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紅葉の斜面を息を切らせながら登りきると、様相ががらりと変わった。
紅葉の中の道から一転してササとツガ、ダケカンバといった木々による緑の世界が広がり出したのである。
このあまりの違いに少々驚かされる。
背丈近くまで伸びたササの中の道を登る。
この頃になると、今までずっと差していた日の光が、時々雲に隠れるようになり、少々寒さを覚える。 |
所々で、赤ーの凄まじい岸壁が見える。
山自体がドンドン浸食されているようで、その荒々しい姿に
大山を思い出した。
雲の量もかなり増えだし、未だに鳥甲山本峰が見えない中、少々先行きに不安を覚え出す。 | |
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視界の利かないササの中の道を暫く進むと、目の前に突然 『 白ー 』 の標識が現れた。
ここはピークと言うより、通り道に過ぎないといった感じで、しかも展望も利かない状態。少々ガッカリであった。
時間は 10時24分。ここまで 2時間20分弱できたことになる。頂上まではあと 1時間20分ほどとのことだが、
途中、カミソリの刃と呼ばれる難所が待っている。気を引き締めていこう。
この状態の白ーでは休むに休めず、先へと進む。 |
暫く展望のない中を進んでいくと、
パラパラとササを叩く雨音が聞こえてきた。しかし上空を見れば、雲が多くなったとは言え、降りそうな状況にはない。
おかしいと思いながら、進んでいくうちにその正体に気がついた。寒さのために木々に出来ていた霧氷が、風に揺られてパラパラと落ちてきているのである。
そう言えば、周囲の木々には氷の花が咲いている。この辺は朝からこうだったのか、それとも突然こうなったのか 分からないのだが、
とにかくすっかり様相が変わってしまっている。
そうこうしているうちに、樹林越しに鳥甲山と思われるピークが見えてきた。
スッキリとした三角錐はなかなかのものである。 | |
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空は完全に雲に覆われ、時々ガスまで流れるようになってしまった。さっきまで青空広がっていたこと自体が信じられない。
背丈ほどもあるササの中を進んでいくと、
やがて再び鳥甲山の姿を見ることができたのだったが、その手前にある垂直な岩峰が大変気に掛かる。
あれが難所のカミソリの刃なのであろう。垂直の壁の上部は、ギザギザとしていて如何にも難所という雰囲気を醸し出している。 |