レーザー(光線) leu^kemio    白血病 limfo      リンパ,樹液 magnetofono   テープレコーダー majonezo    マヨネーズ majusklo    大文字,頭文字 mandarino    マンダリン mango      マンゴ manioko     カッサバ mateo      マテ茶 matrico     原型,鋳型,紙型,行列,母岩 melongeno    ナス menstrui    月経 mesag^o     メッセージ minusklo    小文字 mirag^o     蜃気楼 modemo     モデム muldi      鋳造する nano      小人 omag^o     忠誠の誓 organika    有機の orgasmo     オルガスム pankreato    すい臓 papriko     トウガラシ pavilono    大テント,パビリオン penicilino   ペニシリン peniso     ペニス periskopo    ペリスコープ,潜望鏡 persvadi    説き伏せる petalo     花びら pico      ピザ pij^amo     パジャマ pikniko     ピクニック pingveno    ペンギン pisi      小便する poleno     花粉 polpo      タコ prestig^o    威信,信望,名声 prostato    前立腺 proteino    タンパク質 pubo      恥部 pulpo      果肉,髄 pundo      ポンド(イギリスの通貨単位) radaro     レーダー radiografi   放射線写真を撮る rakedo     ラケット reg^isoro    (舞台や映画の)監督 rezolucio    決議(文) roboto     ロボット rong^i     (歯をノミのように使って)かじる rotacii     回転する,自転する ruleto     ルーレット saksofono    サキソフォン salikoko    エビ satelito    衛星 sesio      (議会の)会期 silicio     ケイ素 skani      スキャンする skec^o     寸劇 skolto     見張り番,斥候,偵察,ボーイ(ガール)スカウト specifi     (特性を正確に)規定する spekti     (催しなどを)見る,眺める stabila     倒れにくい,分解(化学変化)しにくい stagni     とどこおる statuto     会則,定款 stereofonio   ステレオ音(立体音)技術 stiri      (乗り物などを)操縦する stoko      在庫 strangoli    のどをしめる sugesti     暗示する,示唆する s^alti     スイッチを入れる s^enoprazo   アサツキ s^oki      ショックを与える s^tormo     暴風 taksio     タクシー tanko      戦車 tapiro     バク telepatio    テレパシー teniso     テニス testo      知能テスト,適性検査 tonsilo     扁桃(腺) torturi     拷問する transistoro   トランジスタ treti      踏む tribo      種族,部族 tukano     オオハシ(鳥) tumoro     腫瘍 unio      同盟,連合 Usono      アメリカ合衆国 vagino     膣(ちつ) vakuo      真空 valuto     為替相場 vando      隔膜,隔壁 versio     (各人の)見解,~語版,バージョン virtuala    潜在的な,虚の,仮想の viruso     ウイルス vitamino    ビタミン vodko      ウォッカ vulvo      陰門 zipo      ファスナー,ジッパー
最新の時事用語や技術用語が反映されている。 しかし、なぜ今まで入ってなかったのかと思うものもある。   pico, rakedo, tenisoなど。 国名や民族名で今回入ったものがある。   c^ino, japano, Usono, britoなど。 日本語が語源のもの   j^udo, kimono お下品な語も生活に必要なので、今回入ったのだろう。   feki, pisi, furzi nanoが入ったのは矮小惑星(nana planedo)の影響だろうか。
エスペランチスト4態  (2006/11/04)
esperantisto 現在エスペラントを使用、学習している人
esperintisto エスペラントをやめてしまった人
esperontisto 将来エスペラントをすることを決めている人
esperuntisto 口ではエスペラントをすると言っているが、
       なかなかしようとしない人

ゴンドランドのマジ  (2007/02/13)
Mazi en gondolando(ゴンドランドのマジ)
子供向けエスペラント学習ビデオです。
大人が見ても勉強になるのではと思います。
私はまだ持っていないのですが、機会があれば手に入れたいと思っています。

