■
原油タンカー“SKY WING”
■画像のカテゴリ:原油タンカー
■撮影日時:2009.04.28
■撮影場所:東京湾 浦賀水道
■船舶説明:
全 長 |
333.00m |
全 幅 |
60.00m |
深 さ |
29.50m |
喫水 |
21.380m |
重量トン数 |
299,997D/W |
総トン数 |
154,369G/T |
主機出力(最大) |
27,160kw |
航海速力 |
16.15knots |
原油は世界のエネルギー消費の約40%を占め、その需要量の大半がタンカーによって海上輸送されている。
とくにわが国は一時エネルギー供給の約50%を石油エネルギーに依存し、その大部分をペルシャ湾岸地域から輸入している。
わが国とペルシャ湾を結ぶ原油輸送の主力がVLCC(VeryLarge CrudeCarrier)と呼ばれる20万D/W(重量トン)以上30万D/W未満の
原油タンカーで、その大量輸送能力はわが国のエネルギー供給の安定に不可欠な役割を果たしている。
船はその大量輸送能力との相関でみれば極めて環境負荷の小さい輸送機関だ。
高信頼度の衝突防止装置やGPSによる正確な位置情報把握など、近年の技術革新は航海の安全性も飛躍的に高めている。
しかし大量の原油を運ぶ大型タンカーが、座礁や衝突で一たび油流出を起こせば、海洋環境に与える被害は深刻だ。
それを防ぐために近年タンカーのダブルハル(二重船殻)化が進んでいる。
SKYWINGは2001年2月に竣工したばかりの新和海運の最新鋭ダブルハル原油タンカー。
環境の世紀にふさわしい安全性と効率性を追求した29万9997D/Wの最大級のVLCCだ。
VLCCの主流の船型は従来26万D/W前後が主流だった。
これは日本国内の揚げ地の制約によるもので、SKYWINGクラスのVLCCでは寄港できる揚げ地が限られていた。
しかし最近は30万D/Wクラスの大型船にも対応する港が国内に増えてきており、今後もその傾向が強まるとみられる。
VLCCの上限一杯となるSKYWINGの船型には、そうした趨勢を先取りする意欲が漲る。
タンカーのサイズと経済性には複雑な関係がある。
船型を大きくし、大量の貨物を一度に運べば輸送コストは低減するが、
一方で寄港可能な港湾が限られ、全体として運航効率が低下することもある。
また30万D/Wを超えるULCC(UltraLarge CrudeCarrier)となると、
ペルシャ湾/日本間ではマラッカ・シンガポール海峡の通過が、水深の関係で困難になる。
その場合ロンボク海峡やスンダ海峡などを遠回りすることになり、時間も燃料費も余分にかかる。
SKYWINGの船型は、そうした条件を考慮した上で最も経済性の高いものといえよう。
ダブルハル化の最大の狙いは、座礁や衝突事故で船体外殻に損傷を受けても積み荷の原油が流出しにくいようにすることにある。
シングルハルと比べ船費は当然かさむが、それを補うメリットもさらに生まれる。
例えばシングルハルでは荷役用やバラスト注排水のための配管、船体の補強材がタンク内部に突出する。
このためバラスト用配管が損傷した場合、原油が海洋に流出する危険がある。
しかしダブルハルでは、すべて二重船殻の空隙部分を通るためその恐れはない。
またタンク内面が突起物の少ないフラットな形状になるため、揚げ荷役時にタンク内に残る残渣(スラッジ)が減少する。
つまりより多くの油を効率よく荷揚げできる。ほかにダブルハル化は、大型船の弱点になりがちな船体の縦強度を向上させるメリットもある。
SKYWINGの環境への配慮はダブルハル化にとどまらない。
NOX排出量を抑える環境対応型のエンジン、ダイオキシン排出量を低減する船内焼却炉の搭載など、
国際基準に対応した環境対策。さらに排ガスの熱を船内発電に再利用するターボジェネレーターは省エネ効果で資源の有効活用に結びつく。
船尾に採用されたLVR(LowVoscousResistans)フィンは、船尾付近の水流を制御して推進効率を高める工夫で、これも燃費の向上に効果がある。
従来は別れていたエンジン関係と荷役関係のコントロールルームをブリッジ下のAデッキに統合した航機一体方式は、
運航中のスタッフの連携をスムーズにし、安全で効率的な運航に貢献するアイデアだ。
新和海運グループは2001年に新たに環境憲章とそのための行動計画を制定し、
地球環境保全活動に一層の努力を示す姿勢を明らかにしている。
タンカー分野での豊かな経験とノウハウを結集し、21世紀の海へ満を持して船出したSKYWINGは、
環境の時代への同社の企業努力のシンボルともいうべき、地球と人に優しいVLCCといえよう。