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いくつかの話

 鉄道で旅行をするのが好きだし、また旅行とまではいかなくとも、線路沿いを歩くだけでもなんとなく安心するたちです(歩き疲れたり道に迷ったりした場合に便利だということもある)。
 廃線跡というもの、「かつてあった鉄道が消えた」という場所があちこちにあると知る前は、父母の話を聞いていて「そんな所に鉄道なんてないよ!」と思ったりすることが何度かありました。そんな話や、鉄道に関するいくつかの話を書いてみたいと思います。


1.戸井線


2.大間鉄道


3.寿都鉄道


4.ハマ線


5.芝山鉄道

1. 戸井線(未成線)

・・・92’年に、自動車で北海道を旅しました。そのとき、「いかめし」で有名な森町から駒ヶ岳の東側を通り、恵山(えさん)をまわって函館に至ったのですが、その道筋に奇妙な構造物を見かけました。
 山肌にへばりつくように、鉄道の高架橋のような構造物が延々と続いているのです。こんなところに鉄道があるなんて聞いたことがない。一般には知られない貨物線などであろうか、それとも昔は鉄道が通っていたのだろうか、などと考えました。

 その場ではわからなかったけれど、家に帰ればすぐに解決するだろう、と思いました。なぜなら、私の父は戦時中から戦後にかけて函館に家があり、「遠足は恵山まで歩いて行ったんだぞ」などと話していたからです。
 けれども、父の答えはというと「函館から恵山まで鉄道?聞いたことがない。昔あったという話も聞いたことがない」というものでした。函館に住んでいた父でさえ知らない謎の構造物・・・。

 それから4年ほどたち、本屋で『鉄道廃線跡を歩く 2』を見つけ、そこでいきなり「戸井線(未成線)」というページが目に飛び込んできたとき、ものすごく驚き、興奮しました。それがあの構造物の答えだったからです。
 このほかにもいくつかの似たような「奇妙な構造物」を目にすることがありましたが、それがみんな「鉄道の廃線跡や未成線」らしいと知り、この方面への興味がとても湧きました。

未成線とは・・・鉄道を作ることが計画され、工事が途中まで進んだにもかかわらず、様々な事情により完成しないまま中止された路線のこと。つまり、一度も列車が走ることなく見捨てられたものである。