下記の動画は紹介映像です。



「ザメンホフ通り」という本の中でもゴンドランドのマジについて
触れられています。

 ルドヴィコ・ザメンホフがいかに天才であったかを理解したのは、 私がBBC(英国放送協会)制作の語学教育テレビ番組『ゴンドランド のマジ』のエスペラント語版を作ったときのことです。 元の英語版では、文法上の課題をいくつか教えたにすぎないのに、 エスペラント語版では、同じ一時間のプログラムの中で、 言語の基本構造をすべて説明することができたのです。  エスペラントが人間の言葉の手本であるということについては、 既にお話しました。その論理的な構造のおかげで、言語の全体像が 見えてくるのです。ちなみに、エスペラントは教育的価値が強調さ れることが多いのですが、それはこの言語構造に基づいているのです。
「エスペラントな日々」にも紹介されています。 http://blog.goo.ne.jp/esperakira/e/29479b79b6bf9ad2024cee4108324848 http://blog.goo.ne.jp/esperakira/e/28704fac87e1fcb7b0b3bcb6b534e416
リナックスとエスペラント  (2007/03/04)
エスペラントと英語の関係は、コンピュータの基本ソフトのリナッ
クスとウインドウズの関係によくたとえられる。

リナックス(Linux)はボランティアたちの手で作り上げられた基本
ソフトなので、だれでも無料で使用できるように提供されている。

最近、企業や自治体では、リナックスを導入しようという動きがあ
る。システムを導入しようとするときにウインドウズでは、ソフト
ウェア自体が高価だし、ウィンドウズが高スペックのハードウェア
を要求するので、ハード、ソフト合わせて高価になる。一方、リナ
ックスはソフトは無料だし、低スペックのハードウェアでよいので、
ハードも安価なものや、中古のもので済む。そこで、コンピュータ
の導入費用を抑えるためにリナックスが検討され始めたのである。
中国ではリナックスの普及がかなり進んでいると聞く。

具体的な数字をあげると、
Windows Vista の場合、
  基本ソフトとワープロ、表計算などの事務処理ソフトを合わせ
  ると10万円ほどかかる。
  ハードは1GHz以上のプロセッサ、1GB以上のメモリ、40GB以上の
  ハードディスクを要求する。
Linux の場合、
  基本ソフトと事務処理ソフトはネット上で無料で提供されてい
  る。ただし、ネットから集めて設定するにはある程度の知識が
  必要なので、設定の簡単なパッケージが売られている。それも
  高価ではなく Turbolinux の場合、16,800円である。
  ハードは450MHz以上のプロセッサ、64MB以上のメモリ、
  3GB以上のハードディスクを要求する。

これにならって、エスペラントと英語についてみてみると、

エスペラントはリナックスのように、ボランティアたちによって発
展してきた言語である。言語の開発者のザメンホフは作者としての
権利を放棄して、だれでも自由に無料で使えるようにした。エスペ
ラントの講習会も会場費と教材費以外は無料で行なわれている。

エスペラントは非常に簡単な作りになっているので、習得に時間が
かからない。時間がかからないということは、学習費がかからない
ということである。英語は習得に時間がかかるので、親は子供に英
語を学ばせるのに高いお金をかけている。多くの英会話学校や塾が
商売として成り立っていることからもわかることである。

具体的な数字をあげると、
英語の場合、
  アジア人が習得するのに2000時間かかる。
  英会話学校 NOVA の場合、1回40分、25回で、入会金、授業料、
  教材費を合わせて約16万円かかる。
エスペラントの場合、
  アジア人が習得するのに250時間かかる。
  あるエスペラント会での講習会の場合、1回90分、15回で、
  会場費、教材費を合わせて1万円ほどかかる。
  (ボランティアが教えるので、授業料そのものは無料)

