ドラえもんの 恐竜ワールド大探検 2006年3月20日発売予定 小学館 850円+税 真鍋真:監修 北村雄一:著 三谷幸広:まんが イラスト:三谷幸広・北村雄一・菅谷中 キャラクター原作:藤子・F・不二雄 この書籍のAmazon のページへ→ 概要:
2006年春におけるドラエもんの映画公開にあわせて発行されたもので、ピー助をキーワードにして世界のさまざまな恐竜とその進化と歴史を見ていこうという本です。
内容の構成は以下の通り
第1章:ピー助たちの時代・・・・・・・・中生代はどんな時代?
第2章:生命のつながり・・・・・・・・・系統と進化
第3章:恐竜の世界・・・・・・・・・・・原始的な獣脚類からトリケラトプスまで
第4章:恐竜のことを知ろう!・・・・・・なんでもイエス・ノークイズ
第5章:恐竜なんでもナンバーワン
第6章:世界の恐竜発掘地
第7章:世界の恐竜研究者と恐竜研究史・・バックランドとマンテルからゴーティエまで
資料編:名前の意味/世界の博物館/恐竜データ集
第1章2章では中生代と恐竜の進化と系統を漫画で、第3章では代表的な恐竜をイラストと解説で紹介しています。第4と5章も漫画形式で恐竜のイエス・ノークイズと恐竜ナンバーワンを、第6章では恐竜発掘地を地図とキャラクターで紹介しています。最後の第7章は世界の恐竜研究者と恐竜研究史をキャラクターと解説で説明しました。
漫画は漫画家の三谷さんによるもので、ドラえもんとそのキャラクターたちが皆さんを案内してくれます。リアル系の恐竜イラストは北村とイラストレーターの菅谷さんが担当。北村は他に文章と解説を執筆しました。また国立科学博物館の真鍋さんに監修してもらっています。近年、日本では各地からさまざまな恐竜の化石が見つかっています。恐竜ワールド大探検は恐竜全体を扱っているので、もしあなたが日本の恐竜のことを知りたかったら、姉妹本ともいえるドラえもんの恐竜ニッポン大探検を読んで下さい。右の画像をクリックすると紹介ページに飛べます。
恐竜研究の変革:
この本、「ドラえもんの恐竜ワールド大探検」の”はじめに”でも書きましたが。恐竜学は1986年から急激に変貌をとげはじめました。第7章:世界の恐竜研究者と恐竜研究史、200ページで述べたように、この年、生物の血縁関係/系統関係を探る方法が恐竜の世界ではじめて使われはじめたからです。それが分岐学/最節約法と呼ばれるものです。分岐学とはいかなるものであるのか?、それを知りたい人はこちらをクリックしてください。分岐学とは何か?具体的に何をどうするのか?→
さて、分岐学が恐竜学の世界に導入されて起きたことは、ぱっと見にはとても地味です。昔から恐竜を報告する科学論文には、見つけた恐竜の骨の特徴を記述した文章がずらずら並んでいました。現代ではそこにさらに付け加えて分岐学による解析結果と、そしてその結果を踏まえた考察が述べられています。
見ただけではそれだけの変化に思えます。しかし逆に言うとこのことは、恐竜を研究して論文を書くには分岐学を知っていることが必要不可欠でないにしても、重要であることを示しています。もちろん、分岐学を直接使用しない論文もあります。しかしそれを応用するには恐竜の血縁関係を知ることが不可欠でしょう。それができないと例えばオオカミの研究をコヨーテにではなく、アライグマに応用するようなことが起きてしまうかもしれません。
生物学では生物の血縁関係/系統関係を知ることがとても重要です。そして分岐学/最節約法は恐竜だけでなく、あらゆる生物で、その系統を知るために使われる代表的な系統解析のツールです。
しかし分岐学に限らず、系統解析というものはなかなか直感的には理解しにくい側面をもっています。それは系統解析がほとんど数学の一分野と言えるものだからかもしれません。数学を苦手とする人はおおぜいいます(北村もそのひとり)。ですから理解しにくいのは当然かもしれません。
しかしこのことは、恐竜に興味を持った人が最新知識に触れようとする、あるいは論文を読む、さらには研究者になろうとする時、系統解析がハードルのひとつになりうることを示しています。実際、化石の発掘はできるのに研究者にはなれなかった人がいたりします。それにはさまざまな原因があるでしょうが、なにもその原因をわざわざ増やすことはないでしょう。
もしあなたやあなたのお子さんが恐竜学や生物学に興味があるのなら、こうした変化がつい最近あったということ、そしてこの時どういう態度をとるかで当人の進路が決定されてしまうことを頭にいれておいてもいいと思います。なお、人によると分岐学は前衛的で素性のわからない怪しげな理論だと考えるようです。しかしその始まりからすでに半世紀以上。激しい議論をへて現在のようなものになっておよそ20年。これはむしろ十分確立された基礎的な学問であり、いまや単なる常識であると考えるべきでしょう。
始祖鳥の扱いについて:
本書でも述べていますが、始祖鳥はいまのところ世界で最古の鳥です。鳥の祖先そのものではおそらくありませんが、かなり近いものであるか、あるいは祖先に近い姿をとどめた動物のようです。ようするに、
始祖鳥は他のいかなる恐竜よりも現代の鳥に近い動物だが、鳥の祖先そのものではない
ということです。恐竜ワールド大探検の145〜146ページの解説はそうしたことを踏まえたものです。
なお時々、始祖鳥は鳥ではないという人がいます。これはどうも以上の部分の、鳥の祖先そのものではない、だけを拡大解釈して、祖先でないのなら始祖鳥は鳥ではないのだろう、と考えたことから起きた誤解のようです。ちなみに始祖鳥は傍系の鳥であるという人もいますが、それをいったらどんな動物でも傍系になりかねないので(例えばある人なり犬なり虫なりがたまたま子孫を残さずに絶えたらそれは傍系ってことになる)、あまり適切な言い方ではないかもしれません。
また最近の研究では始祖鳥と現代の鳥を結び付ける特徴が思ったよりも少ないらしいことが分かってきました。この研究が導き出した結論が今後どうなるのかはまだ分かりませんが、興味深い結論を私たちに示してくれるかもしれません。現段階ではまだ比較的やわい結論しか得られていないので74ページ、145〜6ページで示したような表現にとどめています。
参考までに以下のコンテンツを