邦題「インソムニア」

原題「Insomnia」

2002/10/6@MOVIX


評者   

評価  

ひとこと

ほーく

 何故、ひとは眠れなくなるのか…。

<コメント>

☆3大オスカー俳優、夢の競演!

「メメント」でブレイクした注目の新進気鋭の監督最新作!

☆制作は、脂ののりきった「ジョージ・クルーニー」&「スティーブン・ソダーバーグ」!

と、実にキケンな惹句が並び立てられていたこの作品。肩すかしをくらった気分の方もいるやもしれぬ。何故なら、実に地味だから。しかし、わたしは敢えて、そこを評価したい。

 前作の「メメント」が斬新な感覚を感じさせる演出&素材だったために、その方向で期待してしまったのは、先入観のせいであり、それは広報の方向性がその責任の大半を占めていると思う。

 しかし、長編デビュー作「フォロウィング」との関連で考えてみよう。今、わたしがノーラン監督の個性を見いだすとするならば、丁寧な演出と「葛藤」をテーマにしている点である。そうして考えると、これだけ派手な陣営であの作品の仕上がりというのが納得できるのである。とまあ、わたしはわたしで先入観から我田引水をしているのだが。

 さて、俳優陣について。アル・パチーノは、まったく言うことなし。従来の持ち味の、猛々しい頑固者タイプではなく、「ゴッド・ファーザーPart3」の老マイケルのごとく、抑揚のきいた姿が美しい。やっぱり、頑固だけど。ロビン・ウィリアムズは、<初の悪役>という惹句が災いしているのか、その役を演じることがセンセーショナルに先行しすぎて、新機軸とまでは感じられない。思うに、元々の悪役自体の個性が弱いのだ。この点は、脚本に問題があろう。まあ、敢えて、あの役を望んだのだとしたらそれは別である。彼にオファーしたのが制作サイドなら、それは金の無駄遣いだ。そして、ヒラリー・スワンク。あの「ボーイズ・ドント・クライ」で反則気味にオスカーを早々と手にしてしまい、今後のキャリアを危惧していたのだが、その心配は杞憂であったようだ。新米刑事in田舎町としての、押さえるべき心理描写をきちっと伝えている。

 ということで、とある作品のような「セット販売」ではなかったのがとてもうれしい。故に、制作のジョージ・クルーニー、スティーブン・ソダーバーグは慧眼であったということであろう。また、ビッグネームにひるむことなく、個性を発揮しているノーラン監督の次回作を、首を長くして待ってみたい。

余談だが、ここ連日で観たうちのひとつ。「プレッジ」と、根底に流れるものが同じような気がしてならない。となると、これは、「サイン」?(笑)

minonomiさん@「シアターF.通信」の評は、こちら

お茶屋さん@「チネチッタ高知」の評は、こちら


主演 アル・パチーノ@ウィル・ドーマー
共演              ロビン・ウィリアムズ@ウォルター・フィンチ、ヒラリー・スワンク@エリー刑事、レイチェル・クレメント@モーラ、マーティン・ドノバン@ハップ刑事、ニッキー・カット@フレッド刑事、ポール・ドゥーリー@チャールズ署長、ジョナサン・ジャクソン@ランディ
監督 クリストファー・ノーラン
脚本 ヒラリー・サイツ
衣装デザイン ティッシュ・モナハン
美術監督 ネイサン・クローリー
撮影監督 オォリー・フィスター
音楽 ディヴィッド・ジュリアン
編集 ドディ・ドーン
OST 未購入。
2002年作品 1時間59分
  http://www.insomuniamovie.com

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