リナックスやエスペラントは安価で時間がかからないという、メリ
ットがあるが、あまり普及していないというデメリットもある。
具体的な数字を示すと次のようになる。

  Windows    シェア 97%
  Linux     シェア 0.4%

  英語     使用者 10億人
  エスペラント 使用者 100万人

ただし、このデメリットは深刻なものではない、シェアは簡単にく
つがえるものだからである。これは歴史が証明している。
以前、日本のワープロは一太郎が一番のシェアをもっていたが、
今は、マイクロソフトの Word が一番のシェアをもっている。
これは、マイクロソフトが Word を Windows と抱き合わせて、
安価で提供したからである。
もし多くの人々が、エスペラントは短時間で安価で学べることを理
解すれば、あっという間に普及するであろう。19世紀以前には国
際語としては英語よりもフランス語のほうが一般的だったのである。

もう一つ、エスペラントとリナックスが似ているのは、携わってい
る人の動機である。

リナックス開発指揮者リーナス・トーバルズ氏はこう述べている。
「僕を含めリナックスの開発者は企業がお金をくれるからやってい
るのではない。面白いからだ。リナックスが正常に動くことに誇り
を持っている。誇りを満たせることが報酬だ。」

英語を学習する人の動機は、良い仕事が得られるという経済的なこ
とが多い。それに対して、エスペラントはお金にならない。エスペ
ラントを学習する人の動機はリナックスと同じように、面白いから
だとか、言語による不平等をなくすことに貢献しているという誇り
だと思う。

英語は習得には多くの時間とお金を必要とするので、英語を使える
のは時間的、金銭的に余裕のある一部のエリートと、英語を母国語
とする人になり、彼らに有利な社会になる。そのような不平等を是
正するのも、エスペラントの役割なのである。

9a Oficiala Aldono al la Universala Vortaro  (2007/03/12)
エスペラント学士院の第9次公認語根追加が
2007年3月10日付けで発表された。

エスペラント学士院の記事
http://www.akademio-de-esperanto.org/oficialaj_informoj/oficialaj_informoj_8_2007.html

当ブログの過去記事
アカデミーオ第9次公認語根について

エスペラント―異端の言語  (2007/07/01)
6月20日に岩波新書で、「エスペラント―異端の言語」という本が
発売された。著者は一橋大学の名誉教授で、言語学者の田中克彦さん
である。

http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0706/sin_k358.html(リンク切れ)
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/43/6/4310770.html(リンク切れ)

この方はエスペラントを肯定的に見てくださる学者さんで、この8月
に横浜で行われるエスペラント世界大会の名誉顧問も引き受けてくだ
さっている。

私がこの方を知ったのは、今から20年ほど前のNHKのラジオ番組
だった。エスペラント造語100周年を記念した番組で、エスペラン
トの解説をしておられた。

http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/esp-siryo1.htm

今回の著作は、エスペラントの歴史を、苦難の歴史として振返って
いる。権力者からは危険な言語として、言語学者からは異端の言語
として扱われてきたエスペラントの歴史である。

ヨーロッパの言語を元に作られたエスペラントは、ヨーロッパに
偏っているので、国際語としてふさわしくないという人がいるが、
この本では、そのエスペラントがアジアで大いに受け入れられて
いる事実を述べている。日本では、知識人たちが熱中し、中国では、
国家レベルでエスペラントをバックアップしている。アジアでは
希望の言語として受け入れられている。

世界の言語は3種類に分類されるという。
「屈折語」はヨーロッパの諸言語で、単語が不規則に語形変化する。
「膠着(こうちゃく)語」は、日本語、朝鮮語、モンゴル語などで、
語が複数の部品を組み合わせて作られる。
「孤立語」は中国語、ベトナム語、タイ語などで、
語が完全に独立し、語形変化をすることがない。
昔の言語学では、孤立語が一番原始的で、最高に進化した形が屈折
語と言われていた。
しかし、現在では、世界の各言語は膠着語に向かって変化している
ことがわかっている。膠着語が一番安定した形なのだと言う。

エスペラントの語構造は完全に膠着語である。1つの単語が、語根、
接辞、語尾という部品の組あわせでできている。この構造は、ヨー
ロッパ語人よりも、膠着語や孤立語を使うアジア人の方が親しみや
すいらしい。その証拠にヨーロッパ語人の作ったエスペラントの改
造案(イド、オクシデンタル、インテルリングアなど)はすべて、
ヨーロッパ語人に親しみやすい屈折語的な形へ変えられている。
このような改造案はアジア人には学びにくくなっているのである。
エスペラントは単語の内容についてはヨーロッパ的だが、単語の
構造についてはアジア的なのだ。それが、アジアで大いに受け入れ
られている要因になっている。

