2019/08/29 as 〜 as 考 (7) コーパスにみる as LONG as の異質さ
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as LONG as について "異質" と言うのは言葉が過ぎるかもしれない。
しかし、やはり as tall as などと比べると 違いが大きすぎるのである。
そのあたりのことを 日英対訳コーパス・CORPORA を使って 見ていこう。
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もくじ |
- 原級比較 as 〜 as のそもそも
- as LONG as の特性を視覚化する
- まとめ
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原級比較 as 〜 as はそもそも 比較級の仲間とされている。
文法書を見てみよう。
高校総合英語 FOREST 2000
A... as+C(原級)+as B とある通り A と B を比べると ある性質 C (ここが原級)において同じであるという仕組みである。
A と B が C については同じと言う構造であるから、A, B, C の3つの要素が不可欠である。
では そのことを as tall as と as big as で調べてみた。左が as tall as で、右が as big as である。
as tall as(左) と as big as
この図と同じものは 以下の手順で再現できる。
- 日英対訳コーパス・CORPORA をひらき、講演 TED Talks を選ぶ
- 入力欄に as tall as を入力して検索
- 「options」ボタンをタップして「並び替え」欄の「左」をタップ
- 「左」をクリックすることで 検索語 "as tall as" (赤字)の左側(検索語に先立って書かれている文字列)で アルファベット順に配列される。
A as C as B の構文からすると、as C as に先立つ A の部分が図の左側に並び、 as C as に続く表現 B の部分が図の右側に並ぶことになる。
図を見ると 確かに比較する2つの要素 A と B が左右にそろっていることがわかる。
一番上の字幕の左に文字がないことが気になるが、それは、一つの文が複数の字幕に分割されていて、A に相当する文字列が前の字幕に振り分けられたことで隠されているからである。
字幕を2回タップして 動画を開くか、「options / 表示」の「文表示」にすると確かめられる。
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as LONG as では どうなのだろうか。
同様に検索処理してアルファベット順に配列した字幕リストを比べてみよう。左が as LONG as で、右が as SOON as である。
as LONG as(左) と as SOON as; 上から36番目まで
一目瞭然だが、両方ともに左側が空白なのだ。
念のため 大文字小文字の区別を見ると、as LONG as(左)では1番から21番までが、as SOON as では1番から30番までが大文字の書き出しであることがわかる。
つまり、A as C as B の A が欠落し、As C as B.の文章になっているのだ。
文法書によると、as LONG as や as SOON as のこうした用法を "接続詞" と説明している。
それぞれの訳は 次のとおり。
表現 | 訳 | 文頭数 | ヒット数 | 文頭割合 |
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as LONG as | 〜するかぎり; 〜さえすれば | 21 | 191 | 11% |
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as SOON as | 〜するとすぐに | 30 | 166 | 18% |
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as FAR as | 〜するかぎり; 〜まで | 17 | 135 | 13% |
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参考として 各表現が文頭に来ていた割合を計算しておいた。ただしこれは字体による形式的な分類であって、字幕ごとに内容を検討して、接続詞か比較構文かを判定したものではない。
例えば as LONG as の29番目の小文字始まりの字幕 "as long as it doesn't involve a cruise" の文は "He likes to travel as long as it doesn't involve a cruise ship." となっていて、接続詞の用法だとわかる。
また 掲載した図には載っていないが "A single cave system, like Mammoth Cave, which is in Kentucky, can be as long as more than 600 kilometers." のように比較用法のものもある。
比較用法と接続詞用法の割合がどのようになっているのかは興味深いが、残念ながら、現在の 日英対訳コーパス・CORPORA には それにこたえる機能は備わっていない。
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as+原級+as(〜と同じくらい)の形式を持つ 比較構文について、日英対訳コーパス・CORPORA を使って as に挟まれた位置に来る語彙の出現頻度を調べることから始まり、その頻度が多い語彙群が 文法説明では使われていないことに疑問を抱いたことから、共起語や訳文、そして検索語の文中の位置などによる解析を行ってきた。
こうした試行を通して、一方では 対訳コーパスによる自律的英語学習の方法論を切り開くとともに、他方では 英語学習のためのコーパスの要件をも明らかにしてきた。
この道は始まったばかりであり、進めば進むほど、新しい課題も増えてくる。
一つ一つ解決しながら 前進あるのみである。
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シリーズ 日英対訳コーパス・CORPORA / as 〜 as 考
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2019.08.23 田淵龍二 TABUCHI, Ryuji
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