 |
風は相変わらず強く、ガスも濃くて視界がほとんどない。
大きな岩を左に見て進む。岩を通り過ぎて振り返れば、岩の下の方に北岳山荘が小さく見える。自分では意識しなかったが、
かなり登ってきたようだ。
やがて、ハイマツの向こうにガスに霞んではいるものの標柱の立つピークが見えてきた。
どうやらあれは中白根山らしい。中白根山は標高 3,055mのはず。ということはこの辺はすでに 3,000mを越えていることになる。
晴れていれば どんなにか素晴らしいプロムナードであろうか。 |
12時50分、中白根山に到着。
この頃になると、パラパラと雨が降り出した。最悪である。
しかし、北岳方面を見ると、
北岳頂上を覆っていたガスが流れ、ほんの一瞬ではあるが、
北岳の頂上がその姿を現そうとしているではないか。中白根山頂にて憩っていた数人のパーティも歓声を上げる。
慌ててカメラを向けるが、一寸遅れた感じ。それでも諦めていた北岳頂上を見ることができたので嬉しかった。
これがこの日のハイライトであったが、後で考えると、今回の縦走のハイライトでもあった。この後、これ以上の喜びは得られなかったのである。 |  |
 |
雨は降ったり止んだりの状況。
これ以上悪くならないうちに間ノ岳に登っておきたいところだ。
中白根山ではほとんど休まず先を目指す。
中白根山は写真のような台地状の場所にある岩峰で台地状の場所を突っ切れば、中白根山に登らずして間ノ岳に進むことができる。
無論、折角のピークを無視する人はいないと思うが・・・。
先を見やれば、恐らく 3,000mを越えているであろう稜線が続く。
しかし、その稜線を行く縦走路はガスに突っ込んでいくことになる。間ノ岳での展望は期待薄であろう。 |
中白根山から稜線を進む。
先の方は残念ながらガスで視界はほとんど無い。しかし、相変わらず八本歯ノ頭方面だけはよく見える。
八本歯ノ頭の後方には地蔵岳、
そしてその右には観音岳が大きい。
雨は途中から強くなり始める。悪い傾向である。下手をすると、間ノ岳頂上ではカメラも構えられないかもしれない。
やがて、ガスの中、先に見えるピーク上に標識のようなものが見えた。意外に早く着いたなと思ったら、
それは間ノ岳・北岳の道標であった。
間ノ岳に着く間にこれがもう一つある。
黙々と進んで行くと、ガスの先に形の良いピークが見えてきた。
恐らく時間的に見て今度こそ間ノ岳であろう。 |  |
 |
案の定、そのピークは間ノ岳であった。
頂上到着は 13時48分。ありがたいことに、雨はポツリポツリの状態に変わっている。しかし、視界は全くと言って良いほどない。
頂上で一休みし、本格的なレインウェアに着替える。今まで着ていたのは上着だけで、それもかなり古いものであった。
10分程休んで農鳥小屋を目指す。
この間ノ岳頂上は広々としており、道は農鳥岳方面と三峰岳方面に分かれる。明瞭なペンキ印に従って、
農鳥小屋を目指す。小生にとってここからは未知の領域となる。 |
広い台地をペンキ印に従って進み、
農鳥小屋への下り口に出る。
ここからは岩礫の道をジグザグに下ることとなる。残念ながらガスのために視界はほとんど得られない。
それでも時折ガスがサーッと引き前方に広がる光景が見える。ほとんど岩の世界であるが、植物の緑がアクセントとなって美しい。
道は明瞭、迷うことはない。
これだけガスが出ているのなら雷鳥を見かけないかと期待したが、ハイマツも少なく残念ながら見ることはできなかった。 |  |
 |
やがて、先方に見える鞍部に赤い屋根が見えてきた。農鳥小屋のようだ。
この頃になると、雨がかなり強くなってきた。風も強く、雨は横殴りという感じ。
雨が頬に当たって痛い。雹か霰ではないかと思った程である。
雨の中、自然に足が速まり、小屋到着は 14時45分であった。
平日なので小屋は空いていることを期待したが、団体が入っていて 80%以上の混み具合。
ちょっと残念だが、これくらいなら良しとせねばならない。 |