ちなみに、以前エスペラントのメーリングリストで、NHKラジオ 英会話上級のテキスト(2007年3月)に載っていたある内容が 話題になった。「世界共通語としてエスペラント、イド、インテル リングアがあり、中でもインテルリングアは習得が特に容易であり、 平均15日で話し、書くことが可能である」と書かれていたようだ。 自分はこれを読んだとき、絶対エスペラントの方が簡単、インテル リングアは英語と同じくらい習得に時間がかかるのになと思って、 この文章の意味が良く分からなかった。しかし、今回のこの本で、 なぞが解けた。つまり、ヨーロッパ語人にとっては、インテルリン グアの方が習得が容易なのだ。たとえば、島の関連語で説明すると、   英語     エスペラント  日本語   island    insul/o     島   archipelago  insul/ar/o   群島 (ar:集団)   peninsula   duon/insul/o  半島 (duon:半) 群島や半島にarchipelago, peninsulaを用いているインテルリング アの方が、ヨーロッパ語人には断然やさしい。自分が知っている 単語がそのままつかえるので、単語を覚えなおす手間がないからだ。 一方、エスペラントのinsularo, duoninsulo は自分になじみのな い単語なので、いちいち覚えなおさなければならない。エスペラン トの方がヨーロッパ語人には負担が大きいのである。 逆にアジア人にとっては、island, archipelago, peninsulaを別々 に覚えるよりも、insulo から派生して覚えられるエスペラントの 方が断然負担が少ない。
自動詞と他動詞が同形のもの (エスペラント)  (2007/12/22)
動詞には、自動詞と他動詞という区分けがある。
自動詞は目的語を持ち、他動詞は目的語を持たない動詞である。

英語の場合、自動詞と他動詞が同形の場合が多いが、
エスペラントの場合は、-ig-, -ig^i- という接尾辞を使って
自動詞と他動詞の区別する。

  英語 move(動く、動かす)
  エス movig^i(動く), movi(動かす)

  英語 change(変わる、変える)
  エス s^ang^ig^i(変わる), s^ang^i(変える)

エスペラントでも次の場合には、自動詞と他動詞の形は変わらない。

  S^i kantas antau^ la maro. 彼女は海の前で歌っている。
  S^i kantis novan kanton. 彼女は新しい歌を歌った。

  Li dormas en sofo. 彼はソファーで眠っている。
  Li dormis profundan dormon. 彼はぐっすり眠った。

  Li vivas en Saitama. 彼は埼玉に住んでいる。
  Li vivas mizeran vivon. 彼はみじめな生活をしている。

動詞の形が変わらないのは、目的語があってもなくても、
動詞の示す動きをする行為者が変わらないからである。
形が変わるのは、動詞の示す動きをする行為者が変わる場合である。
movi では、動くのは目的語で示しているものであるのに対して、
movig^i では、動くのは主語で示しているものになっている。
しかし、kanti の例の場合は両方とも主語の s^i が歌っている。

特殊な例として次のものがある。

  La monto fumas. 山は煙を出している。
  La cigaro fumas. 葉巻が煙を出している。
  Li fumas cigaron. 彼は葉巻を吹かしている。

3つめの例は煙を出しているのは cigaro なので、fumigi となる
ように思われるが、「タバコを吸う」意味で fumi が使われる場合、
li も、口から煙を出しているので、fumi のままで使うのが通例である。

次のような例もある。

  La pluvo c^esis. 雨が止んだ。
  Li c^esis labori. 彼は働くのを止めた。
  Li c^esigis s^ian laboron. 彼は彼女の仕事を止めさせた。

c^esi は自動詞で、「止まる」という意味がある。
この例が1つめの文である。
目的語の示すものが「止まる」ようにするには、c^esigi を用いる。
この例が3つめの文である。
しかし、目的語が不定詞の場合は、c^esigi でなく、c^esi を用いる。
この例が2つめの文である。
この文では、目的語が示す labori が「止まる」ので、c^esigi を
用いるように思われる。しかし、labori の行為者 li が「止まる」ので、
c^esi を用いる。

