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参人芝居公演


ブドリよ、
私は未だ
眠ることができない

−第10回テアトロ新人戯曲賞受賞作品−

作・やのひでのり
演出・山崎哲






ブドリは逃げた。
森の中へ。
最愛の妹とともに。
そして−。

麻布die pratze
2003年8月26日〜31日

出演
千代延憲治 田中貴子(木山事務所)
木原吉彦 加藤英雄 佐藤健
戸張智春(少年ギ曲団) 竹川紀子
大和世史子

スタッフ
舞台監督・岩戸堅一 照明・和田東史子
音響・二木くみ子 音楽・有馬克己
宣伝美術・清水奈々絵 瓦井真紀子
制作・保科みゆき 企画・参人芝居

わたしの友人たちは
「最近、芝居がつまんない」と口を揃えて言います。
そう言われると「う〜っ」と言葉につまります。
ほんとうを言うと、芝居を見はじめて40年になりますが、
おもしろい芝居なんてめったに遭遇するものではないし、
創れるものでもありません。
わたしの体験から言っても、芝居がおもしろかったのは
せいぜい60年代から70年代にかけての、
ほんの一時期だけで、あとはまあほとんど退屈だった
といってもけして過言ではないのです。
ところがその稀有な時期に遭遇しているため、
わたしの友人たちはつい
「最近、芝居がつまんない」と口をすべらせ、
わたしもまた「う〜っ」と言葉をつまらせてしまう
ハメになってしまっているのです。
このことは、
一瞬でも至福の時を味わってしまうと、
あとはひたすら長い不幸に、退屈に耐えるしかない
という教訓なのでしょう。
けれど、わたしたち舞台を創る側は、
そうばかりも言ってられません。
おもしろい舞台なんて
めったに創れるものではないとわかっていても、
日々、奮闘努力を怠るわけにはいかないのです。
いまは亡き三波春夫さんではないけど、
「お客さまは神さまなのですから」。
そこで今回は、俳優やスタッフに
「命がけ」という課題を与えました。
「いまさら〜」と照れている余裕などありません。
60年代から70年代にかけて芝居が
ほんのちょっとおもしろかったのは、
やはり作る側が、命をかけて芝居をやっていたからです。
わたしは隅っこで
ヤケドしそうになりながらそれをじっと覗いていました。
鈴木忠志、唐十郎、寺山修司。
わたしの敬愛するひとたちは、芝居を命がけで遊んでいた、
だから間違いなく芝居はおもしろかったのです。
そして芝居がまた、命をかけてもすこしも惜しくない
遊びであることもほんとうだからです。
そのことをなによりもまず、
後続のひとたちに伝えておきたいとおもったのです。
そう言えば、宮沢賢治も
いつも「命がけ」で作品を書きつづけたひとでした。
その賢治作品を戯曲化するにあたって、
やのひでのりも自分の命をかけたと言っていました。
とすると、どのみち命をかけないわけにはいかないのです。
まあ、うまくいきましたらどうぞご喝采を!
うまくいかなかったら……
(おお、想像だにしたくない)。
(山崎哲「パンフレット」より)