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いくつかの話 3

 


1.戸井線


2.大間鉄道


3.寿都鉄道


4.ハマ線


5.芝山鉄道

3.寿都鉄道

 

・・・私の母は、第二次大戦中は台湾に暮らしていて、戦後一年近くたってから日本に戻ってきた「引き揚げ者」です。台湾から船で広島の大竹へ上陸し、そこから北海道の島牧村まで何日もかかって汽車でやってきました(彼女の、お骨となった父親のふるさと)。

 その話を母から聞くとき、「なんか変だな」と思っていたのが、「黒松内から寿都まで汽車に乗って、寿都から島牧までは馬橇(ばそり)に乗って行った」というくだりでした。島牧村へは、私も小学生の頃に連れて行ってもらったので、黒松内駅からは一日に数本しかないバスの最終に間に合って、それに乗って島牧まで行ったことをおぼえていたからです。長じて自分で北海道旅行をするようになって、「やっぱり黒松内から寿都までの鉄道なんてないじゃないか」と再確認したので、母に「そんなのないよ」と話したのですが、「いや、確かに乗った、小さな汽車にコトコト揺られて・・」と言うのでした。

 それが、’72年に廃止された、寿都鉄道でした。『鉄道配線跡を歩く 4』に掲載されているのを見つけ、本当にうれしくおもいました。同時に、「そんなのないよ」と否定して申し訳なく思いました。母にそれを見せても、特に感動するということもなかったけれど。