通常は自動詞として使われる動詞が一見目的語を持っているように
見える場合がある。

  Mi iris lernejon. 私は学校へ行った。
  S^i similas mian patrinon. 彼女は私の母に似ている。

語尾 -n は目的語の他に、移動方向を表す前置詞 al の代用として
も用いることができる。上の文はその例である。次のように言い換
えられる。

  Mi iris al lernejo. 私は学校へ行った。
  S^i similas al mia patrino. 彼女は私の母に似ている。

既に目的語がある場合は、al の代用の -n は使えない。

  Mi donis libron al li. 私は彼に本を与えた。
  Mi donis libron lin. (これはできない)

不完全自動詞 (エスペラント)  (2007/12/23)
自動詞には補語(語尾 -n のない名詞や形容詞など)をとるものがある。
この動詞は補語がないと文が完成しないという意味で不完全自動詞と言わる。
次の動詞がある。

  esti(~である)
    S^i estas juna. 彼女は若い。

  s^ajni(~のようである)
    Vi s^ajnas laca. あなたは疲れているようだ。

  aperi(~と思われる)
    Li aperas senkulpa. 彼は無実と思われる。

  aspekti(~に見える)
    S^i aspektas kolera. 彼女は怒っているように見える。

  farig^i(~になる)
    Li farig^is maltrankvila. 彼は不安になった。

  ig^i(~になる)
    S^i ig^is bela. 彼女は美しくなった。

  resti(~の状態にとどまる)
    S^iaj okuloj restis fermitaj. 彼女の目は閉じたままだった。

これらの例文を見ると、「主語=補語」の関係があるのが分かる。

通常の自動詞でも補語をとることがある。

  Maljuna viro sidis sola. 年をとった男が一人で座っていた。
  Taro venis la unua. 太郎は一番に来た。

これも「主語=補語」の関係がある。
だから、次のようにも言うことができる。

  Maljuna viro sidis kaj li estis sola.
  Taro venis kaj li estis la unua.

前回の記事も含め言えることは、自動詞、他動詞、不完全自動詞と
いう区分は、個々の動詞に固定して決められるものではないという
ことである。どの区分で使われることが多いかという目安でしかな
い。自動詞か他動詞かと言うことにこだわり過ぎないようにすべき
である。

人類人主義とは  (2011/05/14)
人類人主義とはエスペラントの創案者であるザメンホフが提唱した考え方です。

ザメンホフは、ポーランドに生まれ育ちました。ここは外国に支配されている
ことが多く、当時はロシアが支配していました。そして、彼は人々が言語や宗
教の違いで争うのを幼少のころから見て憂いていました。

そのようなことから、ザメンホフは言語の違いからくる争いをなくすためにエ
スペラントを創案し、宗教の違いからくる争いをなくすために人類人主義を提
唱したのです。

人類人主義はエスペラントではホマラニスモと呼ばれています。
(homaranismo:homは人、arは集団、anは一員、ismは主義、oは名詞を表す。)

「どこの出身かと尋ねられれば、生まれた国を答えるが、何人(なにじん)か
と尋ねられれば、人類人であると答える。」とザメンホフは言っています。

人類人主義とはどの宗教や思想にも共通な教えを土台に、人類共通の思想を構
築して、この思想によって生きる人、すなわち、人類人という意識を人々に確
立しようというものです。

ザメンホフはこの思想の土台として、次のものを根本原則に置きました。

  ・「自分に対して他人からして欲しいと望むことを、他人に行なう。」
  ・「つねに自分の良心の声に耳を傾ける。」

つまり、各宗教や思想が「愛」とか「慈悲」と呼ぶものが土台になっているの
です。

詳しくはこちら => http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/hom.htm


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